私立の名門男子校・緑都学園に入学することになった蓮川一也。在学中は寮で暮らすこととなった一也ですが、そこには人をからかいながら構うことが好きな、ちょっと変わった人ばかりがいました。一也と同室の瞬、寮長の先輩、光流と忍を中心に、寮や学校での生活を描いた作品『ここはグリーン・ウッド』。 今回は、作中に登場する名言を紹介していきます。スマホアプリでも無料で読めますので、ぜひ本作をお楽しみください。
初恋の相手が義理の姉になったショックから逃げるように、全寮制の学校に進学した蓮川一也。名門と呼ばれる男子校ではあるものの、入寮した学生寮には一風変わった人ばかりが集まっていました。そんな寮で、一也は多くの人間の人生に触れていくこととなるのです。
少年たちの青春を描いた名作漫画『ここはグリーン・ウッド』。漫画は現在、単行本版、愛蔵版、文庫版の3種類がありますが、ここでは文庫版をもとに名言を紹介していきます。
本作の魅力は、男子高校生たちのドタバタな日常を描いているところ。「青春ボーイズライフ・ストーリー」というキャッチコピーの通り、学校・寮での生活を描いた物語になります。
作中にはいろいろな事情を抱えた少年たちが登場。親を亡くした子、捨てられていた子、名家の子、女系一家で育てられた子など、まったく違う環境で育った価値観の違う少年たちが、時にぶつかりながら、結託しながら、学校生活もプライベートな時間も一生懸命楽しく過ごす姿が魅力的な作品です。
また、一也が呪いにかけられたり、宇宙人と遭遇したり、ファンタジー要素も楽しいところ。性格も見た目もそのままに、演劇のような世界観もキャラの名前も違う物語が間に挟まってくるのが、面白いですね。
寮付きの名門男子校に1ヶ月遅れで入学した蓮川一也。家から逃げたいという思いで寮に住むことになった一也ですが、そこには変わり者ばかり。入学初日から同室の如月瞬、寮長の池田光流、生徒会長の手塚忍にからかわれ、おもちゃにされる日々を送ることになりました。
- 著者
- 那州 雪絵
- 出版日
- 2000-12-01
1巻では、光流と忍から、同室である瞬が女の子だと紹介されます。本気で女の子であると思い込んでいる姿は、一也の素直さがよく表れているシーン。
そんな1巻では、出来の良すぎる弟・忍に嫉妬した姉・渚に、忍の親友である光流が誘拐されてしまいます。忍、一也、瞬に助け出されたあと、忍が光流にかけた言葉です。
「こういうことぐらい
心配も迷惑もかけていいとおれは思うけど」
(『ここはグリーン・ウッド』1巻より)
養子として今の家に迎えられた光流は、家族との間にわだかまりはないものの、どうしても自分は他人だという思いを消せないでいました。そんな光流が、家族に連絡したのか訊いてきたときに、忍はこう答えたのです。
血の繋がりなど関係なく、家族は家族であり、特別な存在だと伝わってくる言葉。忍自身、恵まれた家庭環境とは言えませんが、だからこそ光流と家族の繋がりを大切にしてほしいと思っているのかもしれません。
夏を迎えた寮は冷房もなく、その暑さにグダを巻く者、些細なことが気に障る者など様々な人がいました。そんななか、一也、瞬、光流、忍は、一也の義理の姉・すみれが送ってくれたプール無料券で、プールへとやってきました。
- 著者
- 那州 雪絵
- 出版日
- 2000-12-01
夏休み中の話には、瞬の弟・麗名が登場。瞬に負けず劣らずかわいい麗名ですが、瞬に甘やかされたせいか、わがままな性格。家出した麗名を叱りもしない瞬に、一也はこう言いました。
「守られてばっかりいたら
弱くなるのがあたりまえだろう!!」
(『ここはグリーン・ウッド』2巻より)
一也は両親を早くに亡くし、兄1人弟1人で育ったからこその言葉ではないでしょうか。兄弟だからこそ、将来必ず本人の糧になると信じ、厳しさも見せなければいけないという思いがあるのだと考えられます。「甘やかすことが優しさではない」と教えてくれているようですね。
2巻では、お正月のエピソードで瞬、光流、忍の家族も登場します。
瞬は振袖姿で母の後をついて周り、光流は家にいても学校の友人と外へ出て、忍は親戚などが一堂に会する新年会に出席するなど、三者三様の家族模様が垣間見えるので、こちらもぜひ注目してください。
とても仲のよいコンビの光流と忍。しかし、入学当初は互いに深い関わりを持っておらず、表面的な付き合いばかりでした。忍が生徒会選挙で姑息な手を使っていると知った光流は、忍と殴り合いの喧嘩になりました。しかし、本気のぶつかりあいをきっかけに、2人は親友となったのです。
- 著者
- 那州 雪絵
- 出版日
- 2001-03-01
3巻の見所は、やはり光流と忍の絆を感じられるエピソードです。光流と忍は、息の合った相棒同士。彼らは彼らなりに衝突し、心をさらけ出したことで他の人にはわからない絆を結ぶことになったのです。
幼い頃から複雑な家庭環境で育った忍は、他人を「利用価値のある者」と「利用価値のない者」に分け、自分が望む道へ進むため、手段を選ばないような人間でした。そんな忍の影の部分を知った光流は、忍を救いたい一心で、彼にこんなセリフを放ちます。
「悪い奴はいずれちゃんと負けるし
善い奴は貧しくても幸せになるし
世の中は不公平でも
おまえが心配してるほどは悪くないって」
(『ここはグリーン・ウッド』3巻より)
明るく人気者な光流らしい考え方。忍が選んだ生き方も、上手な生き方だったかもしれません。しかし、生き方によって、世の中の見方は変わるということを考えさせてくれるセリフです。
普段は仲のいい2人が、親友になるにいたったエピソードは必見です。殴り合いのシーンや、本気でぶつかり合う姿にハラハラしつつも、忍と光流が絆で結ばれていくエピソードは、見逃せません!
