18歳で文学賞の新人賞を受賞し、華々しいデビューを果たした小説家・豊隆。しかし、その後は鳴かず飛ばず……。そんな彼のもとに、幼馴染で編集者の俊太郎がやってきます。彼は文芸誌の廃刊の危機を、なんと吉田に託そうとして……!? 売れない小説家と三流の編集者のアツい戦いが、幕を開けます。 あらすじからもアツさが伝わってくる本作は、EXILEの白濱亜嵐を主演に迎えてドラマ化が決定。ますます注目度が高くなっている作品です。今回は、そんな『小説王』のあらすじと魅力をご紹介しましょう!
売れない小説家・吉田豊隆。彼はかつて、18歳で文学賞の新人賞を受賞して華々しいデビューを果たしたものの、その後は鳴かず飛ばず……今はアルバイトをしながら、細々と執筆活動をしていました。
彼の幼馴染が、小柳俊太郎。出版不況の波に追いやられ、担当する文芸誌が廃刊の危機に立たされている人物です。
そんななかで彼は、豊隆の作品に心を奪われます。そして、ともに再び夢を追いかけることを決意するのです。豊隆を売れっ子作家にするため、不況の出版界を立ち直らせるため、俊太郎は猛然と動き出すのでした。
売れない作家と三流編集者が、出版業界に壮大な喧嘩を仕掛けます。
- 著者
- 早見 和真
- 出版日
- 2016-05-10
幼馴染でもある2人がタッグを組み、不況のなかで一心不乱に小説を生み出そうと奮闘する本作。小学館からは文庫版、角川書店からは漫画版が発刊されているなど、高い人気を誇っている作品です。
その人気を受け、2019年4月にフジテレビでのテレビドラマ化も決定。主演の吉田豊隆役に、EXILEのメンバーであるの白濱亜嵐が抜擢されたことでも話題を呼んでいます。
出版不況と呼ばれるのは、現実でも同じ。そんななかで本作がどういった形で社会に影響を与えるのか、気になるところです。
もともとはライターとして活動していた作者。出版社に飛び込みで営業をかけ、『AERA』や『SPA!』など多くの雑誌で活躍しました。
2008年に、自身の経験を生かした野球小説『ひゃくはち』で小説家デビューを果たします。この作品は後に漫画化されたほどの人気作品となりました。
さらに代表作『イノセント・デイズ』は、日本推理作家協会賞を受賞。山本周五郎賞の候補作品にも選ばれました。
作家としての活動の他、ラジオのパーソナリティーとしても活躍しているマルチな人物です。
- 著者
- 早見 和真
- 出版日
- 2011-06-28
そんな彼ですが、その人生は、なかなかに波乱万丈。桐蔭学園高等学校時代は硬式野球部に所属しており、その後、國學院大學に進学。そして大学在学中にライターとして活躍し、新聞社への内定も決定します。
しかし、度重なる留年により、大学を退学させられてしまうのです。さらに内定まで取り消されてしまいます。
そのことですっかり自暴自棄になった彼でしたが、知り合いに勧められたのを機に、野球部であった経験を生かして書いた『ひゃくはち』を執筆。それをきっかけに小説家としての人生を歩むことになったのでした。
そんな波乱万丈な私生活があったからこそ、本作のようなアツい作品を描くことができるのかもしれません。
本作の主人公の1人である豊隆。若くして華々しく小説家デビューを果たすものの、その後が続かず、売れないまま生活を送らざるを得ない状況が続いていました。
彼の生活は、深夜のアルバイトで生計をたて、細々と執筆活動を続けるといったもの。そんな厳しい生活は、非常にリアリティーあるものとして映ります。
小説家ではなくても、夢を追いかける人にとって思うように実現できない壁にぶつかることは多々あるでしょう。豊隆は、まさにそういった読者を映す鏡のような存在でもあるのです。
思うようにうまくいかない苦しい毎日。そんな生活を送る彼だからこそ、読者は共感でき、感情移入しながら読めるのでしょう。そしてどんどん作品に引き込まれ、思わず彼を応援してしまうのです。
すでにご紹介したとおり、本作の主人公は売れない小説家・吉田豊隆と、三流編集者の小柳俊太郎の2人を中心に進んでいきます。彼らは同級生ですが、ずっと一緒に仕事をしていたわけではありません。
