下界の化け物が人間を脅かす世界。そんな世界の公爵家に生まれた娘・メリダは、13歳になっても能力を発動させることができません。本来ならば7歳前後で覚醒する能力が、いまだに発現しない……そんな彼女は「無能才女」と呼ばれていました。メリダの素質を見極め、必要とあらば暗殺するという任務を請け負った青年・クーファが家庭教師として彼女のもとに派遣されますが、彼は彼女の努力を見て「危険な選択」をします。 今回は、ヒロイン・メリダと暗殺教師・クーファを巡る、波乱万丈の人生を描く『アサシンズプライド』をネタバレ紹介していきます。2020年にはアニメ化も決まった人気作品です。
『アサシンズプライド』は、天城ケイによるライトノベル作品。KADOKAWAが主催している、第28回ファンタジア大賞「大賞」受賞作です。
2016年1月から2019年6月までに、全10巻の小説と1巻の短編、4巻の漫画が出版されています。
そのほか詳しい情報はTVアニメ「アサシンズプライド」公式サイトへ。
太陽を失った都市「フランドール」を、生存のための最後の拠点としながら、外界に住む化物「ランカンスロープ」に怯える人類。
フランドールの外の世界である夜界に住むランカンスロープに対抗する力を持つ「マナ」の能力者は、貴族の特権が与えられる反面、有事の際には人類の盾となる責務を負っています。
そのなかでも上位位階は、それぞれの家系にのみ継承される特別な位階です。聖騎士(パラディン)のアンジェル家、ドラグーンのシクザール家、ディアボロスのラ・モール家は、「三大騎士公爵家」と呼ばれていました。
三大騎士公爵家のひとつ・アンジェル家に生まれたメリダは、通常7歳前後に覚醒し始めるはずのマナが目覚める様子がありません。受け継がれるはずのマナが発生しないことにより、平民出身であるメリダの母が作った、別の人の子ではないかと街で噂されてしまいます。
そこで母方の祖父であるモルドリュー卿は、噂の根源である孫娘の存在を消すために、暗殺者の青年・クーファにメリダの暗殺を依頼するのです。
しかし暗殺することが得策ではないと考える見方もあり、クーファの目的は暗殺することから「マナを目覚めさせること」に変わるのでした。
そんな任務を請け負ったクーファは、家庭教師としてアンジェル家に赴任し、メリダの血の滲むような努力を知ることになります。その姿を見た彼は、禁断の薬を使って「メリダに自分のマナを分け与えること」を決意。
かくしてクーファは、メリダとの秘密がばれないように画策しながら、2人はさまざまな陰謀に巻き込まれていくことに……。
- 著者
- 天城ケイ
- 出版日
- 2016-01-20
13歳のメリダと17歳のクーファとの間に、ほのかに生まれていく淡い恋情や、10代の少年・少女たちが、マナを使いながら戦闘をくり広げるアクションシーンがこのシリーズの魅力です。
少女漫画や少年漫画の要素がてんこ盛りであるだけでなく、事件が起きたときは真相を究明するミステリー要素もあります。
また全巻を通してひとつの謎を追いかけるという、ライトノベルの枠を超えた壮大なスケール感により、いつの間にか物語に引き込まれてしまうでしょう。
童話をモチーフにしたアイテムも登場するため、普段からライトノベルを読んでいる人や、ファンタジー漫画やアニメが好きな人にもおすすめです。普段はライトノベルを読まないという人にも読みやすい作品です。
裏社会の仕事を引き受ける、白夜騎兵団(ギルド・ジャックレイブン)に所属する17歳の青年。ある任務を帯びて、偽名のクーファ・ヴァンピールと名乗り、アンジェル公爵家令嬢・メリダの家庭教師として赴任します。
白夜騎兵団にメリダの暗殺を依頼していたメリダの祖父・モルドリュー卿は、実は2つの依頼をしていました。
「メリダのマナ能力を覚醒させて、至上の騎士に育てあげる」または「彼女にマナ能力者の素質がない場合には、速やかに彼女を暗殺する」というもの。
一方、13歳のメリダは、通常なら7歳前後で覚醒する「マナ能力」に目覚めておらず、平民出身の亡母の不義が疑われています。そのため、マナ能力者の養成学校・聖フリーデスウィーデ女学院に通う彼女は、酷いいじめに遭っていました。
