女性作者による女性の自慰行為の漫画『私だってするんです』。多くの女性から共感の声が寄せられている本作は、実写映画化も決まり、これからますます注目度が高くなっていく作品として期待されています。今回は、そんな本作のあらすじと魅力をご紹介します。ネタバレも含まれますので、ご注意ください。
- 著者
- 小谷 真倫
- 出版日
- 2017-10-07
都立夜唄(やばい)高校に通う女子高生・慰舞林檎(いぶりんご)は、同級生の江田創生(えでんそうせい)に片思いをしています。
その気持ちが強すぎて、ある日、教室で江田の写真をオカズに自慰行為をしていたところ、何と本人にその現場を見られてしまいました。絶体絶命のピンチに陥った慰舞でしたが、江田はまったく予想外のことを言い出して……!?
女性の性欲や自慰行為にスポットを当てた異色作ですが、実写映画化されることも決まりました。キャストは、元SKE48で現在は舞台やライブなどで活躍している加藤智子のみが発表されており、主演を務めます。
加藤智子は1987年生まれの32歳ですが、本作の主人公は高校生。内容はもちろんのこと、加藤智子がどんなふうに主人公を演じることになるのかも気になるところですね。2019年8月現在、続報は随時発表とのことなので、ぜひチェックしてみてください。
- 著者
- 小谷 真倫
- 出版日
- 2011-11-22
本作の作者・小谷真倫(こたにまりん)は、2007年に講談社MANGA OPENで奨励賞を受賞し、デビューした女性の漫画家です。
代表作は、ゴキブリなどの害虫を美少女に擬人化したギャグ漫画『害虫女子コスモポリタン』。かわいい女の子とギャグが混在して展開していく流れは、現在の作品にも共通するところがあるといえるのかもしれません。
作者は苦労の多かった新人時代に夜の仕事をしていたらしく、その頃の経験が作品にもつながっているようです。様々な経験を持つ作者だからこそ描ける作品なので、まずは一度、手に取ってみてはいかがでしょうか。
本作の魅力の1つは、やはり女性の性欲、自慰行為について切り込んだところにあります。
女性の自慰行為や性欲というのがメインに扱われている作品は、男性のものに比べるとまだまだ少ない印象です。また、現実でも女性同士でそういったことを話題にすることも、少ないのではないでしょうか。
しかし、話題にはしないからこそ気になる部分であることも確かです。本作では、そういった気になるけど話にはできない部分にスポットを当てているので、とても興味深いものになているのです。
反面、性欲や自慰行為の話なんて、すごく生々しいのでは?と思う方もいるかもしれません。しかし本作は、基本的にギャグも多いコミカルなタッチの作品なので、扱うテーマに反してとても面白く、気軽に笑って読める作品となっています。
女性はもちろん、男性にとっても、普段は話しづらくて理解しにくい女性の部分を知ることができるおすすめの作品です。
本作はテーマに反してとても面白くコミカルな作品だとご紹介しました。その雰囲気を作り出しているものの1つとして、キャラクターがあります。
主人公の慰舞林檎(いぶりんご)と、同級生の江田創生(えでんそうせい)が、本作のメインキャラクターです。彼女が、とある出来事をきっかけに、江田が密かに作っていた「他人のオカズを調べ書き記したノート」、通称「オカズ大辞典」作りに協力することになることが、本作のメインストーリー。
そもそもこの設定が、あまりにも現実離れしていて、衝撃的なものですよね。だからこそギャグのように楽しむことができるのです。
他にも、下ネタOKなイブの幼馴染、保健室勤務のイブの姉、その姉の友人など、イブの周りにはインパクトが強いキャラクターがたくさん登場します。これらのキャラクターのおかげで、作品の空気が作り出されていることは間違いありません。
- 著者
- 小谷 真倫
- 出版日
- 2017-10-07
江田の写真を見ながら学校で自慰行為をしていたところ、まさかの本人にその現場を見られてしまうところから物語は始まります。あまりの出来事に困惑し、絶望する慰舞でしたが、江田は引く様子もなく、思がけない提案をしてきました。
それは、ある条件をクリアしたら、慰舞と付き合ってもよいということ。その条件とは、江田が密かに記録をとっていた、他人のオカズを調べ書き記したノート……すなわち「オカズ大辞典」を一緒に完成させるというものでした。
この「オカズ大辞典」を完成させるための調査で、慰舞は他人の自慰行ためや性欲に首を突っ込み、「性」に向き合っていくことになるきっかけでもあって、本作にとってはとても重要なアイテムとなっています。
1巻の冒頭では、自慰行ためを片想いの相手に目撃されるという、一歩間違うとかなり生々しいシーンから始まるのに、いたって面白くコミカルに描かれているのが本作の特徴。あっという間に作中に入り込むことができます。
本作では、慰舞の友達や姉などともに、自慰行為の際に使う道具や、自分の裸を写真に撮る行為など、さまざまな性のとらえ方、向き合い方などが描かれています。まだまだ他の話も読みたいと思わせてくれる第1巻です。
- 著者
- 小谷 真倫
- 出版日
- 2018-11-09
女性の性欲に切り込みつつ、ギャグテイストで描かれているため、生々しくならず楽しく読める本作。第2巻では、女性用AVや声フェチ、そして子宮内膜症などの女性特有の病気についても描かれていきます。
女性用AVや声フェチでは、女性が自慰行為に対して、興奮や刺激よりも癒しを求めているということを理解できるでしょう。性欲というのは、画一的なものではなく、人それぞれの形があるのだということもあらためて実感でき、またそれぞれ違っていいのだということも感じることができます。
普段、友人同士であっても話しにくい内容だからこそ、そんなことを考えさせてくれるのは、やはり本作の魅力の1つ。
また慰舞の姉の友人の話として、子宮内膜症やチョコレート嚢胞といった病気についても描かれます。女性の性や月経に関して、なかなかオープンに話すという感覚になれない人もいると思います。もちろんそれは1つの個性。話さなくてもよいのです。
しかし、性欲があるということは恥ずかしいことではなく、当たり前で健康的なことであるということを本作は教えてくれます。もし何か困ったことがあって、人に話すことができないとき、本作で励まされる女性もいるのではないでしょうか。
男性にとっては、どうしても理解しにくい女性の部分を理解する手助けになるかもしれません。夫婦で読むのもおすすめできる1冊です。
一瞬手に取るのをためらってしまうこともあるかもしれませんが、多くの女性から人気を得ているように、とても読みやすく面白い漫画になっています。話題にできないからこそ気になる女性の秘密を、こっそりと覗いてみてはいかがでしょうか。