付き合っていた恋人と別れた後、相手にどのような感情を抱くでしょうか。悲しみや怒りは想像しやすいですが、『モトカレマニア』は違います。別れた後に元カレにハマってしまった女性が主人公という、異色ラブコメディ作品。元彼が忘れられない!そんな方におすすめの作品です。2019年10月にはドラマ化される本作の見所を、ネタバレ有りでご紹介いたします。
本作は、瀧波ユカリの漫画作品。講談社の漫画雑誌「Kiss」で連載されています。主人公は別れた恋人のことを引きずっている27歳の女性、難波ユリカ。彼女の趣味は、なんと別れたカレと妄想で会話をすること。
マコチこと斉藤真とは5年間交際をつづけ、22歳の時にケンガが原因で破局。ユリカはいくつかの恋愛経験を重ねましたが、マコチは素晴らしい恋人だったと気付かされたのです。せっせとSNSでマコチの行動を追う日々。彼と脳内で会話を楽しむなど、妄想生活を送っていたのです。
- 著者
- 瀧波 ユカリ
- 出版日
- 2018-03-13
とはいえ、ユリカは休職中。マコチの存在を心の支えに就職活動を続けると、不動産会社の営業職に転職が決まります。そしてなんと、その会社でフリーターだったはずのマコチと遭遇。他人にドン引きされるほど、追い求めていた元カレとの再会です。ユリカはどのような行動に出るのでしょうか。
元カレと意外なところでばったり再会という、ありそうな舞台設定と、元カレとの関係あるあるが楽しい本作。2019年10月より、フジテレビ「木曜劇場」枠にてテレビドラマ化されることが発表されました。発表されているキャストは、難波ユリカ役を新木優子、斉藤真役を高良健吾が演じます。2019年8月に、ガンバレルーヤのよしこが出演することも決定しました。
瀧波ユカリは、1980年3月28日生まれ、北海道出身で、北海道に在住しながら、創作活動を続けています。女子高生写真家としても注目を集めたHIROMIXに影響を受け、日本大学芸術学部写真学科に進学。卒業後は東京でフリーターをしていましたが、2004年講談社「アフタヌーン四季賞」で『臨死!!江古田ちゃん』が大賞を受賞。漫画家デビューを果たしました。
東京都練馬区江古田駅近くに住むフリーター、江古田ちゃんを主人公とした『臨死!!江古田ちゃん』は、彼女を中心とした女性の日常を赤裸々に描いた4コマギャグ漫画です。しかしギャグマンガだけでなく、文藝春秋『はるまき日記』や『ありがとうって言えたなら』など、育児や介護、看護をテーマとしたコミックエッセイ作品も発表し、幅広く活躍しています。
- 著者
- 瀧波 ユカリ
- 出版日
- 2006-04-21
瀧波ユカリ作品の大きな特徴は、女性目線から見た女性が赤裸々に描かれているということ。飾り気も何もなく、様々なタイプの女性の真の姿が描かれ、誰をとってみても「こういう人いるな」と思わせるキャラクターが多く、作品に親近感が溢れています。
コミックエッセイでも、赤裸々さは変わらず、自身の体験や考えを、笑いを交えて描いています。誰もが経験しうる出来事に対し、作者自身の言葉で真摯に伝えているからこそ読者も共感し、言葉が心に響きます。
本作は、元カレ好きを拗らせた女子が、元カレと再会したらどうなるのかを描いたラブコメディ作品です。現実では少々ご遠慮願いたいシチュエーションですが、本作ではドロドロ展開はなく、あくまでもコメディ路線。ユリカが誰かを傷つけたり、逆に傷つけられたりする場面もなく、安心して読み進められます。
ユリカの妄想暴走シーンが多いですが、それでマコチに迷惑をかけるわけではない展開が意外なところではないでしょうか。マコチを病的に崇拝している彼女ですが、だからと言ってモトサヤに収まることを目標にしているわけではありません。そういう物語なのでは、と思って読み進めていると、意外な出来事に驚かされるでしょう。
そして主人公の彼女たちだけでなく、不動産会社の社員がとても個性的。そんな中で妄想力を糧に日々奮闘するユリカの力強さや先輩社員から元気や癒しをもらうことができるでしょう。次からは、登場人物の魅力をご紹介いたします。