メリダの様子を見ていたクーファは、「絶望を知らないまま逝かせる」という暗殺者の矜持(アサシンズプライド)にもとづき、彼女を速やかに暗殺しようとします。
しかし、メリダの部屋に忍び込んだクーファは、「無能才女」と罵られても、人知れず努力するメリダの姿を目撃します。その姿に心を打たれた彼は、闇の治療薬を使って彼女に「自身のマナの一部を移植する」と決意し、騎兵団にはそのことを秘密にしながら、彼女を守り続けることに……。
- 著者
- 天城ケイ
- 出版日
- 2016-01-20
貴族の血筋に生まれながらも、マナを発現させられない13歳の少女・メリダと、彼女を暗殺する任務を帯びながら、密かに見守る17歳の青年・クーファの物語の幕開けです。
1巻の見所は、施術のためのディープ・キスや、メリダの身体のマナ器官に異常がないかを、クーファが「身体検査」したことにより芽生える、甘酸っぱい恋の心情です。読んでいてドキドキしてしまうでしょう。
それだけでなく、2人の信頼関係がしだいに深くなる場面も見所のひとつ。スパルタ指導に必死についていく努力家のメリダと、彼女の身を守るためにさまざまな特訓をして戦略を練るクーファ。
2人のそれぞれの視点から物語が展開されることで、お互いのことをどれほど信頼しているかが浮き彫りになります。そして、なんといっても最大の見所は、内外の人間を招いて行われる「学期末公開試合」の模擬戦闘です。
マナを持たない「無能才女」と見下されていたメリダが、はじめてマナを発現させて観客を驚かせます。メリダをいじめていた主犯格・ネルヴァと激闘をくり広げるシーンでは、思わず手に汗を握ってしまうでしょう。
年に1度、姉妹校である「聖ドートリッシュ女学園」とのルナ・リュミエール(全生徒たちの模範となるべき生徒のこと)選抜戦があります。
例年では、2年生あるいは3年生の4人の候補生たちが、ルナの座を巡って争いますが、何者かの陰謀により、メリダと彼女の同い年の従姉妹であるエリーゼが出場することに。
思わぬ事態にメリダは戸惑いますが、そんな彼女に救いの手を差し伸べたのは、なんとメリダをいじめていたネルヴァと、前年度のルナ・リュミエールに選ばれたシェンファでした。
一方、クーファはギルドへの忠誠心を疑われ、選抜戦に「もう1人の刺客」が送り込まれてしまいます。そのことに気づいた彼は、エリーゼの家庭教師・ロゼッティと協力して、暗殺を阻止するために奮闘するのです。
さらに、メリダはずっと距離を置いていた従姉妹と向き合い、彼女の思わぬ告白を聞くことになります。
- 著者
- 天城ケイ
- 出版日
- 2016-04-20
2巻の見所は、メリダとエリーゼの絆が強まる、選抜戦最後の戦闘シーンです。
同い年の2人ですが、もともとエリーゼは気が弱く、注目されるのも苦手な性格であるのに対し、メリダは活発で、いつもエリーゼの前を歩く姉のような存在でした。
しかし、アンジェル家が代々受け継ぐ聖騎士(パラディン)のマナを発現させたエリーゼに対して、メリダはいつまで経ってもマナを発現させることができず、彼女は望まずとも周囲の注目と期待を集めるようになってしまうのです。
エリーゼはそのことにプレッシャーを感じていましたが、「無能才女」と蔑まれて、しだいに自信を失くして距離を置いてしまったメリダには相談できず、ひとりで悩みを抱えるようになります。
歪んでしまった幼き少女2人の関係。彼女たちが選抜戦で対峙して刃を交えているとき、エリーゼは言い放ちます。
「どうしてわたしが、1学期の公開試合でリタ(メリダの愛称)と戦うのを避けたんだと思う?」
「それはリタが――私より弱いなんてことを知りたくなかったから!」
(『アサシンズプライド2 暗殺教師と女王選抜戦』より引用)
メリダは、この言葉を聞いて昔の2人の関係を思い出し、挑戦状を突きつけます。
「……わたしがあなたより弱いですって?思い上がりもたいがいにしなさい!」
(『アサシンズプライド2 暗殺教師と女王選抜戦』より引用)
そして、メリダとエリーゼの戦いが始まります。さまざまな陰謀が渦巻くなか、2人は絆を取り戻すことができるのでしょうか……?
