女性を中心に絶大な人気を誇るアーティスト、ヒグチユウコをご存知でしょうか。名前を知らなくても、彼女の代名詞ともいわれる猫の絵を見ればピンと来るかもしれません。この記事では、彼女が手掛けた絵本のあらすじと魅力を、代表作「せかいいちのねこ」シリーズを中心に紹介していきます。心あたたまるストーリーと、可愛らしくもどこかダークな世界観の不思議な融合をお楽しみください。
画家であり絵本作家でもあるヒグチユウコ。多摩美術大学の油画科出身です。在学中から個展を開催し、卒業時には優秀な学生に贈られる「福沢一郎賞」も受賞しました。
少女や動植物といった「生き物」を緻密に描く画風で、特に猫をモチーフにした作品が多いのが特徴。きっかけは、生後3ヶ月で引き取った愛猫のボリスで、自身の作品のモデルにすることもあるそうです。その世界観は可愛らしい反面でどこか妖しく神秘的。時間の許す限りじっくり眺めたくなってしまいます。
絵本作家としては、2014年に『ふたりのねこ』でデビュー。心あたたまるストーリーと、キュートさとダークさが入り混じったイラストの絶妙な融合で人気となり、代表作『せかいいちのねこ』をはじめ続々と作品を発表しています。
そのほか大手企業やファッションブランドとのコラボレーションなど活動の幅は広く、日本を代表するアーティストだといえるでしょう。
主人公は「ニャンコ」と呼ばれる猫のぬいぐるみです。ニャンコは、赤ちゃんの時からいつも一緒にいた男の子のことが大好きですが、彼はもう7歳。これからもずっと一緒にいられるのか、不安でたまりません。
「なんてやさしいねこなんだろう。
ぼくもあんなやさしいねこになりたい。」(『せかいいちのねこ』より引用)
男の子に永遠に愛されたいニャンコは、本物の猫になりたいと願い、旅に出ることにしました。道中はトラブルの連続で、嬉しいことや悲しいことをたくさん経験し、成長していきます。大好きな男の子の「せかいいちのねこ」になりたいと願うニャンコは、本物の猫になれるのでしょうか。
- 著者
- ヒグチユウコ
- 出版日
- 2015-11-20
「せかいいちのねこ」シリーズの記念すべき第1段。「自己肯定」がテーマの物語です。たくさんの個性的な猫と出会うことで成長していくニャンコの姿に、読者の感情が揺さぶられます。
本物の猫の命は有限で、いつかはこの世から去らなければならないことを知ったニャンコ。旅の終わりで、幸せにはさまざまな形があるということに気づくのです。
本作には、口調がキツイだけで本当はいじわるじゃない「いじわるねこ」など、個性的な猫がたくさん登場します。実は「せかいいちのねこ」シリーズに出てくる猫にはモデルがいて、巻末には彼らの写真がずらり。絵本のキャラクターたちと見比べるのも楽しいでしょう。
また画集のような美しい装丁はプレゼントにもぴったり。大切な人に読んでほしいと思わせてくれる、とっておきの一冊です。
ある日、弱っている捨て猫を見つけたニャンコ。「おとうさん」になることを決め、周りの猫たちに見守られながら、献身的に子育てをします。子猫はすくすくと育ち、ニャンコとほとんど変わらない大きさにまで成長しました。
しかし、幸せな日々も長くは続きません。ニャンコの持ち主である男の子と、彼のお母さんに、子猫が見つかってしまったのです。子猫はカゴに入れられて、どこかへ連れられていきます。突然の別れにニャンコは悲しみに暮れるのですが……。
- 著者
- ヒグチユウコ
- 出版日
- 2017-09-01
「せかいいちのねこ」シリーズの第2弾。主人公は前作に引き続き、ぬいぐるみのニャンコです。今回は子育てに挑戦します。