難波ユリカは、とにかく妄想がはげしい女性です。元カレを崇拝し、脳内で会話をしてしまう。SNSで自身と別れた後の動向を探ったりと、少々ストーカー気質なところはありますが、本気でストーカーになるほど、なにがなんでも、よりを戻したいわけではないところがユリカに親しみを感じられる点ではないでしょうか。
彼女の元カレに対する感情は、恋愛感情はもちろんあるものの、アイドルを応援するファンのようなものも含まれています。ある日再会し、同僚となってからもその姿勢を大きく崩すことはありません。節度があり、自身の感情をセーブできる大人の女性であるところが大きな魅力です。
とはいえ、就職してからもテンションの高さは健在。妄想に向けていた労力を仕事に向け、日々努力し、前向きで明るいところに大変好感が持てます。時折登場する脳内会議は必見。職場にいたら楽しいタイプの女性です。
斉藤真ことマコチは、ユリカの元恋人。現在は家庭の事情により福盛真と名乗っていますが、独身です。マコチ自身は職場にユリカとの関係を「以前のバイト仲間」と紹介しており、序盤は特に彼の中でユリカがどういった位置付けになっているのかはわかりません。
読者的に見慣れているマコチとは、ユリカの妄想の中に登場する、完璧な彼氏としての姿でしょう。まるで女性向けゲームかのごとく、優しく、甘い言葉をかけてくれるマコチ。
リアルマコチと妄想のマコチ、同一人物なのに色々とかけ離れている部分があるところが面白いポイントです。実は超絶マイペースであると判明するシーンでは、リアルマコチも相当キャラが濃いタイプだったのだな、と思わされるはずです。
ハラミ会とはなんぞや。もちろん、焼き肉をする会ではありません。これはユリカが務めるチロリアン不動産の社員で結成されている会です。ハラミ会とは、「ハラスメントを未然に防ぐ会」の略称。社長や専務の城、教育係の大沢、白井といった社員たちが所属しています。
ハラミ会は、一般女性とお酒を飲む会には参加しないことを掲げて結成されました。会員たちはお酒の席で自身がうっかりセクハラをしてしまうことに嫌気がさしてしまった社員が所属しており、男性だけの飲み会を行っているのだとか。
ハラミ会の存在は、SNSで大きな反響がありました。男性的には「最大の防御」と賛成が多く、女性の中には「誘われないこと自体がセクハラ」という声もあり、どちらかに寄った答えを出すのは難しいでしょう。しかし、普段は愉快で突拍子もない彼らの気遣いだと思うと、なんだか心が温まります。
チロリアン不動産に再就職が決まったユリカは、妄想の中で崇拝していた元カレ、マコチと再会します。動揺するユリカでしたが、彼自身に動揺した様子はありません。何を考えているのか。自分のことをどう思っているのか。モヤモヤした感情を抱えながらも、日々の仕事に打ち込んでいきます。
そんな時、ユリカがお客として接していた山下にアプローチをされます。マコチへの未練を振り切るため、山下と交際を始めましたが、意外な事実が判明。なんと山下も元カノのことが忘れられない、元カノマニアだったのです。
2人は意気投合し、それぞれの元恋人を忘れようと奮闘する同志となるのでした。
- 著者
- 瀧波 ユカリ
- 出版日
- 2019-07-12
しかし、山下は結局元カノの元へ旅立ち、ユリカは脱マコチをすることもできず、うまくいきません。焦りがあるなかマコチに優しくされたユリカは、うっかり彼に告白してしまうのでした。
3巻の見所は、ずばり告白されたときのマコチの反応でしょう。ユリカの脳内会議は随所で見ることができましたが、マコチの脳内会議の様子を見ることができます。
2人が何故別れたのか、現在彼がユリカをどう考えているのか、本音が少し垣間見られ、特にマコチへの理解が深まるはずです。
ユリカの痛い妄想やタイトル、設定のインパクトはあるものの、明るいラブコメディである本作。女子の本音や恋愛へのスタンスなど、共感できる部分が多いところに女性読者の心がわしづかみにされているのでしょう。ドラマではどんな妄想が繰り広げられるのか、見逃せません。