将棋のプロというと、頭脳明晰で戦略に長け、一般の私たちには想像もつかない場所で戦っているすごい人たちのように思えるかもしれません。しかし、将棋の世界はプロだけではありません。陽の当たらない「アマチュア」の世界ももちろん存在します。 本作『ハチワンダイバー』は、そんなアマチュアの棋士のなかでも「真剣師」と呼ばれる将棋指しの物語を描いた作品です。この記事では作品の登場人物や名言を徹底紹介!ネタバレも含みますのでご注意ください。スマホアプリで読むこともできるので、そちらもどうぞ。
- 著者
- 柴田 ヨクサル
- 出版日
- 2006-12-19
主人公はプロ棋士になることをあきらめた菅田。彼は将棋のことをあまり分かっていない相手に対して勝負を挑み、日銭を稼いでいました。
そんなくすぶった日々を過ごしていた彼ですが、ある日、「アキバの受け師」と呼ばれているメイド服の女性にコテンパンにされ、最期に残っていたプライドをボロボロにされます。
しかしその悔しさをバネに再び将棋への気持ちを取り戻し……。
将棋のプロというと、頭脳明晰で戦略に長け、一般の私たちには想像もつかない場所で戦っているような気がするほどすごい人たちのように思えます。
しかし、将棋の世界はプロだけではありません。陽の当たらない「アマチュア」の世界。本作『ハチワンダイバー』は、そんなアマチュアの棋士のなかでも「真剣師」と呼ばれる将棋指しの物語を描いた作品です。
- 著者
- 柴田 ヨクサル
- 出版日
柴田ヨクサルは1992年に「谷仮面」で「ヤングアニマル」にてデビューした漫画家です。代表作「エアマスター」はTVアニメにもなった長期連載作で、連載終了後は「週刊ヤングジャンプ」にて『ハチワンダイバー』を連載しました。
自身の作品に過去作のキャラクターを登場させることがあり、本作にも「エアマスター」のキャラが登場することがあります。
彼の作品の魅力は、登場人物の強い意志。『ハチワンダイバー』でも、将棋に全てを捧げる真剣師の姿に心を揺さぶられます。
その等身大のリアルとSFのような壮大さを兼ね備えた、格闘漫画顔負けの迫力ある対局シーンはから、彼の心理描写の巧みさが分かるでしょう。
ここからは本作の魅力的な登場人物たちについて紹介していきましょう。
菅田健太郎(すがた けんたろう)
主人公で、かつてはプロ棋士を目指していましたが、今ではその夢を諦めて賭け将棋で日々の生活をまかなっている男です。
ある日彼は、「アキバの受け師」と呼ばれる凄腕棋士の存在を聞きつけ、秋葉原にある道場の門を叩きました。
どんな相手と戦う時も倍層、勝てば掛け金が2倍になる賭け方で戦うという彼女に対し自信満々で挑むも、まさかの完敗。最後のプライドをへし折られそうになった彼でしたが、この出来事のおかげでイチから人生をしきり直そうと思えたのです。
「アキバの受け師」との出会いから、彼の物語が動き出します。
- 著者
- 柴田 ヨクサル
- 出版日
- 2007-03-19
中静そよ(なかしず そよ)
彼の人生を動かした「アキバの受け師」こそ、中静そよです。
本作のヒロインである彼女は、とんでもない棋力の持ち主。その強さは作中、最強クラスで、初の敗北を喫するまで36221連勝していたほど。
強さの理由は過去に起因するものですが、途方もない努力の賜物でもあることは間違いありません。
そんな彼女ですが、意外にも「秋葉原メイド掃除クラブ」で出張メイドのアルバイトをしています。源氏名は「みるく」と言い、仕事も彼女の心の支えになっているようです。
また、本作の魅力は明言にもあります。
「こっちは20年だバカヤロオっ!!!!」(『ハチワンダイバー』1巻)
秋葉原の道場にて、20万を賭けた勝負に挑むことになった菅田の言葉。 対戦相手が「10年賭け将棋で食ってる」という自負を言葉にし、菅田に敵意を見せます。
それに対し、現在まで全てを将棋に捧げてきた菅田は激昂。心の中で強く叫んだ言葉でした。 シンプルでありながら、人生をかけて向き合い、愛したものに対するプライドを感じる言葉です。
- 著者
- 柴田 ヨクサル
- 出版日
- 2007-06-19
「最初から強かったわけじゃない。彼女もまた、針の筵を敷き詰めたような道を歩いてきた」
(『ハチワンダイバー』1巻より引用)
引き続き菅田の言葉。彼は20万の勝負で得たお金を使ってまたしても清掃を依頼し中静を家に呼びますが、なかなか掃除に精を出すことかできず、やはり将棋をしようと持ちかけました。
しかし、彼は以前の彼女との対局で有り金を全て失ってしまい、高価な将棋の駒を死地に出してしまっていたために、そのままでは将棋を指すことができませんでした。
そこで駒を使わない「目隠し将棋」を仕掛けます。現物を使用せず、頭の中で盤面の状況を管理しながらお互いの宣言だけで進行していく将棋は、まるで彼女ととても深いところで会話をしているかのようでした。
そして彼は気付いたのです。強い人の実力の陰には、想像の及ばないような努力が隠れているということに。
それぞれ努力をしてきた人間だからこそ、より勝ちたいと思った瞬間に生まれた言葉でした。
「100局指すより、一局の真剣勝負です」
(『ハチワンダイバー』3巻より引用)
こちらは中静の言葉。とある漫画家と対局したのち、震えが止まらなくなってしまった菅田に対し言いました。
この戦いは、菅田が負ければ一生かけて漫画家を目指さなければならず、漫画家が負ければ自身の連載作品の主人公を菅田が書いた落書きに書き換えねばならないという賭けをしたものでした。
お互いの全てを賭けたこの戦いで、そののちに中静がこういったのです。
仲間や知り合いなどの気心知れた人と何度も戦うよりも、一局を真剣に戦う方がずっと勉強になるということ。緊張感が今までにない気づきや経験に繋がり、自分をさらに強くしてくれるのでしょう。
本作のラスボスであり、プロ棋士をも凌駕する真剣師の集団のトップ・谷生。
物語最大の対局は、この男と菅田の一戦でした。
日本に核を落とすことを賭けるという凄まじいスケールでありながら、その実「一人の女の奪い合い」という至極シンプルなものでした。
- 著者
- 柴田 ヨクサル
- 出版日
- 2014-08-20
双方が力を使いきり勝敗は決するも、2人はビルの崩壊に巻き込まれ、谷生は死亡。中静に「愛している」と遺言を伝えながら、菅田に対し「将棋を手に入れた世界を見てこい」と遺言しました。
そして6年後。現在の中静と菅田はそれぞれ変化していて……?
ひとりの人間の死に立ち合いながらも、なお将棋への執着が捨てられない、彼らの行く末には、人間としてのすごみを感じさせられます。物語最大の対局、そして物語最後の対局は、ぜひその目で確かめてみてください。
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