「ブッカー賞」受賞作のおすすめ5選!「奥のほそ道」や映画化された話題作

更新:2019.3.15

イギリスの権威ある文学賞「ブッカー賞」。1969年から続く歴史があるとともに、世界的にも評価される格式高い賞として知られています。この記事では、歴代受賞作のなかから特におすすめのものを厳選してご紹介します。

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「ブッカー賞」とは。イギリスの権威ある文学賞

 

イギリスのブッカー、マコンネル社が1968年に設立した文学賞「ブッカー賞」。正式名称は「The Man Booker Prize for Fiction」といいます。

当初はフランスの「ゴンクール賞」のようなものをイギリスにも、という提案で「ブッカー・マコンネル賞」という名称でした。その後「マン・ブッカー賞」となり、2019年に「ブッカー賞」に変更されています。

選考の対象となるのは、イギリスで出版された、イギリスおよびアイルランド、アメリカ国籍の作者によって書かれた英語の長編小説。その年に出版されたもっとも優れた作品に与えられ、賞金は50000ポンド(約740万円)です。

選考委員を務めるのは、作家や批評家、詩人、政治家、俳優といった幅広い分野の人たち。そのため、質の高い文学賞として高く評価されています。

2017年に「ノーベル文学賞」を受賞したカズオ・イシグロも受賞しているほか、ドラマ化や映画化をされた作品が多数あります。では「ブッカー賞」の歴代受賞作のなかから、特におすすめの作品をご紹介していきましょう。

ユーモアあふれる「ブッカー賞」受賞作『リンカーンとさまよえる霊魂たち』

 

時は南北戦争中、リンカーン大統領は急死した息子、ウィリーが眠っている墓地を訪れます。そこには自らの死を受け入れきれずに、こちらの世界とあちらの世界の狭間をさまよう霊魂たちがいました。

霊魂の声をもとに、リンカーンという男の本当の姿が紐解かれていきます。

著者
ジョージ・ソーンダーズ
出版日
2018-07-24

 

2017年に「ブッカー賞」を受賞したジョージ・ソーンダーズの作品です。ソーンダーズは1958年生まれで、現代アメリカ文学を代表する作家として評価の高い人物。イギリスの文学賞である「ブッカー賞」を、南北戦争というアメリカ色の強い作品が受賞したことで話題となりました。

リンカーン大統領と息子ウィリーの関係性を、文献を引用するという体裁をとりながら描いた作品。涙を誘う一方で、幽霊たちの語る逸話はユーモアがあり、フィクションとノンフィクションが入り混じる複雑なつくりをしています。

リンカーンの登場に霊魂たちは大慌てで、おのおのの「生」を語りながら、なんとかウィリーを成仏させようと奮闘。セリフが多いのが特徴で、まるで戯曲のようです。奇想天外な設定ながらも、リアリティをもって「生きること」を考えられる作品になっています。

日本を舞台にした戦争小説が「ブッカー賞」を受賞!『奥のほそ道』

 

本書の舞台は、1943年の日本。オーストラリア軍の軍医を務めるドリゴは、太平洋戦争で日本軍の捕虜となりました。タイとビルマを結ぶ「泰緬鉄道」の建設に従事します。
 

その現場は「死の鉄路」と呼ばれるほど過酷で、ドリゴは日本人将校の仕打ちに倒れる、同じく捕虜となったオーストラリア人たちの治療をおこなっていました。

次々と捕虜たちが亡くなっていくなかで、俳句をたしなむ日本人の姿を見たドリゴ。人間の残虐さと美しさの両面を知るのです。

著者
リチャード・フラナガン
出版日
2018-05-26

 

2014年に「ブッカー賞」を受賞した、リチャード・フラナガンの作品です。フラナガンはオーストラリア出身で、2002年に『グールド魚類画帖:十二の魚をめぐる小説』で「英連邦作家賞」を受賞し、一躍有名になりました。

本書は、フラナガンの父親が実際に体験した捕虜生活をもとに、12年の歳月をかけて記されたもの。松尾芭蕉の『おくのほそ道』や、小林一茶の俳句、そして西洋の詩を交えながら物語は進んでいきます。

