伊藤潤二『富江』の魅力 何度も殺される美少女の結末は【ネタバレ注意】

更新:2021.12.9

『富江』は、1987年に発表された伊藤潤二によるホラー漫画。伊藤潤二といえば、『うずまき』や『ギョ』など、数多くの名作を生み出したまさにホラー漫画界の巨匠。 今回は、そんな伊藤潤二が描く『富江』のあらすじと魅力を、名言なども交えてご紹介します。絶世の美しさをもつ少女と、その虜になった男達が狂っていく様を描き、高い人気を得た本作。アニメや映画で何度も映像化され、大人気のシリーズとなっています。ネタバレも含まれますので、ご注意ください。

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『富江』が怖すぎ!伊藤潤二の傑作漫画をネタバレ考察!【あらすじ】

ある高校に、富江というとても美しい少女がいました。クラスメイトの男子と付き合っていたのですが、彼女は同時に担任の男性教師とも不倫していました。

小さな山で課外授業を行なったある日、生徒から離れて休憩している担任に富江は近づき、奥さんと別れ自分と付き合うことを要求します。別れないと自分との関係をバラすと脅し、子供ができたと言い寄ります。それを目撃した彼女の恋人は激高し、そのまま富江ともみ合いになり、彼女は崖から転落してしまいました。 

 

富江が死んだと思ったクラスメイトたち。一度は自首を考えますが、傲慢だった彼女は死んで当然だと言い始め、事実を隠蔽するため死体をバラバラに解体しはじめます。しかし解体している最中、彼女はまだ生きていることが分かり……!?
 

富江は何度殺されても、どこからか現れ、平然と復活します。どんなにバラバラにされても体の一部から復活する再生能力や、作品から漂う不気味さは作者ならではの特徴といえるでしょう。彼女からは逃げられないという恐怖心が、読者の心を離しません。

 

著者
伊藤潤二
出版日
2011-01-20

そんな本作は、これまでに何度もドラマや映画などで映像化されてきました。 

「再生途中の富江がまるで芋虫のような姿で、そのグロテスクさがトラウマになった」という感想が多く寄せられ、恐ろしい逸話がたくさんある作品でもあります。2019年7月にはハリウッドでの短編ドラマ化も決まり、さらに主演は女優アデライン・ルドルフに決定したとのことです。これからどんなストーリーになるのか、こちらも楽しみです。

伊藤潤二はホラー漫画の名手 多くの作品が映画化

著者
伊藤 潤二
出版日
2010-08-30

本作の作者は、伊藤潤二という漫画家です。幼い頃から楳図かずおを始めとした怪奇漫画が好きだったと話し、その後、第1回楳図かずお賞を受賞し漫画家デビューを果たしました。この時に受賞した作品が『富江』でした。そして1996年にはこの『富江』が映画化もされています。『富江』はその後何度もドラマや映画で作品化されています。

伊藤潤二はホラー作品を好む一方で、お笑いが好きという側面もあるそうで、そのためホラー漫画の中にもどこか笑えるシーンがみられます。怖さだけではないのは、そういったところに秘密があるのかもしれません。

作者は本作の他にも多数の作品を執筆しており、『うずまき』は映像化もされ、彼の代表作となっています。そちらもチェックしてみてはいかがでしょうか。

 

伊藤潤二の作品が気になる方はこちらの記事もあわせてご覧ください。

伊藤潤二のおすすめ漫画ランキングベスト5!ホラー漫画大御所の猫漫画も!?

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ホラー漫画の奇才、伊藤潤二。『うずまき』や『富江』といった、一度読んだら忘れられない衝撃的な作品の数々生み出し、その独特な世界観でファンを引き付けてやみません。怖いけど読んでみたい!一度ハマるとやめられない!おすすめの漫画ランキングベスト5をご紹介します。

漫画『富江』の魅力をネタバレ紹介!美少女の主人公が可愛い!だけどちょっとかわいそう?

漫画『富江』の魅力をネタバレ紹介!美少女の主人公が可愛い!そしてちょっとかわいそう?
出典:『伊藤潤二傑作集 1 富江 上 』

富江は誰もが振り返る美女で、その美しさであらゆる男を虜にします。そして虜になった男は、なぜか最後は彼女を殺したくなる衝動に襲われ、実行してしまうのです。

彼女の性格は高飛車で、自分の美しさに絶対の自信を持っており、まるで女王のように振舞います。当然、男達は下僕のごとく扱われますが、彼女のわがままに彼らは逆らうことができません。それでも彼らは彼女を我が物にしたいと思い続けます。

だからこそ、富江が殺されてしまう時も、最初はそれほど同情しないかもしれません。そもそも彼女は死なないので、それ原因の1つでしょう。しかし何度も殺される様子を見ていると、だんだんと彼女に対してかわいそうという気持ちが湧くという不思議な魅力を持っています。

