山下明生のおすすめ書籍6選!絵本「ねずみ」シリーズと「バーバパパ」で有名

更新:2021.11.17

児童文学作家の山下明生の作品が教えてくれるのは、優しさだけではありません。時に切なく、時に不条理……人間のさまざまな心の一面をみせてくれるのです。日本では、「バーバパパ」シリーズの翻訳をしていることでも知られています。この記事では、そんな山下の書籍のなかから特におすすめの作品をご紹介していきます。

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山下明生とは

 

1937年生まれ、東京都出身の山下明生(やましたはるお)。幼少期は瀬戸内海にある広島県の能美島で過ごしたことから、海を舞台にした作品を多く手掛けています。

京都大学を卒業した後は、あかね書房に入社。児童書編集などに携わるかたわらで、童話の創作も始めます。1973年に『うみのしろうま』で「野間児童文芸推奨作品賞」、1975年に『はんぶんちょうだい』で「小学館文学賞」を受賞するなどの実績を重ねながら、数多くの作品を生み出しました。

その他「バーバパパ」シリーズの翻訳を担当していることでも知られています。

 

山下明生の代表作『島ひきおに』

 

とある島に、鬼がひとりぼっちで暮らしていました。ある日、その島に漁船に乗った人間たちがやってきます。

人間たちは鬼の目を明かりと勘違いして、助けを求めてやってきたのですが、そこにいたのが鬼だったので驚いてしまいました。

本当は心優しい鬼は、人間に会えたことに喜び、どうしたら一緒に暮らせるのか尋ねますが、鬼が怖くてたまらない人間たちは「鬼が島を引っ張ってくれば、一緒に暮らせるかもしれない」と告げるのでした……。

 

島ひきおに (絵本・日本むかし話)

山下 明生
偕成社

 

本書に登場するのは、とても素直で優しい鬼。ようやくひとりぼっちから抜け出せると思い、大きな島を引いてあちこちの村をめぐるのですが、やはり人間にとって鬼は鬼。恐ろしい怪物に対する恐怖心は拭うことができません。

生きる世界が違うものたちが手を取りあうことの難しさを描いた作品です。物語自体は、作者の山下明生が幼い頃に育った島での経験をもとに描かれたそう。

切なくて不条理なストーリーに、子どもたちは何を思うのでしょうか。ぜひ鬼の気持ちと人間の気持ち、双方から考えてみたいものです。

 

山下明生がかえるくんと少年の心の交流を描いた絵本『てがみをください』

 

「ぼく」の家のポストに住み着いているかえるくん。ポストには毎日手紙が届きます。

しかしそのお手紙はかえるくん宛てのものではありません。そのうち自分に向けた手紙が来ると待ち続けるかえるくんですが、一体誰からの手紙をそんなに待ちわびているのでしょうか。

 

著者
山下 明生
出版日
1976-12-01

 

本書で印象に残るのは、かえるくんの健気な姿です。どうしても手紙が欲しい彼は、葉っぱに「てがみをください」と書き、ポストに入れることにしました。

物語を読んでいくと、かえるくんが誰からの手紙を待っていたのか気付きます。単純なハッピーエンドではなく、少し切なくなってしまうかもしれませんが、「ぼく」とかえるくんの心の交流にあたたかな気持ちにもなれる作品です。

 

小さくて大きな大冒険を描いた絵本『ちょっとそこまでぱんかいに』

 

最近、自転車の補助輪がはずれたわたくん。自転車に乗るのが楽しくてたまりません。

そんな彼は、ある日お母さんからパンを買ってくるよう頼まれました。いつものように楽しく自転車をこぎはじめます。

しかし「ちょっとそこまで」のはずのおつかいが、一体どうなることやら……。
 

 

著者
山下 明生
出版日

 

自転車で自由に外に出かけられるようになったわたくんの、ワクワクする気持ちが伝わってくる一冊。

イラストの書き込みがとても細かく、ページをめくりながらわたくんがどこにいるのか探すのも楽しいでしょう。子どもが大好きな電車や車などもリアルな筆致で描かれているので、興味深く読み進めることができるはずです。

予想外のことがたくさん起こる小さな大冒険。どこまで行ったのか、ぜひ最後まで見届けてください。

 

山下明生の人気作「ねずみ」シリーズ『ねずみのでんしゃ』

 

明日からはじまる「ちゅうがっこう」。でもねずみの7つ子たちは、行きたくない様子です。

お母さんはみんなにがっこうに行ってもらうために、あるアイデアを思いつきました。一体どんな作戦なんでしょうか。

 

著者
山下 明生
出版日
1982-10-01

 

山下明生は「ねずみ」シリーズという、ねずみの子どもたちを主人公にした絵本を4作発表しています。この『ねずみのでんしゃ』もそのうちの一冊。かわいらしくて仲良しな兄弟たちが、生き生きと描かれています。

小さなねずみたちの目線から描かれたダイナミックな世界に、惹き込まれること間違いなし。幼稚園や小学校への入学を前に、不安な気持ちを抱いている読者の子どもたちを勇気付けてくれるはずです。

学校に行きたくないと渋るねずみの子どもたちを、お母さんは決して叱ったり無理やり連れていったりはしません。みんなが楽しく行けるよう、工夫をするのです。親の立場から読んでも学びを得られる一冊。ぜひ一緒に読んでみてください。

 

山下明生が少年の心を描く『まつげの海のひこうせん』

 

友達とけんかをして負けてしまい、くやしい気持ちでいっぱいの「ぼく」。

そんな「ぼく」のくやし涙がこぼれたとき、まつげの向こう側に広がる空想の世界が広がります。その世界のなかで、けんかしたあいつをやっつける「ぼく」。そこで、相手を気遣うことの大切さや周りの友達が心配してくれる優しさに気付くのです。

 

著者
山下 明生
出版日
1983-01-01

 

男の子の心象心理を印象的に描いた作品です。

成長とともに、家から学校へと世界を広げていく子どもたち。多くの人と関わることになり、友達との関係に悩むこともきっとあるでしょう。時にはけんかをすることもあるはずです。

まだ幼い時は、くやしい気持ちや怒りの気持ちが抑えきれなくなることも多いですが、本書では喧嘩をした後の男の子の心の移り変わりが描かれ、気持ちの切り替え方を学ぶことができます。友達の大切さも教えてくれる一冊です。

 

山下明生が翻訳を手が得る「バーバパパ」シリーズもおすすめ『バーバパパたびにでる』

 

世界中で人気のおばけの家族を描いた絵本「バーバパパ」シリーズの一冊です。山下明生は、日本で発売されているシリーズの翻訳を手掛けています。

優しいおばけのバーバパパは人気者ですが、そんな彼にも欲しいものがありました。

それは、家族です。そこで、バーバママになってくれる人を探す旅に出ることに。さて、家族とめぐりあうことができるのでしょうか。

 

著者
["A・チゾン", "T・テイラー", "辻村 益朗"]
出版日
1975-09-09

 

バーバママはいわばバーバパパの「運命の人」。その人を探す旅に出るというストーリーはとてもロマンチックです。ここからあの賑やかな家族の物語が始まると思うと、大人も子どももワクワクしてしまうでしょう。

ニューヨークやロンドン、インド、はては宇宙まで行って、相手を探すバーバパパ。最後には大家族となります。

愛らしいイラストと子どもでも理解しやすいストーリーが魅力の一冊。ぜひ読んでみてください。

 

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