「いくさの子」が面白い!3つの魅力と最新12巻の見所ネタバレ紹介【無料】

更新:2021.11.19

『いくさの子 ~織田三郎信長伝~』は「月刊コミックゼノン」で連載されている北原星望・原作、原哲夫・作画の作品です。「尾張のうつけ者」と呼ばれた少年が、いかにして戦国時代最大の覇王・織田信長となっていくかを描いた歴史漫画となっています。 本作は下のボタンからダウンロードできるスマホの無料漫画アプリでも連載されているので、気になった方はそちらからどうぞ!

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『いくさの子 ~織田三郎信長伝~』が面白い!無料で読める!【あらすじ】

著者
["原 哲夫", "北原 星望"]
出版日
2011-05-20

天文14年(1545年)の夏のこと。尾張那古野(おわりなごや。2019年8月現在の名古屋中区)城城主である少年、織田吉法師(おだ きっぽうし)は津島神社の天王祭を見物に家臣と出かけていました。この吉法師こそ、後の織田信長その人でした。

彼は船で移動していた際に、突如現れた海賊・髑髏党(どくろとう)の襲撃に遭い、拉致されてしまいます。吉法師を目当てに襲ってきた彼らは、当初織田と敵対する今川に身柄を引き渡し、身代金を得るのだと言い放ちます。

しかし、なんとそこで吉法師自身が織田家に対し、2019年現代でいう6億円に値する一万貫文という法外な身代金を提示したことで方針転換。この機転で彼の待遇が、人質から賓客へと大きく変わります。

その後無事解放された彼は、密かに私兵を率いて海賊を強襲し、身代金を奪い返しました。

まだ15歳で成人の意味である元服もしていない少年ながら、すでに後の覇王の片鱗を宿していました。本作は吉法師こと織田信長が、ここから37年後の天正10年(1582年)6月2日、信長最期の日「本能寺の変」までの半生をていねいに描き出していきます。

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作画・原哲夫と原作・北原星望とは

著者
原 哲夫
出版日
2006-04-01

本作の作画を担当するのは原哲夫(はらてつお)です。1961年9月2日生まれ、東京都出身。代表作『北斗の拳』などで、日本国内だけでなく世界的にも有名な男性漫画家です。

私立本郷高校デザイン科に在籍時、漫画劇画部に所属していました。駒澤大学仏教学部に進学するも中退し、その後に漫画家を目指して奮闘します。

1982年、『スーパーチャレンジャー』が「週刊少年ジャンプ」月例賞に選ばれ、さらに『鉄のドンキホーテ』がジャンプ本誌に掲載されて商業デビューを果たします。そしてこの翌年、1983年に連載開始したバイオレンスアクション漫画『北斗の拳』が大ヒットしました。

原哲夫は劇画にも似た濃い書き込みが特徴で、逞しい主人公が痛快に悪を討つ作風で知られています。

北原星望(きたはらせいぼう)の本名は堀江信彦。1955年8月17日生まれで、原作者として名をはせる以前は、集英社に勤め、原の担当やジャンプ編集長を務めていました。

編集者として作家とともに構成や設定を考えていく中、北原星望のペンネームで『CR花の慶次』や「森の戦士ボノロン」シリーズの原作などを手がけるようになりました。

『いくさの子 ~織田三郎信長伝~』の魅力1:豪快で痛快なキャラ

『いくさの子 ~織田三郎信長伝~』の魅力1:豪快で痛快なキャラ
『いくさの子 ~織田三郎信長伝~』1巻

原哲夫が『北斗の拳』などで培った豪快なキャラ作りは本作でも健在。日本有数の武将である織田信長を生き生きと描き出していきます。

信長は創作でも人気の人物なので、彼をモチーフとした作品は数え切れないほどあります。そんななか、本作が他の作品と違うのは、信長が「織田信長」となる前の少年時代、吉法師から成長していく点が挙げられます。

吉法師は後世知られる「うつけ者」と言うより、腕白で行動力のあるガキ大将のような少年です。

型破りで破天荒、有用なら新奇な技術も惜しみなく取り入れ、敵も味方も身分も区別せず、見所のある人物に目をかけるカリスマ。豪快にして果断、前向きな吉法師の描写は、従来の信長のイメージとは異なります。ですが、原哲夫作品の系譜にある漫画として読むと、非常に清々しい気持ちのよい主人公として受け入れられます。

そんな彼が人間的に成長していくところも魅力の1つ。

また本編の大きな敵、信長の半生を語る上で欠かせない人物、今川義元の妖しい存在感も見過ごせません。常在戦場(常に戦場にいること)が信条で、死化粧のつもりで常に美しく着飾っています。端々で描写される今川義元の油断ならない強者感が凄いです。

