新任教師・カモと、彼を恋い慕う美少女拳法家・カギューの愛を描いた『ねじまきカギュー』。ラブコメあり、熱いバトルありの物語には数々の個性的なキャラクターが登場します。2人の愛と信念はしだいに周りを巻き込み、大きな戦いに発展していくことに……。 この記事では、衝撃の結末で賛否両論の話題を呼んだ本作の見所をご紹介します。ネタバレを含みますので気になる方は無料で読めるスマホアプリがあるのでご注意ください。
新任教師のカモは「怪物的ヤバイ系女子」から無条件でモテてしまう究極の女難体質。毎日のように過激な女子たちに追いかけられていたある日、拳法を駆使する謎の転校生・カギューに助けられます。
男子と見間違うほどの凛々しさと強さを持つカギューですが、その正体は中国に引っ越していたカモの幼馴染の美少女。「将来の夢はカモ先生のお嫁さんになること!」と宣言する彼女の前には次々と恋のライバルが現れ、カモを巡って熱いバトルが展開されていきます。
愛を貫くカギューの戦いは、しだいに学園全体を巻き込む大きなものに。その一方で、カモも生徒たちを守るため、自身も戦いに挑んでいくことになります。
- 著者
- 中山敦支
- 出版日
- 2011-06-17
中山敦支が描く個性豊かな登場人物たちが、それぞれの愛と信念のために戦う本作。作品を通して、愛の在り方を考えさせる一面もあります。スマホの無料アプリでも読むことができるので、気になる方はぜひそちらから読んでみてください。
中山敦支のおすすめ作品を紹介した<中山敦支のおすすめ漫画4選!代表作『ねじまきカギュー』など>もぜひご覧ください。
カギューは伝説の秘拳「螺旋巻拳(ねじまきけん)」の使い手。カモを守るため、中国で修業を積み、習得しました。廻転エネルギーを上乗せして放たれる強力な拳の跡に残されるのは、大きなうずまき。柔らかな女性の体とは思えない威力で、厳ついバイクも粉々に破壊してしまいます。
カギューの武器は拳法だけではありません。純粋な心から発せられるカギューの言葉はいつもまっすぐ。そしてカモへの愛こそが、カギューの強さの根源となっているのです。
そんな強さに戦いの相手も心を動かされ、彼女たちの本当の気持ちが明らかになっていきます。それぞれの想いがぶつかり合うバトルは、手に汗握る白熱の展開。読者も目が離せず、夢中で見入ってしまうことでしょう。
カギューの前に立ちはだかるライバルたちは、誰も皆個性的な女子ばかりです。
カギューのクラスメイト・富江は読書が大好きで、一見大人しそうな文化系女子。しかし、自分とカモが恋仲になったと一方的に思い込んでしまう過激な一面も。愛読書に挟んでいるしおりは鋭利な鋼鉄製で、これを武器にしてカギューに襲いかかってきます。
朱羽は成績優秀・容姿端麗で皆から慕われる学級委員長。授業についていけないカギューのコーチを買って出ます。しかしその真の目的は、誹謗中傷によってカギューの恋を諦めさせること。その目論見もうまくはいかず、ついには暴力に訴えてきます。
カギューに敗北した2人は、その後は良き友として、彼女の恋を応援していくことに。新しい制服に身を包んだり、海で水着姿になったりしたカギューの可愛らしさを引き出し、カモにアピールしてあげています。
年相応の恋する乙女な1面が押し出されるラブコメシーンでは、カギューの可愛さにカモもたじたじ。もどかしい2人の様子には、ついニヤニヤしてしまうでしょう。
大きな瞳や、滑らかで弾力感のある身体など、デフォルメの効いた絵柄が特徴的な本作。一見ポップでキュートな容姿の登場人物も多いです。しかし、感情が爆発すると、親しみやすさが一変して、激しさが最大限に表現されます。
大ゴマいっぱいに、力強い線で描かれる表情はインパクトも絶大。怒りや憎しみ、負の激情に駆られたキャラクターが見せる鬼気迫る形相は、ある種の狂気さえ感じられるほどおどろおどろしいものになっています。
しかしその一方で、想い人への愛が溢れ出ているときの表情は、恋する乙女そのもの。あまりの可愛らしさに胸がときめいてしまいそうです。
登場人物たちの激しいギャップに、読者は振り回されるばかり。ジェットコースターのようなハイテンションな刺激は、一度知ってしまうとクセになる魅力を秘めています。
序盤は女子生徒たちのカモを巡るバトルとラブコメが中心でしたが、物語は徐々にシリアスな雰囲気が増していきます。
風紀委員会を撃破し、学園内でも看過できない存在となったカギュー。生徒会長・衿沙はカギューたちを悪役に仕立て上げ、戦いを挑んできます。しかし、拳を交えるうちに、衿沙の本当の目的は彼女の父親・二千恵(にちえ)理事長と関係があることが明らかに。
感情を持たないという二千恵は、「愛」への興味から、生徒たちの個性を競わせてデータを収集していました。生徒たちが犠牲になっていく興味本位な実験を、カモは許すことができません。二千恵を止めるために、彼の過去を探り始めると、とある重要人物との意外な関係が明らかに………。
カギューに守られているだけでなく、自らも命がけの戦いに身を投じていくカモ。二千恵への怒りと憎しみで、以前とは別人のような険しい表情になっていき、序盤の朗らかな笑顔が嘘のようです。
カモは二千恵に「愛」を教えることができるのか?緊張感に満ちた2人の対決からは、目が離せません。
二千恵との戦いを終えた後、カモは学園の新たな理事長に就任します。しかし、直接カギューたちの前に姿を現すことはなく、生徒たちは混乱するばかり。
卒業式の日に、ようやく再会を果たした2人でしたが、カモはすでに自らの命を絶つことを覚悟していました。カギューはカモを止めるため、後を追いかけようとするのですが……。
- 著者
- 中山 敦支
- 出版日
- 2014-07-18
物語は「死という最大の障害を、愛は乗り越えることができるのか」という、誰もが人生で直面するであろう課題に向かっていきます。登場人物たちそれぞれの「愛」の在り方が描かれてきた本作の中心である2人の結末は、まさしくこの物語の集大成といえるでしょう。
カモとカギューがどのような未来に至ったのかは、読者によって解釈が分かれ、賛否両論の結末となっています。しかし、愚直なまでに愛と信念を貫く2人の姿からは、人を愛することの素晴らしさを感じることができるはずです。
人間は愛によって時には傷つき、迷い、しかし時には無敵の強さと勇気を持つことができます。読了後は、自分自身の愛の在り方について、見つめ直すきっかけになるのではないでしょうか。
カモとカギュー、2人の愛がどのような結末を迎えるのかは、ぜひご自身の目でお確かめください。