むしろ俊太郎は、豊隆がデビューを知らなかった様子。そんななかで、ある時に豊隆の作品を読んで、すっかり惚れこんでしまいます。
彼らがタッグを組んだのは、同級生だからというよりも、俊太郎が豊隆の作品を好きになったから。そして物語は大きく動きだします。彼らの動きが、やがて周囲の人々を巻き込んで大きなうねりを作り上げていくのです。
俊太郎の妻・美咲や、豊隆のファンで、彼に密かに想いを寄せる晴子など、小説作りには直接関わらない人物も魅力的。特に晴子が抱える恋心が、豊隆に届くのかも気になるところ。恋愛展開にも要注目です。
人間の情熱が誰かを動かすのだ、と感じることのできる本作。ぜひ、そんなアツい物語を作り上げる彼らの活躍に注目してみてください。
本作の魅力は、豊隆と俊太郎がよい小説を書くために奮闘し、豊隆が売れる作家になることを目指していく成長の様子。また、2人を取り巻く人々や、その家族の物語も同時に描かれます。
俊太郎には妻が、豊隆には自身のファンでもある晴子という女性が傍にいます。彼女達の存在をなくしては、物語は成り立たないといっても過言ではないでしょう。
ヒリヒリした焦燥感のなかで小説の執筆に取り組む2人を、励ましたり発破をかけたりする彼女達の姿は、男性陣とは異なる頼もしさを感じられます。
特に、俊太郎の妻・美咲が生まれたばかりの子供を抱えながら、やりたいことを見つけて再び夢を追いたいという夫を受け入れる姿は、その潔さと器の大きさに思わず感動してしまうシーンです。
一方、豊隆のほうには波乱の展開が。なんと元カノが登場するのです。そんな状況に晴子がどう行動するのかも気になるところでしょう。
夢を叶えるためには、情熱を持った当事者だけではなく、家族やそれに近い身近な存在がどれだけ大切なものなのかを感じさせてくれるのも、本作の魅力なのです。
本作は、コミカライズ作品も発売されています。
小説は少し苦手……という方にとっては、小説を題材にした本作は、さらにハードルが上がってしまっているかもしれません。しかし、そんなハードルも、コミック版なら解消できます。
小説王 (1) (角川コミックス・エース)
2019年03月09日
大沢形によるリアリティーある絵柄と、スピード感のある構図は、豊隆と俊太郎それぞれのキャラクターが持つ雰囲気を一目で伝えてくれます。そして同時に、アツく、泥臭く、夢に向かって走る2人の熱も、ひしひしと伝えてくれるのです。
漫画版は、俊太郎が豊隆とタッグを組もうと思った経緯が、俊太郎の視点を中心に描かれるところからスタートします。仕事に対する彼の想い、豊隆に対する想いが丁寧に描かれているのが特徴で、出だしの数ページで心を掴まれること間違いなしです。
表紙からアツさが伝わってくる漫画版。熱血もの、バディものが好きな方は、ぜひご一読ください。
売れない小説家・豊隆と、1度は挫折したものの編集者として再び夢を追いかけ始めた俊太郎。本作はそんな2人の出版バディものであり、痛快エンターテイメント小説です。
バディものの結末といえば、たいていは大団円のはず……と思いたいところですが、本作では、そんな読者の予想を裏切る展開が待ち受けています。
- 著者
- 早見 和真
- 出版日
- 2016-05-10
実際にどんなことが起こるのかは本編を手に取って確認していただきたいのですが、この結末によって物語にさらにリアリティが与えられ、読者の心を揺さぶってきます。
同時に、夢を追いかける2人の男の姿にドキドキが止まらなくなるでしょう。もちろん、豊隆と晴子の関係性がどうなるのかも気になるところです。
現実でも出版業界は不況だと言われており、本は売れない時代だとされています。そんななかで、逆境に負けずに夢を追いかける姿に、多くの読者が共感することでしょう。
夢も恋愛も、諦めなければ叶うというのは綺麗事かもしれませんが、諦めずに追いかけなければ、決して叶うことはないと教えてくれる一冊なのです。
いかがでしたか?夢を追いかける2人の男の姿がアツい本作。難しいことは考えなくても、ただ夢を追いかけるそのアツさだけで楽しむことができるエンタメ作品です。痛快な作品を読みたい!熱い物語を読みたい!と思う方は、ぜひチェックしてみてください。