幼い頃に出会っていた美少年同士が10年後に再会を果たし、性別を超えた恋愛に悩みながらも恋人同士になっていく姿を描いた『LOVE STAGE!!』。テンポのよいギャグ展開と、紆余曲折ありながらも絆が強くなっていく様子に引き込まれるBL漫画です。 内容もテンポも良くて面白い作品ですが、『LOVE STAGE!!』の注目ポイントはもう一つあります。実は作者が歌手DAIGOの姉である、ということ。 しかも主人公の兄はDAIGOをモデルにしていて、コラボ作品『BACK STAGE!!』ではその兄が主役となっています。 この記事では、そういったバックグラウンドも知りながら読むとさらに面白い本作の魅力を結末までご紹介。実写映画化に期待がかかる話題作なので、お見逃しなく!
主人公の瀬名泉水は父親が芸能プロダクションの社長、母親が元モデルの女優、兄が大人気ロックバンドのボーカルをしているという芸能一家の次男。しかし10年前たまたま出演することになったCMで大失態をおかしてしまったことがトラウマとなってしまいます。それから芸能界には興味がなく、今は漫画大好きで漫画家を目指しているオタクです。
その10年前のCMで共演していたのが、今や大人気俳優の一条龍馬。彼は共演した時の女装した泉水に一目ぼれをして、ずっと思い続けていました。
アニメの中のヒロインが好きで、性癖もいわゆるノーマルな泉水。龍馬に告白されても、そもそも男同士の恋愛すらありえないと思っていました。しかし一途で努力家な龍馬に少しずつ惹かれていき……。
- 著者
- 蔵王 大志
- 出版日
- 2011-06-01
本作は漫画連載中の2014年にテレビアニメ化され、2019年には映画化することが決まりました。2019年10月現在、キャストや公開予定日はまだ決まっていませんが、影木栄貴が脚本を務めることが発表されています。作家本人が脚本も務めるということでファンの期待もますます高まります!
『LOVE STAGE!!』は影木栄貴(えいきえいき)と蔵王大志(ざおうたいし)の合同作品です。
まず影木栄貴からご紹介していきましょう。中学生の頃から漫画を描き始めたという彼女は、いとこの影響で同人誌の存在を知ります。
そして大学入学後から同人誌の作成を開始し、その後、漫画雑誌の編集者として働いたこともあります。しかし、仕事をしながらの創作活動は厳しいということで、潔く退社してプロ間画家への転向を目指しました。今ではボーイズラブジャンルで人気の漫画家としての地位を築きました。
ちなみに彼女を紹介するうえで欠かせないのが、芸能人のDAIGOの姉だということ。北川景子の義姉となるわけですね! 本作でも彼が泉水の兄のモデルというところもワクワクしてしまう要素となっています。
- 著者
- 蔵王 大志
- 出版日
- 2012-05-31
もう一人の作者・蔵王大志は、福井県出身でボーイズラブ作品やボーイズラブ小説のイラストでデビューしました。ボーイズラブ作品専用のペンネームで、それ以外の作品では、つだみきよ名義で作品を発表しています。女性向け雑誌では性転換や半陰陽、女装などのフェチ作品も描いています。
ボーイズラブを描いていることを親戚に知られたくないからとペンネームを作成したそうですが、作品が増えるにつれてすぐにバレてしまい、今では使い分けることに疑問を感じることもあるそうです。
影木栄貴とは彼が編集者として働いていた頃からの知り合いです。影木栄貴が新人の蔵王大志を見いだし、また、つだみきよ名義で彼女にファンレターを出していたことから親交が始まったそう。なぜか容姿も似ていて服の好みも似ていることから、2人は親密な関係を築いてるようです。
仲のいい2人ならではの息の合った作品は、好みが似ているからは、見せ場がしっかりと描かれており、テンションが上がる作品ばかり。これ以下はそんな『LOVE STAGE!!』をご紹介していきましょう。
ここでは、読者にトキメキをくれる登場人物をご紹介します。
瀬名泉水(せないずみ):芸能一家にいながら漫画研究会に所属しアニメのキャラクター・ララルルを愛している、漫画家を目指す冴えないオタク。芸能界には興味がなかったがCMに出演することになり、その際に一条龍馬と再会し、付き合い始めます。
その後、漫画家の才能はないという現実を突きつけられ、自らも芸能界の道へ。人前に出ることを嫌がりますが、母親からの英才教育のおかげか、一人三役をこなすまでになり、それまでその道一筋でやってきた龍馬を落ち込ませる場面も。アニメ時では代永翼が声優を務めています。
- 著者
- 蔵王 大志
- 出版日
- 2013-05-31
一条龍馬(いちじょうりょうま):子役時代にブレイクしたものの、順風満帆とはいかず下積み時代の苦労も味わっている俳優。努力を重ね、今の地位を確立しました。
10年前に共演した女の子の格好をした泉水に一目ぼれしており、どうしても彼女(彼)に会いたくて、CMの続編を同じ出演者で作ることを提案します。アニメ時の声優は江口拓也です。
瀬名聖湖(せなしょうご):泉水と7歳離れた兄で、ロックバンド「CRUSHERZ」のボーカル。泉水が大好きで、龍馬のことを目の敵にしています。モデルは影木栄貴の弟DAIGOで、「CRUSHERZ」もDAIGOのバンド「BREAKERZ」をモデルにしています。アニメの時の声はDAIGOが演じています。
相楽玲(さがられい):泉水の父親・聖夜が社長を務めるセナプロの敏腕マネージャー。聖夜のおかげでセナプロで働くことが出来ているので、彼を恩人と慕い、尊敬しています。聖湖とは恋人同士であるが、恋愛対象は男でも女でもOKという両刀です。
