初版の刊行から100年以上経っても世界中で愛されている名作『オズの魔法使い』。ミュージカル化や映画化など、さまざまな派生作品も誕生しています。この記事では、あらすじや登場人物、デンスロウのイラスト、作者ボームの人生などを解説しつつ、物語の魅力を紹介していきます。
アメリカの児童文学作家、ライマン・フランク・ボームが手掛けた『オズの魔法使い』。1900年に初版が発表されました。1902年にはミュージカルが上演され、1939年に映画化もされています。
当時のボームは、1897年に発表した『Mother Goose in Prose(散文のマザー・グース)』がヒットして、人気作家となっていました。『オズの魔法使い』は、親戚の子どもたちに語り聞かせていた物語をもとに、書籍にしたものだそうです。カラーの凝ったイラストが珍しかったこともあり、子どもたちの心を瞬く間に捉えて、増版が追いつかないほどになりました。
物語の舞台となるのは、アメリカ合衆国のカンザス州。主人公はドロシーという少女です。エム叔母さん、ヘンリー叔父さん、飼い犬のトトとともに農場で暮らしていますが、ある日、不思議な「オズの国」に飛ばされてしまうのです。
- 著者
- ライマン・フランク・ボーム
- 出版日
- 1990-06-30
アメリカ合衆国のカンザス州に暮らす、12歳の女の子。両親はおらず孤児でしたが、エム叔母さん、ヘンリー叔父さんに引き取られ、3人で暮らしています。
ドロシーが飼っている犬。真っ黒でつやつやした長い毛並みをした、小さな子犬です。ドロシーとともに竜巻に巻き込まれ、オズの国を旅します。
頭は藁をつめた小さな袋、そこに目と鼻、口が描いてあるかかしです。オズの魔法使いに「脳」をもらうため、ドロシーと一緒に旅をします。
呪いをかけられて全身ブリキになってしまったきこり。もともとはマンチキンでした。大きな森の山小屋のそばで1年以上動けずに立っていたところを、ドロシーに助けられます。失くしてしまった「心」をオズの魔法使いに頼んで取り戻すため、ドロシーについていくことにしました。
生まれつき臆病なライオンです。森の奥から出てきてドロシーたちに襲いかかり、トトに噛みつこうとしましたが、吠えられて怯えてしまいます。オズの魔法使いに「勇気」を授けてもらおうと、ドロシーと一緒に旅に出ます。
ドロシーたちの願いを叶えてくれるという魔法使いです。しかしその正体は、頭のはげた、ただの老人ペテン師でした。
西の魔女が持っていた「黄金の冠」の内側に書いてある、おまじないを唱えて呼び出すことができる翼の生えた猿です。ドロシーたちを「エメラルドの都」まで運んでくれました。空飛ぶ猿には、3回命令することができます。
オズ王国のマンチキンの国にいる、小柄な人々です。マンチキンの国は東の悪い魔女に支配されていましたが、ドロシーの家が魔女を押しつぶしたことにより支配から解放されました。
ドロシーと飼い犬のトトは、ある日竜巻に巻き込まれ、家ごとオズの国に飛ばされてしまいました。家はオズの国の東部に落ち、そこで暮らしていた「マンチキン」たちを独裁していた東の魔女を押しつぶしました。
一躍英雄になったドロシー。そこへ北の良い魔女がやって来て、「銀の靴」を授けてくれます。さらに、カンザス州に戻る唯一の方法は、「エメラルドの都」にいるオズの魔法使いに頼むことだと教えてくれました。
そうして旅に出ることになったドロシーとトト。道中で「脳を望むかかし」「心を望むブリキのきこり」「勇気を望むライオン」と出会い、彼らもオズの魔法使いに願いをかなえてもらおうと、一緒に「エメラルドの都」に向かいます。
途中、西の悪い魔女との戦いなどがありながら、何とかオズの魔法使いのもとにたどり着いた一行。しかし実は彼は魔法使いではなく、ただの平凡な老人でした。だいぶ昔にネブラスカ州から気球に乗ってやって来たそう。オズは脳を望むかかしに「ぬかと針とピンを詰めた頭」を、心を望むブリキのきこりに「ハート型の絹の袋」を、勇気を望むライオンに「勇気が出る薬」をくれました。ドロシーには、気球に乗せてカンザス州まで連れていくと語ります。
しかしドロシーは、気球に乗りそびれてしまうのです。今度は、南の良い魔女の元を目指すことになりました。さまざまなものに出会いながら到着すると、南の良い魔女はドロシーの履いている「銀の靴」こそが、願いを叶えてくれるものだと語ります。
ドロシーがかかとを3回打ち鳴らして願いを口にすると、体が浮かび、彼女の周りの景色はカンザス州の自宅の近くに変わっていました。
イラストを担当したウィリアム・ウォレス・デンスロウは、作者であるボームの友人。著作権も共同で所有していました。
『オズの魔法使い』には多くのページに色彩豊かなイラストが挿入されていて、当時としてはとても豪華なデザイン。人気の一端を担っています。
ボームが文章にしていない部分、たとえば「エメラルドの都」や多くの国民たちの姿を描き、物語を共に作りあげているといえるでしょう。デンスロウのイラストが無ければ、作品の世界観や登場人物の姿を想像するのは困難だったといわれるほどです。
彼の特徴的なイラストを模倣する人も多く、グッズも製作されるほどの人気ぶりでした。
本作の登場人物やアイディアの多くは、作者であるボーム自身の経験にもとづいているといわれています。かかしは子どもの頃に見た、かかしに追い回される夢から、ブリキのきこりは窓の飾りから生まれたそうです。
ボームは転職や引越しをくり返し、多くの土地でさまざまな人と出会いました。1890年にはサウスダコタ州で干ばつを経験しています。当時執筆したコラムには「木片が芝生でできていると信じている農民」とあり、『オズの魔法使い』に出てくる「街がエメラルドでできていると信じる住民」と繋がっているのです。
また、ボームと妻のモードの間には子どもはいませんでしたが、2人はモードの姉の娘、ドロシーをとてもかわいがっていたのだそう。しかしドロシーは難病のため生後5ヶ月で亡くなってしまい、モードは深い悲しみに沈みました。
ボームは妻の悲しみを少しでも和らげるために、『オズの魔法使い』の主人公の少女に、ドロシーと名付けたといわれています。
- 著者
- ["フランク バウム", "ロバート サブダ"]
- 出版日
文章とイラストの愛称が抜群な『オズの魔法使い』。絵本で楽しむのもおすすめです。
特に本書は「仕掛け絵本」になっていて、ページをめくるたびに繊細な仕掛けが飛び出して、物語の世界に惹き込んでくれます。クルクルと回る仕掛けや、360度どこから見ても楽しめる仕掛けなど、豪華なのも魅力でしょう。
また色使いが鮮やかなのも特徴です。文章量はやや多めですが、見ているだけでも十分に楽しめるので、小さいお子さんへの読み聞かせにもおすすめです。プレゼントにもよいでしょう。