「リゼロ」の略称で親しまれる『Re:ゼロから始める異世界生活』。小説投稿サイト「小説家になろう」で連載が始まって以降高い人気を得て、コミカライズやテレビアニメ化など幅広くメディア展開をされました。異世界に転生し、「死に戻り」を繰り返す主人公が運命と戦う様子を描きます。ただの転生ものではなくタイムリープの要素もあわせ持ち、何度も死を経験する主人公の苦悩もリアルに描かれています。 そんな本作は既に2度アニメ化され、海外のファンからも注目されるほどの人気ぶりです。今回は、そんな本作のあらすじと全巻の魅力をご紹介しましょう。ネタバレを含むのでご注意ください。
異世界転生ジャンルで不動の人気を誇るライトノベルシリーズが、『Re:ゼロから始める異世界生活』、通称「リゼロ」です。
異世界に転生し、戸惑っていたスバルの前に颯爽と現れた少女・エミリアが物語のカギです。彼女を死の運命から守るため、スバルはどれだけ痛ましく、苦しい思いをしても死に戻りを繰り返し、少しずつ運命を切り開いていきます。そんな彼の様子に胸が熱くなる作品です。
2016年1月に1期アニメが制作された本作は、2020年には第2期が放送されました。
アニメの詳しい内容が知りたい方は、公式サイトなどからご覧ください。
TVアニメ『Re:ゼロから始める異世界生活』オフィシャルサイト
そして2018年には「Re:ゼロから始める異世界生活 Memory Snow」が劇場公開となり、翌年にも、Blu-ray&DVDの特典となった小説を元にした「Re:ゼロから始める異世界生活 氷結の絆」が劇場版として上映されました。
この記事では、そんな話題作の見所を全巻ご紹介!アニメの内容を原作と照らし合わせたい方におすすめです!
不登校で毎日ダラダラと過ごしている男子高校生ナツキ・スバルは、ある日ふらりと出かけたコンビニから帰る途中、いきなり異世界へと召喚されてしまいます。そこは、ルグニカ王国と呼ばれる中世ファンタジーのような世界でした。初めて訪れた異世界で右も左もわからないなか、いきなり命を落としそうになる羽目に……そこを助けてくれたのが、銀髪のエルフの少女・サテラでした。スバルは、なんの見返りも求めず自分を助けてくれた彼女に好意を抱きます。
その後、ある探し物をしているという彼女を手伝うことにしましたが、突然現れた何者かに、今度はサテラともども殺されてしまいます。
間違いなく死んでしまったはずのスバルでしたが、気が付くとサテラと出会う前、つまり異世界に召喚された時にタイムスリップしていました。この状況から、彼は自分が死ぬことによって記憶を引き継いだまま時を遡る「死に戻り」の能力を持っていることに気が付くのです。
- 著者
- 長月 達平
- 出版日
- 2014-01-23
1章では、「死に戻り」の力を自覚したスバルがサテラを助けるために奮闘する姿が描かれています。
異世界に飛ばされたばかりの彼は当然、自分の能力については理解していません。彼は何度も死にながら自身の力を理解していくわけですが、それは同時に読者も「死に戻り」の力を理解できるような構成になっています。
ここをじっくりと読むことで、キャラクターはもちろん、能力の詳細、世界観などを掴むことができるでしょう。
また、2人を襲う謎の女性暗殺者・エルザにも注目したいところ。「腸狩り」の異名で知られる彼女は、ターゲットの腹を切り裂くことに快感を覚えるという狂気じみた美女。その姿は恐ろしいながらもどこか魅力的です。
ちなみにサテラの名前は偽名であることが途中で判明します。彼女の本名はエミリア。彼女が本名を明かすシーンもぜひチェックしてみてください。
エミリアを助けて目的を達することができたものの、腸狩りのエルザによって深手を負わされてしまったスバル。それでもなんとか生き残り、目覚めた時にいた場所はエミリアのいるロズワール邸でした。
エミリアのためにもそこで働くことになった彼は、同じく屋敷で働く双子のメイド、レムとラムと知り合います。彼女達とともにしばらくは平和な日々を送っていたスバルでしたが、ある朝目覚めると突然、屋敷に来た最初の日に戻ってしまっていました。
それは、もちろん「死に戻り」の現象。つまり、彼はなんらかの原因で死んでしまっていたのです。さらに、次のループでは何者かに撲殺されてしまうことに。
- 著者
- 長月 達平
- 出版日
- 2014-02-22
これをきっかけに、スバルは自分の死因、さらに殺した人物を探すことになります。しかし、その犯人はなんとメイドのレムでした。親しくなったと思っていた彼女が実はスバルに疑いを持っていたことが明らかになり、スバルは戸惑います。そして次の周回では、今度はレムが呪いにより死んでしまいます。一体、ロズワール邸に何が起きているのでしょうか……?