メリダのマナの位階は上位位階の聖騎士(パラディン)ではなく、下位位階の「侍(サムライ)」であることが貴族社会に知れ渡ります。
このことにより、現体制を変革しようと目論む革新主義者(オペラシオン)が、メリダの血筋の不当性を証明しようと動き出します。また大講堂での集会中に、メリダの実父を名乗る謎のピエロが乱入する事件が発生し、世間の注目を集めることに。
一方、彼女を世間に認めさせるための実績を新たに作らなければならないと考えたクーファは、メリダに「迷宮司書官」の受験を勧めます。
1年生を修了する段階では難しいとされる試験ですが、メリダはエリーゼとともに受験することを決意し、ほかの受験生たちと地下に向かう昇降機に乗り込みました。
しかし、突然謎の現象が起きて2人はほかの受験生とはぐれてしまったうえに、姉妹校に通っているはずのミュールとサラシャに遭遇。
なんとかその場を乗り越え、ひとまず試験にクリアすることを優先した4人ですが、向かった先にはオペラシオンの罠が待っていました。
- 著者
- 天城ケイ
- 出版日
- 2016-07-20
3巻の見所は、正体を隠したオペラシオンの貴族たちから、誹謗中傷を浴びながら戦うメリダが、思いがけない言葉で彼らを黙らせた場面です。
「たとえ誰かが『位階を変えてあげる』なんて言っても、わたしは願い下げだわ。わたしはわたしで、わたしのままでみんなに認めさせてみせる。《無能才女》って呼ばれても、血筋が疑われていても関係ない……。わたしはアンジェル家の聖騎士(パラディン)よ!!」
(『アサシンズプライド3 暗殺教師と運命法廷』)より引用
メリダの心情の変化と成長をしみじみと感じるセリフ。また、この言葉が発せられたシーンを読むと、それまでのストーリーと相まって、思わず感動してしまいます。
メリダの姉妹校に通うサラシャの兄・セルジュ・シクザール公爵は、三大公爵家で3年ごとに交代する王爵(王位のこと)を引き継ぐことになりました。
通過儀礼である「王の試練」のため、セルジュは各地を巡幸しなければいけませんが、次期王爵の暗殺計画の情報を掴んだため、彼はクーファにある取引を持ちかけます。
それは、クーファの真の所属先を秘密にする代わりに、セルジュの影武者として巡幸に赴くということでした。
取引に応じたクーファは、セルジュの妹であるサラシャと、現王爵の娘であるミュールと一緒に列車に乗り込みますが、ひょんなことからメリダとエリーゼも行動をともにすることに。公爵家の令嬢であることを隠すために、なんとクーファのメイドと身分を偽ることにしたのです。
ふだんと逆転した主従関係から巻き起こる面白いイベントやハプニング、4人の少女たちが結託してクーファにいたずらを仕掛けるなど、旅は良好に進むかに思われましたが……。
暗殺者たちの思惑は水面下で渦巻いており、走る密室である列車のなかでそれらは表面化します。果たしてクーファと4人の公爵家令嬢たちは、この危機を乗り越えることができるのでしょうか。
- 著者
- 天城ケイ
- 出版日
- 2016-11-19
4巻の見所は、前巻で出会ったばかりのメリダ・エリーゼ・サラシャ・ミュールが、騎士公爵家令嬢という立場を気にせずに友情を深める場面です。
秘境の温泉といわれるオルラーヌを訪れたときには、大浴場でガールズトークに花を咲かせ、結託して隣の浴場で入浴しているクーファにいたずらを仕掛けます。
また、暗殺集団にジャックされた列車では、身元が割れているサラシャとミュールは放送を使って呼び出されてしまいますが、4人はメリダとエリーゼが身分を偽っていることを利用して、ある反撃作戦を企てるのです。
深まる4人の友情と絆は、いったいどのような変化を迎えるのでしょうか。
2年生に進級したメリダは、ほかの生徒たちとともに地底都市・シャンガルタへの巡礼に行くことに。シャンガルタは、エリーゼの家庭教師ロゼッティ(平民出身)の故郷であり、彼女の義理の父であるブロサムの引率で楽しい旅行になるはずでした。
