小説『西の魔女が死んだ』の伝えたいことをネタバレ解説!泣ける名言も紹介

更新:2019.4.12 作成:2019.4.12

不登校になったまいが、おばあちゃんの元で過ごした日々を綴った物語。彼女の成長を応援したり、おばあちゃんの言葉に心が救われるような気持ちになる、そんな作品です。1994年に出版され、今でも幅広い世代に読まれる本作は、読書感想文におススメの1冊として推薦されるなど、大人も子供も楽しむことができます。 この記事では、『西の魔女が死んだ』のあらすじや、まいの成長について紹介していきます。

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原作小説『西の魔女が死んだ』のあらすじや作者をネタバレ解説【映画化作品】

まいはある日、学校から帰る準備をするよう先生に言われます。祖母が倒れたことを知らされ、急いで彼女の元へ向かうこととなるのでした。母が運転する車の中で、まいは祖母のことを思い出します。   
 

2年前、学校に行かないと言ったことをきっかけに、約1ヶ月あまりおばあちゃんのもとで過ごすことになったまい。 ホームシックに襲われながらも、優しい祖母と過ごし、自然の中で心穏やかな生活を送るようになります。

おばあちゃんの元を去る数日前に、あることをきっかけに、2人の間に小さなわだかまりができてしまいます。 おばあちゃんとの別れの日、「おばあちゃん、大好き」という言葉を言えないまま実家に帰ることになりました。
 

果たして、2人は仲直りできるのでしょうか。

タイトルにも使われている「西の魔女」とは、おばあちゃんのことを指します。おばあちゃんには、少し不思議な魅力があり、まいと、彼女の母親がこっそりつけたあだ名です。

見所を紹介しつつ、タイトルの意味についても考察したいと思います。

著者
梨木 香歩
出版日
2001-08-01

作者・梨木香歩は同志社大学を卒業した後、イギリスへと留学し児童文学を学びました。その後執筆した本作は、日本児童文学者協会新人賞、小学館文学賞など、数々の賞を受賞し小・中学生におススメの本として、国語の教科書や読書感想文用の本として紹介されています。
 

また、小学館より同タイトルの絵本が1996年に発売されました。内容は文庫版と変わりなく、対象年齢も文庫版と同じく小学6年生以上とされています。文章が苦手な方は、絵本から読むのもよいかもしれません。

そして、2008年には映画化もされ、西の魔女ことおばあちゃん役をサチ・パーカー、まい役を高橋真悠が務め、りょう、大森南朋、木村祐一、高橋克実などが脇を固めました。主題歌は手嶌葵の「虹」が使われています。

映画が撮影されたのは、山梨県北杜市にある清里高原。すでに施設の一般公開は終了となっていますが、おばあちゃんの家が映画のために作られ、ロケ地としても注目を浴びました。

見所1:愛を感じる登場人物たち

本作の心優しい人物たちを紹介していきましょう。

まい

中学3年生。中学校に入学して1ヶ月経たないうちに不登校になり、お母さんの提案で祖母のもとでしばらく暮らし、魔女修行をすることになる。

おばあちゃん

自然豊かな場所で暮らし、不登校になったまいに魔女修行の指導をする。言葉遣いも丁寧で温和な性格だが、叱る時はきちんと叱り、はっきりと物を言う一面もある。

ママ

おばあちゃんと仲が悪いわけではないが、考え方は根本的に違っている。日本人とイギリス人のハーフで、幼いときにそれがきっかけで学校では嫌な思いをすることもあった。

パパ

誠実な人間だが、「死んだら、最後。もう何も分からなくなって自分というものもなくなる。でも、まいが死んでも、やっぱり朝になったら太陽が出て、皆は普通の生活を続ける」と発言し、まいを苦しめることになる。

ゲンジ

おばあちゃんの近所に住むおじさん。鶏小屋を直してくれるなど優しい性格だが、少し乱暴なところもあり、まいには嫌悪感を抱かれる。まいとおばあちゃんがケンカする原因を作った人物。

見所2:西の魔女から教わる魔女修行

まいは、おばあちゃんから「ずっとここにいてもいい」と言われますが、数日後、彼女は「それはダメだ」と気づきます。おばあちゃんは、自分を変えたいまいの気持ちを感じ取り、彼女に魔女修行を受けさせることにしました。

魔女修行というのは、魔法が使えるようになるというものではなく、「自分で決めたことをやり遂げる意志の力」のトレーニング。

おばあちゃんはまず、魔女修行の基本は早寝早起きだと教え、起きる時間と寝る時間を彼女自身に決めさせるのです。そして食事をしっかりとり、よく運動すること、午後は頭を使う時間にすることが重要だと教え、規則正しい生活で精神を鍛えることができるといいます。

運動が苦手だといえば、掃除や洗濯を行いながらの家事エクササイズを提案。彼女が困っているときは一緒に考えてくれますが、何をするかは彼女が決めなければいけないと教えます。

以前は夜遅くまで起きていることが多く、眠れそうにないときは、「ナイ、ナイ、スゥイーティー」と呪文のような言葉をかけにきてくれたり、決めた時間に起きられない時は起こしにきてくれたりするなど、さりげないフォローもあり、まいの生活は規則的になっていきます。

それから家事全般もまいに教え、自分で決めた家事エクササイズのフォローをしてくれました。

こうした魔女修行を経て、彼女は中学3年生になっても継続できるようになります。心身ともに成長していくまいの姿は、この作品の見どころの1つです。

遅くまで起きているのも楽しいですが、いつもより早く起きれたときは1日が長くなった気がして、なんだか嬉しくなってしまいますよね。この魔女修行は、大人になった今でも試してみる価値があるのかもしれません。

