中山敦支のおすすめ漫画4選!代表作『ねじまきカギュー』など

更新:2021.11.27

『ねじまきカギュー』でおなじみの漫画家、中山敦支。彼の作品には、様々な題材とそれぞれに応じた不気味で狂気的な描写が組み込まれています。今回は代表作『ねじまきカギュー』をはじめ、彼のオススメ作品を4つご紹介いたします。

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天才的な画力で狂気を描く漫画家、中山敦支

中山敦支は1982年の鹿児島生まれの漫画家です。下積み時代のことは公表されていませんが、2001年に集英社にスカウトされ、『月刊少年ジャンプ』で漫画の掲載をするようになりました。

最初の連載作品は、2004年に発表した『リボーンだよ!シロンくん』です。その後は『週刊少年サンデー』で『トラウマイスタ』を連載、2017年現在は『週刊ヤングジャンプ』で『うらたろう』が連載中です。

彼の魅力は、なんといってもその圧倒的な画力。キャラクターは普段はデフォルメ調ですが、興奮したり危機的状況に陥ったりすると覇気溢れんばかりの表情に描かれます。絶望、狂気、恐怖……あらゆるマイナス感情を混ぜ込んだような、ドス黒い絵です。

情景や擬音、演出線なども不気味な曲線や紙いっぱいの描き込みにより強化されます。1度目にすると頭から離れない、他に類を見ない勢いのある漫画家です。
 

中山敦支の代表作。幼馴染は最強の拳法家!?

『ねじまきカギュー』は2011年から2014年にかけて『週刊ヤングジャンプ』で連載されていた、全16巻の作品です。

異常に強かったりメンヘラだったりと、一風変わりすぎた女性たちにモテてしまう悩みをもった新人教師の葱沢鴨、通称「カモ」。ある日、彼が怪力ヤンキーの女性に襲われそうになっていると、鉤生十兵衛という女性拳法家に救われました。

どことなく聞き覚えのある名前に、カモは彼女がかつての幼馴染であるカギューだと気づきます。彼女はカモを守るために彼の勤める高校に転校してきたと言いました。

カモのことを一途に愛するカギューと、生徒と幼馴染のどちらとして対応するべきか悩むカモ……。様々な女性や障害が2人の仲を阻む、恋とバトルの学園生活が始まったのです。

著者
中山敦支
出版日
2011-06-17

本作はカギューとカモを取り巻く女性たちの愛が物語の軸となっています。

カギューは「南家螺旋巻拳」という、渦巻き状で、直線攻撃とは比べ物にならないほどの威力を持つ技をくり出すのですが、この拳法はしなやかさが必要なため女性しか使えません。普段はクールで一人称が「己(おれ)」のカギューですが、どんな女性よりも女性的な攻撃スキルを持っているのです。

また、彼女のカモへの純愛は誰よりも負けず、時折みせる乙女な顔がとても可愛いく描かれています。カモがそばに寄ると照れて赤面し、挙動不審になってしまうカギュー。冷静沈着な時とのギャップがたまりません。

恋敵として様々な怪力や技をもつ強い女子高生が現れるのですが、彼女たちはカギューの純愛と何より拳法の強さに感服し、友達になっていきます。恋する乙女が戦いの合間に見せる、中山敦支特有の狂気的な表情にも注目です。

『ねじまきカギュー』について詳しく知りたい方は<『ねじまきカギュー』賛否両論な結末までの見所をネタバレ紹介!無料で読める>をご覧ください。

トラウマを操り悪の秘密結社と戦え!

『トラウマイスタ』は2008年から2009年にかけて『週刊少年サンデー』で連載されていた、全5巻の作品です。

小学校の頃のトラウマにより、「鬼」を連想させるものを見聞きすると尋常じゃない怯えようを見せる高校2年生の此何ソウマ、通称「ピカソ」は、ある日スジャータという少女によって自身のトラウマを具現化されます。

具現化されたトラウマ、アートマンを倒したことで、ピカソはアートマンを自身のしもべにすることができました。スジャータの目的は、世界統一をしようと目論む秘密結社チャンバラカンパニーを倒すこと。トラウマを克服したピカソは、彼女と協力して戦うことを決めるのでした。

