目に見えてわかる身体障がい、一見何もわからない知的障がい……私たちの周りには、障がいを抱えている人が意外とたくさんいます。幼稚園や小学校で出会うこともあるでしょう。そんな時、子どもにどのように教えればよいのか迷ってしまうかもしれません。この記事では、障がいを知り、理解を深められる絵本を紹介していきます。
さっちゃんのお母さんの丸くて大きいおなかには、もうじき産まれる赤ちゃんがいます。お母さんのおなかをそっと撫でながら、さっちゃんもお母さんになる、と心に決めました。
だからこそ、幼稚園でおままごとをした時に、お母さん役に立候補したのです。そしたら、いつもお母さん役をやっているまりちゃんが、真っ赤な顔で怒り、こう言いました。
「さっちゃんは おかあさんには なれないよ!
だって、てのないおかあさんなんて へんだもん。」(『さっちゃんのまほうのて』より引用)
さっちゃんの右の手には、産まれた時から5本の指が無いのです。
- 著者
- たばた せいいち
- 出版日
- 1985-10-01
障がいを多くの人に知ってもらう絵本を作ろうと、「先天性四肢障害児父母の会」が絵本作家の田畑精一に依頼したことがきっかけでできた作品です。1985年に刊行されて以来、多くの人々に愛されロングセラーとなりました。
さっちゃんが感じている悲しみや怒りがダイレクトに伝わってくる文章とイラストは、読者の心を揺さぶります。まりちゃんの言葉を思い出し、鏡に映る自分の手を見つめるさっちゃん。あの言葉が本当だったらどうしようと、不安で眠れなくなるのです。
しかしお父さんは、さっちゃんの手は「不思議な力をくれるまほうの手」と言ってくれました。お母さんは、ぎゅっと強く抱きしめてくれます。両親の優しさを受け止めて、強く生きていくさっちゃんの姿が印象的。ただの感動物語ではない、人との向き合い方を教えてくれる絵本です。
オチツケ オチツケ
こうた オチツケ(『オチツケオチツケこうたオチツケ』より引用)
お父さんからもお母さんからも先生からも、何度も言われている言葉です。
こうたは、落ち着かなければいけないことはわかっています。でも、授業中に遠くから救急車の音が聞こえてきたら思わず立ち上がって駆けだしちゃうし、ブランコの順番が待てなくて前にいる子の背中を押してしまうのです。
どうしてこうたは、他の子と同じように落ち着くことができないのでしょうか。
- 著者
- ["さとう としなお", "みやもと ただお"]
- 出版日
- 2003-12-25
命の在り方を描いた「いのちのえほん」シリーズのうちの一冊。ADHDの教科書代わりにもなる絵本です。
主人公のこうたは、ADHDです。「注意欠陥多動性障害」とも呼ばれるもので、「オチツケ」と言い聞かせても、感情や衝動をコントロールすることができず、周りの人をびっくりさせてしまいます。ADHDは、目に見える障がいではありません。だからこそ本人も、周りの人も、障がいを理解することが大切なのです。
泣いてばかりいたこうたとお母さんが、ニコニコ笑えるようになったところで物語は終わります。子育てに悩んでいる親御さんにもおすすめの一冊です。
お話をするのが大好きなみっちゃんと、お話を聞くのが大好きなりんちゃんはとても仲良し。同じ幼稚園に通っています。
ある朝みっちゃんが幼稚園に着くと、りんちゃんは大きなペカンの木の下にマットを敷いて、寝ていました。赤ちゃんの時に病気にかかったりんちゃんは、ひとりで立ったり歩いたりすることができません。だからみっちゃんは、自分もりんちゃんの横に寝転がって、たくさんお話をするのです。
- 著者
- 青木 道代
- 出版日
- 2004-03-10
幼稚園では、みんなが友達。障がいのあるりんちゃんも、他の子どもたちに溶け込んでいます。浜田桂子のイラストは、そんな優しい物語にぴったり。太陽の日差しのようなあたたかさが伝わってくるでしょう。
この日みっちゃんが話したのは、幼稚園に来る途中に見た「ねこざぶとん」について。他の子どもたちは「ねこざぶとん」を一目見ようと、ペカンの木に登ります。ただそれだけではなく、一緒に登りたそうにしているりんちゃんを見て、どうすればよいか考えるのです。
幼稚園での何気ない日常のひとコマだからこそ、伝わってくるものがあります。人間は誰でも得意なことと不得意なことがあり、だからこそ助けあうことが大切なのだと学べるでしょう。
ひろくんの友達のまりちゃんは、目が見えません。「見えない」がどんな感じなのか気になって、ひろくんはしばらく目をつぶってみることにしました。
すると真っ暗な世界では、目が見えている時とは比べものにならないほどのさまざまな種類の音が聞こえてきたのです。
そうしてひろくんは思いました。「見えない」ってすごい!
- 著者
- 中山 千夏
- 出版日
- 2005-07-01
文を中山千夏、絵を和田誠が担当した作品。「日本絵本賞」も受賞しています。
目が見えない、耳が聞こえないなどの障がい。多くの人はこのような状況の人に対し、どこか腫れものを扱うかのように接してしまうのではないでしょうか。
でもひろくんは、「自分に無いもの」をもっている人を、素直にすごいと感じます。相手の立場で物事を考えられること、相手のよいところを見つけられること、そんな想像力の大切さを痛感させられるでしょう。子どもだけでなく大人の読者も、自分を見直すよい機会になるはずです。
すずちゃんの「のうみそ」は、ちょっとだけみんなと違います。のうみそは、いろんなことができるように「ピピピ」と指令を出すところ。でもすずちゃんののうみそは、「ぴっぴ、ぴぃー」と、みんなとは違う指令を出すことがあるのです。
だからすずちゃんは、年長さんになってもおしゃべりができません。スプーンもうまく使えないし、くつもひとりで履けず、急に泣いたり怒ったりすることがあります。
- 著者
- 竹山 美奈子
- 出版日
- 2018-01-18
保育園の友達と先生への「ありがとう」の気持ちを、言葉を話せない自閉症のすずちゃんの代わりにママが書いた絵本です。自閉症の子どものなかではどんなことが起こっているのか、親の目をとおしてわかりやすく描かれています。
三木葉苗のイラストは髪の毛の1本1本まで丁寧で美しく、思わず見入ってしまうでしょう。特に、すずちゃんが友達と一緒に三輪車に乗るシーンが印象的です。みんなの表情を見ると、胸がじーんと熱くなるはず。
巻末には、医師の監修のもとに自閉症の主な特徴も掲載されています。障がいについて学ぶ入門書としてもおすすめです。
また、お子さんの教育に役立つ絵本をお探しの方は選書サービス「ブックカルテ」を利用してみてはいかがでしょうか。
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