ストーリーが進むにつれて、真実が明らかになっていくミステリーな雰囲気がおもしろい第2章ですが、注目したいのは、やはりメイドのレムとラムでしょう。2人は「鬼族」という一族の生き残り。特にレムは、後にスバルにとって重要な立ち位置となるキャラクターなので、ぜひ注目して読んでみてください。
またレムと同様、今後の展開に大きくかかわってくる人物として、ロズワール邸の主ロズワール・L・メイザースもチェックしておきたいところ。
このロズワールは類まれな力を持つ魔術師の1人で、スバルやエミリアの味方ではあるようですが、その腹の底は知れません。ストーリーの進行に従い、彼の真意も明らかになることに。今後の展開から目が離せません。
それまで「死に戻り」の能力しか使えなかったスバルでしたが、「シャマク」という暗闇を生む魔法だけは使えるようになりました。2章では、その力をもって魔獣をロズワールとともに討伐することに成功しましたが、その代償としてまたしても深手を負ってしまうことに。
そんななか、ルグニカ王国次期国王の候補者であるエミリアが、王都で式典に参加することになります。そこにはスバルの体を治せる人物がいるということもあり、彼らは王都へ向かいました。
しかし、スバルは自分勝手な思いから式典に乱入し、エミリアを失望させます。さらに、スバルの行動に業を煮やした騎士・ユリウスと決闘をすることになりますが、素人同然のスバルは徹底的に打ちのめされてしまいます。
その後、エミリアはスバルとの関係を解消すると言、スバルとレムを王都に残してロズワール邸へと戻っていきました。
しかも、そこに追い打ちをかけるように現れたのが、嫉妬の魔女サテラを信奉する魔女教でした。狂信者集団である彼らが、エミリア達のいる村へ迫っているというのです。
そのことを知ったスバルはエミリアを助けるため、レムとともに再び過酷な運命に立ち向かうことになるのです。
- 著者
- 長月 達平
- 出版日
- 2014-06-24
第3章では、エミリアとスバル、そしてレムの絆を感じるエピソードが多くあります。
仲間といえば、当然エミリアとスバルは1巻から続く仲間。しかし本章では、そんな2人がそれぞれの考えの違いや誤解の積み重ねで決裂してしまいます。それぞれの信念や立場、すれ違いなどが積み重なったゆえの決裂であり、そのことを知っている読者にとってはもどかしさを感じられるでしょう。
一方、レムは当初スバルのことを疑い、敵として襲撃をしてきたこともありましたが、誤解が解けてからはスバルを誰よりも信頼する心強い仲間となります。
レムは、王都で誰も頼れずに孤立するスバルをただ一人支え続けます。この時のレムの存在や、スバルに投げかけた言葉は、後のスバルに大きな影響を与えます。特に、スバルが立ち直るきっかけを与えたレムの言葉は『リゼロ』で最高の名シーンといっても過言ではありません。ぜひその目でチェックしてみてください。
またラストでは、そんなレムに最大のピンチが訪れます。このピンチは、スバルにとって今後の行動原理の1つにも繋がるものなので、ぜひ押さえておいてください。
スバル、エミリア、レムの3人が運命に立ち向かう姿にハラハラが止まりません。
魔女教の襲撃をひとまずは退け、決裂していたエミリアとの関係も修復したスバル。しかし、その代償として、魔女教に襲われたレムは周囲の人々から存在を忘れ去られ、意識を失ってしまいます。
さらに、魔女教から逃れるため避難していたロズワールとアーラム村の人々は、いつまでたっても帰ってきません。実はロズワール達は、「聖域」と呼ばれる特殊な結界に覆われた場所に捕らわれていたのです。
その結界を張っているのは、魔女エキドナという人物でした。結界を解くためエミリアはエキドナの試練に挑みますが、過酷な内容にすっかり弱ってしまいます。
