2019年3月に15年間にわたる連載に幕を下ろした『闇金ウシジマくん』。タイトルから、「ドロドロした漫画」と読んでない方もいらっしゃるのでは。確かに本作は闇金を舞台に厳しい取り立てや債務者の末路が描かれたブラックな作品。しかし「ウシジマくんやその仲間たちがたまに見せる人情に感動する」という感想も実は多いのです。 今回は、ウシジマくんのそんな一面を紹介していきます。
『闇金ウシジマくん』は、闇金融会社の社長である丑嶋馨(以下、ウシジマ)とその社員たちが、借金をした人間からどんな手段を使ってでも、金を回収する物語です。その物語の中には、社会の闇や、欲におぼれるなど人間の弱さが色濃く描かれています。
ウシジマのもとを訪れる人間は救いようがない者たちばかり。もちろん彼は無慈悲に金を取り立てます。
- 著者
- 真鍋 昌平
- 出版日
- 2004-07-30
そんなウシジマの日常のなかで、特にインパクトが大きいエピソードが『闇金ウシジマくん』1巻の「若い女くん」。身の丈に合わないブランド品を購入し続ける女性が、借金を返済できず風俗で働き出し、さらに薬物依存にまでなっていく物語です。
しかし、これはウシジマが「若い女からはいくらでも搾り取れる」とそうなるように計画したもの。なんと、この女性に薬物を売っていた彼女の友人も、ウシジマから借金する身だったのです。
身近にいそうな普通の女性がアッという間に廃人になっていくシーンは衝撃的。さらに、ほんとうに起こりそうなリアルさと、全て仕組んでいたウシジマのあくどさに、背筋がゾッとするでしょう。
金を回収するためには何でもするウシジマ。しかし、仲間やどん底の人生から這い上がろうとする債務者には、寛容に接することもあるのです。
今回は、ウシジマを始め、その仲間たちの知られざる優しい魅力について紹介します。
本作の主人公、ウシジマは闇金融を営む「カウカウファイナンス」の社長です。常に冷静で、どんな局面でも慌てない性格かつ、体格も大きく強面のため、貫禄が漂う見た目。しかし、年齢は意外に若く、『闇金ウシジマくん』1巻では23歳と明かされています。
自分の職業について「人並み以下でありながら人並みの生活をしているクズの人生に終止符を打つ職業」と考え、売春の斡旋や脅迫、樹海に債務者を放置するなど、徹底的に債務者を追い込みます。
しかし、その裏ではウサギを大切に飼っており、作中にウサギを可愛がるシーンが度々登場。しかもそれは、亡き母が飼っていたウサギ。彼は中学生の頃からずっと大切に育てているのです。
しかも何匹かいるウサギを一羽一羽丁寧に育てています。「ギャル汚くん」編で、ウサギの世話をブリーダーに依頼した際には、注文が多く、2週間程度で100万円請求されるほど。
ウシジマがウサギを可愛がるシーンは、普段の恐ろしい表情とのギャップでついクスっと笑ってしまうでしょう。特に作品の初期では、ウサギと接する時にニヤケ顔を披露しているので、作品の暗さを緩和してくれています。
次にご紹介するのは、カウカウファイナンスで働く柄崎(以下、エザキ)と加納。彼らは、ウシジマとは中学生の頃からの付き合いですが、出会いは最悪。しかし、ある出来事をキッカケにウシジマのことを尊敬しはじめます。
この一連のエピソードは「ヤミ金くん」編で描かれています。
一度、ウシジマをリンチするも仕返しされたエザキと加納。ウシジマの子分になるも、2人には、鰐戸(以下、ガクト)三兄弟と呼ばれる別の親分がいました。 彼らから無理難題を投げかけ、困っていた2人。
そのことを知ったウシジマは彼らのもとに向かい、三兄弟の一人の頭めがけてフルスイング。力の差を見せつけ、2人をガクト三兄弟の支配から解放するのでした。
こうして、彼らは自分たちを助けてくれたウシジマに恩を感じます。エザキは耳から膿がでるほど仕事熱心に働き、加納も、ウシジマの居場所を探るひどい拷問の際も一切口を割らないほど忠実です。
この、「なぜエザキと加納がウシジマのことを尊敬しているのか」が明らかになるのが、「ヤミ金くん」編。かつての復讐のため、ガクト三兄弟がウシジマたちに再び襲いかかってきます。ウシジマ、エザキ、加納がどう乗り切るか要チェックです。
3人目にご紹介するのは、カウカウファイナンスに勤める元ホスト、高田。入社当初、ウシジマたちの取り立てを見た際には債務者に同情し、罪悪感を感じていました。「ヤンキーくん」編では、会社を裏切り、ウシジマからも見捨てられたマサルを窒息死寸前のところで助けています。
また、仕事に慣れていくにつれて債務者への罪悪感は薄れていますが、かつての正義感は失っておらず仲間のことは大切にします。さらに子供に対しても優しく、債権者の子供や親からろくな食事を与えられてない子供に食べ物を渡す優しさも。
ウシジマからの信頼も厚い、作品の良心ともいえる彼。のちにウシジマから大金とウサギを渡され、沖縄でうさぎカフェを経営するという、最後までほっこりするような展開を生み出す登場人物です。
最後にご紹介するのは、カウカウファイナンスで働くマサル。母子家庭で育ったため、稼いだ金で靴をこっそりとプレゼントするなど母想いな一面をみせます。
そんななか彼の母は借金を返済できなくなり、ウシジマは彼女を風俗に送ろうとします。それを知った彼はウシジマへの復讐を決意するのでした。
- 著者
- 真鍋 昌平
- 出版日
- 2017-04-28
その後ストーリー通して、ウシジマたちに挑みますが、失敗……。その後のマサルはウシジマから逃げるようになり、その関係は「逃亡者くん」編で描かれています。
隠れるように暮らすマサルから金だけ回収して帰ろうとするウシジマたち。マサルは今までの仕打ちを覚悟してましたが、何もしてこない彼らに拍子抜けします。そして「あんたからもっと色々教えてほしかった」とカウカウファイナンスで働いてた部下としての本音をぶつけるのでした。
ウシジマに復讐を決意したのは事実ですが、同時に、マサルを一人前の闇金業者にしたのもウシジマ。父親がいないマサルにとって、ウシジマは厳しくも頼りがいのある父親代わりの存在だったのでしょう。物語終盤に素直になれるマサルの姿にウルっときます。
2人のやり取りを含めその後の話は、ファンの中でも名場面の一つと言われています。
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社会の闇が色濃く描かれている『闇金ウシジマくん』。しかし、どん底で必死に生きているからこそ、仲間たちとの間に、信頼や絆が構築されていくのでしょう。もちろん衝撃的なシーンも多いですが、今回紹介したシーンがあるからこそ、人々の心に残り、名作といわれるのではないでしょうか。彼らの実は優しい一面をご覧ください。