世界に目を向けてみると、びっくりするほど長い小説がたくさんあります。いつかまとまった時間がとれた時に……と敬遠しがちですが、まずは手に取って読んでみなければ始まりません。この記事では、海外の長編小説のなかから特におすすめの作品を紹介していきます。
冴えない中年の広告屋レオポルド・ブルーム、彼の妻のモリー、作家志望の青年スティーブン・ディーダラスの3人を中心に、アイルランドのダブリンでのとある1日を描いた小説です。
古代ギリシャの長編叙事詩『オデュッセイア』を下敷きにしていて、登場人物の3人や、全18章という物語の構成も対応しています。
- 著者
- ジェイムズ・ジョイス
- 出版日
アイルランドの作家ジェイムズ・ジョイスの作品です。1922年に初版が刊行されました。英語の原文で約26万5千語という長さを誇ります。
20世紀前半のモダニズム文学におけるもっとも重要な作品のひとつといわれていて、「意識の流れ」という実験的文体を取り入れているのが特徴です。登場人物の独白が切れ目なく語られていきます。
さらに翻訳者泣かせでもある多様な文体が使われていること、『オデュッセイア』はもちろん聖書の知識も必要なことから、難解な作品だといえるでしょう。内容を完全に理解するのは相当難しく、多くの読者が挫折をしている作品でもあります。途中で文学を読んでいるのか暗号の解読をしているのかわからなくなることもあるかもしれません。
その分、読破できれば絶対に自信がつくはずです。『ユリシーズ』を読むための解説本も数多く出版されているので、じっくり腰を据えて読んでみてください。
フランスの作家マルセル・プルーストが半生をかけて執筆した大作です。1908年頃に着想を得て、1913年に第1篇が刊行。しかしプルーストは第5篇の手直し中である1922年に亡くなり、以降は弟や批評家が遺稿を整理して引き継ぎました。そのため、未完の作品と考えている人も多いようです。
その内容は「精神的自伝」ともいわれていて、作者の幼年期や恋愛経験、社交界での生活などの記憶を再構成したもの。芸術や時間、人間、社会などさまざまなテーマを描いています。
- 著者
- プルースト
- 出版日
- 2010-11-17
日本語に翻訳すると、400字詰め原稿用紙1万枚にのぼる超長編小説。「ギネス世界記録」に登録されています。
物語の長さだけでなく、1文自体も長いのが特徴。隠喩も多用されています。また登場人物は数百人におよび、その人間関係も複雑です。
しかし心の内や情景が丁寧に描写され、そこからプルーストの思考や哲学が滲み出ているのが魅力だといえるでしょう。彼の感受性の豊かさ、そして言葉にするのが難しい感覚が記されているのが圧巻です。
先述した『ユリシーズ』とともに、20世紀を代表する世界的傑作。後世の作家にも多くの影響を与えています。
物語の舞台は、19世紀前半、ナポレオン戦争の時代です。
フランスによるロシアへの進軍と、没落しつつある3つの貴族を中心にストーリーが進み、運命に翻弄される人間の苦悩や愛憎が描かれています。
- 著者
- トルストイ
- 出版日
ロシアの作家レフ・トルストイの代表作。1865年から約4年をかけて雑誌上で発表されました。
いわゆる群像劇なのですが、その登場人物の数は559人にのぼります。私たち日本人にとっては似たように聞こえる名前も多く、混乱してしまうかもしれません。しかし彼らが展開する人間ドラマはみずみずしく、どんどんページをめくれるはずです。
中心人物のひとりであるピエール・ベズーホフは、トルストイの分身だといわれています。彼をとおして、作者自身の戦争観や思想を知ることができるのも魅力でしょう。
『アラビアンナイト』としても知られている、イスラム世界の説話集です。
妻の不倫に傷ついたササン朝ペルシャの王様。街の若い娘を宮殿に呼んで一夜を過ごし、翌日になると首をはねるという蛮行をくり返していました。そんな王の暴走を止めるため、大臣の娘シェヘラザードが名乗りをあげます。
毎晩、王に物語を聞かせ、盛り上がったところで翌日に持ち越していったのです。王は物語の続きを聞くために、シェヘラザードを生かし続けました。
- 著者
- 出版日
- 2003-10-13
伝説や昔話を集めた説話集。原型は9世紀頃にできたと考えられています。本書の特徴は、そこからさまざまな写本が作られ、ヨーロッパに波及するにしたがって多くの物語が付加されていった点でしょう。1700年代前半の写本では「282夜」だったものが、1800年代に「1001夜」となっています。
ストーリーは奇想天外なものも多いですが、そのなかに上品に漂うエロティシズムや、イスラム圏のユーモアを楽しめるはず。人生の教訓もたくさん詰め込まれた、密度の濃いショートショートのようです。
「アラジンと魔法のランプ」「アリババと40人の盗賊」など、世界的に有名な物語も収録されているので、お楽しみください。
中国の明代に記された長編歴史小説。陳寿が記した正史『三国志』をもとに、民間に伝承されている物語をまとめ、大衆の人々が面白く読めるよう脚色しているのが本作『三国志演義』です。
魏、蜀、呉の三国時代が始まるきっかけとなった「黄巾の乱」から、劉備、曹操、関羽、諸葛亮孔明などの英雄たちの活躍をドラマチックに描いています。
作者は、施耐庵か羅貫中だろうと考えられていますが、施耐庵は存在自体も疑われていて、はっきりとしたことはわかっていません。
- 著者
- 出版日
- 2014-09-11
歴史書ではないので、娯楽性が高いのが何よりの魅力。後漢の血を引く劉備を正義、魏の曹操を悪として対立させています。しかし闇雲に脚色するのではなく、史実にもとづいたうえで読者を惹きつける物語にしているのが特徴です。
およそ100年間の主な出来事を網羅しているので大長編ではありますが、個性的な登場人物が躍動する姿に、飽きることはありません。また彼らの考え方や人を動かす言葉を、組織論などビジネスの視点で読む人も多いです。
「破竹の勢い」「三顧の礼」などことわざのもとになっているエピソードも多数。教養としても、読んでおくことをおすすめしたい作品です。