本作は、女子高生達が青春の全てをかけて、アニメ制作に取り組む漫画です。個性の強いキャラクターたちが、それぞれの得意分野を活かしてアニメ制作に取り組みます。もちろん、若い彼女たちには試練がたくさん。それでも楽しそうな彼女たちを思わず応援したくなってしまうでしょう。 2016年に連載が開始され、2019年にNHKでのアニメ化が決定しました。2020年初夏には乃木坂46の人気メンバーが主演を務める実写映画も公開されます。注目が集まる本作の魅力について、紹介していきます。ネタバレも含まれますのでご注意ください。
芝浜高校に入学したばかりの1年生・浅草みどりは、小さいころから「アニメを作りたい」と考えていました。しかし、一人では心細くなかなか一歩が踏み出せません。
お金に目がない同級生・金森さやかをアニメ研究会(通称、アニ研)に誘いますが、断られてしまいます。せめてもと、金森にアニ研の見学に付き添ってもらうことに。
アニ研の見学会場で、2人はカリスマモデルの水崎ツバメと出会います。彼女はアニメーターを目指しており、そのことを知った金森は3人でアニメを作ろうと提案しました。親にアニ研を反対されていた水崎のために、3人は新しく映像研を設立します。アニメ制作に高校生活の青春を注ぎ込んだ、女子高生達の物語です。
- 著者
- 大童 澄瞳
- 出版日
- 2017-01-12
「アニメは設定が命」の浅草を主人公として、人物絵を書くのが好きなアニメーター志望の水崎と、お金に目がないプロデューサー担当の金森の女子高生3人を中心に物語が進みます。
2016年9月号の「月刊!スピリッツ」で連載がスタート。連載1年で、第10回プロスコミックアワード2017にて大賞を受賞しました。「THE BEST MANGA2018 このマンガを読め!」には7位に選ばれ、1巻と2巻は重版が決定するなどして、話題作品として取り上げられています。
2019年にはNHK総合テレビでアニメ化が決定され、PR動画が公開されました。監督は2『夜は短し歩けよ乙女』や『夜明け告げるルーのうた』などの作品を手掛けた湯浅正明が担当。キャラクターデザインは『おそ松さん』を担当した浅野直之と、豪華製作陣が携わっています。
高校時代は映画部に所属し、東洋美術大学絵画科を卒業後、アニメーションを独学で学んだ作者。
もともとは「デンノー忍者」という名前で個人活動をしており、同人誌販売で有名な「コミティア111」に出品したことで、「月刊!スピリッツ」の編集者から声がかかります。そして23歳の時に、ペンネームを本名の大童澄瞳に変え、2016年に『映像研には手をだすな』でデビューしました。
作者・大童澄瞳の作風は、ジブリ映画のような細かい背景に、線の少ないキャラクターが特徴的です。不思議な構造をしている校舎や、街の背景なども注目してみてくださいね。
主人公が「設定が命」と言っている通り、本作は細かい設定を随所で感じることができるでしょう。アニメーションを作る上での効率や費用を考慮するなど物語にリアルさを感じられるところも特徴です。
本作は、キャラクター達が作った設定の中に入り込む演出が多く含まれています。
主人公の浅草は「設定が命」と考えており、自分の設定で作られる「最強の世界」を目指しています。そのためには、たとえアニメの中では使われないところまで密に考える徹底ぶり。
どこにでもある日常風景の絵から、アニメの設定を考えていくうちに、いつの間にか浅草の考えた世界の中に入り込む演出。自然と彼女の設定の中に引き込まれていきます。
誰もが一度はロボットの操縦や、宇宙に行ってみたいと思ったことがあるのではないでしょうか。漫画の中とはいえ、キャラクターが想像した世界に行ける演出には夢が詰まっています。羨ましいと思うと同時に、次はどのような世界を見せてくれるか気になってしまうことでしょう。
本作の魅力は、一度読むだけでは理解することは難しいところがありますが、読み終わった後にもう一度読みたくなってしまう魅力があります。
本作には、浅草達の考えた数々の設定を、見開きで読むことができます。その世界観や、登場するモ機械などの説明を見開きページに詳しく載せており、実際にアニメ制作に使えるのではないかと思わされます。
設定が細かすぎて、読むのが億劫だと感じたり、読み飛ばしてしまう人もいるでしょう。しかし、一度目を通すと、設定で終わってしまうのは惜しいと思わせるような詳細情報が書かれています。それはまるで1つの物語を読んでいる感覚になるでしょう。
たとえば、1巻で「汎用有人ポットカイリー号」という作業用として使う飛行船の設定が出てきました。実際に作れるかはともかく、機体の全長や重さ、航行距離の基本的な設定はもちろん、2人乗りであるが、コックピットが狭いため操縦は基本1人でおこなうこと、飛行するときの翅はソーラーパネルで出来ているなど、全体の形からコックピットの中まで事細かに描かれています。
機械好きの人にはたまらない作品ですし、自分で異世界を作ってみたいと考えている人にとっても参考になる作品でしょう。
作者・大童澄瞳の作風は、繊細に描かれた背景に線の少ないキャラクターが特徴です。浅草達が通う芝浜高校も、戦前からある学校を、度重なる増築を行い、迷路のような校内になっています。
また、セリフの吹き出しを、背景の余白に合わせて描いている作品はあまり見かけないでしょう。本作では、キャラクター達がいる部屋や場所に合わせて、セリフの吹き出しをあえて歪ませる手法をとっています。
吹き出しが歪んでいるため、文字も歪み、読みにくくなっている描写もあります。しかしこの手法は、キャラクター達がその空間にいることを表現し、キャラクター達を立体的に見せてるのです。
他の作品にはあまりみない、独特な世界観が描かれる本作。新たな世界に出会えるでしょう。
アニメを作るなら音は欠かせません。音響担当の百目鬼が加わり、着実に仲間を増やしアニメ制作の幅が広がっていきます。
冬休みに、浅草は水崎とともに旅行に行くことに。旅行先で「たぬきの宝物にまつわる伝説」があることを聞いた2人は、調査に乗り出すことに。伝説について調査する2人の前に、たまたまバイトしに来ていた金森が加わり、浅草の冒険魂に火が付きます。
そしてその伝説を通じて、浅草の頭に舞い降りたインスピレーションは…。
- 著者
- 大童 澄瞳
- 出版日
- 2019-05-10
浅草と水崎が聞いた伝説で、アニメ制作の着想を得ます。作品の題名は「たぬきのエルドラド」。ついにストーリーのあるアニメの制作に取り掛かることになった映像研。彼女たちは、それぞれの得意分野が異なり、作りたいアニメの構想もバラバラ。一体、どのように1本の作品にまとめていくのでしょうか。
また、アニメ制作を通じて信頼関係が深くなっていく彼女たちの姿も描かれ、アニメのクオリティもどんどん進化していきます。
いよいよ本格的なアニメ制作をすることになった4巻。ぜひ、アニメ作りに興味のある人は、読んでみてください。
女子高生がアニメ制作に情熱をかける『映像研には手を出すな!』の実写映画が2020年5月15日に公開されることが決まりました!
出演するのは、乃木坂46の人気メンバー、齋藤飛鳥、山下美月、梅澤美波。実写映画化にあたって、作者・大童澄瞳は『これは乃木坂46からの挑戦状!!「乃木坂VS映像研」という世紀の大決戦なのだ!!!』と熱いコメントをしています。
乃木坂メンバーや監督、大童澄瞳の全コメントは、映画『映像研には手を出すな!』公式サイトで読めます。
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