先ほど登場人物たちの概要を説明しましたが、彼らはそれだけでは魅力をお伝えしきれないほど、個性的です。
主人公の泉水は、ネクラでメガネの漫画好きという一見ダサイ男の子。しかしメガネを外して少し手を加えると超かわいくなります。10年前に女の子の代役した時に、龍馬が惚れてしまうのも無理はないかもと思えるほど。
龍馬のことを好きになっていったり、乳首をいじられて感じすぎて悩んでしまったりと、いじらしくて愛らしい性格の持ち主です。そんな女子っぽいところもありますが、たまに見せる男らしい姿のギャップも魅力です。
- 著者
- 蔵王 大志
- 出版日
- 2014-05-30
それに対して龍馬は、イケメンで大人気俳優、しかも俺様感たっぷりのハイスぺ。しかしそれはあくまで第一印象で、泉水のことが好きすぎて時々ヘタレになってしまう憎めないところがあるキャラです。
その気持ちは我を忘れるほどで、時々暴走してしまうことも。本作の純粋な恋愛漫画としての魅力を体現する人物でもあります。かわいいけど実は男らしいところもある泉水に、クールだけど実は尽くすタイプの龍馬。
そのいびつな部分がぴったりと当てはまった理想的な2人の様子は本当に微笑ましく、いつまでも見ていられます。
ちなみにそんな彼らの間に立ちはだかるのは、恋のライバル……!ではなく、もっぱら極度のブラコンの聖湖。マネージャーである玲とは恋人同士で、ベタ惚れではあるのですが、泉水のことを溺愛しています。
超人気ロックバンドのボーカルという立場でありながら、大人げなく龍馬をけん制して意地悪をすることも。しかし泉水の好きな人だからという複雑な思いもあり、真に弟思いのお兄ちゃんです。
『LOVE STAGE!!(ラブステージ)』はボーイズラブ作品ですが、登場人物たちは最初から男の子が好きだったわけではありません。そこを乗り越えて思いを貫く様子に引き込まれます。
泉水のことを10年間女の子だと信じ続けていた龍馬。ショックを受けながらも、どうしても好きだという気持ちが抑えられません。そして彼の一途さを受けて、男同士の恋愛なんて考えられなかった泉水の気持ちも徐々に変化していくのです。
- 著者
- 蔵王 大志
- 出版日
- 2014-11-28
最初は龍馬のことをかわいそうな人だと思っていた泉水ですが、徐々に彼の熱意におされ、しだいに「これって恋?」と思うほどに。
読者としてはノンケで何もないところから愛をはぐくもうと頑張っていた龍馬を応援したくなりますし、彼の頑張りを見ていたからこそ2人が両想いになる場面は感動せずにはいられないものです。
しかし、やはり男同士の恋愛には抵抗がある人もいます。泉水もかつてはそうでした。しかし、ある時友人にかつての自分と同じような疑問を投げかけられた時は……。
「男を捨てなければいけないのか」
「違う」
(『LOVE STAGE!!』7巻より引用)
男同士の恋愛が自分を損なうようなものではないと、ハッキリ言えるほどに成長したのでした。
男が男を好きになってもいいのか?そしてうまくいってからも、どちらがどちらを抱くのか?そんなボーイズラブならではの葛藤が時間をかけて丁寧に描かれています。
影木栄貴と蔵王大志のコラボ漫画ということで絵のかわいさは折り紙付き。美少年・美少女のキャラクターたちは美しく魅力的で、男同士のイチャイチャもいやらしくなく読めます。
- 著者
- 蔵王 大志
- 出版日
- 2015-10-01
しかしまったく色気がないという訳ではなく、特に定評があるのは、表情の豊かさと、それが読者の心に響くようにストーリー展開でしっかりとそうなる理由が描かれていること。
テンポがいいのでサクサク読み進められるのですが、そこにはしっかりと起伏あるストーリーが用意されており、キャラたちの喜怒哀楽に読者も共感して引き込まれてしまいます。
特に秀逸なのは、泣き顔。抑えていた感情が溢れる瞬間の悲しみやくやしさ、やるせなさなどがないまぜになった表情は、きゅんとすること間違いなしです。
『LOVE STAGE!!(ラブステージ)』は7巻で完結しました。最終巻でもトラブル続出で、2人がそれをどう乗り越えていくかが見所でsy。
悩みを解決するためにかけられた催眠術で記憶喪失になり、泉水のことも忘れてしまった龍馬。 さらに不運なことに、2人は山小屋で遭難してしまいます。しかし一緒に過ごしているうちに、龍馬はまっさらな状態で再び泉水に惹かれていきます。
そして泉水から「試してみる?」と言われ、身体で彼の感覚を思い出して……。龍馬は記憶を無くしても、もう一度泉水のことを好きになるのでした。
- 著者
- 蔵王 大志
- 出版日
- 2016-11-01
その後、救助された2人。次の撮影までにどうしても記憶を戻したいということで、もう一度催眠術に挑戦しますが、記憶は戻らず諦めかけます。しかし、ある予想外、そしてくだらない?ことで龍馬の記憶が戻りました。
再びラブラブになり一件落着。かと思いきやストーカーが現れます。さらにさらに、2人は同棲することになるのですが、泉水がお願いする「あること」が龍馬はどうしても受け入れられず……。その泉水の願い、それは……!?
龍馬と泉水、玲と聖瑚、また他のカップルも登場し、彼らはその後どうなっていくのでしょうか?ラストにかけては、まさかのリバ展開などもあり、最後まで読者を楽しませてくれる仕掛けが盛りだくさん。それぞれのカップルには性別を超越してハッピーであり続けてほしい、と願いたくなる、最後まで愛に溢れた優しい作品です。