ホラー小説おすすめ10選!一番怖いホラーは、これだ。

更新:2021.12.14

ホラーには、バトルロワイヤルのようなサバイバルホラーや、四谷怪談のような日本的湿度のあるホラーなど様々なタイプがあります。今回は、怖いのに読み進めてしまう、おすすめホラー小説をご紹介します。

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これぞ、ホラーのど真ん中『1303号室』

マンションの1303号室からは湘南の海が見えます。建物の一階にはコンビニもあり、とても良いマンション。ところが1303号室に引っ越してくる人には、災いが起こるのでした。

著者
大石 圭
出版日


その部屋の住人になると、隣の1302号室に住む人形のように美しい少女から「あの部屋に住む人はみんな死んじゃうんだよ」と告げられます。新生活に胸膨らます住人は、部屋に何者かを感じます。それは誰かの気配などという生易しいものではなく、自分しかいないはずの部屋でシャワーを使う音が聞こる、トイレの中からノックが聞こえるなど、恐怖のどん底に突き落とされるもの。そして少女の予言通り、遂にあらわれる「それ」によって部屋の住人はベランダから転落死してしまうのでした。

救いようがない展開と、逃れられない恐怖感は、夜に部屋で一人で読むと後悔するほどです。映画にもなっており、正統派ジャパニーズホラーといえるでしょう。

また最後に、早苗が精神科医としてとった行動は非常に考えさせられます。死ぬのをただ待つ患者に対して、あなただったら、どんな選択をするでしょうか?ホラーでありながら、生と死について深く考えさせられる作品です。

血みどろではないけど、グロいホラー『天使の囀り』

死ぬのが怖い「死恐怖症」に悩まされていた高梨は、ある企画でアマゾンに行って帰ってくると、真逆の「死愛好症」になっていました。そして終末医療センターで精神科医をしている恋人の早苗から睡眠薬を盗み出し、自殺してしまいます。

著者
貴志 祐介
出版日
2000-12-08


やがて、その企画で同行していた人々が次々と奇妙な自死をとげ、早苗はその不信さに原因の究明を始めます。自殺した人々が共通して死ぬ前に聞いていた音が「天使の囀り」です。言葉のかわいらしさとは裏腹に、それは人を死へと向かわせるものでした。

まず、自殺する前の高梨の躁状態や、ぶくぶくと太っていく肉体的変化に気持ち悪さを感じますが、それは序の口。自殺しなかった場合にたどる運命はさらに悲惨で、遺伝子まで操作され、すでに人間としては機能しない体になります。その描写は非常にグロテスクです。スプラッター系(血しぶきが飛び散るような表現)ではないグロテスクさは、ホラーでもあまりありません。血みどろ以外のグロテスクさを楽しみたい方におすすめです。

日本が舞台の、サバイバルホラー『夜までに帰宅』

舞台は日本。ただし電力の供給が止められ、外出は禁止、通信、警察、病院なども機能を停止してしまう「夜」制度が導入された日本です。

著者
二宮 敦人
出版日
2012-10-25


吉祥寺に住む高校生・アキラは友人の誘いで、好意を寄せているエミをはじめとする友人たちと、法律で禁止されている「夜」遊びをすることになります。ほんの冒険心から始まった「夜」遊びでしたが、友人の一人が消え、生首となって見つかります。

ドアの向こうに気配を感じるのに、助けを求めてドアを叩いても誰も反応してくれないという特殊な状況が、恐怖に拍車をかけます。そんな状況下で、殺人サークルに出会い、目をつけられたアキラたちが井の頭公園で繰り広げる戦いは、見ごたえがあります。

グロテスクな表現はありませんが、敵に追われる恐怖感を楽しめます。アキラの恋愛事情などもあり、ライトノベル感覚で気軽に読むことができますので、さくっと読みたい方におすすめです。

鬼は誰だ?異色の脱出系ホラー『お前たちの中に鬼がいる』

高校教師の須永が目覚めると、見知らぬ薄暗い地下室にいました。そこで見つけたメッセージは「お前たちの中に鬼がいる」というもの。同じ地下室には鍵のかかった部屋が5つあり、それぞれに女性が鎖でつながれていたのです。須永をはじめとした皆が脱出を試みますが、6人の中に潜む鬼を殺さなければなりません。一体鬼は誰なのでしょうか?

