幽霊少女と偶然出会った男子高校生が、彼女に振り回されながら、多くの女子高生と知り合っていくことになり……?そんなラブコメ漫画が原作・小島あきら、作画・香澤陽平の『よなかのれいじにハーレムを』です。
本作の主人公・夜中野零時(よなかのれいじ)は、平穏無事をモットーにしている少年。
ある日、街中でゴスロリ服を着た不思議な少女と出会います。実は、彼女は生きた人間ではなく、誰とも交われない孤独な幽霊の少女でした。幽霊少女は零時を「自分を認識できる運命の人」と思い込み、執拗につけ回すようになりました。
やがて彼女は零時の母親も自分を感知できることを知り、より多くの人間に存在を知ってもらう方法を思いつきます……。
- 著者
- 小島あきら
- 出版日
- 2018-09-21
少女が思いついた方法とは「零時がたくさんの子孫を残し、自分を感知できる人間を増やす」というもの。
学校でボッチな彼に、ハーレムを作る計画を実行する幽霊少女。彼女の画策によって、零時は多くの可愛らしい女子高生と出会い、平穏無事ではない賑やかな日常を送っていくことになります。
原作者の小島あきらは12月14日生まれ、茨城県出身の漫画家・イラストレーターです。年齢も性別も明らかにされていません。
『エウレカ!』がガンガンWING金の翼賞の期待賞に選ばれ、1999年に「月刊ガンガンWING」に掲載されたことで商業誌デビュー。2000年に連載した『まほらば』がヒットし、2005年にはTVアニメ化もされました。
- 著者
- 小島 あきら
- 出版日
代表作『まほらば』はあるアパートを舞台に、ホームドラマ色のあるラブコメとして人気を博しました。この他、短期間ではありますが4コマ漫画なども手がけており、小島あきらはコメディタッチを得意とする作品を多く生み出しています。
作画を担当した香澤陽平(かざわようへい)の詳しい経歴は不明です。獨協大学の卒業生で、在籍時に投稿した『桜涙』が「コミックゼノン」のマンガオーディションで準グランプリを受賞しています。
大学を卒業後は、同じ大学の漫画研究会時代の仲間だった五十嵐正邦の下で修行したそうです。
商業誌での仕事は本作が初めて。初商業作とは思えないほど巧みな筆致で、小島あきらのラブコメストーリーと非常にマッチしているといえるでしょう。
主人公・夜中零時(よなかの れいじ)は一匹狼と言い張る、学校でボッチの少年。しかし徐々に幽霊少女や他のヒロインとのやりとりのなかで、徐々に人のよさが見えてきます。無意識な言動がいちいちイケメンなため、女の子を惹きつけます。
女性陣で最も特異なキャラが、2巻が発売した2019年4月現在も名前が不明という幽霊の少女。
外国人のようにも見えるゴスロリ服を着た少女で、長期間1人きりだった反動からか、零時にウザいほどついてまわります。基本的には明るい性格なのですが、たまに幽霊ならではの孤独感が垣間見え、素性が気になる少女です。
そんな彼女が目を付けた1人目のヒロインが、文車読(ふぐるま よみ)。口数の少ない正統派文学少女と見せかけて、零時に積極的に接点を持ったり、マイペースで大胆な発言が魅力的です。零時の優しい言葉に簡単に落ちそうになるなど、ちょろいヒロインともいえるかもしれません。
凜とした風紀委員の羽村美法(はむら みのり)も見逃せません。文武両道の格好いい女子かと思いきや、天然な上にむっつりスケベという残念美人。些細なことから妄想が暴走してしまうところが面白い女の子です。
文学少女、風紀委員ときて、ギャルも登場。高円寺彩(こうえんじあや)は中年男性に襲われかけたところを零時に助けられます。それ以降、零時を何かと気にかけ、積極的にアプローチしていきます。一見軽い言動に見えますが、ストレートな感情表現が心地よいヒロインです。
この他にもまだまだヒロインは登場します。可愛いだけじゃない、一風変わったヒロインが多数登場するのも、本作の魅力の1つです。
あらすじでも触れましたが、幽霊少女の目的は「自分を見ることのできる人間を増やすこと」。つまり彼女を見ることができる零時の血筋を増やすことにあります。
どこまで本気かはわかりませんが、100人単位の子供がいたといわれるチンギスハンを目指しているような描写が出てきます。チンギスハンの子孫は世界に1600万人いることがわかっているといっていますが……。
彼女は幽霊の特性を利用して裏で糸を引き、ヒロインたちと零時を引き合わせます。そして彼の天然タラシの才能によって、ヒロイン達は続々と彼に惹かれていくのです。
ただし、零時自身にモテているという自覚はなく、特定の女の子に好意を抱くこともないため、関係は一向に進展しません。
着々とハーレムを形成しつつも、零時が鈍感さを発揮して絶妙に彼女たちのアプローチをスルーする展開に、ラブコメらしいモヤモヤとニヤニヤ要素が詰まっています。
果たしてこのままハーレムが継続していくのか?誰か1人が選ばれるのか?ハーレムの行方が気になります。またこのハーレムは幽霊少女の存在にも関わってくる重要事項なので、今後の展開に目が離せません。
本作は、コメディタッチで物語が進んでいきます。零時と幽霊少女のドタバタなかけ合いに、各ヒロインたちが絡んできて、話が展開していくのがお約束のパターンです。そんな出会い方をしても、零時が彼女たちを思いやるシーンが要所に見受けられ、よい関係になっていきます。
が、本作はそれだけに終わりません。
合間合間で幽霊少女が下ネタをぶっ込んでくるのです。何しろ彼女の目的は零時の子孫繁栄なので、執拗に子作りを迫ってきます。この唐突な下ネタを含むギャグ展開が、読者を飽きさせない物語のアクセントといえるでしょう。
また、幽霊少女は偏執狂なほどヒロイン候補をリサーチしています。彼女が持っている手帳には、ヒロインたちの特徴がびっしりと書き込まれています。その姿はヤンデレ的な怖さを感じさせるほど。
陽気なキャラクターかと思いきや、謎めいた部分が見え隠れするところも、本作に惹きつけられる理由の1つです。ただのラブコメではなく、伏線のような展開が読者を飽きさせません。
幽霊少女は次々とヒロインを送り込んでいきますが、零時が女の子に手を出さないのでハーレム計画は思うようにいきません。
そこで彼女は、相手役ばかり気にして零時の好みを失念していたことに気がつきます。彼のことをもっと深く知ろうと、デートに誘うのですが……。
- 著者
- 小島 あきら
- 出版日
- 2019-01-22
キャラ立ちはしていましたが、ずっと裏方に徹してきた幽霊少女の本音と、零時の素の表情が垣間見えるこちらのエピソードが、本巻の見所です。周りに見えないといえども、洋服のファッションショーをして見せるくだりでは、彼女も普通の女の子なのだと再認識させられます。
いつもの型破りなところはなりを潜め、年頃の少女らしくはしゃぐ可愛らしい幽霊少女の様子は必見。彼女の本心と今後が気になります。
また、2巻ではギャル系の高円寺のエピソードからスタートします。続々とヒロインが増えていく第2巻も目が離せません。
いかがでしたか? 幽霊に導かれて大きくなっていくハーレム。果たして主人公は誰と結ばれるのか?幽霊少女の行方は?今後の展開が気になる作品です。