スーパー女子高生・田宮仁香が隠れイケメンと恋を育みながら、愛と友情のためにさまざまな困難にも立ち向かって打ち勝つ、青春物語。そのタイトル通り、仁香の外での誰もが憧れるキラキラな「オンモード」とズボラ感漂う「オフモード」の巧みな使い分けに笑い、そして彼女の一筋縄ではいかない高校生活に涙が止まらない作品なのです。 今回はそんな『スイッチガール』の作者・あいだ夏波の魅力と、最終巻の25巻を中心とした作品の魅力について紹介しましょう。
主人公・田宮仁香は、誰もが羨むカリスマ的女子高生。容姿端麗、スタイル抜群、勉強が出来ないのがたまに傷でしたが、それ以外は全女子高生の憧れの的です。
しかし、そんな彼女には、とても大きな秘密がありました。家族と幼馴染みのニノしか知らない秘密……それは、彼女が「スイッチガール」だったということだったのです。
スイッチガールとは、外ではキメキメの女子を演じていますが、家の中ではそれとは真逆の姿をしているということ。これが周りにばれてしまったら、今までの自分が嘘だと非難されてしまう……。それをおそれた仁香は、誰にも内緒にしていたのでした。
- 著者
- あいだ 夏波
- 出版日
しかし、ある日、彼女のクラスに瓶底メガネのダサい男・神山新が転校してきます。そんな彼は、偶然にも仁香と同じマンションでした。
仁香と同様、実は彼にも秘密がありました。それはメガネを取ると、スーパーイケメンになるということ。あることがきっかけでお互いの秘密を知ってしまった2人は、秘密を厳守しようと誓います。このことで一気に距離が縮まった彼らは、しだいに惹かれ合っていくように……。
そんな恋愛事情と並行するように、仁香の周りではさまざまな事件が起きていきます。持ち前の友情に熱い性格と、誰も知らないオフモードの姿を駆使して問題を解決していく高校生活が始まります。
ダサい姿をばらさずに様々な出来事に巻き込まれていく仁香から、ドキドキハラハラを感じたり、ときにはクスッとつい笑ってしまうでしょう。そんな『スイッチガール』の魅力を紹介します。ネタバレを含みますので、苦手な方yはご注意ください。
すでに本作がきになって方は、まずはスマホの漫画アプリで読むことをおすすめしています。
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2001年に集英社「マーガレット」にて、『そんな聖なる夜も』でデビュー。2005年には高校デビュー女子高生の処女脱却物語を描いた『純情ポルノ』を刊行し、2006年にはスクールカーストに抗う物語を描いた『革命教室』を刊行します。
そして2006年から2013年まで『スイッチガール』を連載し、全25巻で完結しました。
同作終了後は、『圏外プリンセス』(全7巻)を連載。この作品は『スイッチガール』の仁香とは性格も見た目も正反対の主人公・美人が、恋愛ゲームの王子様に背中を押されながら恋愛をしていくうちに、身も心も可愛くなっていく姿が描かれています。
さらに次の連載『アナログドロップ』(全2巻)では、主人公・亜紅がタイムスリップ先で恋に落ちてしまう、時代を超えた愛の物語を描きました。また漫画アプリでは『奈落の花』というタイトルで、タイプの違う3人の女性が地獄に落ちていく話も連載中です(2019年5月現在)。
- 著者
- あいだ 夏波
- 出版日
- 2014-10-24
『スイッチガール』ではパワフルなオンオフ主人公でしたが、『圏外プリンセス』ではモテない、いわゆるブサイク女子を主人公に、『アナログドロップ』では悪女を主人公にして物語が成り立っています。
このように作品それぞれで主人公の特徴も異なり、ザ・王道とは程遠いヒロインを描いているのが、漫画家・あいだ夏波の特徴でもあるのです。
また、彼女も仁香と同様なスイッチガールのようで、作中では作者の体験や経験に基づく余談話が多々出てくることも特徴的。作者への質問コーナーでは作品内容だけでなく「女として」の質問に受け答えをしており、これもまた楽しみといえるでしょう。
スイッチガールとはその名の通り、家族などにしか会わない家の中でしか見せない姿をオフモードとしたとき、学校や友人など外での自分の格好をオンモードとする、誰もが少しはあるだろう女子(なかには男子も)の姿のことを示しています。
そのオンオフモードの差が主人公の仁香はとても激しいのが、本作の特徴であり見所です。
彼女のオンモードは、イマドキの高校生が注目するファッション雑誌に載ってしまうほどオシャレで可愛く、スタイルも身のこなしも完璧。女子高生のカリスマともいえるほど、完成度はとても高いのです。
対してオフモードは、髪を2つに結び、前髪はちょんまげヘアにして、下着も履き古したのを着用し、ブラはつけず、そして服装は楽なジャージやスウェット姿にメガネという、オンモードとは似ても似つかないほどの姿になります。
このオンとオフは姿だけに飽き足らず口調や行動すらも変化してしまい、もはや別人です。
