新聞記者を経て作家になった芦辺拓。豊富な知識をしっかりと組み込んだ作品が人気を得ています。そんな芦辺拓の作品のおすすめを5作ご紹介します。
芦辺は、1958年に大阪府大阪市で生まれます。大阪教育大学附属高等学校天王寺校舎を経て、同志社大学法学部卒業。読売新聞大阪本社の校閲部・文化部記者として働き出します。
1986年、本名である小畠逸介名義の『異類五種』で幻想文学新人賞に佳作入選。1990年には、芦辺拓名義の『殺人喜劇の13人』で作家デビューを果たします。
学術からサブカルチャーまで、知識豊富な作家・芦辺。ミステリー、SF、冒険小説などへのオマージュ、メタフィクション、本格ミステリーへの問題定義としてのラディカルな試みなどを混ぜ合わせた作風が特徴です。歴史上の人物を探偵役に据えたり、パスティーシュ(作品の模倣)を用いて過去の名探偵を登場させたりする作品も多く執筆しています。
- 著者
- 芦辺 拓
- 出版日
- 2015-01-29
鮎川哲也賞受賞作。芦辺拓のデビュー作であり、森江春策の事件簿シリーズ1作目です。
ミニコミ誌サークル・オンザロックのメンバーの共同下宿である泥濘荘で、メンバーの1人の縊死体が発見されました。本事件が、連続殺人の幕開けとなります。メンバー内で探偵作家を目指す十沼京一は、推理を展開していきますが……。
登場人物が多く、矢継早に事件が起こります。さらに手記を書く登場人物の事件に対する推理が入ってきます。これを面白いと感じられれば、ページをめくる手を止められないでしょう。最後の最後になって探偵が登場し、謎を解決する展開はベタですが、それだけになんだかほっとしてしまう感覚もあります。オーソドックスなミステリーとして楽しめますよ。
- 著者
- 芦辺 拓
- 出版日
- 2013-03-23
昭和12年大阪。老舗薬種商の鴇屋蛟龍堂は長年、元祖と本家に分かれていがみ合っていました。そんなとき、若き探偵・金田一耕助は、本家の善池初恵から尾行してくる犯人を探してほしいと依頼を受けます。金田一が真相究明に挑んでいると、もう一人の探偵・明智小五郎も同地に到着して……。
江戸川乱歩と横溝正史のパスティーシュ、パロディ、オマージュ、贋作を謳っている短編集です。なんと表紙までオマージュです。両作家の愛読者でも、未読者でも楽しめる内容です。愛読者は作品を読んでいればわかるキーワードに、思わずにやにやしてしまうでしょう。
とりわけ表題作『金田一耕助対明智小五郎』では、名探偵・明智小五郎と金田一耕助が同じ空間におり、ワクワクが止まりせん。
- 著者
- 芦辺 拓
- 出版日
- 2016-04-28
科学都市に暮らす女学生エマ・ハートリーは、父が船長をつとめる空中船・極光号の船内で不思議な少年ユージンに出会います。エマは、ユージンとともに名探偵ムーリエに弟子入りし、都市で起きる奇妙な事件の調査に携わることになり……。
SFとミステリー、痛快な冒険物語を楽しめる本作。謎解きは奇想天外ですが、その構成は本格的です。SF、スチームパンク、レトロフューチャー、冒険小説、古典的な外国語作品が好きな方なら、きっと大満足できますよ。
- 著者
- ["芦辺 拓", "清瀬 赤目"]
- 出版日
- 2015-10-14
ちょっと内気な帰宅部エースの「ぼく」の家に、突然上がり込んできた美少女探偵・降矢木すぴか。お嬢さま学校に通う彼女は、賢く、なかなかの武闘派でした。「ぼく」の日常は、すぴかとの出会いによって大きな変化を遂げます。「ぼく」は、エキセントリックなすぴかに、振り回されるようになり……。
芦辺拓自身はあとがきで、本作で「子どもがミステリーに興味を持ってくれればいい」と記しています。ライトノベル風にさくさく読める楽しさを求めている方には、ぴったりです。
- 著者
- 芦辺 拓
- 出版日
- 2013-09-25
資産家の老人が、遺言書作成相談のために森江法律事務所を訪れた帰りに、密室状態の袋小路で殺害されます。遺されたものは、世界に1冊の奇書と莫大な遺産。奇書には、多彩な物語が記されています。異なる時代を描く6編の物語は、いろいろな言語で綴られていて、300年に渡る壮大な謎に繋がります。この謎を、弁護士・森江が解いていくのです。
まるで映画を観ているかのような感覚に陥る作品です。6編の物語は、東方綺譚、海洋活劇、革命秘話、秘境探検、ウェスタン、航空推理とどれも好奇心をくすぐられます。巧みな構成と展開のおもしろさに、引き込まれること間違いなしです。6編の物語の行く末を本書でぜひ確認してください。
多種多様な作品を生み続ける芦辺拓。うんちくがちりばめられながらも読みやすい作品を、ぜひ楽しんでくださいね。