原作小説「黒薔薇」衝撃の事実をネタバレ解説!テレビ朝日で再ドラマ化!

更新:2019.10.2

警察は「治安維持に努めること」を、おもな仕事としている組織です。正義の象徴的存在ですが、「警察官が法を犯すこと」がまったくないわけではありません。数多くの小説で、警察の不祥事や複雑な内部事情が題材とされてきましたが、なかでも「黒薔薇」は、とある犯罪から警察内部のドロドロが描かれる意欲作。今回は、ドラマ化された小説『黒薔薇 刑事課強行犯係 神木恭子』を、ネタバレしながら解説していきます。

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小説『黒薔薇 刑事課強行犯係 神木恭子』がテレビ朝日でドラマ化!【あらすじ】

『黒薔薇 刑事課強行犯係 神木恭子』は、2015年3月に初版発行、2017年2月に文庫版が発売されています。

舞台は大都市、大阪。24歳の神木恭子(かみききょうこ)は、漫画『るろうに剣心』に憧れて始めた剣道を続けるために、警察官になります。 

刑事に昇格し、長田署の刑事課強行犯係の配属になりますが、先輩刑事は中年男性ばかり。いびられる日々に、交番勤務のほうが楽しかったと職場に嫌気がさしていました。

そんなとき、清掃人材派遣会社の社長殺人事件が発生します。恭子も捜査に関わっていましたが、そこで長田署にトラブル相談に来ていた老人・安本恒吉(やすもとつねきち)に関わりのある人物が、殺人事件にも関与していたことが判明。 
 

お手柄により、先輩刑事たちも恭子を見る目が変わります。事件を解決し、職場で認められて大団円と思いきや、安本の家の床下から「身元不明の遺体が7体」も発見されたことから、事態は急変。

恭子は事件の謎を追ううちに、事件には「大阪府警の上層部」が密接にからんでいることを知るのでした。 

自他ともに認める美人刑事が、警察の暗部に深く切り込んでいく意欲作。人間関係が複雑にからみ合い、泥沼の愛憎劇をくり広げていきます。

著者
二上 剛
出版日
2017-02-15

本作は、2017年12月16日に、テレビ朝日にてドラマが放送されました。また続編として、2019年9月22日から「黒薔薇2」が放送されています。
 

主人公の神木恭子役は、女優・貫地谷しほり、強行犯係主任の折原圭作(おりはらけいさく)役は、俳優・岸谷五朗など、一部キャストは続投。息の合ったコンビを見せてくれそうです。 
 

作者・二上剛は、元刑事!

著者
二上 剛
出版日
2019-03-01

二上剛(ふたがみごう)は1949年生まれ、大阪府の出身です。高校を卒業後、大阪府で警察官となり、暴力犯担当刑事として勤務します。

退職後の2014年、60歳以上を対象とした、第2回本格ミステリー「ベテラン新人」発掘プロジェクトを受賞。応募作『砂地に降る雨』を改題した本作で、作家デビューを果たします。

元刑事という経歴から、『ダーク・リバー 暴力犯係長 葛城みずき』など、警察を題材とした作品を発表。自身が長く勤務していたこともあり、警察に関する描写はどれもリアルなところが大きな特徴です。

警察官の日常会話や、業務の様子もリアリティがありますが、醍醐味はドロドロの人間関係。警察組織には闇が多いと噂されますが、あまりに闇が深すぎて背筋が寒くなるほどです。 

これが本当だったら……と想像力がたくましくなりますが、キャリアの綾部早苗を主人公に、警察内部の権力争いを描く『暗黒捜査 警察署長 綾部早苗』は、あまりのダークさに頭を抱えるでしょう。創作だから、と言い切れない説得力があります。 

作品の見所をネタバレ1:全部消される⁉警察の暗部が容赦なさすぎて怖い

二上剛は、元警察官で作家という異色の経歴の持ち主。警察内部の事情に精通しており、物語の随所に経験を活かした描写がされています。

なかでも組織内部の泥沼劇は、「ここまで書くか……」と驚かされるでしょう。足の引っ張り合いというよりも、相手を食い殺すくらいの激しさがあります。 

本作の事件では、不必要な存在は偶然を装って殺され、その事実が隠蔽されてしまいます。実行しているのは、刑事。

公平かつ正義を執行するはずの存在が、法を捻じ曲げ、自分の不利になる存在を殺害していくのです。あまりに無造作に多くの命が失われるので、読者は怒涛の展開に茫然とすることも。  

なお、作者が小説家を志した理由のひとつとして、権力者の横暴を許さないためと語っています。多少の脚色があるにせよ、似たようなことが起こっているのだろうと想像するに難くありません。

ただ権力を得たいがために利用され、殺されていく。現実として考えると、あまりの理不尽さと救われなさに、震えが止まらなくなりそうです。 
 

 

作品の見所をネタバレ2:気が合わない?折原&恭子コンビに注目!

