作者・岩ちかが描く漫画『婚約生』(こんやくせい)は、両親を亡くした女子高生と、大家である男子高校生のピュアラブストーリー。物語は突然の二人の同居から始まります。お互いに恋愛感情を持たない二人が距離を縮めていく恋愛模様が可愛らしくてたまらない作品です。 そんな『婚約生』のあらすじや見所を紹介していきます。ネタバレも含まれますのでご注意ください。スマホの無料アプリからも読むことができるので、気になる方はそちらからもどうぞ。
女子高生・花岡紗愛(はなおかさち)は、突然の事故で両親を亡くしてしまいます。
途方に暮れるのも束の間、同じ高校に通う2歳年上の西園寺幸一(さいおんじこういち)から、実は紗愛の家の大家であると告げられ……
このままでは生計が立てられないので、紗愛には家から出て行ってほしいという幸一ですが、彼はその代わりに「ある提案」を持ちかけます。
その提案とは、紗愛が幸一と結婚するというもの。いきなりの結婚の申し出に驚く紗愛に対し、幸一は1か月間後に答えを出すよう期限を決めます。
こうして紗愛は、お試し期間として、幸一と1か月間だけともに暮らすことになるのです。
- 著者
- 岩 ちか
- 出版日
- 2015-09-25
ともに暮らし始めた二人ですが、幸一は仕事一筋で合理主義な性格の持ち主。無駄なことは一切せず、規律に沿って生きる人間だったのです。
そんな幸一の「理解の範疇を越える言動」は、紗愛と時間をともにすることでだんだんと変わり、幸一の視野は広がっていきます。
そして紗愛も、はじめは早く家を探して出ていこうと思っていましたが、ともに暮らしていくうちに幸一に対して情が湧いていき……
1か月のお試し同居期間を経て、二人は晴れて本物の夫婦に。
しかし、ここで問題が発生します。幸一は西園寺財閥の息子であり、本来は財閥令嬢と結婚させられる運命だったのです。
幸一と紗愛の結婚に反対する祖父の存在や、幸一の許嫁である伊集院財閥の令嬢・瑞穂(みずほ)が現れ、2人の結婚生活はどうなるのでしょうか?
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この作品の魅力は、高校生でありながら恋愛よりも先に「結婚」をしてしまっているというところ。手を握ったこともなければ、ほとんど話したことすらない紗愛と幸一が、お互い手探りで結婚生活をスタートさせます。
はじめは、幸一の考えていることが分からず戸惑う紗愛ですが、純粋無垢な性格もあり、しだいに彼の目指すものや考え方を理解し、彼とともにあろうとさまざまなアプローチをします。
そして、幸一と一緒にいたいと強く思うようになっていくのです。
形式だけの結婚と考えていた幸一も、紗愛といることで人の心というものを理解していきます。そんな二人が少しずつ歩みより、見ていてキュンキュンするような恋愛をくり広げてくれます。
幸一は亡き両親の仕事である大家業を継いでおり、両親が残した仕事をきっちりとやり遂げようという思いのもと、懸命に働いています。そのため過度に無駄な時間を嫌い、少し人への思いやりが欠けているように見えるのです。
紗愛との結婚も、自分が伊集院の令嬢と結婚しない口実をつくるため、そして大家業をまっとうするためのものでした。しかし、そんな幸一の心は紗愛と過ごすうちに少しずつ変化していきます。
無駄な話は時間がもったいない、ご飯は10秒チャージで……と、紗愛と夫婦らしいことを何ひとつしなかったはじめの頃から、しだいに紗愛に対する独占欲や、彼女の喜ぶ顔が見たいと思うように。
そして何より、いつもは笑うことのない幸一が、紗愛のことになると思わず笑みを見せるようになります。幸一の紗愛への言動がとても愛らしく、つい応援したくなってしまうでしょう。
本格的な結婚生活がスタートしたある日、紗愛が結婚式に憧れを抱いていることを幸一は知ります。時間の無駄だと言い張る幸一の態度を見て、紗愛は悲しく思うのですが、そんな幸一がなんと手作りで結婚式をしてくれるのです。
同じアパートの子どもたちの手を借り、不器用ながらも、花冠や指輪を作って紗愛にサプライズします。このときから「紗愛を喜ばせてあげたい」と思う心がにじみ出てきて、幸一は可愛いところもあるという印象に変わっていきます。
- 著者
- 岩 ちか
- 出版日
- 2015-09-25
結婚式を終えると、そのまま二人は新婚旅行へと向かいます。見所は、二人ではじめて写真を撮ったことで、幸一は紗愛との思い出を写真に残すことに夢中になっていくところ。
また紗愛は旅行先で、幸一へ指輪の代わりに手作りのお菓子をプレゼントします。紗愛の思わず抱きしめたくなる可愛らしい言動に、幸一は戸惑いますが、二人らしい愛の形が芽生えていきます。
このときの下心の欠片もない純粋すぎる二人には、読んでいて心が癒されることでしょう 。
2巻では、紗愛と伊集院瑞穂との対決が始まります。幸一の許嫁である彼女は、言動は乱暴でありながらも、昔から幸一の妻になることを願って過ごしてきました。瑞穂も幸一のことが大好きだったのです。
もちろん仕事一筋の人間だった幸一は、そのことを知るよしもありません。しかし、幸一もまた瑞穂を無下にはできず、結果的に彼女に捕らわれてしまいます。
- 著者
- 岩 ちか
- 出版日
- 2015-12-25
そして瑞穂に捕らわれた幸一を紗愛が助けに行きます。瑞穂から、幸一にとってお前の存在は誰でもいいと言われるものの、紗愛はそれを肯定します。そのうえで幸一にとって、自分じゃないとダメだと思ってもらえるように頑張るというのです。
ふだんは温厚な紗愛からは想像できないほど、とてもかっこいいです。紗愛にとって「幸一の存在がいかに大切であるか」をあらためて感じるシーンでもあります。
紗愛と幸一の結婚生活もいよいよ大詰めです。最終巻では、お互いに好きという気持ちを自覚し、二人のラブラブぶりに拍車がかかります。
普通のカップルのようなことがしたいとお互いに思っていることが分かり、はじめての放課後デートへ行くことに。紗愛はドキドキいっぱいで幸一を待ちます。
するとそこに現れたのは、黒スーツに赤いバラの花束を持った幸一でした。黒塗りの車に揺られ、紗愛も素敵にドレスアップされ、たどり着いた先は……夜景の見える高級レストラン。
- 著者
- 岩 ちか
- 出版日
- 2016-04-25
そこでディナーを楽しみますが、高校生の二人には身の丈が合いません。うまくディナーを楽しめない紗愛に、幸一はネットに載っていた「理想のデート」を行ったことを話します。
しかし背伸びをしても意味がないと知ると、高校生は高校生らしく、あらためてデートの約束をするのでした。
そんな二人のもとに、今度は従兄弟の幸二がやってきます。まるで幸一のミニチュア版のような幸二。紗愛も幸一も手を焼いてしまいます。
しかし幸二の出現は、幸一の紗愛への思いを再認識させてくれます。物語のクライマックスに向けて、まるで親子のような彼らに、心が潤うこと間違いありません。