富江の正体は明かされることはありません。彼女は一体何のために生まれて、存在しているのか……などと考えこんでしまいます。あらゆる男を虜にする富江には、読者もハマってしまう魅力がありました。

漫画『富江』の魅力をネタバレ紹介!富江は不死身?理由を考察する楽しみ

漫画『富江』の魅力をネタバレ紹介!富江は不死身?理由を考察する楽しみ
出典:『伊藤潤二傑作集 1 富江 上 』

富江は、最初から最後まで謎の多い存在です。

彼女にはある規則性があります。たとえば、バラバラにされて殺されても、体の一部から完璧な肉体が再生されます。つまり、バラバラにされればされるほど富江が増えていきます。その力は限りなく強く、血液の一滴、髪の毛の一本からも再生されるので驚きです。

また富江に関わった男は、ほとんど彼女の魅力にとり憑かれ、まるで正気を失ったように殺害衝動に駆られるようになります。

彼女の正体が気になりますが、実は最後までその明確な正体が明かされることはありません。

何のために存在しているのか、そこが明かされないからこそ彼女の正体の想像を膨らませられるといえます。想像が働けば働くほど恐怖や不気味さは増していくことでしょう。それこそホラーの本質であり、怖さと魅力の秘密といえるのかもしれません。

漫画『富江』の魅力をネタバレ紹介!名言にうっとり

漫画『富江』の魅力をネタバレ紹介!名言にうっとり
出典:『伊藤潤二傑作集 2 富江 下』

「また新しい富江がやってくるっ!!」
(『伊藤潤二傑作集 1 富江 上』より引用)

第1話のラストに登場する台詞です。ここで登場する富江はまだ高校生。ある日、課外授業に出かけていた彼女は、ひょんなことから崖から転落してしまいます。その場には教師やクラスメイト達がいたのですが、全員が共謀し、彼女をバラバラにして捨ててしまったのです。

細かく刻まれた遺体は、クラスメイトたちの手によって捨てられます。しかしこれが恐怖の始まりでした。体の一部からでも再生される彼女の恐ろしさを感じさせる印象的な台詞と言えるでしょう。

次に紹介するのは「森田病院」というエピソードで富江が放った台詞です。腎臓の病気で入院している少女・雪子が思いを寄せている男の子に富江はアプローチしていました。男の子を手に入れるため、富江は雪子に言いました。

「あなたご自分の顔を鏡で見たことがないの?
 そのていどの顔で北山くんのGFしようって方が
 よっぽど非常識じゃないかしらっ」
(『伊藤潤二傑作集 1 富江 上』より引用)

自分の美貌を理解し、傲慢な性格の富江を表す台詞です。さらにこのエピソードでは、殺されてしまった富江の腎臓が雪子に移植され、雪子がどんどん乗っ取られていく様子も描かれています。富江に見下された雪子が彼女のように変わっていくところに、ジワジワとした恐怖を感じられるかもしれません。

最後は「暗殺」というエピソードで、富江が言い放つ台詞です。このエピソードでは、富江はいきなり見知らぬ男に襲われ死亡します。死ぬ間際に偶然居合わせた哲夫は、富江の遺言通り彼女を山へと埋めるのですが、何とその死体から顔が生えてきました。顔だけのそいつは、死体を焼き捨てろと言います。結局燃やすことはできませんでしたが、しばらくしてから顔だけの富江が言ったのがこちらの台詞です。

「あの女は生き返ってしまったのよ」
(『伊藤潤二傑作集 2 富江 下』より引用)

分裂し増殖する富江達は、どうやら自分達同士で殺し合いをしており、男達を刺客として、お互いを殺し合っているようです。冒頭で襲ってきた見知らぬ男もその1人ということ。富江の正体が垣間見えたようで、さらに彼女の謎が深まる台詞といえるでしょう。

漫画『富江』のおすすめエピソード「画家」【ネタバレ注意】

ある人気画家の男と、その男に近づく富江のお話です。

画家の森光夫は、ナナという女性モデルを描き、その作品で人気を博します。彼自身もイケメンだったために多くの女性ファンがいました。ある日、いつものように女性ファンに囲まれている森のところに、富江が現れます。

著者
伊藤潤二
出版日
2011-01-20

彼女は自分の美しさを絵で表現できるかと森を挑発します。挑発に乗った彼は富江の絵を描きますが、彼女はその絵に満足することはありませんでした。

自分の絵を拒否されて以降自分の絵に自信を失くしてしまう森。そんな時、同期の画家が富江をモデルにしている話を聞き、ある驚きの行動に出るのです。

実は、富江は自分の姿を写真で残せません。写真を撮ると顔が分裂してしまうからです。それでも自分の美しさを残したい彼女は、「絵」に目を付けるのでした。しかし森が最後に描いた彼女の姿は……ぜひ本編を手に取ってみてください。その絵が、富江の正体の一部が描かれています。