しかし、突然メリダのファンである1年生のティーチカ、またエリーゼやロゼッティが何者かに襲われ、原因不明の昏睡状態に陥ってしまいます。事件の容疑者として浮上したのは……クーファ。
さらに関係者としてメリダは、パニック状態に陥ったシャンガルタの住人たちに追われることになり、2人は身を潜めながら事件の真相を捜査します。
そして判明したのは、クーファの過去とロゼッティとの思わぬ因縁、ブロサムとセルジュ・シグザール公の不可解な行動についてでした。
- 著者
- 天城ケイ
- 出版日
- 2017-02-18
5巻の見所は、事件の真相を追求するうちに明らかになった「クーファの過去」と、白夜騎兵団に入った経緯、ロゼッティが平民出身でありながらマナを発現させた原因など、登場人物たちの隠された過去のエピソードが明らかになるシーンです。
物語のなかに伏線らしき文章はありますが、予想を上回る事実に驚愕すること間違いありません。
また、想い人のクーファに対するメリダの気持ちの変化にも注目です。ひとりですべてを抱え込んで彼女を守ろうとするクーファに対して、メリダは自分の気持ちを伝えます。
「先生。たとえ世界中が疑おうと、わたしだけはあなたの味方です。」「だから先生も信じて。わたしが、あなたを信じているということを。」
(『アサシンズプライド5 暗殺教師と深淵饗宴』より引用)
メリダの言葉を聞いたクーファの心にも変化が……2人ではじめて力を合わせて壁に立ち向かうのです。彼らが「どのように心を触れあわせたのか」に注目しながら読んでみてください。
ランカンスロープからフランドールを守るために、海流を作り出す装置「万能の錬金窯・コルドロン」。
三大騎士公爵家の墓地でもある防衛装置に、なんらかの異常が起きて海流の流れが弱くなったため、騎士公爵家の人々は、飛空艇「プリマヴェーラ」でコルドロンに向かいました。
そこで彼らを待ち受けていたのは、300年前に夜界へ探索に行ったきり、帰還できなかったはずのラ・モール家の祖先・レイシーでした。
なんと彼女は、亡くなった夫と娘を生き返らせる術を求めて夜界へ行き、不老不死の技と人造人間(ホムンクルス)の錬成術を習得して戻って来たのです。
しかし、彼女の野望のためにコルドロンは停止させられ、エリーゼとサラシャが囚われてしまいます。彼らは、レイシーの暴走を止めて2人を救出するために、二手に分かれてコルドロンに侵入しますが、まさかの予想外の展開に……。
- 著者
- 天城ケイ
- 出版日
- 2017-06-20
6巻の見所は、暗殺教師として冷静な姿勢を崩さなかったクーファと、何を考えて行動しているのかわからないセルジュが、反目しながらも軽口を叩くようになるシーンです。
お互いに毛嫌いしているような言葉を吐いて、時にはじゃれ合うように武器で争いますが、その様子はまるで小さな子どものようにも感じられます。
今までの2人が交わした言葉や、垣間見える表情からは考えられない関係に発展しますが、それが1度だけの場面ではなく、何度もやりとりされるのです。
これは、コルドロンに侵入するために「背中を預け合わなくてはならない窮地」が、2人の関係を変えたのでしょう。本人たちは仲がよくなったことを認めませんが、それも含めて微笑ましい気持ちになります。
モルドリュー武具商工会、レイボルト財団、騎兵団枢機プラントの3つの武器工房が集う、最大の武器の祭典・鋼鉄宮博覧会。
聖フリーデスウィーデ女学院は、集団戦術闘技会(アーセナル・ストロング・コンテスト)で、モルドリュー武具商工会の武器を使用する養成学校に指定され、メリダもその祭典に行くことになります。
しかし、モルドリュー卿は、パラディンではなくサムライの位階を発現させたメリダの暗殺を正式に決定し、クーファは博覧会で彼女を暗殺するように指示されます。
一方、水面下では暗殺計画に協力するふりでモルドリュー卿に取り入った、犯罪ギルド・黎明戯兵団(ギルド・グリムフィス)が、現体制を覆すための陰謀を巡らせていました。