著者
梅原 涼
出版日
2013-11-14


強姦や残酷な死体などのホラー要素も多くありますが、前半は淡々と進み、脱出に向けての謎解きが始まるあたりから、ぐいぐいとストーリーが進み始めます。意外な鬼の正体がわかったときには、話の落とし具合や教訓に感動すら覚えます。

脱出系ホラーの中では、ひときわ異色の結末を迎えます。脱出系ホラーに飽きたという方にも、ぜひ読んでもらいたい作品です。

妖怪の愛?美しいエログロホラー『夜波の鳴く夏』

時は大正。「ぬっぺほふ」という妖怪が、令嬢コバト姫に飼われていました。しかし純情をささげたコバト姫が、義兄秋信と関係を持っていることを知り、ぬっぺほふは秋信を殺そうと考えるのでした。

まず、世界観が異様です。大正時代の東京を舞台に、妖怪が共存しています。そんな妖怪たちが開いている「市」では、魑魅魍魎(様々な化け物)が闊歩する様子が生き生きと描かれており、楽しくなってしまうほどです。

著者
堀井 拓馬
出版日
2012-08-25


主人公であるぬっぺほふは、どろどろに溶けた脂の塊のような、とても醜い姿をしています。そんなぬっぺほふを「あたしのかあいいお肉ちゃん」と呼んで愛玩動物のようにかわいがる美しく傲慢なコバト姫。登場人物のキャラクターが、とても濃いものとなっています。

ぬっぺほふや、美しいコバト姫、義兄秋信、秋信が手を出していた千花子は、自分の欲望のためには手段を選びません。特に千花子が秋信にした残虐な仕打ち−-秋信の手首を切り落とし、自分の快楽に使う−-はトラウマになりそうなほどです。

残虐さを持っていながらも、全体を通してアンダーグラウンド感が漂う美しさを保つのは、ぬっぺほふが一途にコバト姫を愛しているからでしょう。妖怪やエログロがずっしり詰まりながらも、不思議な美しさのある世界をのぞいてみませんか?

その人物は人間か、それとも……『玩具修理者』

何でも元通りに直してくれる「玩具修理者」。機械も人形も生物でさえも。ある日、誤って弟を死なせてしまった「私」は、そのことを親に知られたくない一心で、壊れた物を何でも直してくれる「玩具修理者」の元へ向かうのですが……。

表題作「玩具修理者」に加えて、タイム・リープ(時間跳躍)を題材にした「酔歩する男」を収録。読者をグロテスクで非現実な恐怖空間へと誘う衝撃作です。

著者
小林 泰三
出版日


その人物は「玩具修理者」。壊れた物を一旦すべてバラバラにし、何でも一瞬にして元に戻してしまう謎の存在。男性であるのか女性であるのか、人間なのかそうでないのかすらわからず正体は全く掴めません。不可思議な言動、時折発する謎の奇声。どれもが不気味で得体が知れないにも関わらず、読むうちに玩具修理者というキャラクターに強く惹かれてしまいます。

グロテスクな描写もさることながら、終始意味不明と言っても過言ではないストーリー展開が魅力の本作。語り手の淡々とした独白は、やがてラストで戦慄の事実へと繋がることに。玩具修理者が「修理」した物の末路は。そして罪を語るこの女性は何者なのか?H.P.ラヴクラフトの生んだ「クトゥルフ神話」の要素が散りばめられている点も、そのおぞましさを助長しています。

同時収録の「酔歩する男」も、その完成度の高さからファンの間で高評価を得ている名作です。

醜い遊女の秘めた狂気『ぼっけえ、きょうてえ』

ある岡山の遊郭で、顔の引き攣れた醜い一人の女郎が自分の身の上話を始めます。間引きを専門とする産婆を母とし、自分自身も小さな頃から赤ん坊を殺す手伝いをしていた彼女。想像を絶する地獄の道を歩んできた遊女が、客に語る恐ろしい真実とは……表題作「ぼっけえ、きょうてえ」をはじめ、男女の情念が渦巻く4編。

著者
岩井 志麻子
出版日
2002-07-10


短編ながら、日本ホラー小説大賞を受賞した岩井志麻子の代表作。「ぼっけえ、きょうてえ」とは岡山の方言で「とても怖い」という意味です。

表題作「ぼっけえ、きょうてえ」の舞台は明治時代の岡山県。客に向けて身の上話をしているひとりの遊女。その顔は引き攣れたように醜く歪んでいました。徐々に明かされる遊女の生い立ちの凄まじさ。そしてその容姿に隠された驚愕の秘密とは一体何か。また、本作は男と女の間に渦巻く情念を柱として描かれているので、ドロドロとした陰惨な雰囲気が後を引きます。

