0歳の赤ちゃんのための絵本『もいもい』。赤ちゃんが好きな要素を研究して作られ、読み聞かせると泣き止むと話題になっています。一体どんな秘密が隠されているのでしょうか。この記事では研究の内容や効果とともに、シリーズの他の作品の魅力も紹介していきます。
丸みを帯びた不思議なイラストが表紙に描かれている絵本『もいもい』。どん絵本なんだろうとページを開いてみると、空にこの不思議な物体が浮かんでいたり、赤や青の色鮮やかな空間に不思議な物体と丸い目のようなものが浮かんでいたり……。
文章は「もい」「もーい」「もいもい?」とあるばかり。
この丸いものが何なのか、「もいもい」とはどういう意味なのか、説明は一切ありません。
大人が読んでもなかなか理解ができないですが、本書の対象年齢は「0歳の赤ちゃん」。そして実は、「赤ちゃんが泣き止む魔法の絵本」として知られているのです。
皆さんは、お子さんのために絵本を選ぶ時、どのような基準で作品を選ぶでしょうか。いくつかの簡単な言葉がわかるようになれば、イラストがかわいいものにしよう、わかりやすいストーリーのものにしようなど、選択肢が思い浮かぶでしょう。
でも、まだ言葉を話すことも理解することもできない赤ちゃんに絵本を選ぶとなると、意外と難しいのです。
『もいもい』は、赤ちゃんの好きな色や形、語感を研究して作られた絵本だそう。大人には理解がしづらいですが、本書を読み聞かせると、赤ちゃんの視線がくぎ付けになってしまうのです。
本書の監修をしたのは、「東京大学赤ちゃんラボ」。「赤ちゃん学」の研究を20年以上している開一夫教授が運営しています。赤ちゃん学とは、赤ちゃんの発達メカニズムなどを解明する研究のことです。
『もいもい』の制作にあたり、赤ちゃんが本当に楽しめる絵本を作ろうと「赤ちゃんの好きなもの」を研究しました。
言葉を話さない赤ちゃんですが、興味のあるものをじっと見つめることがあります。「赤ちゃんラボ」はいくつかのパターンのイラストを用意し、赤ちゃんがもっとも反応を示すものを採用したそうです。
「赤ちゃんは明るい色が好き」「赤ちゃんは丸い形が好き」というのはよく聞きますが、大人が思うほど彼らの思考は単純ではありません。だからこそ、実際に赤ちゃんが審査員となってイラストを選んだ本作は説得力があるのです。
ちなみに「もいもい」という言葉は、フィンランド語の挨拶だそう。赤ちゃんは言葉のくり返しを好むこと、比較的発音のしやすい「ま行」の音を使っていること、響きがかわいいことから選ばれました。
大人は何かを選ぶ時に、そこに意味を求めがちです。動物や花など実在するものが登場し、明確なストーリーのある絵本を読んであげたいと思うかもしれません。しかし『もいもい』は大人の思考を排除して、赤ちゃんの本当に求めている要素を詰め込んだ絵本だといえるでしょう。
赤ちゃんの好みを徹底的に研究して誕生した『もいもい』。本書を読み聞かせれば、泣いている赤ちゃんも泣き止む魔法の絵本として知られています。
実際に本書を読み聞かせに使った親御さんの感想を見てみると、たくさんの驚きの声があがっています。
たとえば、「大人が見るとまったくわからないけれど、赤ちゃんたちは興味を持ってじっと見ている」「さっきまで泣いていた子が泣きやんでしまった」など。電車やバスなどの公共施設を利用する際などに重宝している方も多いそう。
また親御さんだけでなく、保育士からも高い人気を集めています。
丸みを帯びた不思議な図形がふわふわと浮く大人には理解しづらい世界。「もいもい」という言葉がまるで呪文のように、本当に赤ちゃんの心をとらえてしまいます。その効果は絶大だといえるでしょう。
- 著者
- ロロン
- 出版日
- 2017-07-13
『もいもい』は、『うるしー』『モイモイとキーリー』とともに全3冊のシリーズです。
本書は、青いクマのうるしーを案内人にして物語が展開していきます。「なにがでるかな?うるうるうるしー!」と唱えると、帽子の中からバナナやぞうさん、三輪車など、子どもたちが大好きなものが出てくる構成です。
『もいもい』よりも意味をもったイラストなので、言葉を覚え始めたころに読むのがおすすめ。かわいいイラストとともに親子で楽しんでみてください。
- 著者
- みうらし~まる
- 出版日
- 2017-07-13
「ブーバとキキ」という心理学の実験があります。ふわふわした丸い曲線をもった図形と、トゲトゲした直線をもった図形を見せて、「どちらがブーバでどちらがキキか」と問いかけるもの。95%以上の人は、曲線をブーバ、直線をキキと答えるそうです。
つまり私たち人間には、「共通の感覚」があるということ。『モイモイとキーリー』も、「ブーバとキキ」に似た実験をくり返して作られました。
描かれているのは、やわらかな色彩のイラストと、「チクチク」「ボルンボルン」などの擬音。目で見ても、音を聞いても楽しめる作品になっています。
「モイモイ」と「キーリー」と聞いて、どんなものを思い浮かべるでしょうか。形から音を連想することで、身の回りにあるものの見方も少し変わってくるかもしれません。