周りにブラコンがダダ漏れなものの、兄の前では素直になれなかった一也。
そんな一面を知ってかしらずか、一弘は、ずっと弟を大切に育ててきました。それを象徴しているのが、すみれと一弘の馴れ初めのシーン。蓮川兄弟の家族愛に注目です。
- 著者
- 那州 雪絵
- 出版日
- 2001-03-01
一也との生活のため、夜の仕事をしていた一弘。ある日、自分に好意を寄せてくれているすみれと偶然出会います。思いを伝えてくれた彼女に、一弘は自分の家庭事情を打ち明け、今は弟が一番大事だと伝えます。
「このまま すなおにまっすぐ育ってほしいんだ
そのためには うそもいうし なんだってやる」
(『ここはグリーン・ウッド』4巻より)
弟のために働き、「なんだってやる」と言い切れる姿は、年長者として非常にかっこいい姿でした。きっと、すみれもそんな一弘の姿に、惚れ直したのではないでしょうか。
弟を思い、一生懸命働く一弘。兄のことを思い泣く一也の姿に、お互いを思いやる、兄弟愛が垣間みえます。両親がいなくても、強く生きる2人の姿にぜひご注目ください。
ついに甥っ子・緑が生まれた一也。スケートの券をもらいにいくついでに、瞬、光流、忍とともに緑に会った一也は、初めて子守を経験することになりました。
すみれの妊娠をきっかけに、想いを打破した一也。そんな一也に新たな恋の予感がやってきます。しかしその相手には、彼氏がいるようで……。一也がどう恋心を自覚するのか、注目です。
- 著者
- 那州 雪絵
- 出版日
- 2001-06-01
一也の恋愛も気になるところですが、5巻では長年緑都学園で教師をしている先生の話が登場。一也の隣室に来た新1年の野山が、個人課題を膨大に出す古文教師・立山君子に対し、課題や予習復習で時間が潰れ勉強ばかりの1日になると抗議したとき、彼女はこう返しました。
「学校は勉強するためだけのところだ」
(『ここはグリーン・ウッド』5巻より)
そして、こう続けます。
「勉強以外のことは家庭と社会で学べばよろしい」
(『ここはグリーン・ウッド』5巻より)
自分は教師だから担当の教科を教える義務があるし、高校という場に進学してきた以上は勉強するつもりだったのだろうと言った立山。大人になった今だからこそ思うことかもしれませんが、やはり学校で勉学に励むことは、たしかに貴重な財産になります。
友人などがいる学校では、勉強以外のことにも目を向けたくなりますが、学校の外に出れば勉強以外のことが溢れていますよね。人生のなかで「勉強のための時間」がもっとも少ないことをあらためて実感するセリフです。
光流の後輩・巳夜のことが忘れられない一也。体育祭の最中はライバルたちに狙われそれどころではなかったものの、体育祭を見にきていた巳夜と再会したことで、その想いは抑えきれないほど募っていくことに。一也の恋が動き出す6巻です。
- 著者
- 那州 雪絵
- 出版日
- 2001-06-01
親公認の彼氏がいる巳夜を好きになってしまった一也。しかし、今回は諦めません。
かつて恋敵であった兄・一弘に、相手がいる女性を好きになったことを相談します。そんな弟に、一弘がこう伝えます。
「お前は自分が悪者になることを恐れているにすぎない」
(『ここはグリーン・ウッド』6巻より)
この言葉で、一也はあらためて巳夜に告白することを恐れていたことに気づきました。今の関係が悪くなったら、巳夜の彼氏に恨まれたら、自分が傷ついてしまったら……。
しかし自分が後悔しない道を進むために、傷つく覚悟を持ち、一也は巳夜に想いを伝えます。
正面から一也の気持ちを受け取った巳夜も、自分の気持ちと向き合うことになりました。彼の出した結論とは?果たして、2人は結ばれるのでしょうか?
文庫版では6巻が最終巻。最終回は、なんでもやってしまえと言わんばかりに、唐突にリクエストイラストが作中に登場するなど、非常に賑やか。また、自分が寮に訪れた感覚にもなれる終わりとなっていて、非常に楽しい終わり方です。
最後まで青春を駆け抜ける彼らを、どうぞお見逃しなく!
少年たちの日常生活を描いた『ここはグリーン・ウッド』。大人にも子どもにもなれない少年たの気持ちや不安、学生時代しか経験できない行事などがたくさん詰まった本作。昔の学生時代を思い出したい人にも、これから高校生活を送る人にも、今まさに青春を送っている人にもおすすめの作品となっています。