日本人将校のあまりの残虐さに目を覆いたくなるようなシーンもありますが、本書は単に日本軍を糾弾し、反戦を訴えるものではありません。

戦争という極限の環境のもとで人間が陥る暴力性と狂気、そして戦後の苦悩を丁寧に描いているのです。人間の複雑さや、戦争の多面性を語りあげた珠玉の戦争小説だといえるでしょう。

「死の鉄路」と呼ばれるものの先にある、彼らの「奥のほそ道」とは、一体何なのでしょうか。

映画化もされた「ブッカー賞」受賞作『終わりの感覚』

 

物語は、隠居生活を送る主人公のもとに、1通の手紙が届くところから始まります。差出人は見覚えのない弁護士で、学生時代の友人の母から、当時の友人の日記と500ポンドを託されたとありました。

日記を読みながら過去の記憶をさかのぼっていく主人公。やがて自分の記憶がが都合よく修正されたものであることに気付き、人間の記憶の不確かさと認識の限界に苦悩します。

著者
ジュリアン バーンズ
出版日
2012-12-01

 

2001年に「ブッカー賞」を受賞した、ジュリアン・バーンズの作品です。バーンズは1946年にイギリスで生まれ、オックスフォード大学を卒業、英語辞典の編集者を経て作家になった人物。本書は2017年に「ベロニカとの記憶」というタイトルで映画化されました。

前半では自身の学生時代を追憶し、後半では自殺した友人の過去を探る構成になっています。真実へ影をのばすような巧妙な伏線が張られていて、ミステリーの要素も感じられるでしょう。

主人公の目線で語られる一人称小説で、読み手である私たちは彼の語りを信用しがちですが、人間の記憶は決して正確ではありません。ラストのどんでん返しとともに、真実が襲い掛かってくる作品です。

イギリス宮廷を内から描いた歴史小説『ウルフ・ホール』

 

舞台は16世紀のイギリス宮廷。卑しい出生ながら才覚溢れる男、トマス・クロムウェルは、あの手この手を尽くしてのし上がり、ついには時の国王ヘンリー8世の寵愛を受けるようになりました。

希代の天才政治家と呼ばれたクロムウェルの視点から当時のイギリスを描いた、歴史小説です。

著者
["ヒラリー・マンテル", "Hilary Mantel"]
出版日
2011-07-08

 

2009年に「ブッカー賞」を受賞したヒラリー・マンテルの作品です。ヒラリーは1952年生まれのイギリス人作家で、2012年にも続編の『罪人を召し出せ』で同作を受賞しました。

本書と『罪人を召し出せ』はイギリスでテレビドラマ化され、「ゴールデン・グローブ賞」も受賞。日本でも2017年に放送されています。

息子ができずに悩むヘンリー8世は、王妃と離婚しようとするのですが、教皇はこれに反対。離婚協議は進みません。そんななか、主人子のクロムウェルをはじめアン・ブーリンやトマス・モアらの関わりを骨太に描きます。

歴史上の人物を、ひとりの人間としてよりリアルに感じることができるでしょう。イギリスのテューダー朝ファンの方にもおすすめです。

「ブッカー賞」を受賞した、ノーベル賞作家の代表作『恥辱』

 

主人公は、南アフリカで大学教授をしているデヴィッド・ラウリー。2度の離婚を経験し、それからは売春婦や手近な女性で自身の欲望を発散してきました。しかし女子生徒から告発されたことをきっかけに、転落の一途をたどることとなります。

大学を辞職して娘が暮らす田舎へ行くものの、そこでも批判の視線にさらされ、恥辱に耐える生活を送るのです。

著者
J.M. クッツェー
出版日
2007-07-01

 

1999年に「ブッカー賞」を受賞したJ.M. クッツェーの作品です。クッツェーは1940年生まれ、南アフリカ出身の作家です。1983年に『マイケル・K』で「ブッカー賞」を受賞し、本書で史上初めて2度目の受賞となりました。2003年には「ノーベル文学賞」も受賞しています。

強盗や強姦があふれるポスト・アパルトヘイトの南アフリカ。主人公のデヴィッドは白人です。白人と黒人、男性と女性、知識層と農民、旧弊な価値観と新しい価値観……そんななかで生々しく語られる人間の恥辱とは。ノーベル賞作家の実力を堪能してください。

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