スバルはそんな彼女をどうにか支えますが、さらに腸狩りのエルザが屋敷を襲ってきたり、聖域を襲う魔獣大兎が現れたり、聖域の番人ガーフィールに妨害されたりと、次々と試練が振りかかってくるのです。スバルはすべてを取りこぼすことなく救うため、幾度となく「死に戻り」をくり返すことになってしまいます。
実はこれには、ロズワールの思惑がありました。彼はある目的のため、スバルにわざと試練を与えたり、「死に戻り」をくり返させたりしていたのです。
- 著者
- 長月 達平
- 出版日
- 2016-10-25
第4章では、スバルの内面をより深く掘り下げるシーンがいくつもあります。エキドナの与える試練では、もう会うことができないであろう現実世界の両親とのやり取りが描かれたり、「スバルが死んでも時間が戻らなかった世界」を見せられたりといったシーンが続きます。孤独な葛藤をくり返す彼の姿に、心打たれる読者も多いかもしれません。
さらに、エキドナの試練の過程で、エミリアの過去も明かされます。そこには、驚くべき真実が隠されていました……。彼女が過去とどう向き合うのかも4章の見どころです。
同時に第4章は、スバルにわざと困難を与えていたロズワールの思惑が明らかになったり、ベアトリスがスバルの新たな相棒になったりと、エミリア陣営がようやく一つにまとまり始める章でもあります。
また、第1章でスバル達を苦しめたエルザとも決着がつき、前半のクライマックスともいえる内容でしょう。そして、スバルとエミリアの関係性にも少し発展があります。
聖域の騒動を経て、エミリア陣営にはどのような変化が起きるのでしょうか?
聖域の事件を経て、正式にエミリアを守り、支える騎士となったスバル。それから1年後、エミリアと同じく王を選ぶ人物の1人であるアナスタシアが主宰する会合に参加するため、エミリア達は水門都市プリステラに集まりました。
しかし、そこに突如、魔女教の中心メンバーである大罪司教達が襲ってくるのです。 町と、そこに住む人々すべてを人質に取られてしまうなか、エミリアをはじめとする王選候補達は、一時的に共闘することに。結果、大罪司教の一部を捕まえることはできましたが、他のメンバーによって水門都市はさらなる危機へと陥ってしまって……。
- 著者
- 長月 達平
- 出版日
- 2018-03-24
大罪司教達によってプリステラの人々を人質にされてしまった挙句、町の人々が竜や蠅の姿に変わってしまうなど、次々と問題が起こります。
困難な状況ですが、スバル達に協力するメンバーは非常に豪華。作中最強キャラクターの「剣聖」ラインハルト、彼の祖父で「剣鬼」の異名を持つ老紳士ヴィルヘルムなど、いずれも強力なキャラクターがそろい踏み。ここまで読んできた読者にとってはオールスターのようなメンバーです。
しかし、敵もまたかつてないほどに強力です。大罪司教の「憤怒」「強欲」「色欲」「暴食」など、こちらも魔女教の最強クラスの人物ばかり。さらに、死後に操られた人物たちもスバルたちの行く手を阻みます。
第6章はバトルに次ぐバトルで激しい展開が続きます。そのなかでもスバルだけではなく、各キャラクターにスポットを当てた切ないエピソードも描かれていますので、そのあたりもチェックしつつ読んでみてください。
5章の戦いで、強欲の魔女エキドナによって生み出された人工精霊「襟ドナ(アナスタシアの襟に擬態しているため)」と人格が入れ替わってしまったアナスタシア。さらにプリステラの人々も姿を変えられたり、記憶を奪われたりと被害に遭っています。
彼らを助けるため、三大英傑のひとりである賢者シャウラに話を聞こうと、スバルたちは旅立ちます。目的地は、西の果てにあるアウグリア砂丘を越えた先に位置するプレアデス監視塔。