恭子は、交番勤務から長田署に移動してきました。自他ともに認める美人ですが、署内では女性刑事に対する不信感や嫉妬からか、あまり好意的な扱いではありません。

序盤では、恭子も仕事がいやだと嘆いていましたが、事件解決の糸口をつかんだところから、周囲の態度に変化が現れます。 

最初から恭子とコンビを組んでいるのが、先輩刑事の折原です。ゴリラのようだと称されており、パワハラ・セクハラまがいの言動まで飛び出す始末。しかし、恭子を認めてからは「仲間」として尊重してくれます。  

はじめは反発しあっていた2人ですが、事件の捜査をしていく間に、互いに信頼感が芽生えていきます。物語の中盤では、折原の言葉をきっかけに、恭子が事件の真相に気づくという重要な場面も。

ベテランの洞察力と、新人の行動力が絶妙に組み合わさった「コンビネーション」が、本作の見所のひとつです。 
 

作品の見所をネタバレ3:主人公の成長ものじゃない⁉人間性の変化に唖然…

これまでの流れから、「最初は仕事場を嫌がっていた恭子が、仲間として認められ、立派な刑事へと成長していくのだな」と想像したのではないでしょうか?

たしかに、刑事として大きく成長する姿も見られます。ひとつの事件から、自身の父親にも関わる「警察内部の人間が起こした大事件」の真相を暴いていくこともあり、かなりの成長といえるでしょう。 

しかし、登場する刑事たちが、全員「正義の執行者」ではないように、恭子もピュアな新人のままではいられません。真相が明らかになるにつれ、犯人を追い詰めるために、恭子も正義とは言えない手段をとっていきます。

新人らしい正義感はどこに行った……?と、驚くほどの変貌っぷりに開いた口がふさがりません。 

なお、法を犯すような手段をとるのは、仲よくなった安本の孫娘・リサや、自分自身の命を守るためという明確な理由があります。こうした変化は、自分の利益のためだけではないというところが、せめてもの救いではないでしょうか。  

 

小説『黒薔薇 刑事課強行犯係 神木恭子』明かされる衝撃の事実……その結末とは

清掃人材派遣会社の社長殺害事件は、ただのきっかけにすぎません。物語の本筋は、元ヤクザの安本老人宅の床下から発見された、7人の遺体が大きく関わっていたのです。

恭子は、事件の捜査を続けていくなかで、社長殺害事件の捜査本部で指揮を執っていた刑事部長・瀬名靖史(せなやすふみ)と、80歳になっても大阪府警で絶大な発言権を持つ、ボス的存在の父親・瀬名英一郎(せなえいいちろう)に不信感を抱きます。

死亡した恭子の父親の「元上司」が、瀬名英一郎だったこともあり、不信感を抱いた恭子。

瀬名親子について調べを進めていきます。事件のすべての真相を知る女・乾茂美(いぬいしげみ)の話から、恭子はすべての殺人事件の真相、そして自身の父の死に関わる人物の名前を特定してしまうのでした。  

著者
二上 剛
出版日
2017-02-15

あまりに複雑な人間関係で、混乱してしまうのですが、キーパーソンとなる女性は茂美です。彼女と真犯人である男を中心に、「世間から隠蔽された殺人事件」が連鎖的に起こっていきます。

あまりにも簡単に犯人の思い通りになってしまうので、自分の感覚がマヒしているのでは?と心配になってしまうのですが、権力とはそれだけ強大で、とても魅力的なものなのでしょう。

最大の見所は、刑事らしからぬ恭子の行動。多くの読者が、「恭子のあまりの変貌っぷりに困惑した」という感想を抱いてるようです。

また、正式に法で裁かれるわけではないという、最後にモヤモヤとした気持ちが残るのでしょう。読後感は爽快とはいえませんが、読者を引っ張る力強さは相当なもの。

「勢いに任せて流されるまま読んでみたら、とんでもない景色のところにたどり着いた」、そんな脱力感を味わうことができます。 

終盤の「まさか、こんなことが……」という展開に、度肝を抜かれる本作。ドラマでは、以前の続編という形でオリジナルのストーリーが展開されるようです。本作を経て、恭子がどんな刑事になるのか?というのも気になるところですが、まずはドラマの凛々しい恭子と、折原のコンビの活躍を楽しみましょう。

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