見所3:西の魔女と暮らした、まいの変化

先ほども書いたように、不登校になったまいの生活は不規則なものでしたが、おばあちゃんのおかげでちょっとずつまいの生活に変化が現れました。

まいがクラスになじめなかったのは、興味のない話に一生懸命相槌をうったり、一緒にトイレに行ったりしないといけないような女子独特の付き合いに嫌気がさしたから。そして、そのような付き合いを一切やらなくなったら、イジメられてしまったのです。
 

しかし魔女修行をすることで、まいの心にも変化がでてきます。

そんな折にパパの仕事の都合もあり、転校することを提案されます。しかし彼女は、「それでは根本的な問題解決にならない」と素直に喜べずにいました。一匹狼でいる強さを持つのか、群れで生きるのかを決めることができず、学校に行かないという選択肢を選んでしまったため、不登校の原因は自分にもあると話すのでした。

自分で決めることの大切さを教わってきたまいは、迷いつつも転校することを選びました。自分で決めたことだから、転校する学校を下見したいと前向きな姿を見せます。

まいは最初、問題から逃げようとする消極的な姿勢がみられました。しかしおばあちゃんと過ごすことで、彼女は問題に向き合おうとしたり、新たな場所で頑張ってみようとどんどん成長していくのです。

おばあちゃんは哲学にも似た、新しい考え方をたくさん教えてくれます。今生きていくことが辛いと思っている人を励ましてくれる本作。変化の様子は、ぜひ実際に手にとって確認してみてくださいね。

見所4:西の魔女の名言3選!

ここでは、本作に出てくる名言を3つ紹介します。

 

「アイ・ノウ」
(『西の魔女が死んだ』より引用)

おばあちゃんの口癖です。まいが「おばあちゃん、大好き」というと、「アイ・ノウ」と返事をします。この言葉は「知っていますよ」という意味だけでなく、「まいのことをちゃんと分かっていますよ」「どんなことがあっても、まいの味方ですよ」という意味も込められているのでしょう。愛情が溢れる言葉です。

 

「自分が楽に生きられる場所を求めたからといって、
後ろめたく思う必要はありませんよ。
サボテンは水の中に生える必要はないし、
蓮の花は空中では咲かない。
シロクマがハワイより北極で生きる方を選んだからといって、
だれがシロクマを責めますか。」
(『西の魔女が死んだ』より引用)

いじめられたことを打ち明けたまいに話した言葉です。日本人は逃げることをよしとしない風潮がありますよね。そんな環境で生活している人にとって、勇気を与えてくれるような、心を救ってくれる名言となっています。

 

「身体は生まれてから死ぬまでのお付き合いですけれど、
魂のほうはもっと長い旅を続けなければなりません。(中略)
歳をとって使い古した身体から離れた後も、
まだ魂は旅を続けなければなりません。
死ぬということはずっと身体に縛られていた魂が、
身体から離れて自由になることだと、おばあちゃんは思っています。
きっとどんなにか楽になれてうれしいんじゃないかしら」
(『西の魔女が死んだ』より引用)

おばあちゃんはまいの「死んだらどうなるの?」という問いに対しての答えです。死を恐れていたまいにとって、救いともなった言葉です。死に対する考え方は人それぞれですが、死ぬことをそんなに恐れなくていいものだと思える言葉になっています。

このように、『西の魔女が死んだ』には経験豊かなおばあちゃんの数々の名言が散りばめられています。ご紹介した他にも、幸せに生きるヒント、心に残る言葉が見つかるかもしれません。ぜひ、探してみてください。

見所5:西の魔女と喧嘩!? 2人の結末は……?【ネタバレ注意】

自然豊かな場所で、大好きなおばあちゃんと楽しく生活を送る彼女には、1つだけ嫌いなものがあります。それは、体格が大きくぶっきらぼうな、隣に住んでいるゲンジという男性。

ある日、まいがさまざまな花を植え大事にしていた土地を、ゲンジが荒らしているのを目撃し彼女は怒ります。おばあちゃんは彼女を諭しますが、感情がたかぶっているまいは「汚らわしいやつ」「死んでしまったらいいのに」と言ってしまいます。その発言を聞いたおばあちゃんは、思わず彼女の頬を叩いてしまいました。

そのことで、まいは「おばあちゃんは自分よりもゲンジの方が大事なんだ」と考えるように。翌日以降、いつもどおりの態度で接してくれるおばあちゃんですが、まいは素直になることができず、ついにおばあちゃんのもとを去る日がきてしまいます。いつものように「おばあちゃん、大好き」といえずに別れることになりました。

魔女修行で学んだことをしっかり継続しつつ、2年という月日を過ごしたまいは、転校先で友達もでき、モヤモヤした気持ちを持ちながらも順調に過ごしていました。そんなとき、「祖母が倒れた」という知らせを受けます。

著者
梨木 香歩
出版日
2001-08-01

おばあちゃんの葬式で憔悴しきっているゲンジと再会したまい。ゲンジは、おばあちゃんからのメッセージを指さします。そこに書かれたメッセージとは……。

生前、おばあちゃんは「魂は長い旅を続ける」と教えてくれました。その言葉が、後悔していた彼女に希望を与えてくれることになります。暖かい気持ちで読み終わることができますので、ぜひ実際に読んで確認してくださいね。

本作のタイトルは、作品のテーマ「死」を表しているのではないでしょうか。そして「後悔の少ない人生を送るには、自分にも他人にも素直に生きていくことが大切だ」ということを伝えてくれるように感じる結末です。

この作品を読むと、身近な人に「大好き」と伝えたくなるかもしれません。文庫版にはまいの「その後」の物語として「渡りの一日」が収録されています。こちらもあわせて読んでみてはいかがでしょう。