そこに行きつくまでには、唯一監視塔に繋がる時間である砂時間を利用しなければいけません。しかし、その砂時間は猛烈な風が吹き荒れ、突破は容易ではありませんでした。さらにそこを抜けたと思えば、監視塔から放たれる光の針に襲われます。
やっとたどり着いた監視塔で、スバルはついにシャウラと出会います。しかし、彼女は「自分は賢者じゃないっス」と否定、むしろ賢者は自分の師匠である「フリューゲル」だと言います。
スバル達は、期待していた賢者には出会えなかったものの、監視塔の本当の名前が「プレイアデス大図書館」で、さまざまな知識が隠されていることを知ります。そして、塔の上層階に行くには「試験」が必要だということが判明。レムやアナスタシア、プリステラの人々を救う手立てを求め、スバルたちは図書館の試験に挑むことに……。
- 著者
- ["長月 達平", "大塚 真一郎"]
- 出版日
21巻から始まる第6章。監視塔にたどり着くまでの展開がヘビーですが、監視塔で出会ったシャウラのキャラが拍子抜けするほど明るいもの。しかし、好意的でありながらどこか信用ならないのもシャウラからは、読者も目が離せなくなることでしょう。
そして、試験に挑む過程で、なんとスバルが異世界での記憶をすべて失ってしまうことに。さらに、記憶のない状態で何者かに突き落とされて死に戻った彼は、仲間の誰も信用できず、疑心暗鬼になってしまいます。それは、これまでに信頼関係を築いてきたエミリアやベアトリスに対しても同様だったのです。
スバルはなぜ記憶を失ってしまったのでしょうか?そして、記憶を失ったまま死に戻りを繰り返すスバルは、試験を突破することができるのでしょうか?
プレイアデス監視塔の試験をすべて突破したスバルたち一行。しかし、試験を突破した直後、黒い影に捕らえられたスバルは、ルグニカ王国から遥か南方の大陸にある神聖ヴォラキア帝国に転移させられてしまいます。
そこで、スバルはなんと、意識を取り戻したレムと再会します。しかし、レムは記憶を失っており、魔女の残り香を強烈に漂わせるスバルに敵意を向け、彼から離れようとします。
そんな時、2人はヴォラキア帝国に捕らえられ、捕虜となってしまうのでした。そして、帝国に反旗を翻そうとするシュドラクの民と、玉座を追われた皇帝アベルと出会います。
- 著者
- ["長月 達平", "大塚 真一郎"]
- 出版日
7章では、ついに舞台がルグニカから離れます。孤立無援ともいえるスバルとレムの様子は、さながら3章のリピートのようでもあります。しかし、今度の舞台は二人が初めて訪れるヴォラキア帝国、記憶を失ったレムがスバルをまるで信用していないという違いがあります。
そんなレムを連れて、ルグニカ王国へと戻ることを誓うスバル。しかし、ヴォラキア帝国に目を付けられてしまった彼らが無事にルグニカに戻ることは、不可能に近いといえるでしょう。そこで、アベルが帝国に対して起こす戦争にしぶしぶ協力することに。
これまでの『リゼロ』とは異なり、戦争というテーマを扱った第7章。さまざまな困難を「死に戻り」の力で乗り越えてきたスバルですが、今度はできるだけ戦争を無血で終わらせるために知恵を絞ることに……!
そして、気がかりなのはレムとスバルの関係です。記憶を失い、スバルに対する信頼も失ったレムが、以前のように笑う日は来るのでしょうか?
人気ヒロインである彼女に、今後どのような変化が訪れるのか要注目です!
いかがでしたか?死んだらやり直せるという主人公の設定が面白い本作。オリジナリティのある設定をぞんぶんに活かした主人公の活躍はもちろん、サブキャラクター達も実に魅力的です。さらに、世界観の作り込みの緻密さや、いくつも散りばめられた伏線も本作の魅力のひとつ。
未だ明かされていない『リゼロ』の謎について、考察してみるのも面白いかもしれませんね。