笠井潔のおすすめ小説5選!スキーの趣味も作品に反映!

更新:2021.12.14

笠井潔は、美少女ゲームやスキーといった嗜好も作品に取り込み、濃い作品を生み出す硬軟併せ持つ作家です。

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美少女ゲームにも関心をもつ作家笠井潔

笠井潔は東京都出身の小説家です。和光大学除籍。1974年から2年のパリ滞在中に書いた『バイバイ、エンジェル』が1979年の角川小説賞を受賞、作家としてデビューしました。

思想家・哲学者としても旺盛に活動しつつ、同時に美少女ゲームにも関心をもち、シナリオライター・奈須きのこの小説『空の境界』の解説も手がけました。また、著作『ヴァンパイヤー戦争』・『サイキック戦争』のイラストは、主に美少女ゲームを手がけるイラストレーターが起用されています。

趣味はスキー。ミステリー作家を誘ってスキー合宿をすることもあり、スキー・インストラクターを主人公とした小説も書いています。

また、ライトノベルを書いていた米澤穂信や桜庭一樹などを、新本格派ミステリー作家を多く輩出する東京創元社に紹介しており、後進の育成にも取り組んでいます。

推理で革命を起こす男・矢吹駆

広間にある血の池の中央に横たわっていた首のない女の死体――これが、ラルース家を巡る連続殺人事件の幕開けでした。

司法警察の警視・モガールの娘・ナディアは、現象学を扱う矢吹駆とともに事件の謎を追いはじめ……。

笠井が生み出した探偵・矢吹駆のシリーズ1作目です。

推理小説として刊行されているものの、笠井の思想や・哲学が前面に押し出されている表現が多く登場します。

矢吹は特別な推理をする訳ではなく、調査で判明したいくつもの事象を組み立て、事件の本質に向かっていく形を取っています。そして、矢吹と犯人が思想対決を繰り広げていくのです。

特に難しいことを知っている必要もないし、ややこしく考えることもなく読み進められて、推理小説として充分に楽しむことのできる完成度なのですが、探偵が乗り出して事件を解決するオーソドックスな推理ものとは異質な部分もありますので、そこを楽しんでほしいなと思います。

戦いに巻き込まれた男と謎の美少女の運命

黒マントの男たちが、NASAの通信基地を襲って極秘計画を頓挫させたことは、時空を超えた光と闇の戦いの序章にすぎず……戦いに巻き込まれてしまった九鬼鴻三郎は、すべてのカギを握る美少女・ラミアに近づいていくのでした。

宇宙規模の善悪二元論に古代の超文明、ムー大陸の末裔の吸血鬼と米ソスパイ組織、孤独なダークヒーロー、美女、美少女、アクションにエロスと何でもありの世界観は、破綻することなく、夢中にさせてくれます。物語前半の舞台であるパリの描写は、まるで石畳の匂いまで漂ってきそうな雰囲気があって、主人公の内面に添ってさえいるようです。

文中に挿絵は一切ありませんが、巻頭の人物紹介をかねたカラーイラストや表紙から、内容のハードさとはそぐわないのではないかと思える登場人物たちのライトノベル的な要素もアンバランスで魅力なのではないかと思えます。

長いシリーズですが、飽きることなく読破できるはずです。ぜひ手に取ってみてくださいね。

ハードボイルドでも名探偵でもない探偵が事件を解いていく

私立探偵飛鳥井の事件簿と銘打たれたシリーズの1作目です。

退屈を持て余していた探偵・飛鳥井史郎は、可憐な17歳の有美から父親探しを請け負いました。しかし調査の最中、当の有美が失踪してしまいます。
 

彼女は、世間を騒がせる猟奇的な連続少女殺人事件にまきこまれてしまったのか……殺人事件の被害者である少女たちの両親にはみな共通の過去があり、そこには因縁と確執が隠されているのでした。

ミステリー慣れをしている人が巻末のあらすじを読んで予測するものとは、途中で大きく外れていくと思います。伏線の張り方などが独特で、驚く展開になっていき、目が離せなくなってしまうのです。

探偵のキャラクターも魅力的で、特にハードボイルドではなく、名探偵ものといったほどでもなく、ほどほどに有能といった感じがいいのかもしれません。

物語も暗くもなく明るくもなく程よい感じで読みやすく仕上がっています。読みやすくて楽しめるミステリーですよ。

幻の小説の謎を追う新人作家の姿を描く

天啓シリーズと称される作品群の1作目です。

作品が書けずに行き詰っていた作家・天童は、数人の人々の目に触れただけで表に出ることのなかった幻の新人賞内定作品『天啓の宴』の謎を追うことになります。

一方、もうひとりの作家・宗像は、『昏い天使』でデビューしたものの、第2作を破棄して失踪。山荘に篭り、出獄する親友のための回想記を書いていましたが……。

「幻の小説『天啓の宴』は誰が書いたものなのか」というメインの謎に殺人事件を絡めて物語が進んでいきます。笠井独特の蘊蓄が散りばめられており、登場人物の設定や文章の表現にも「罠」が仕掛けられていて、良くも悪くも難解な展開ではあるのですが、面白さが際立っているのでページをめくる手は止められません。

ミステリーに慣れた読者にはもちろん、初心者にも魅力的な作品です。

スキー・インストラクターが名探偵振りを発揮する

リフトから消えて空中浮遊する男、ゲレンデに転がった切断死体――白銀のスキー場で起きた怪事件の背後にはカルト教団の影が見え隠れしていて……。

美人スキー・インストラクター大鳥安寿はスキー以外にも、「事件が起きたときから、その真相が分かっている」などという特異能力も持ち合わせていて、それを活かして事件の謎を解き明かしていきます。

スキーを趣味とする笠井の知識が織り込まれたミステリーです。オウム真理教をモデルにしたらしきカルト教団について、スキーを使って考察している作品でもあります。

キーワードは重力のようで、重力に逆らう「空中浮遊」と重力に従いながらもそれを制御するスキーの滑降が対比されています。目から鱗が落ちそうでした。

ミステリーを楽しみつつ、笠井独自のカルト宗教への分析も味わうことができる作品。ちょっと特殊ですが、おもしろいですよ。

込み入ったトリックを駆使したミステリーが多い笠井潔。どんなジャンルの作品を書いても笠井作品だ!とわかるのがさすがですよ。ぜひ味わってみてくださいね。

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