他にも魅力的な脇役がたくさん出てきますが、実在の人物としては生駒類(いこまるい)の登場が珍しいです。後の信長の側室で、信長と言えば正室の濃姫(胡蝶)が有名ですが、類をもっとも愛していたという説があります。創作ではほとんど出てこないので、類がフィーチャーされるのは注目点と言えます。

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『いくさの子 ~織田三郎信長伝~』の魅力2:ダイナミックで奇抜な戦闘

『いくさの子 ~織田三郎信長伝~』の魅力2:ダイナミックで奇抜な戦闘
『いくさの子 ~織田三郎信長伝~』7巻

織田信長は歴史的に希代の戦術家として知られていますが、本作でもその奇才は遺憾なく発揮されます。古い因習や常識に囚われることなく、奇抜な戦法や武具に工夫を凝らしていくのです。

戦術家の片鱗は早くから現れており、物語の冒頭から吉法師=信長は「腕を伸ばす」ことに腐心します。手を伸ばすとは彼なりの表現で、平たく言えば射程距離を伸ばすこと。人は、素手に棒を持ち、棒から太刀に持ち替え、さらにそれが槍になり、やがて弓矢を持つようにと、いくさの中で腕を長くしてきたというのです。

そんな発想から、長大な間合いの長槍を導入し、少年だけの私兵で野武士の一団を蹴散らして見せました。

そんな彼だからこそ、鉄砲をいち早く実践に大量投入したということにも説得力が生まれてくるのです。

成長してからも戦術の腕にどんどん磨きがかかり、発情期の牝馬を利用して敵騎馬隊を機能不全にする、というとんでもない奇策などが作中では披露されます。

『北斗の拳』シリーズにも似たバイオレンス要素も健在で、グロめの暴力描写によって、戦国時代の厳しさが否応なく伝わってくるのも特徴です。

『いくさの子 ~織田三郎信長伝~』12巻の見所をネタバレ紹介!

物語の本筋は史実に沿って進んでいきますが、歴史に残っていない裏側の動向や、定説の一部を覆すような大胆なアレンジがそこかしこで見られます。

たとえば冒頭で「本能寺の変」が少し触れられますが、信長が最期に踊ったという「人間50年」で有名な敦盛ではなく、「風流踊り」が演じられるのです。これは彼と父・信秀との思い出が反映されているのですが、そもそも敦盛も創作という説もあるので、興味深いアレンジです。

その信秀についても没年に諸説あることを逆手に取って、影武者を立てることで、死去したことを隠す場面が出てきます。信長は最愛の父を盛大に弔うことが出来なくなるのですが、信秀と残された尾張国のために、涙を呑んで隠し通します。このあたりは信長の人間的な一面が見られて、とても感動的です。

かなり早い段階から鉄砲を量産し、海賊を装って演習していたというのも面白く、史実通りならばちょっと退屈な信長の少年~青年期も、こうしたアレンジで楽しませてくれるのが本作の魅力です。

著者
原哲夫
出版日
2018-12-20

織田信秀の影武者までもが亡くなり、信長は織田家当主となりました。ところが、織田家中はバラバラ状態で、山口教吉は早速離反して今川と手を結びます。山口家討伐に向かった信長は、寡兵で山口勢を圧倒。この「赤塚の戦い」は結果的に引き分けとなりますが、信長は初戦にして凄まじい存在感を示しました。

12巻ではさらに坂井大膳が反旗を翻し、松葉城と深田城を落として織田家親族を人質に取ります。これは完全に信長の予想通りでした。信長は家中の味方を見定めるべく、自ら坂井は攻めずに庄内川に陣を敷いて、加勢に来る者達を待ちます。

歴史の転換点、「桶狭間の戦い」がようやく見え始めてきます。まだまだ前哨戦ではありますが、信長の下に徐々に名のある人物が集結してくるのが痛快です。信長の弟・信行(信勝)の家臣時代の柴田勝家が参戦し、後の主君となる信長と共闘する場面は、読んでいると胸に込み上げてくるものがあります。

一連の織田家中の騒動を美濃の斎藤道三は注視しており、一筋縄ではいかない状況が続きます。静と動、政治と合戦のどちらの展開にも後の伏線が丹念に描かれるので、細かなやりとりまで面白いです。

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本作で描かれる「信長像」は他の多くの創作より生き生きとしていて、魅力的に映ります。堅苦しい歴史ではなく、痛快なエンターテインメントとして、ぜひ楽しんでください。

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