彼らはモルドリュー卿の手引きで、博覧会が行われるセレストテレス凱門区に侵入した後、メリダだけではなく、一般人も巻き込んだ大規模テロと、国家最高機密の奪取を目論んでいたのです。
さまざまな陰謀が渦巻く博覧会。メリダは無事に生き延びることができるのでしょうか。
- 著者
- 天城ケイ
- 出版日
- 2017-10-20
迫力ある戦闘シーンを楽しむこともできますが、7巻の見所はメリダと母方の祖父モルドリュー卿との関係です。
メリダが幼年学校に入学した7歳から、モルドリュー卿は年に数回しか彼女に会っておらず、孫と会うときには、いつも好々爺(こうこうや)を演じていました。そのため、メリダは祖父を心から慕っており、まさか彼が自分の暗殺計画を練っているとは露ほども疑っていません。
今まではクーファの依頼人として登場し、悪役のイメージが強かったモルドリュー卿ですが、メリダがいよいよ暗殺されるというとき、何を思い、どんな行動をとるのでしょうか。
本心を知ると、彼もひとりの人間として苦悩していたのかと、感慨深くなってしまうでしょう。
セルジュ・シグザール公が、王爵を即位してから1年が経過したころ、著名人が集まる会議の場で衝撃的な宣言をします。
セルジュは「ランカンスロープとの融和」という革命を起こすと告げ、聖王区(王爵がいる政治の要になる都市)に狂人狼(ワーウルフ)族を招き入れたのです。
フランドールの街中を歩き回るようになったワーウルフたちに、多くの人は戸惑いますが、聖フリーデスウィーデ女学院にもワーウルフの教育顧問が派遣されることに。
兄を問い詰めようとしたサラシャもホテルの最上階に閉じ込められてしまい、ミュールも行方不明。事態は混乱の一途を辿ります。
そんな状況のなか、ビブリアゴートで伝説の予言書が発見され、そこにはワーウルフ族をフランドールから追い出す「神の御子」が現れると記されていました。その子どもとは、なんとメリダ=アンジェルだったのです。
ワーウルフ族に追われる身となったメリダとエリーゼ。クーファとロゼッティは彼女らを逃がそうとしますが、途中ではぐれてしまいます。
メリダを守ろうとするのはクーファだけではなく、聖フリーデスウィーデの講師や生徒たち、追跡を逃れたアルメディア・ラ・モール女公爵も助力してくれますが……
- 著者
- 天城ケイ
- 出版日
- 2018-08-18
8巻からは、推理小説とアクション作品の要素が強くなり、ライトノベルという枠組みを超えた小説を読んでいるように感じます。
見所は、フランドール内の情勢が急激に変わったことで、メリダの日常生活が崩れ去り、今までの1巻完結型の話とは「ひと味違った物語」を楽しむことができること。
「予言の子」と呼ばれて戸惑うメリダとセルジュに、友情のような親しさを感じ始めていたクーファ。そんな彼らをアルメディアは鼓舞し、とくにクーファに覚悟を決めるよう諭します。
「主人の重責を憂うならば、おぬしがセルジュを討つのじゃ。」「奴が≪友≫と呼んだおぬしにしかできないことじゃ。」
(『アサシンズプライド8 暗殺教師と幻月革命』より引用)
メリダとクーファは前代未聞の苦境を乗り越え、セルジュの目的がわからない陰謀を止めることができるのでしょうか。また、セルジュがこのような混乱を起こした理由とは……。
エリーゼとロゼッティを匿ったギルドは、セレストテレス凱門区を拠点に決死の籠城をしており、メリダとクーファ、そしてアルメディアは反抗のための地下活動を始めます。ワーウルフ族は民衆を洗脳するために画策しますが、市民の反感は募るばかりです。
そんな状況で、セルジュはワーウルフ族のランカンスロープ化実験の成功体である少女・フリージアとの婚姻を発表し、ランカンスロープ族との融和を進めます。
結婚式を止めるために、クーファは吸血鬼(ヴァンパイア)に成りすまし、メリダと一緒に結婚式場に乗り込みますが、そのときクーファが取引をしたのは、ワーウルフ族のボス「マッド・ゴールド」。
そして、メリダたちはシグザール家にかけられた呪いのことを知ります。ワーウルフ族の真の狙いとは?また、セルジュを突き動かした呪いにも関係が……?
