『地球の放課後』の魅力ネタバレ考察!人類全滅、4人で暮らす少年たちの日常

更新:2021.1.12 作成:2019.5.9

「チャンピオンRED」で連載されていた、吉富昭仁の作品。謎の存在「ファントム」によって地球上の人類はほぼ消失し、生き残った4人の少年少女。そんななかで彼らが逞しく生きるさまを描き、終末的世界観を表現したポストアポカリプスSFとなっています。 終末後なのに奇妙に暢気で、緩やかな日常感のある本作『地球の放課後』。その魅力を考察いたします。

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『地球の放課後』あらすじ:平和な終末後世界!

 

体全体が漆黒の宇宙のような謎の生命体「ファントム」が地球に出現してから、約2年後。人類はファントムに消され、地上に残った者はほとんどいませんでした。

 

著者
吉富 昭仁
出版日

 

そんななか無人となった東京の住宅地で、生き残った少年少女が共同生活を送っていました。リーダー格で高校2年生の唯一の男子・川村正史と、高校2年生の早苗、高校3年生の八重子、そして小学生の杏南(あんな)の4人です。彼らはもともと別の場所に住んでいまいたが、避難の途中で偶然合流しました。
 

特にこの生活に絶望もせず、誰もいなくなった街で自活し、人類滅亡後とは思えないほど緩やかな毎日を過ごしていきます。

誰もいない地球は…
まるで永遠に続く放課後のようだった
(『地球の放課後』1巻より引用)

 

『地球の放課後』の魅力を考察:不思議と引き込まれる、不思議な世界観

『地球の放課後』の魅力を考察:不思議と引き込まれる、不思議な世界観
出典:『地球の放課後』1巻

 

『地球の放課後』は、なんらかの理由で文明が崩壊した「ポストアポカリプス(終末後世界)」と呼ばれるジャンルのSF漫画です。作品によって、ゾンビや感染病の蔓延、最終戦争の荒廃など、崩壊の理由はさまざま。

本作の場合はファントムという未知の侵略者が関わっているのですが、その行動がかなり不可解です。建造物を傷付けることは決してなく、人間だけを狙って突然現れ、人体を細切れの標本のようにして消してしまうのでした。時には人間に擬態し、誘き寄せることもします。

 

出典:『地球の放課後』1巻

しかし、そのファントムの活動も、1年後が舞台となる作中においては活発ではありません。人類がほぼいなくなったためと考えられます。時々なんらかの思惑で出現するものの、意思疎通不可能なので、正体は不明のまま。

こうした理由から、回想を除けば、作中の登場人物は正史達4人だけなのです。

『地球の放課後』の魅力を考察:地球でのびのびと過ごすキャラたち

『地球の放課後』の魅力を考察:地球でのびのびと過ごすキャラたち
出典:『地球の放課後』1巻

主人公は、川村正史です。たまに他の女の子が語り手になることもありますが、基本的に物語は彼の視点で語られていきます。一見すると理知的で落ち着いた普通の少年ですが、数学の超難問「コティヤール予想」(架空の問題)を解き明かした天才です。

しかも手先が器用なため、ちょっとした機械の保守点検や操作、野菜の栽培までなんでもこなしてしまいます。作中に流れる平穏さは、彼が食料を確保していることも理由の1つといえるでしょう。

出典:『地球の放課後』1巻

ヒロインの早苗は、黒髪眼鏡の内気な女子。正史に好意を抱いていますが、彼の負担にならないよう、なるべく抑えて作業を手伝うようにしています。

もう1人のヒロインが、八重子です。活発なポニーテールの少女で、体型に関しては早苗にコンプレックスを抱いています。正史に対しては、地球最後の男だから関係を持ってもいいとうそぶきますが、本音では惚れている様子。

