小説『小公女』の意味やあらすじ、登場人物を解説!おすすめ絵本も紹介

更新:2019.4.15

19世紀のイギリスを舞台にした児童文学小説『小公女』。どんな逆境に立たされても高貴な心を失わない主人公の姿は、刊行から100年以上を経てもなお世界中で支持されています。この記事では、そんな名作のあらすじや登場人物、当時の時代背景などを解説していきます。あわせておすすめの関連本も紹介するので、ぜひチェックしてみてください。

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小説『小公女』の意味や作者、ドラマ化など概要を解説

 

アメリカの児童文学作家、フランシス・ホジソン・バーネットが手掛けた『小公女』。刊行されてから100年以上の時を経ても、世界中で読み継がれている古典的名作です。

もともとは1888年に『Sara Crewe, or What Happened at Miss Minchin's』、日本語だと『セーラ・クルー、ミンチン学院で起きたこと』というタイトルで刊行されました。その後大幅に加筆され、1905年に『小公女』で知られる『A Little Princess』として発表されています。

日本語のタイトルの意味は、「貴族の娘」。しかし原題を直訳すると「小さなお姫様」です。なぜ日本語で『小公女』と付けられたのでしょうか。

これは、バーネットの作品『小公子』にあやかったところも大きいですが、「小さなお姫様」という直訳だけではイメージできない、真面目で凛としたセーラのたたずまいが、言葉のもつ意味と重なったからだそうです。

物語の舞台は、19世紀のイギリス。主人公のセーラは、資産家である最愛の父親と別れて、ひとりロンドンの寄宿学校に入学します。しかしインドで事業に失敗した父親が急逝したことで、学校での優雅な生活は一変。セーラは一文無しの下働きとして屋根裏部屋で暮らすことになってしまうのです。

どんなみじめな境遇に落ちても決して高貴な心根を失わないセーラ。彼女の誇り高い姿は、世界中の少年少女たちに強い感動を与え続けています。

日本でも人気は高く、原作を忠実に再現したアニメや、現代の日本を舞台に、全寮制の女子校に通う高校生を主人公としたドラマ「小公女セイラ」も制作されました。

『小公女』の主な登場人物を紹介!セーラやラビニア、ベッキーなど

 

セーラ・クルー

『小公女』の主人公。裕福な家庭で不自由なく育った女の子です。7歳の時にインドを離れ、生まれ故郷であるロンドンの寄宿学校へ入学しました。父親の急逝によりその優雅な生活は一変しますが、持ち前の想像力と気高さで困難を乗りこえていきます。

ベッキー

寄宿学校の下働きをしている、セーラの1番の友達。セーラとは、身分の壁を超えて深い友情を築いていきます。セーラが使用人となった後も彼女を尊敬して支え続けた、心優しい女の子です。

ラビニア

セーラのクラスメイト。裕福な商人の娘です。セーラがやってきたことで自分の立場が奪われると感じ、何かと意地悪をしてきます。

マリア・ミンチン

セーラが通う寄宿学校の院長。高慢な性格で、保護者から学校に支払われる寄付金の額で、生徒を格付けしています。セーラが使用人となったことを喜び、陰湿な嫌がらせをしました。

ロッティ、アーメンガード

セーラを慕う生徒の2人です。セーラが使用人となった後も、屋根裏部屋に会いに来たり、こっそりお菓子を差し入れしたりしました。

ラルフ・クルー

娘をこよなく愛するセーラの父親。友人とともにインドでダイヤモンド鉱山の事業を始めたものの、病気で亡くなってしまいます。

カリスフォード

セーラの父親の友人。ダイヤモンド鉱山の事業に失敗したと思い込んでいましたが、成功がわかった後、ラルフの財産をセーラに届けます。

原作小説『小公女』のあらすじを紹介

 

19世紀のイギリス。冬のある暗い日に、7歳の少女セーラは父親とともに、ミンチン女子学院にやってきました。

莫大な資産を背景に優雅な寄宿生活を送り、あっという間に人気者となるセーラ。しかし高慢な態度をとることもなく、聡明で優しい心の持ち主に成長していきました。10歳の時には、父親がインドで友人とともにダイヤモンド鉱山の事業を開始。マリア・ミンチン院長は、寄付金を目当てに、セーラの誕生日を盛大に祝う計画を立てるのです。