漫画『富江』のおすすめエピソード「ある集団」【ネタバレ注意】

漫画『富江』のおすすめエピソード「ある集団」【ネタバレ注意】
出典:『伊藤潤二傑作集 2 富江 下』

「ある集団」は、『富江』シリーズの終盤のエピソードの1つです。

主人公の梅原は最愛の恋人を病気で亡くし、落ち込んでいました。そんな彼を、友人の宮川は気晴らしにとある集会に誘います。誘われるままに梅原がついていくと、そこでは富江を教祖のように崇める男たちがいたのです。  

異様な空気に一度は逃げ出す梅原でしたが、富江は自分を見ても何も感じない様子の彼を気に入り、男達に命令して彼を監禁してしまいます。それでも、彼は富江に魅了されません。

本作の特徴の1つは、富江に魅了されない男・梅原の存在。ほとんどの男達は、富江に魅了され、やがて殺害願望が生まれていきます。そこから外れた梅原は、シリーズ全編を通しても気になる存在といえるでしょう。

また、「ある集団」では、タイトル通り、男達の集団がポイントです。集団だから働く心理を、男達のラストの行動から感じることもできるでしょう。意外と私たちの身近にも似たようなことがありそうだなとも思えるところにも恐怖を感じます。

漫画『富江』のおすすめエピソード「小指」【ネタバレ注意】

漫画『富江』のおすすめエピソード「小指」【ネタバレ注意】
出典:『伊藤潤二傑作集 2 富江 下』

「小指」でも同じように富江に惹かれない男が登場します。しかし、「ある集団」に登場する男がイケメンだったのに対し、「小指」に登場する男は非常に醜い容姿です。

このエピソードでは、富江はとある家に後妻としてやってきます。そこには三人の息子がいて、長男と次男は普通の顔ですが、三男だけはとても醜い顔をしていました。やがて父親が亡くなると、長男と次男は富江に夢中になりますが、三男だけは彼女に魅了されることはありません。

そのことを屈辱に感じた彼女は三男を振り向かせようと躍起になります。しかし彼女に夢中な長男と次男にバラバラにされて殺されます。罪をなすりつけられた三男は、逃亡生活を余儀なくされるのですが、その途中、彼女の指から4人の富江が復活しました。

しかし、小指の富江だけは顔に醜い傷を負っています。醜いことで辛い思いをしてきた三男は、しだいに小指の彼女に気持ちを寄せるようになっていきます。

富江はどんな形で殺されても、最後はすっかり元に戻りますが、今回はなぜか1人だけ、顔の傷が治らずにいました。

ラストで明かされるその理由には、富江の執念深さが感じられます。また、三男に同情したい気持ちになるかもしれません。どんなラストがまっているのかはぜひ本編を確認してみてください。

漫画『富江』のおすすめエピソード「復讐」【ネタバレ注意】

「復讐」は、雪山を舞台にしたエピソードです。3人の男子グループが登山中、崖の下に裸で倒れている富江を見つけ、助けに向かいました。その途中で1人は滑落、残った2人はひとまず富江を助け、応援を呼びに行きます。

しだいに吹雪がひどくなり、なかなか先へ進めなくなります。そんな中、富江は「寒いから、服を貸せ」、「疲れたのでおんぶしろ」と、わがままを言い始めます。そんな彼女のために、男の1人が裸になってでも自分の服を貸すなど、富江の魅力にとり憑かれていました。

彼女に魅了された男は、遂に富江を殺そうとします。

著者
伊藤潤二
出版日
2011-01-20

彼女はもう1人の男・谷村と逃げ出し、山小屋へとたどり着きます。最初はなんとも思っていなかった彼も、しだいに彼女を殺したいという衝動にかられ始めてしまいます。

雪山というどこか閉鎖的で、「雪女」のような印象も受ける本エピソード。富江に魅了された男が次々に殺害衝動にかられるというストーリーになっています。 

ただ、気になるのは「復讐」というタイトル。雪山に倒れていた富江ですが、実はこのエピソードのラストで、谷村の兄に殺され雪山に捨てられていたことが判明します。

その弟である谷村がまた富江を殺すことになるわけですが、当然、富江は死にません。いったい誰が誰に復讐しているのか……思わず考えこんでしまうエピソードです。

ホラー作品が苦手な方にとっては、本作少しハードルの高い作品かもしれません。しかし、『富江』は恐怖の中にも時折笑える要素が入っているのも特徴の1つです。ホラーが苦手な方も、機会があればぜひ一度、手に取ってみてはいかがでしょうか。

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