『“隠れビッチ“やってました。』は、ただのモテ漫画じゃなかった【映画化】

更新:2021.11.17

コミックエッセイとして発表された本作の主人公は、ゆるくてポップなイラストに定評のあるイラストレーター・あらいぴろよです。2019年冬には映画が公開されることが決まっており、ますます注目度が高くなっている本作。この記事では、作品のあらすじと魅力をご紹介します。

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漫画『“隠れビッチ“やってました。』が面白い!2019年冬映画化!【あらすじ】

草食系男子やサバサバ系女子など、男女が様々なカテゴリーに分けられている時代。そんなカテゴリーの1つに、「隠れビッチ」というものがあります。

「ビッチ」というと、性に対してオープンで自由、貞操観念がない女性といったネガティブな言葉です。露出の高い恰好をしていたり、自らの性を武器にした言動をするような女性をイメージする人もいるのではないでしょうか。

しかし、「隠れビッチ」はそんな女性像と異なり、見た目は清純派のような恰好をして、男性にモテることを目的とする女性のことです。

著者
あらいぴろよ
出版日
2016-09-15

本作の主人公は、そんな隠れビッチだった作者です。清純派を装い、自分を認めてもらうために男性に媚びを売る……しかし、そんな承認欲求を求めるようになった裏には、DVを繰り返していた父親の存在がありました。

自分で自分を認めることのできない1人の女性が、男性にチヤホヤされるために「隠れビッチ」になり、その経験を経て本当の自分を探していくコミックエッセイです。

作者・あらいぴろよとは

作者であり、主人公でもあるあらいぴろよは、ゆるい画風が特徴のイラストレーターです。漫画を始め、さまざまな女性誌や書籍の挿絵、広告を担当したり、コラムの連載を持つなど、幅広く活動しています。

本作の他に、産後の経験を綴った『ワタシはぜったい虐待しませんからね!』を発表しています。こちらもコミックエッセイとなっており、子育てママさんから多く支持されている作品です。

著者
あらいぴろよ
出版日
2017-03-10

彼女の描くイラストは、どちらかというと女性向けのイラストで、女性人気が高く、独特な可愛さと、気が抜けるようなゆるさが特徴的。多くの人に受け入れられやすい魅力のあるイラストです。

今回ご紹介している本作も、コミカルで笑える絵と、シンプルでわかりやすい絵が駆使されていて、漫画としてもおもしろく、なおかつハウツー本としてもわかりやすいという作りになっています。

『“隠れビッチ“やってました。』の見所1:モテのハウツー本としても優秀!面白い!

『“隠れビッチ“やってました。』の見所1:モテのハウツー本としても優秀!面白い!
出典:『"隠れ"ビッチやってました』

本作の主人公は、元隠れビッチです。

すでにご紹介したように、「隠れビッチ」とは、男性にチヤホヤされること、モテることを目的としているので、男性にモテるためにはどうしたらよいか?ということを徹底的に研究しています。いわゆる男性受けのよい女子とは何かを教えてくれます。

そのため、本作はあくまでもエッセイではあるのですが、モテのハウツー本としても活用することができるのです。

たとえば、ファッションでは、男性受けする純情派を演出するための服装や髪形、アクセサリーなどがどんなものかを紹介しています。他にも、男性との会話の仕方や効果的なボディタッチなど、いかに男性から好意を寄せられるか、あるいは意中の相手と付き合うことができるかが描かれています。

これらは、ぴろよ氏が実際に研究、実践していたものなので、そういう意味でもとても信ぴょう性のあるテクニックだといえるでしょう。

『“隠れビッチ“やってました。』の見所2:遊ぶようになった本当の理由?主人公の葛藤に引き込まれる

ぴろよ氏のような「隠れビッチ」は、男にモテたいという本性を清純派という皮で隠しているので、同性である女性にとっては、あまりよい印象を受ける存在ではないかもしれません。

好きな男性に好かれるために努力しているのではなく、モテるため、チヤホヤされるためにテクニックを駆使しておいて、相手がその気になったら振るという、その行為は褒められたものではないでしょう。

しかし、彼女がそういう行為をするようになった背景には、幼い頃に父親からDVを受けた過去がありました。子供のころに親から認められなかったという経験は、彼女から自己肯定感を奪ってしまったのです。

自分で自分を認められないのであれば、他人から認めてもらうしかない。そう考えた彼女は、認められること=男性からチヤホヤされることだったのです。そのため、多数の男性からモテる自分を作り出し、隠れビッチへとなっていったのです。

『“隠れビッチ“やってました。』の見所3:変わりたいと思うきっかけ?新たな出会い

幼いころのトラウマもあり自分に自信が持てず、多数の男性からの愛情を求めた作者。しかし、友達から「男に逃げるのはやめろ」という厳しい一言をきっかけに、あらためて自分を見つめ直すことになります。

それから隠れビッチをやめた彼女には、三沢という新しい男性との出会いが待っていました。それまで「隠れビッチ」としてモテる自分を演じ続けてきましたが、彼の前では本当の自分を出すことができたのです。

三沢さんはとても優しい人だったので、作者も自分を素直に出すことができたのでしょう。しかし、自分を出すことができるようになったせいで、本当は出したくないネガティブな部分、わがままな部分も出てきてしまいました。

当然、彼との仲もスムーズにはいきませんでしたが、それでも紆余曲折を経て、彼女は自分と真剣に向き合っていくことになるのです。

『“隠れビッチ“やってました。』の見所4:ラストはどうなる?

父親からのDV、友人からの言葉、そして三沢さんとの出会いなどを経て、自分自身を変えたいと思うようになった作者。

過去を振り返ったり、自分の嫌な部分と向き合うことはとても辛いことですが、彼女は自分を変えるため、その辛いことと向き合う決意をしました。そんな努力の果てに、彼女は本当の自分を認めてくれる相手と結婚をすることになります。

著者
あらいぴろよ
出版日
2016-09-15

結婚、出産も経験しますが、その後は順調……というわけにはいきませんでした。産後うつなどを含め、さらに困難なできごとが彼女に振りかかります。自分の弱さやトラウマと向き合いながら、自分を変えようと葛藤する彼女の姿は、誰にでも共感できる部分があるでしょう。

作者の経験が辛く、ときには読み進めることをためらってしまうこともあるかもしれませんが、結婚してからは良き理解者な旦那さんにも恵まれます。そこを救いと感じることができるでしょう。

人によっては理解できない、重たいと感じることもあるかもしれませんが、いろいろと考えさせられてしまう内容であることは間違いありません。

ラストには彼女がどんな成長をしたのか、気になった方はぜひ確かめてみてくださいね。

いかがでしたか? 序盤では、不快に感じる方もいるかもしれませんが、随所で笑える部分があり、読みやすくなっているでしょう。後半では作者の葛藤も描かれており、心を打つものがあります。手に取ったらぜひ最後まで読んでみてください。

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