著者
中山 敦支
出版日
2008-11-18

本作では第1話で、主人公が不気味なアートマンと戦い、倒してしもべにすることで、トラウマを乗り越えます。恐れる物に打ち勝って始まるストーリーは、まさしく少年漫画ならではのものです。

1巻から3巻の途中まではピカソとスジャータの仲が縮まっていく様子を楽しむラブコメチックな作風なのですが、3巻後半から最終巻にかけて、物語はシリアスでおどろおどろしい雰囲気へと姿を変えていきます。

最大の敵を倒すためにピカソが努力し、修行した果てに待ち受ける衝撃のクライマックスとは?非情と狂気に染まる中山敦支ワールドを体感する覚悟ができた方は、ぜひ読んでみて下さい。

入門編にもなる、3話完結の物語

『こまみたま』は2007年に『月刊少年ジャンプ』で連載されていた、1巻完結の作品です。

幼いころに母を亡くし、酒を飲んでばかりの父親のもと、神社で暮らす女子高生のサクヤは、母親の部屋に隠し部屋があることに気づきます。そこには妖怪たちと人間を恨む2匹の狛犬がいて、彼女が触った瞬間に封印が解き放たれてしまいました。

母親から譲り受けていた犬笛のおかげで狛犬たちを従えることができたサクヤは、2匹に妖怪退治をお願いします。あろうことかサクヤの魂を欲しがる狛犬に「すべての妖怪を封印できたら、私の魂をあげる」と約束したのです。

著者
中山 敦支
出版日
2007-06-04

主人公のサクヤはボーイッシュではありますが、ハツラツとした普通の女の子。一方2匹の狛犬「アシュラ」と「ウノ」は擬人化していて、2人ともなかなかのイケメンです。

いくら犬笛を持っているとはいえ、アシュラとウノが協力してサクヤを守り、戦う様子の頼もしいこと!そのスタイリッシュな姿と痛快な展開に胸が躍ります。

ここでも中山敦支の画力が生きていて、攻撃の矢と平行に書くことによって威力のリアルさを醸し出す擬音や、見開きページで描かれた月夜のもとに現れる妖怪などからは、サクヤたちのポップな絵柄と対照的な暗さが感じられます。

代表作の『ねじまきカギュー』よりも先に発表された本作は、他作品と比べて狂気的な絵柄が少なめ。怖い描写が苦手な方は中山作品の入門として読んでも良いし、他の中山作品を読み切ってしまった熱狂的ファンが行き着いた先として読んでも満足できる作品です。

中山敦支が描く、妖怪のいる鎌倉時代の不老不死をめぐる旅

『うらたろう』は2016年から『週刊ヤングジャンプ』で連載をはじめ、2017年8月現在では4巻まで発売されています。

舞台は平氏が源氏に勝利したパラレルワールドの鎌倉時代。鬼の血を継いでいるために不老不死の身体をもち、死ねない苦しみによって生に嫌気をさしていた温羅太郎(うらたろう)のところに、ちよという少女が訪ねてきます。

彼女は15歳でしたが、16歳で必ず死ぬ呪いがかけられており、もっと生きることを楽しみたいと考え、不老不死になるため温羅太郎のもとを訪れたのでした。 死にたい青年と生きたい少女。似て非なる2人は生と死の境である黄泉比良坂を目指すことになったのです。

著者
中山 敦支
出版日
2016-12-19

藤原秀衡や安徳天皇など実際の歴史上登場の人物も登場しますが、その一方で妖怪やら鬼やら個性的な見た目をしたキャラクターも多く登場し、不気味さを増す一因となっています。

中山の共起的な絵柄で人の死が描かれていて、彼らが汗を垂らし恐縮する姿や、動揺し目を泳がせる表情には、読者も緊迫した心持ちにさせられるでしょう。

妖怪の蔓延る世界で、生と死の願望を持つ温羅太郎とちよはどうなるのでしょうか。32話からは第2幕が始まっていて、今後の展開にも目が離せません。

以上4作品をご紹介いたしました。どれも胸を熱くさせる展開と肝が冷える描写が盛りだくさんです。ぜひ読んでみてください。

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