これといって悩んでいるわけではないけど、読むと役に立つかもしれない本

自分以外の人が何を考えているのか、昔からそばにいる家族ですら時々よく分からなくなるものです。私がこれから紹介する本を読むことによって、他人の考えが分かるようになったり、抱えている悩みがすぐに解消された！なんてことはないと思うのですが、「こんな対人関係のケースもあるみたいですよ！」という気持ちで選んだ3冊を気ままに紹介させてください。

皆さんにとって人と関わる上で本当に大切にしたいことは何なのか、少しでもそれを発掘するお役に立てればと思います。

みんなの秘密

みんなの秘密 (講談社文庫)

著者

林 真理子

出版日

2001-01-17

秘密をテーマに書かれた短編小説集です。漫画家のいくえみ綾さんによる、お皿を差し出すように持っている女性のイラストが印象的な表紙でした。穏やかそうに見える女性のイラストの下に書かれた、「このたった5人しかいないテーブルに、関係を持ったカップルが4組もいる。」という、なぞなぞのような一文に脳天を突き刺されました。

その上《秘密》というタイトルなのですから、何やら心穏やかではない……。

人は誰でも他人に言えない秘密を抱えていたり、その秘密を誰かと共有していたりするものです。仲の良さそうな友人同士や、円満に見える夫婦や恋人の間にも、互いに隠している過去や事実が詰まっていたりする。この本に収められた8つの物語は全てフィクションでありながら、リアルな人間のホラーな部分が絶妙に盛り込まれていると感じました。現実の対人関係に悩んで疲れた時に読んでみると、少しはリフレッシュできるか（？）しれません。

ちなみに、表紙に書かれていた一文は《土曜日の献立》というお話の一節でした。

家族の言い訳

家族の言い訳 (双葉文庫)

著者

森 浩美

出版日

2008-12-10

読み終えた後に著者のことをきちんと調べるまで私は知らなかったのですが、著者は某有名アイドルグループの作詞を多く手掛けている方だということを皆さんはご存知でしょうか？著者が手掛けた歌詞は若者の恋愛模様を歌ったものが多いですが、この本は家族をテーマにした8つの物語が収められた短編小説集です。

「言い訳」という言葉だけではネガティヴなイメージを抱いてしまいそうですが、大切な人、ましてや家族に限っては、どんな言い訳でも聞いてあげたいという気持ちが湧いてきます。

どの主人公も皆一人前の大人だけれど、立場やその時々の状況によっては男として、女として、あるいは娘、息子、母親、父親として、素直になれずにいる。だからこそ家族の間には言い訳が必要なのかもしれません。

たくさんの言い訳を口にすることで、周りの人が背中を押してくれる。お節介かもしれないそのひと押しが主人公を素直にさせてくれる……。そんな心が動かされるエピソードが溢れている1冊です。

裏表紙に書かれた《家族に悩まされ、家族に助けられている。》という一文に、本当にそうだなと、心から思いました。きっと、自分の中にいる子どもな部分とも向き合えるはずです。

おとなになるってどんなこと？

おとなになるってどんなこと？ (ちくまプリマ―新書)

著者

吉本 ばなな

出版日

2015-07-07

最後は自分自身と向き合うような本を選んでしまいましたが、自分自身と向き合うことは対人関係にも繋がることだと思います。著者が“悩み”というよりも“素朴な質問”のような8つの問いかけに答えながら、若者へ向けたメッセージを綴った1冊です。

「おとなになるってどういうこと？」の他に、「普通ってどういうこと？」「年をとるっていいこと？」など、深く考えずには答えられない問いかけがあります。私は「生きることに意味があるの？」という問いかけに対するメッセージの中で出会った、

なにをするために人は生まれてきたのかというと、私は、それぞれが自分を極めるためだと思っています。

の一文に、なるほど！と感心して、心の中で拍手をしました。読んだ瞬間、腑に落ちた何かがあったのです。若者に向けたメッセージだったとしても、かつて若者であった大人の胸にも響く言葉が詰まっている1冊だと思いました。なので、皆さんもこの本を読んで、著者からの言葉をお守りのように心に留めて、もう一歩踏み出して、人との関係を新たに築いたり、あるいは自分自身の内面を密にしていく勇気を得てほしいなと思います。

心も体も大人になった皆さんは8つの問いかけにどのように答えるのでしょう？　気になります！