- 著者
- 天城ケイ
- 出版日
- 2019-01-19
9巻の見所は、セルジュの従姉妹であるクシャナとメリダたちが合流し、シグザール家にかけられた呪いの真相に迫るシーンです。すべての伏線がここでつながり、彼らはセルジュとどのように向き合うべきかを決断することになります。
真実を知ったうえでセルジュの行動を振り返ってみると、彼がフランドールの存続を願い、ひとり悪者になることを選んだことに気づかされるでしょう。
また、兄の行動の意味を知ったサラシャは、シグザール家の一員として事態を解決するために、「守られる側」から「守る側」へと成長を遂げます。
一方、クーファもセルジュと激闘をくり広げたときに、彼を殺すことを躊躇し、生まれてはじめて誰かを友だちとして大切にするという気持ちを知りました。
怒涛の展開に夢中になってしまい、みんなが救われるための結末を願いながら、ページをめくる手が止まらなくなるでしょう。
ワーウルフ族を追い出し、フランドールは平穏を取り戻したかのように見えました。しかし、セルジュの行動によって、騎士公爵家をはじめとする貴族たちの威信は地に落ちます。
このことにより、「貴族階級はもはや不要」と主張するレイボルト財団と民衆、マナを受け継ぐ貴族の血筋を守るべきと考える「純血思想」の対立が始まったのです。
聖フリーデスウィーデ女学院は、純血思想に賛同するベラヘーディア理事長が学院長となり、学院を全寮制にして教育内容を一変させ、実技授業も禁止してしまいます。
一方、3年生になったメリダは、エリーゼやほかの生徒と協力し、牢獄と化した学院で下級生たちを守るために奔走していました。
そのころ、現体制を維持するために、白夜騎兵団からクーファへ「エリーゼ・アンジェルを始末せよ」という無慈悲な命令が下されます。苦悩しながらもクーファは学院に忍び込み、命が狙われていることをメリダとエリーゼに告げ、ある「脱出作戦」を提案します。
同時展開でくり広げられる物語。メリダとエリーゼ、そしてクーファは、自分たちの命を守るため、無事に逃げ切ることができるのでしょうか。
- 著者
- 天城ケイ
- 出版日
- 2019-06-20
10巻の見所は、3年生になったメリダたちが、下級生たちを学院長の監視から守り、自分たちが教わってきた教育内容を密かに教えているシーンです。
学院に潜り込んだクーファが、地下室でその光景を見て驚いていると、メリダは……
「だって今のわたしたち、フリーデスウィーデでいちばん≪御姉さま≫だものっ。」「だからわたしたちが、妹たちを導いてあげなくちゃ。わたしが御姉さまたちにそうしてもらったように、わたしの妹たちにも、『聖フリーデスウィーデで学べてよかった』って心から思ってもらいたいの。負けてなんかいられないわ!」
(『アサシンズプライド10 暗殺教師と水鏡双姫』より引用)
そこには「無能才女」と呼ばれていじめられ、常に俯きながら小さく笑みを浮かべ、周りに合わせていた1年生のメリダ・アンジェルの姿はもうありません。
アクションや推理、年の差の恋愛要素がふんだんに詰め込まれた『アサシンズプライド』。ますます広がっていく彼らの世界に、ぜひ触れてみてください!
いかがでしたか?以下の記事では、漫画の『アサシンズプライド』について紹介しているので、気になった方はぜひご覧ください。
漫画『アサシンズプライド』全巻あらすじをネタバレ紹介!アニメ化漫画が面白い
教師によって生徒の能力が、劇的に向上するといった話をよく耳にします。『アサシンズプライド』は、才能に恵まれなかったお姫様メリダと、彼女の家庭教師となったクーファの物語。クールで万能な教師によって、メリダはどう変わっていくのでしょうか。アニメ化も決定した本作の漫画版を、ネタバレつきでご紹介いたします。