ペットのなかでも特に人間にとって身近なのが、犬でしょう。だからこそ、彼らが活躍する物語を読むと感情移入をしてしまう人も多いはずです。この記事では、犬がメインに描かれたおすすめの小説を紹介していきます。
中年男性のトラヴィスは、森の中で1匹の犬に出会いました。その犬に人間のような高い知能を感じたトラヴィスは、「アインシュタイン」と名付け、心を通わせていきます。アインシュタインは人懐こい性格でしたが、一方で常に何かに怯える素振りを見せていて、トラヴィスは不思議に思っていました。
実はアインシュタインは、とある研究所から脱走した実験体だったのです。同時期に「アウトサイダー」と呼ばれる高い知能を持った生物も脱走しています。アウトサイダーは自身の醜い容姿から、愛らしい見た目のアインシュタインには憎悪を抱いていて、脱走後はアインシュタインを殺そうとしていたのです。
アインシュタインはアウトサイダーから逃亡していましたが、両者は特別な絆で繋がっており、もはや逃げ切ることは不可能……?
- 著者
- ディーン・R. クーンツ
- 出版日
アメリカの作家ディーン・R. クーンツの代表作のひとつです。クーンツは小説のほかにも、児童書や詩、映画の脚本などを手掛けています。本書は、日本でもっとも読まれた作品として有名です。
犬は私たち人間にとって身近な生き物ですが、彼らの言葉を理解することはできません。犬と会話ができればいいのにと感じたことがある方も多いでしょう。
本書には、天才犬のアインシュタインが登場。トラヴィスが対話を試みると、徐々に意志の疎通ができるようになっていくのです。犬でありながら表情豊かな描写がされ、犬好きにはたまらない内容になっています。
またトラヴィスをめぐる人間模様にも注目。ラストの展開は、涙なしでは読めないはずです。
主人公の女性は「デューク」という名前の犬を飼っていました。しかし、もうすぐクリスマスという頃、デュークは死んでしまいます。女性は悲しみに暮れ、泣きやむことができないでいました。
そんな時、彼女の前に爽やかでハンサムな男の子が現れます。女性は1日デートをすることにしたのですが、やがて彼がデュークに似ていることに気付くのです。深い瞳の色、好きな食べ物、ジェームズ・ディーンに似ている横顔……彼の正体は?
- 著者
- ["江國 香織", "山本 容子"]
- 出版日
- 2000-11-08
2000年に発表された、江國香織の作品です。もともとは1989年に発表された短編で、センター試験の国語の問題文に採用され、試験中に泣き出してしまう人が続出したと話題になりました。
本書は、版画家の山本容子がイラストをつけた絵本になっています。こちらを振り返る愛らしいデュークの姿が目をひくでしょう。
何もかもがデュークにそっくりな彼。いったい何者なのか、最後の場面まで想像を膨らませながら楽しむことができる作品です。女性がデュークを愛したように、デュークも彼女のことを愛していたことがわかり、号泣必死。心をじんわりと癒してくれる一冊です。
南アルプスの山岳救助隊と、救助犬を中心とした物語が12編収録されている短編集です。
助けを待つ遭難者、遭難者を発見した登山者、かけがえのないパートナーである救助犬とともに厳しい自然のなかで戦う救助隊のメンバーなど、山岳をめぐるドラマが描かれています。
- 著者
- 樋口明雄
- 出版日
- 2017-04-14
2017年に発表された樋口明雄の作品です。
四季折々、さまざまな表情を見せてくれる山。美しい一方で、自然の猛威は時に恐ろしくもあります。山岳救助隊は、山を愛する人たちにとって欠かせない存在なのです。また健気で勇敢な救助犬たちの姿にも胸を打たれるでしょう。
山好きの方や犬好きの方はもちろんですが、自然や命の尊さについて考えるきっかけになる、多くの方の読んでもらいたい一冊です。
警視庁公安部を退職した奥野のもとに、とある潜入捜査の依頼が届きます。その内容は、北のさびれた地方にあるモーテルの管理人をしながら、疑似家族を演じるというもの。引き受けた彼の前に現れたのは、学校に通ったことのない23歳の女性ふみと、元陸上自衛隊の隼人、そしてどこから迷い込んだドーベルマンのマクナイトでした。
全員が心に傷を負っている彼ら。しかし一緒に暮らすうちに、ぎくしゃくとしながらも少しずつ心を通わせていきます。
そんななか、警察当局の狙いと陰謀が明らかに。3人と1匹の運命は?
- 著者
- 沢木 冬吾
- 出版日
- 2014-07-25
2012年に発表された沢木冬吾のハードボイルド作品です。主人公の奥野はもともと、警察犬などの調教をするハンドラーでした。妻を殺人事件で亡くし、未解決のまま退職をしています。マクナイトを見た時に、自分の過去を思い出し、引き取ることを決意するのです。
本書のテーマは、信頼と再生でしょう。人間と人間、人間と犬が心を通わせ、過去を乗り越え、やがて本当の家族のようになっていきます。
見どころはやっぱり、マクナイトの活躍。人がたくさん亡くなり、敵と味方が入り乱れるミステリー展開ですが、不思議と優しい気持ちにさせてくれる作品です。
犬と人間の関わりを密に描いた短編集です。
犬は人間よりずっと寿命が短く、人間より先に天国に旅立ってしまいます。それでも私たちは犬を愛し、犬と暮らす選択をするのです。
別れがあると知りながら、どうして犬を飼うのでしょうか。本書を読むと、きっとその理由がわかるでしょう。
- 著者
- 馳 星周
- 出版日
- 2015-09-18
2013年に発表された馳星周の作品です。馳はヤクザや犯罪などをハードに描いたノワール小説で有名な作家ですが、本書はこれまでの世界観と一線を画す、あたたかくて優しい物語になっています。
どの話からも、彼が犬へ注いでいる愛情の大きさが感じられるでしょう。別れの悲しみはありますが、それ以上に一緒に生きられることの喜びがあるから、私たちは犬を飼うのです。
犬だけでなく、生き物をペットとして買うことについても考えをめぐらせることができる一冊。飼育マニュアルからはわからない、飼い主にとって大切なことが書かれています。
本書の主人公は、白いプードルの「スピンク」。どうやら人の前世がわかるようで、現在彼を飼っている主人は前世が犬で、現世でようやく人間になれたといいます。
スピンクは主人のことを「ポチ」と呼んで観察し、日記につけていくのです。
- 著者
- 町田 康
- 出版日
- 2014-04-15
2011年に発表された町田康の作品です。スピンクは町田の飼い犬の名前で、2017年に亡くなってしまったそうですが、長い時間を一緒に過ごし、よく観察していることがわかるでしょう。反対にスピンクから見ると、人間の行動には変なところがたくさん。独特の感性と思考回路で、彼から見た世界を描写していきます。
酔っ払って歌を歌ったり、虫退治をしたり、時に文学の鬼となったり……何気ない日常のなかから、犬と一緒に暮らすことの楽しさを想像させてくれる一冊です。