「怖い」というより「気持ち悪い」という感想をまず抱いてしまいがちな作品ですが、地方を舞台にした土着的な雰囲気もそれに一役買っています。方言で語られる狂気が読み手を完膚なきまでに「きょうてえ」気持ちにさせてくれること間違いなしの作品。

SFの巨匠が送る恐怖小説集『霧が晴れた時』

小松左京といえば、誰しも一度は名前を聞いたことがある大作家。主にSF作品を数多く世に送り出してきたことでも有名です。そんな小松左京が自選した恐怖作品集が本作。山へハイキングに出かけた家族が異空間と遭遇する「霧が晴れた時」の他、マニアの間で知らない人はいない、予言をする牛の頭を持った怪物「くだん」をめぐる名作「くだんのはは」も収録されています。

著者
小松 左京
出版日

 

SFホラーの第一人者が描く怪奇短編集。舞台となる時代はやや古いものの、現代でも「金字塔」といって遜色のない作品となっています。内容もあまり恐怖に重点をおいておらず、どちらかといえば読後に絶望感が残るものが多め。しかし、やはり話の構成とオチの多彩さで十分魅せてくれるので、その発想力にも舌を巻いてしまうに違いありません。


 

もちろん、パラレルワールドや異次元などのSFモチーフも随所に登場するなど、小松左京の原点が詰まった作品集に仕上がっています。ドラマ化された作品も多く既視感を覚えることもありますが、それでもスッと物語に入り込める点は素晴らしいの一言。


 

昔ながらの怪談話をSFに昇華させた骨太の作品たちは、どれもかなりの読み応え。小松左京作品を未読の方は、入門編としてこの作品から読んでみてはいかがでしょうか。

 

退廃的幻想ホラー小説『夢魔の旅人』

 

「月ちる盈夜を」「壁の中には」「奇蹟」など11話からなる短編集で、イタリアにまつわる話が収められています。ここでは「壁の中には」をご紹介します。

W大学で建築を学ぶ橘隆は、卒論のテーマにするつもりだったホテルから、2月14日の夜にぜひおいでくださいとの招待状を受け取ります。実際に訪れてみると、フロントでは誰もそんな招待状は出していないといいます。そのとき背後から聞こえた囁き声が聞こえてきました。招待状を出した人物まで案内してくれるというのです。

不規則な角をいくつも曲がり、すっかり自分がどこにいるのかわからくなった頃、ようやくその部屋にたどり着きます。そこで待っていたのは、ホテル創業者の孫で、現在のオーナーであるという老女でした。最初はホテルの歴史などをきいていたのですが……。

著者
篠田 真由美
出版日

高屋未央によるイラストがとても美しく、ストーリーと合わせて退廃的な雰囲気を楽しめるホラー作品です。各短編の後に、篠田真由美の短い解説がついていますので、そちらも併せてお楽しみください。

閲覧注意のグロテスクホラー小説『殺人鬼』

先に申し上げますと、この本は非常にグロテスクな描写が多々あるホラー小説です。そのため、苦手な方にはおすすめいたしません。また食前食後、夜中に一人といった状況での読書は、避けていただいたほうがよいでしょう。気持ちが悪くなって、途中で断念する方も多いようです。

著者
綾辻 行人
出版日
2011-08-25

90年代のある夏に集まったの仲間たちが、次々と惨殺されていきます。双葉山の伝説の殺人鬼が覚醒したのです。地獄のように繰り広げられる血みどろの惨劇っぷりは、想像をはるかに上回っています。グロテスクホラーが好きな方には、それだけでも楽しめる作品と言えるでしょう。

しかし、そんな中でもしっかりミステリーは存在しています。はしがきにもありますが、全体を通して大きな罠が仕掛けられているのです。最初から気を抜かずに読んでください。あなたはその違和感に気づくでしょうか?

きっと多くの方(それも、最後までグロテスクな描写に耐えきれた方)が、最後の蛇足部分を読んで衝撃を受け、最初から読み直してしまうのではないでしょうか。

くれぐれも読書のタイミングにはご注意ください。

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