文芸

SFミステリー作家・山田正紀のおすすめ小説5選

更新:2016.11.28 作成:2016.11.28

天才とも評されたSF作家時代を経て、現在はミステリー作品を執筆する山田正紀。意欲的でスピーディな展開の作品が多い作家です。今回は、山田正紀の作品のおすすめを5作ご紹介します。

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神を狩り、鬼神を生んだ作家、山田正紀。

山田は、1950年に愛知県名古屋市で生まれます。

明治大学政治経済学部を卒業。海外放浪を経て、同人誌『宇宙塵』での作品発表をしていく中で、編集人の柴野拓美経由で『SFマガジン』に『神狩り』が掲載され、作家デビューを果たします。同誌で『流氷民族』を連載し、新人SF作家としての地位を固めました。

かんべむさし、堀晃などと同様、星新一、小松左京、筒井康隆たちの日本SF第一世代に続く、第二世代と呼ばれますが、のちに冒険小説、ミステリーなどにもジャンルを広げています。特にミステリー界で「新本格」が確立しはじめると、ミステリー作品の発表が増えるようになりました。

デビュー作!山田正紀『神狩り』

星雲賞日本短編部門受賞作。山田のデビュー作ということもあり荒削りですが、正統派SFと伝奇性を組み合わせた意欲作です。

神戸市で遺跡調査中の若き天才情報工学者・島津圭助は、花崗岩石室内壁に刻まれた文字を発見します。それは13の関係代名詞と、2つの論理記号のみの文字でした。圭助は文字の解明に没頭。やがてその構造が人間には理解不能なものであることを、突き止めます――この言語を操るものが神なのだとしたら、その意志とはなんなのか?
著者
山田 正紀
出版日
2010-04-05

本作は「語りえぬことについては、沈黙しなくてはならない」という、哲学者・ヴィトゲンシュタインの引用から始まります。関係代名詞が13個も複合する古代文字の言語特性から、論理を超越した『神』の存在に気づき、そこにある悪意を察した圭助が、人類の未来をかけた壮大な戦いに巻き込まれていく姿を描きます。

神の捉え方にびっくりしてしまうかもしれませんが、読んで損はありません!

日本全土が舞台。山田正紀『謀殺のチェス・ゲーム』

主人公は、北海道で広域暴力団菊地組組長・菊地大三に向かって銃の引き金を引き、組に追われることになった川原敬。彼は恋人の如月弓子とともに、如月のふるさとである沖縄へ逃れます。
著者
山田 正紀
出版日
2014-10-15

同じ頃、戦略ゲームでの戦争模擬実験データを集めていた、新戦略専門家・宗像旦一佐。彼は、北海道の千歳へ向かえという指令を受けて、緒方陸将補と宗像の属する愛桜会が動き出したことを察し、レンジャー部隊教官・立花泰を呼び寄せました。

北海道の沖合いでは、自衛隊の最新式対潜哨戒機PS-8が消息を絶っており……。

自衛隊の最新鋭哨戒機を巡り、2人の戦略専門家が展開する頭脳戦。ヤクザから逃げる若い男女や自衛隊内部の敵対勢力や、天候など予想外のできごとに左右され、状況が変化していきます。その様子が北海道から沖縄までという、日本を縦断する大規模な鬼ごっこ――チェス・ゲームにたとえて表現されているのです。

リアリティよりも誇張されたキャラクターやスピーディな展開を重視し、息もつかせません。ハリウッド映画のような印象を与えます。登場人物も専門用語も多いですが、難しく書かれてはいません。ぜひ気軽に手に取ってみてください。

死闘に巻き込まれた、商社マン。山田正紀『火神(アグニ)を盗め』

中国の国境近くに造られたインドの最新鋭原子力発電所・アグニに、極右派のCIA破壊工作員たちが爆弾を仕掛けます。それを知った日本商社のセールス・エンジニア・工藤篤は、生命の危機にさらされます。工藤は身を守るため、社を巻き込んで爆弾の撤作戦を決行しようとしますが、参加者は1人を除き、出世の望みを絶たれた落ちこぼれサラリーマンたち……。
著者
山田 正紀
出版日

平凡な商社マンが闘う相手は、CIA特殊グループと中国情報部と「プロ」ばかり。すぐに追い詰められる工藤ですが、「スパイはカスだ、カスが真っ当に生きている人間に勝てるわけがない」と言い放ち、果敢に立ち向かっていきます。

落語を武器にするシーンも登場しますが、コメディやギャグではありません。真面目でシリアスな作品です。必死に働くすべての人に送りたい、人生を応援してくれるような感動的な1冊。

ドラマは、第二次世界大戦前夜から。山田正紀『機神兵団』

歴史改変SF小説に分類されるであろう本作。第二次世界大戦前夜、戦争の暗雲が立ち込める中、突如としてもたらされた未知のテクノロジーから始まる歴史が描かれます。実際の史実に、ドラマティックなエピソードやモチーフが展開されていく点が魅力的です。
著者
山田 正紀
出版日

1937年8月13日、上海。日本軍上海陸戦隊は謎の敵・エイリアンから襲撃され、かろうじて撃退します。エイリアンのロボット兵士の残骸から、プログラムを自己増殖できるユニット・モジュールが発見されます。このテクノロジーによって、人類は巨大ロボット兵器「機神」の開発に成功します。

堅苦しくて難しいSFというよりは、アニメ化や漫画化された経緯を踏まえても、アニメやマンガに近い世界観をもっている本作。10巻ありますが、読み始めたらあっという間です。

違法ギリギリの捜査?山田正紀『おとり捜査官』

推理小説シリーズ。各巻のタイトルには、触覚、視覚、聴覚、嗅覚、味覚と振られていることから、「五感推理シリーズ」という別名も持っています。
著者
山田 正紀
出版日
2009-03-06
発見された、女性3人の絞殺死体。彼女たちは皆、ロングヘアーで細い体つき、ミニスカート、そしてピアスを身につけています。そのうち2人はスカートを剥ぎ取られ、あとの1人は髪の毛を鋭利な刃物で切られた無残な姿でした。

本事件「山手線連続通り魔殺人事件」を追うは、警視庁・科学捜査研究所特別被害者部の捜査官である北見志穂。彼女は被害者たちと似た扮装をし、有力な被疑者たちの前へ出るという違法ギリギリのおとり捜査を強行し……。

あちこちに散らされた伏線が少しずつまとまる心地よさと、そこから生じるさらに大きな仕掛けに驚き、楽しめます。テンポも良く、とても読みやすい1作です。

作品にいくつもの仕掛けをし、読者を楽しませる山田正紀。SFもミステリーも傑作ばかりです。張り巡らされた伏線がラストシーンに向けて収束していく巧みな流れを、ぜひ楽しんでください。