出典:『地球の放課後』1巻

子供の杏南は、ヒロインというよりマスコット、もしくはペット的存在。いまいち物心がついていないためか、突飛な言動と子供じみた行動をくり返すムードメーカーです。

物語の後半では、彼らが偶然生き残り、偶然出会ったのではないことが明かされます。

『地球の放課後』の魅力を考察:終末なのに、ほのぼのした日常

『地球の放課後』の魅力を考察:終末なのに、ほのぼのした日常
出典:『地球の放課後』1巻

 

『地球の放課後』本編では、ファントム襲撃直後のような混乱はありません。人間だけがぽっかり消えた街で、4人が生活していきます。そこには依然としてファントムの脅威はあるのですが、ほとんど遭遇することもないので、奇妙なほどおだやかな日々が描かれていくのです。

謎の存在によって人類消滅。避難した人間が次々と目の前で消され、おだやかとは言いつつも、未来が何もわからない不安定な世界です。

しかし、ハードSF小説を思わせる重い設定がベースにあるものの、4人の共同生活はほとんどラブコメ状態です。

紳士的な正史へ、八重子が奥手な早苗を焚き付けたり、杏南のせいでその八重子が恥ずかしい目にあったり。あるいは正史を玩具にして、無人のファッションショップで女装させて楽しんだりもします。

彼らの日常からは、絶望感がほとんど感じられません。終末なのにほのぼのとしている、そのチグハグ感も本作の魅力でしょう。

 

『地球の放課後』のおすすめエピソード:とある1日

 

ここからは本作のおすすめのエピソードをご紹介します。まずは1巻のなんてことない1日の様子から。

ファントムが地球に現れて2年、そして地上から人間が消失して1年後……。正史、早苗、八重子、杏南の4人は、正史の自宅に住んでいました。

正史は近場に野菜の農園を作り、鶏を飼って自給自足の体制を整え、規則正しく生活しています。もはや誰もいない街では誰に気兼ねすることもないのですが、いつか消えた人々が帰ってくると思っているのです。

著者
吉富 昭仁
出版日

 

一方、早苗はともかく、八重子と杏南は人類が消えた異常事態を、長く続く夏休み程度にしか考えていませんでした。夏場で屋内では暑いからと、道路に大の字になるなど羽根を伸ばし放題。

4人の日常には、とてもポストアポカリプスの悲愴感はありません。彼らが思考停止してるだけかもしれませんが、事態を受け止めたうえで非常に前向きに、逆に楽しんでやろうくらいのしたたかさが感じられるのです。

街の施設が植物に侵食されつつある辺りに文明の崩壊が垣間見えますが、作中には解放感ある雰囲気が感じ取れて、読んでいると少し羨ましくも思えてくるでしょう。

『地球の放課後』のおすすめエピソード:時を越える正史

 

正史には、密かに想いを寄せる少女がいました。といっても、名前も性格もほとんど知りません。2年前、彼は毎朝の登校途中ですれ違う、鳳翔女子学園の名も知らぬ女子生徒と、いつしか会話する関係になっていたのです。

ファントムが出現し始めたある日、2人で放課後に会う約束をしていたのですが、2度と彼女とは会えませんでした。

 

著者
吉富 昭仁
出版日
2011-09-20

 

正史のなかで、その出来事がずっと引っかかっていたのですが……。ふとしたことから、彼は2年前の約束の日にタイムスリップしてしまいます。原理も理由も不明ながら、その事実に気付いた彼は、名前も知らない彼女を救うために行動し始めるのです。

物語が急激に動き、謎が深まったエピソード。ファントムが人間を消し去る理由と、正史が過去に飛んだことに、どのような因果関係があるのでしょうか。そして正史は、この女子生徒を救えるのでしょうか。ここから彼や早苗が生き残った理由が、少しずつ解明されていきます。

その壮大な結末には、読んでいて驚くこと間違いありません。すべての謎が解明されるラストは、ぜひご自身の目でお確かめください。

 

いかがでしたか?本作は第一印象に反して、かなり奥深いSFです。伏線がちりばめられているので、いろいろ考察しながら読むのが面白いでしょう。


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