- 著者
- あいだ 夏波
- 出版日
- 2007-05-25
しかし、この違いがまた面白く、物語のよさを極限まで高めてくれます。家族と幼馴染み以外には知られていなかった彼女のオフモードが、ひょんなことから転校生の男子・新にばれてしまって物語が進んでいくのが、本作の始まりとなるのです。
この秘密のオンオフモードが最後までハラハラドキドキさせてくれる展開を引き起こしており、彼女の凄まじいスイッチガールぶりに思わず笑ってしまうことでしょう。
また、彼女の他にも出てくるスイッチガール要素を持ったキャラクターにも着目すれば、本作を大いに楽しむことできます。
たとえば、仁香の姉や母もスイッチガールであり、この変貌ぶりが凄まじいです。田宮家の不思議ともいえるオフとの差は、物語のなかでもキーポイントとなることがあります。さらに、仁香と知り合う少女にも同じ属性がおり、話をより盛り上げてくれるのです。
いい意味でのオフモードに、思わず共感してしまう人もいることでしょう。カリスマ女子高生の裏側を覗けるという楽しさも感じられます。
思わず笑ってしまう下ネタですが、本作にはそれが大々的に出てきます。しかし、けして下品ではなく、女子高生ならではの下ネタがとても面白く、リアルに感じられるでしょう。
作者・あいだ夏波が随所に登場しては説明してくれ、読み始め当初は何のことかわからなった読者も、読み終える頃には知識が豊富になってしまうはず。
- 著者
- あいだ 夏波
- 出版日
- 2007-09-25
本作に登場する下ネタは実にさまざまで、オナラやヘソの臭い、さらにお風呂に浮きがちな下の毛に関して「浮く本数を最小限に収めるために入浴前にむしる」なんていう豆知識(?)までもが描かれています。本作を読むことで、可愛い女子にも涙ぐましい努力があることが感じられるのではないでしょうか……。
しかし、これらを単なる下ネタとひとくくりにしてしまわず、日常的な女の子の体ケアに役立つことや、人には恥ずかしくて聞けないけど悩んでいることなどを仁香や作者が伝えてくれています。しっかりと経験に基づいた内容となっているので、いい知識ともいえるでしょう。
下世話な下ネタではなく、10代の女の子の興味関心に関する内容や、男子高校生の頭の中の一部としての下ネタなので、苦手な人でも楽しめるようにできているのです。
本作は仁香と新の恋愛物語がメインではありますが、とても熱い友情劇も何度も出てきます。仁香の親友・ニノはもちろんのこと、同じ高校に通っている通称ボスザルこと麗香との関係は永遠のライバルであり、仁香と紆余曲折ありつつも最高の友人となるのです。
他にも他校にあたる明花とは出会いは敵のような関係でしたが、ある出来事をきっかけに仁香にとって大切な存在となります。
そして仁香と新、他校の正宗の3人の関係性は、本作最大の見ものといえるでしょう。明花同様に、当初の彼は悪者としての登場ですが、後になくてはならない大切な存在となるのです。仁香にとっても、新たにとっても、そしてニノにとっても……。
- 著者
- あいだ 夏波
- 出版日
- 2007-12-25
このように、メインメンバーだけでもかなりの友情物語が散りばめられています。等身大の高校生らしさ、青春時代を象徴するかのような彼らから目が離せません。
また本作にある友情話はどれも熱く、そして涙がこぼれてしまうものが多いのも特徴。最初と最後の彼らの関係性を見比べるとかなり違うことがわかり、仁香の性格のなせる業に思わず感心してしまうはずです。
新と離れ離れになってしまった仁香がある行動に出るところから、話が始まります。新にとって大事な過去を握る女の子・朝海の登場から、彼らは別れてしまっていたのです。仁香も昔好きだった男の子の登場で心を揺さぶられたりと、2人の関係がどんどん壊れていきます。
しかし、離れてから気づくお互いの大きな思いに、彼らはもう1度やり直すことを心に誓うのです。そこでついに仁香が、今まで隠してきていたオフモードの姿を、クラスメイトや世の中の人たちに見せることになり……。
若者たちが集う街・渋谷でオフモード全開の姿で登場した彼女は、大声で今までの自身の秘密を暴露するのです。
- 著者
- あいだ 夏波
- 出版日
- 2014-02-25
そんな彼女に、観衆たちは裏切られたことによるブーイングの嵐を浴びさせます。仁香の強靭な心も折れてしまいそうになったその時、新が彼女の前に現れます。そして仁香は、彼への思いのたけを告白するのです。果たして彼の返事は?そして観衆達は……?
最終25巻では、今まで数々の困難を乗り越えてきた仁香と新の最後の決着が描かれています。仁香の大告白は涙なしには読むことができないほど感動し、胸打たれることでしょう。また、麗香やニノたちの恋愛の結末も描かれ、この作品の集大成に相応しいラストとなっています。
彼らの輝かしい未来が目に浮かぶような結末は、ぜひご自身の目でお確かめください。