嫌なことがあっても辛いことがあっても、笑えば吹き飛ぶことってありますよね。今回は、クスっと笑えるユーモアたっぷりの絵本を紹介していきます。親子で楽しいひと時を過ごしてください。
虫歯が痛くて歯医者に行ったわにさん。歯医者さんはびっくりぎょうてんです。
歯医者さんが怖いわにさんと、わにさんが怖い歯医者さん。お互いに覚悟を決めてがんばるしかありません。さあ治療が始まります。
- 著者
- 五味 太郎
- 出版日
作者は、数多くのユニークな作品を世に送り出している絵本作家の五味太郎。本作でも、わにさんと歯医者さんの心境を見事な手法で描いています。
虫歯ができたわにさんは、歯の治療が怖くて「どきっ!」とします。同じ場面で歯医者さんも、患者としてやって来たわにさんに襲われないかと「どきっ!」としているのです。治療が始まると、わにさんは思わず「いたい!」と言います。暴れるわにさんに手を噛まれてしまった歯医者さんも「いたい!」。
異なる立場でまったく同じセリフを言い、物語が成立しているのが魅力です。驚きとともに、大人は感心してしまうでしょう。
ほのぼのとしたイラストはユーモアのあるお話にぴったり。歯磨きの教育にもおすすめです。
どうぶつむらに、あたらしく びょういんが できました。
おいしゃさんはさるのせんせいです。
かんごふさんはへびのかんごふさんです。(『さるのせんせいとへびのかんごふさん』より引用)
患者さんが来る前に、まずはひと仕事。さるのせんせいは、へびのかんごふさんに珍しい草や根っこを食べさせて、水を飲ませます。よく振ってかきまぜて、容器に移せば 薬のできあがりです。
さあいよいよ診察が始まります。いったいどんな患者さんがやって来るのでしょうか。
- 著者
- 穂高 順也
- 出版日
穂高順也が文、荒井良二が絵を担当した作品です。
へびのかんごふさんが薬を飲んで噛みつけば注射になるし、お腹の中に入れば胃カメラに。そのほかにも身長計や物干し竿まで、患者さんを治療するために変身していきます。想像もできないようなユーモアのある治療方法の連続で、大人も子どもも楽しめるでしょう。
ちょっととぼけたような、それでいて仕草がわかりやすいイラストも魅力的です。
おしっこがしたくなったひでくん。トイレを借りにデパートにやってきました。ところが、受付のお姉さんに教えてもらったトイレは工事中です。3階のトイレに行こうとエレベーターに乗ると、なんと屋上まで止まりません。
もっちゃうもっちゃうもうもっちゃう(『もっちゃうもっちゃうもうもっちゃう』より引用)
ひでくんの我慢はもう限界。急いで階段をおりていると、キリンさんに会いました。ひでくんを近くのトイレに案内してくれるとのことですが……ぶじにたどり着くことができるのでしょうか。
- 著者
- 土屋 富士夫
- 出版日
作者の土屋富士夫は、日常のなかにある「あるある」を描くのが得意な作家。本書では、おしっこを我慢しているひでくんが、不思議なデパートに迷い込み、大慌てでトイレを探し回ります。キリンさんやこうもりさん、がいこつさんやようかいさんが案内してくれるトイレは、ひでくんには使えないものばかりなのです。
誰しも1度は、トイレを我慢した経験があるでしょう。その苦しみがわかるからこそ、ひでくんの様子にハラハラドキドキしてしまいます。
「もっちゃうもっちゃうもうもっちゃう」という、リズミカルなフレーズも魅力的。物語にスピード感を与えてくれます。
かみなりがドーンと落ちたある日の夕方のこと。気がつくと、おじいちゃんとぼくの目の前にかみなりさまの親子が座っていました。
いいから、いいから、
せっかくきてくださったんじゃ。
ゆっくりしてください(『いいからいいから』より引用)
おじいちゃんは、遠慮するかみなりさまの親子にご飯をふるまい、お風呂で背中を流し、パンツも貸してあげるのです。
- 著者
- 長谷川 義史
- 出版日
絵本作家、長谷川義史の作品です。なんでもかんでも「いいからいいから」と笑い飛ばすおじいちゃん。かみなりさまにおへそを取られても「いいからいいから」、おへそをおでこにつけられちゃっても「いいからいいから」。あまりの寛容さに、ほんとにいいの?と突っ込みたくなってしまいます。
そんなおじいちゃんのユーモアたっぷりの言動に、ドギマギしてしまうかみなりさまもかわいいです。嫌なことがあったら、本書のように「いいからいいから」と唱えてみましょう。暗い気分はふっとんで、前向きになれるはずです。
森の中から飛び出してきた、3匹の野ねずみ。そのあとを、2匹のはらぺこ山猫が追いかけます。野ねずみを食べたい山猫と、食べられたくない野ねずみ。みんな必死に走っているから、先にある深い穴には気づきません。
「あわわ」
「きゃああああ~」
いきおいあまって、のねずみもやまねこも あなのなかに
ひゅううううううん、どっし~ん!!(『どうするどうするあなのなか』より引用)
彼らが落ちた穴は思ったより深くて、壁はつるつる。簡単には出られそうにありません。どうすれば脱出できるのか、5匹は頭を抱えます。
- 著者
- きむら ゆういち
- 出版日
- 2008-06-25
「あらしのよるに」シリーズで有名なきむらゆういちが文、高畠純が絵を担当した作品です。縦に開く仕様が新鮮な本作。山猫と野ねずみが落ちた穴の深さがよくわかります。
敵同士がひとつの穴に閉じ込められ、一体どうなってしまうんだろうとはやる気持ちを抑えられません。どちらかがどちらかを肩車すれば外に出られそうですが、誰かが穴の中に残されてしまう……駆け引きがくり広げられます。
彼らが思いついたユーモアのある脱出方法に感心しつつ、最後に待っているのはちょっと間抜けなオチ。いい意味で予想を裏切るストーリーをお楽しみください。
「あのさ、おとうさん。オレ、ネコになることにするや。」
「え?おまえはネコにはなれないよ。」
「なんで?」
「そりゃおまえがカエルだからだよ。」(『オレ、カエルやめるや』より引用)
カエルが嫌でしかたがないカエルの子。自分にはないものをいっぱい持っている、かわいくて、ふさふさの動物になりたいというのです。
- 著者
- デヴ・ペティ
- 出版日
- 2017-11-25
口を大きくあけたカエルの表紙が印象的な本作。アメリカ発祥の絵本で、コメディアン小林賢太郎が翻訳しています。少し崩した親しみやすい日本語で、物語のポップな印象をより惹きたてています。
濡れていて、ぬるぬるしていて、虫ばっかりたべるところが嫌だから、カエルの子はカエルをやめたいと言います。ところが、なんでも食べちゃうオオカミが唯一食べられないものがカエルだそうで……。
「なんで??なんでカエルは たべないの?」
「あなたたちは ぬれてるし ヌルヌルだし ムシがはいっているからですよ!」
「そっか…。こりゃあ カエルでよかったって ことだね。」(『オレ、カエルやめるや』より引用)
短所と長所は表裏一体。カエルの子は、やっぱり自分はカエルでよかったと納得するのです。他人のことばかりが羨ましく見えてしまう時は、本書を手に取ってみるとよいでしょう。ユーモアたっぷりのカエルの親子が、唯一無二のすばらしい「あなた」を見つけ出してくれるはずです。