2015年に89歳で亡くなった児童文学作家であり民話研究家であった松谷みよ子。彼女の作品はたくさんの人に受け入れられ、1人1人の心のなかで育っています。多くの素晴らしい作品を残した松谷みよ子のおすすめの5冊をご紹介します。
松谷みよこ(1926年~2015年)は、東京で生まれた児童文学作家です。
結婚をするも10年ほどで離婚し、シングルマザーとして子育てをしながら仕事をします。児童文学作家であると共に、民話研究第一人者でもある彼女の童話、民話、絵本を子どもの頃に読み、大人になった人は沢山いるのではないでしょうか。
民話研究では、日本各地の民話を収集し、現代にでも語り継がれるよう作品に残しました。語り手の話を聴きながらノートに写して収集していたそうです。
彼女は絵本や童話、現代民話通じ、人間としての生き方、尊厳を表現した作家なのではないかと思います。
彼女は当初、小説を書きたいと考えていましたが、相手を傷つけることになるだろうと思うようになり、童話という手法を選んだそうです。そんな彼女の深い愛情と人間理解が作品から感じられる事でしょう。
「いない いない ばあ にゃあにゃが ほらほら いない いない……」と、可愛いおかおを可愛いおててで隠した猫が登場してきます。ページをめくると、「ばあ」
赤ちゃんは大喜びです!次はくま、次はねずみ……といない、いないばあが繰り返されていきます。
- 著者
- 松谷 みよ子
- 出版日
- 1967-04-15
日本で赤ちゃん絵本として初めて誕生しました。リズムのよい、「いない いない ばあ」が繰り返される、とってもかわいい絵の赤ちゃん絵本です。絵本の中の動物たちはとてもいきいきしていて、どこかコミカルな動きを感じさせます。
絵本の中で、昔より受け継がれてきた赤ちゃん遊びを、親子でスキンシップを取りながら楽しめますよ。赤ちゃんがはじめて出会う絵本として、読み継がれている大ベストセラーの絵本なのです。
可愛い男の子のまこちゃんが、かっこいい赤い自動車を運転している場面から始まります。
「まこちゃんのじどうしゃです はしりますよ ブブー」見開きのページの中に、動きを感じ、躍動感があり、スピードを感じるのです。
「ブブー、びゅーん、チュチュ」などの擬音語もリズムよく登場しますよ。
- 著者
- 松谷 みよ子
- 出版日
- 1969-07-05
この絵本も、うさぎ、くま、ねずみといろんな動物が手をあげて、まこちゃんの自動車に乗せてもらのです。繰り返しがリズミカルであり、あたたかさも画面からにじみ出ているように感じます。カラフルで、動物がいきいきしていて、とてもかわいい絵も心を和ませるのではないのでしょうか。
そんな優しい世界から一転、トンネルに入るとまっくらなページになります。いきなり変わる世界に子供も目をまん丸に!そしてそのトンネルをぬけるとおひさま!本当にドライブをしているような気持ちに。
絵本を読んでいるのですが、車のおもちゃで遊んでいるような感覚になる、たのしい絵本ですね。
太郎はお祖母さんと二人で暮らしています。太郎の母親は、太郎が産まれる前に龍になってしまい太郎とは一緒に暮らしていませんでした。お祖母さんは、体の具合が悪いのに太郎の為に一生懸命働き、太郎を育てます。
ある日、太郎の友達のあやが赤鬼にさらわれます。太郎は、あやを助けに出かけるのです。あやを助け出したあと、今度は、龍になったお母さんを探しに出かけていきました。
- 著者
- 松谷 みよ子
- 出版日
- 2006-07-13
遊んでばかりいた太郎は、この2つの旅でいろいろな経験をすることにより、立派な少年へと成長していきます。太郎の母親の龍が、太郎が赤ちゃんの時に乳をあげられないためにかわりに太郎にの口に含ませたものは……。
この物語は、テレビやアニメ、舞台等で上映され、国際アンデルセン賞優良賞に輝き、100万人の子どもたちに読まれた名作です。太郎の成長が楽しく、そして目前にしているかのように読むことができます。松谷みよ子の民族研究者としてのエッセンスも感じられ、読み応えのあるものになっています。
この本は、600万人に読み継がれている大ベストセラーであり、松谷みよ子の2人の娘の成長日記でもある「モモちゃんとアカネちゃん」シリーズの中の第1巻です。
モモちゃんが産まれてから、3歳になり「あかちゃんのおうち」を卒業するまでのお話が、15話にわかれて書かれています。松谷の娘が3才の時、「私の生まれた時のお話をして」と松谷にお願いしたのがきっかけとなり、誕生したといわれています。
- 著者
- 松谷 みよ子
- 出版日
- 2011-11-15
この中の「かみちゃま かみちゃま」では、猫のプーとモモちゃんがおよめちやんごっこをします。おかあさんが、カーテンにしようと用意していたレースの布をおよめちゃんのベールにみたてるのですが……。
子どもは、モモちゃんと自分を重ねながら、大人も子供も楽しめるあたたかく愉快なお話です。日常とファンタジーを行き来するふわふわとした世界観ですが、現実の部分はかなりリアルに描
かれています。離婚や死などの題材が子供の目を通して描かれているので大人にとっても感じるものがある本です。
新しい町へ引っ越し、新しい生活に夢をふくらませながら学校に通いはじめた小学生の私の妹。ある時、ちょっとした事がきっかけでいじめられるようになってしまいました。
妹は学校には行かなくなりました。何もせず、部屋にとじこもるようになってしまいます。やがて口もきかなくなります。
いじめに傷つき、心を閉ざしていく小さな妹の時間は凍りつき、やがて止まってしまうのです。
妹を傷つけ、あざ笑い、ののしった友達は、やがて、高校生になっていくのですが……。
- 著者
- 松谷 みよ子
- 出版日
- 1987-12-01
この絵本のあとがきで松谷みよ子はこう記しています。
ある時期、わたしもいじめにあっている。そのときのつらさは地獄の底をはうようであった。イソップのカエルのように、「おねがいだから石を投げないで。あなたたちには遊びでも、わたしにはいのちの問題なのだから」と、なんど心でさけんだことだろう。
この絵本は、松谷の元に届いた、いじめられた妹の姉から届いた1通の手紙がきっかけで作られました。その手紙には、いじめられた妹、その家族からの悲痛な魂の叫びが込められていたことでしょう。子どもだけでなく大人にも、ぜひ、読んでいただきたい絵本です。
以上5冊を選ばせていただきました。松谷の作品は、年月を経ても古さを感じさせないのが不思議です。どの作品も時代と共にいきいきと生き続けているように感じるのは私だけではないのではないでしょうか。彼女の作品は、人生を送っていく上で大切なものがちりばめられています。彼女の残してくれた作品の1つ1つを大切に自分の中に取り入れていけたらいいですね。
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いくつかの質問に答えると、絵本の専門家がお子さんにあった作品を選書してくれます。絵本のプロに選んでもらうことで、おもいがけない絵本との出会いが、生まれるかもしれません。