かいがいしく子猫の世話をするニャンコの姿に、心があたたまるでしょう。注ぐ愛情に比例して、彼らの絆も強くなっていきます。だからこそ、離れ離れになる時は、読者の心も苦しくなる……読めば読むほど、さまざまな感情を抱かせてくれる物語です。
子猫を見つめるニャンコの慈悲深い目が印象的な本作。1度は離れた2人が迎える感動の結末を、ぜひ確かめてみてください。
「ねこのしごとはほんやです。
きょうはどんなおきゃくさんがくるかしら。
カンバンを出したら朝の10時、開店の時間です。」(『ほんやのねこ』より引用)
「せかいいちのねこ」シリーズの第3弾の舞台は、おしゃれで働き者の猫が営む不思議な本屋さん。次々とやってくるユニークなお客さんたちに、ぴったりの本を紹介しています。
しかしこの本屋にはある秘密があって……。
- 著者
- ヒグチ ユウコ
- 出版日
- 2018-11-16
可憐な見た目に反して、ハプニングやいたずらにも動じない妙な落ち着きと、個性的なキャラクターたちにぴったりの本を選ぶ抜群のセンス。本作の主人公はとってもチャーミングです。
彼女が身に着けているアクセサリーや衣装にも注目。大きな花の髪飾りやアンクレット、ふわふわのワンピース……隅から隅まで可愛らしく、ずっと眺めていても飽きません。
ニャンコをはじめとするおなじみのキャラクターも登場。また前作『いらないねこ』のその後も描かれていて、ファン必見の一冊です。
持ち主の「ぼっちゃん」とはぐれて、突然ひとりぼっちになってしまった猫のぬいぐるみ「ニャンコ」。そして公園でボロボロになった「ニャンコ」をひろってくれた野良猫の女の子「ねこ」。物語は、ある夏の終わりに2匹の猫が出会うところから始まります。
「そのおうちさがそうよ」
ねこがニャンコに言います。
「そう、いっしょに。だからあたしたちかぞくよ」(『ふたりのねこ』より引用)
ねこは、ニャンコとともにぼっちゃんの家を探すことにしました。2人は無事、ぼっちゃんのもとにたどり着くことができるのでしょうか。
- 著者
- ヒグチユウコ
- 出版日
- 2014-12-01
『ふたりのねこ』は、ヒグチユウコの絵本デビュー作です。後の「せかいいちのねこ」シリーズの序章となるような物語になっています。
病気になったねこを助けるために、ニャンコがとる自己犠牲的行動からは、相手を思いやる気持ちが伝わってくるでしょう。2人とぼっちゃんの関係性から、家族の在り方も考えさせられます。
デビュー作とは思えないほどの圧倒的な画力と、色彩の奥深さにも注目。忘れられないひと夏の出会いと別れの物語、おすすめです。
「きみはネコなの?ヘビなの?タコなの?」
「んー ネコかな」
「えー!ネコって こういうのだよ!」
「んー じゃあ ワニかな」
「え!!ワニは ぼくだよ!!はなしきいてる?」(『ギュスターヴくん』より引用)
顔がネコで足はタコ、手がヘビというユニークな姿をしているギュスターヴくん。いたずらが大好きで、不思議な生き物たちを次々と本の世界から引っ張り出し、やりたい放題です。
奇妙奇天烈で摩訶不思議な物語に大人も子どもも夢中になってしまうでしょう。
- 著者
- ヒグチユウコ
- 出版日
- 2016-09-16
インパクトのある動物たちがくり広げる、自由でナンセンスな物語。まるでおもちゃ箱をひっくり返したように賑やかで、とにかく楽しいのです。
本に書かれているものを引っ張り出すことができるギュスターヴくん。アルマジロのような動物から鳥の頭が出ていたり、尾びれで立つ魚がいたりと、異種交配を連想させるイラストからは、正解や決まりごとなんてないというメッセージを感じることができるでしょう。奇妙ながらも、強いパワーをもっています。
ちょっとだけ不気味で、でも可愛らしい、ヒグチユウコの世界観が好きな人におすすめの一冊です。