ロシアの国民的キャラクター「チェブラーシカ」。その愛らしい姿は、見ているだけでほっこりしてしまいます。日本ではアニメやグッズが有名ですが、実は絵本が原作。この記事では、シリーズのなかでも特におすすめの5作を紹介していきます。
ロシアの作家エドゥアルド・ウスペンスキーが手掛けた「チェブラーシカ」。絵本「ワニのゲーナ」シリーズに登場します。オレンジが入った箱に詰められて熱帯からやって来た、未知の動物です。
シリーズ1作目の『ワニのゲーナとおともだち』が刊行されたのは、1966年のこと。タイトルからもわかるとおり主人公はワニのゲーナでしたが、その愛らしさと純真さで、脇役のチェブラーシカが一躍人気者に。実質的な主人公になりました。
チェブラーシカの姿かたちは、初期は文字でしか表現されていなかったため、挿絵画家たちが自由に想像したさまざまなものでした。その後1969年に、アニメ映画化されてイメージが一本化されます。フサフサの茶色い毛と、頭と同じくらい大きな耳が特徴です。
ロシアでは国民的なキャラクターになり、2004年から2010年のオリンピックでは、ロシア選手団の公式マスコットにも採用。子どもから大人まで、知らない人はいない人気者になっています。
「チェブラーシカ」はロシア語で「ばったり倒れ屋さん」という意味だそう。その名前からも、かわいらしさが十分に伝わってくるでしょう。
果物屋のおじさんがオレンジの箱を開けると、中で1匹の動物がすやすやと眠っていました。これまで見たことのない、図鑑にも載っていない生き物です。箱から出そうとしたのですが、何度起こしてもばったりと倒れてしまうことから、「チェブラーシカ」と名付けます。
それからしばらくして、住むところは見つかったものの、チェブラーシカはひとりぼっちの寂しい毎日を過ごしていました。ワニのゲーナが書いた「友達募集」のポスターを見つけ、会いにいくことにします。
- 著者
- やまち かずひろ
- 出版日
- 2007-11-02
チェブラーシカが初めてロシアの街にやって来た時のお話です。大好きなオレンジを食べていたところ、そのまま箱の中で眠ってしまったのだとか。
仲良くなったチェブラーシカとワニのゲーナは、友達がいない人が集まれる場所を作ろうと計画します。ひとりぼっちがたくさん集まれば、寂しくないと考えたのです。小さな子どもでもわかりやすいストーリーで、ほっこりとした気持ちになれるでしょう。
少し意地悪でいたずら好きのシャパクリャクおばあさんや、しっかり者の少女ガーリャなど、主要なキャラクターも続々登場。チェブラーシカの絵本を読むなら、最初に手に取りたい一冊です。
チェブラーシカとワニのゲーナは、初めて一緒に旅行へ行くことにしました。しかし、電車に乗ったものの意地悪なシャパクリャクおばあさんに切符をとられてしまい、途中で降りることになってしまいます。
森の中をさまよううちに、悪い三人組と出会って……。
- 著者
- エドゥアルド・ウスペンスキー
- 出版日
- 2008-10-30
意地悪をして2人を困らせたシャパクリャクおばあさんですが、悪い奴らが出てくると協力してくれるのが優しいところ。全員で一致団結して三人組をやっつけ、さらには森や川を汚している工場も壊します。
最後はみんなで仲良くなって、再び旅行へ。どんな時でもめげることなく楽しみを見出すチェブラーシカとゲーナは、理想の友達といえるかもしれません。
たくさんの荷物をもっているゲーナをチェブラーシカが手伝い、今度はゲーナが「お礼に君を持ってあげる」とチェブラーシカを抱えるシーンなどは秀逸。最初よりも重くなった、という展開に大人もクスっと笑ってしまうでしょう。
チェブラーシカの住む街に、サーカスがやって来ました。チェブラーシカもゲーナも、初めてのサーカスです。
帰り道、団員を募集している張り紙を見つけ、応募してみますが、もちろん不合格。そんなに甘い世界ではありません。そんななか2人は、サーカスに入りたいと綱渡りの練習を頑張る女の子、マーシャに出会います。
- 著者
- やまち かずひろ
- 出版日
- 2010-12-01
文を読み、イラストをゆっくりと眺めているだけでサーカスの楽しさがひしひしと伝わってくるお話です。お手玉の練習をするチェブラーシカのかわいいことといったらありません。まったくお手玉になっていないのに、それを「すばらしい!」と褒めてくれる優しいゲーナ。2人のやり取りはいつだって読者の心をあたたかくしてくれるのです。
1番の見どころは、失敗ばかりで泣き虫だったマーシャが、努力をして無事にサーカスの舞台に立つところでしょう。諦めないこと、助けあうこと、感謝することなど、大切なメッセージを伝えてくれます。
チェブラーシカがワニのゲーナの誕生日をお祝いしていると、そこに「ピオネール少年団」が行進しながらやって来ました。
かっこいいと感じた2人は、自分たちもピオネールに入りたいと思うのですが、うまく行進できません。どうすれば入ることができるのでしょうか。
- 著者
- ["エドゥアルド ウスペンスキー", "やまち かずひろ"]
- 出版日
- 2014-07-11
「ピオネール少年団」とは、ロシアのボーイスカウトのこと。団員としてふさわしいと認められなければ入ることのできない、エリート集団です。
行進をうまくすることができなくて落ち込んでいたチェブラーシカとゲーナ。しかし、子どもたちが空き地で遊んでいるのを見れば遊具を手作りしてあげたり、鉄くずを必要としていたピオネールたちのために港でたくさん拾ってきたり……その行動力には目を見張ります。
チェブラーシカたちは、ピオネールに入りたいからとアピールのために動いているのではありません。彼らの原動力はいつだって優しさです。相手のことを思いやっているからこそ、読者の心を打つのでしょう。見慣れないロシアの街並みのイラストも楽しめる作品です。
ある日、ワニのゲーナが風邪を引いてしまい、動物園の仕事に行けなくなってしまいました。
チェブラーシカは代わりに仕事をしようと動物園に行くのですが、それを聞きつけたシャパクリャクおばあさんが、みんなを困らせるいたずらを思いつき……。
- 著者
- やまち かずひろ
- 出版日
- 2017-11-13
シャパクリャクおばあさんのいたずらは、動物園に展示されている名前の看板を入れ替えてしまうこと。そのおかげで写生に来た子どもたちは、実物と名前がちぐはぐの動物の絵を描くことになってしまいます。学校の先生も混乱して、大騒ぎに……。
一方のチェブラーシカは、いらずらが一件落着しても、自分がワニだと言い張ります。ゲーナと約束した仕事をまっとうするためではありますが、そのピュアすぎる姿にほっこりしてしまうでしょう。
動物がたくさん出てくるのも魅力的。ユーモアたっぷりの物語と、チェブラーシカとゲーナの友情を見て、幸せな気持ちになれる作品です。