しかし、パーティーの最中に、父親が亡くなり事業も失敗したという連絡が。寄付金をもらえなくなったと判断したミンチン院長は、セーラの衣服や持ち物などを差し押さえ、使用人として働くことを命じました。立場が急転直下したセーラは、狭くて寒い屋根裏部屋で暮らすことになるのです。

使用人の労働は厳しく、教室の暖炉の掃き出し、床や窓ガラスの掃除、時には他の生徒の靴まで磨きます。雨のなか、びしょ濡れになりながら遠くまでおつかいに行かされることもありました。さらに、これまで恵まれた環境にいたセーラに嫉妬をしていた生徒や教師たちから、いじめも受けます。

しかしセーラは、どんな逆境に立たされても、生まれもった気高さを失うことはありませんでした。不当な扱いをはねのけ、現実に光を見出し続けるのです。

この状況から彼女を救うのが、父親の友人、カリスフォードです。ある日学校に猿が迷い込み、セーラが届けに行った大富豪の家こそが彼の家でした。実は父親の事業は成功していて、カリスフォードはその莫大な資産を相続人であるセーラに渡そうと探していたそう。

こうしてセーラは遺産を手にするとともに、カリスフォードの家に引き取られることになりました。その際、辛い時にずっとそばで助けてくれていたベッキーも一緒に引き取られ、幸せな日々を送ることになるのです。

セーラはなぜイギリスに行く必要があったのか?当時の時代背景を解説

 

本作が刊行された19世紀末から20世紀初頭、イギリスとインドは切っても切れない関係にありました。イギリスは1858年に、アジアの貿易を支配していた東インド会社を解散し、「インド帝国」を設立。イギリスの国王が、インドの皇帝を兼任していたのです。政治や経済、文化全般にいたるまで、インドを支配していました。

そんな時代背景があり、セーラもイギリスで生まれたものの、インドに移り住んでいたのです。また当時のイギリスでは、裕福な家庭の子どもは親元を離れ、寄宿学校で勉強をする風習がありました。語学や数学などの一般教養だけでなく、社交界で活かせる上流階級のマナーや作法などを学ぶ必要があったからです。

『小公女』におけるセーラも例に漏れることなく、インドから生まれ故郷であるイギリスに行き、寄宿学校へ入学することになりました。

小説『小公女』のおすすめ本を紹介!

著者
フランシス・ホジソン・バーネット
出版日
2011-09-15

 

暗い冬の日でした。どんよりした黄色い霧が重くたちこめたロンドンの街は、街頭も、店々のウインドウも、夜のように灯りがともされ、ガスの光にぼうっと輝いていました。(『小公女』より引用)

ロンドンの薄暗い情景の描写から始まる本作。屋根裏部屋にいながらも、目には強い意志を宿しているセーラの表紙が印象的です。格式高い美しさを感じられるでしょう。

翻訳を手掛けたのは、児童文学作家の高楼方子。彼女にとって初めての翻訳でした。『小公女』の完訳本がほとんど世に出ていないことに気づき、自分で完訳しようと思い立ったそう。ぴたりとはまる日本語を見つけるために試行錯誤をくり返し、なんと4年もの歳月を費やしました。

その文章は、わかりやすく明確なうえにいきいきとしていて、セーラや他の登場人物たちの心情が鮮やかに伝わってきます。

またアメリカの画家エセル・フランクリン・ベッツの、写実的なイラストも魅力的。児童文学ですが、大人も楽しめる内容になっています。

『小公女』は絵本で読むのもおすすめ!

著者
平田 昭吾
出版日
1985-08-09

 

幼い子どもも古典を楽しめるようにと作られた「世界名作ファンタジー」シリーズの一冊。 カラフルでポップなアニメーションのイラストで楽しめる、絵本版の『小公女』です。

50ページ未満と短めにまとめられていて、起承転結がしっかりとわかる絵本ならではの構成。小さい子どもでも、物語の世界に入り込むことができるでしょう。

幼稚園の年中ごろからひとりで読むのはもちろん、読み聞かせにもおすすめ。コンパクトなので、持ち運びにも適しています。

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