小説『獄医立花登手控え』が面白い!あらすじから結末までネタバレ!ドラマ化

更新:2021.11.20

お人よしの青年医師が、その性格からさまざまな事件に巻き込まれ、その頭脳と腕っぷしを駆使して解決していく小説、『獄医立花登手控え』(ごくい たちばなのぼる てびかえ)。『たそがれ清兵衛』などで知られる藤沢周平の時代小説です。 2020年1月には、BSプレミアムで新春時代劇『立花登青春手控えスペシャル』として、ドラマ放送が予定されている注目度の高い作品です。この記事では本作の見所を結末までご紹介。江戸時代を舞台に、牢獄医師を勤める青年と囚人の交流や事件、そして成長が描かれる本作の魅力を徹底的に解説していきます。

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小説『獄医立花登手控え』が面白い!ドラマ化で話題の原作【あらすじ】

主人公は、江戸で医師をしている叔父に憧れ、医師になった青年・立花登(たちばなのぼる)。彼は叔父のもとで研鑽(けんさん)を積むことを望み、江戸へやってきましたが、とある問題が……。

じつは、憧れの叔父は大の酒好きで、怠け者のさびれた町医者だったのです。そして、そこで待っていたのは、叔母や従妹から「下男」のような扱いを受ける、居候生活でした。

家の雑用や叔父の代診、小伝馬町の獄医の仕事まで押しつけられ、理想と現実の落差に戸惑いつつも、得意の柔術修行に打ち込み、牢獄医として囚人たちと接する日々。

謎と事情を抱える囚人たちとの関わりが、そんな登をいくつもの事件へと誘います。本作は、獄医という特殊な環境に身を置き、等身大に悩みながら成長していく青年の、青春期の物語なのです。

著者
藤沢 周平
出版日
2017-03-10

テレビドラマでは『立花登青春手控え』のタイトルになり、「春秋の檻」「風雪の檻」「愛憎の檻」「人間の檻」の全4巻。文春文庫などで刊行されています。

最初のドラマ化は、1982年のNHK総合「水曜時代劇」にて、『立花登 青春手控え』として放送。キャストは主演の中井貴一、ヒロインのちえを宮崎美子が演じました。

2016年には、NHK BSプレミアム「BS時代劇」にて、『立花登青春手控え』としてリメイクされ、溝端淳平が主演で再度テレビドラマ化し、ちえ役は平祐奈でした。

また、2017年と2018年には、続編として『立花登青春手控え2』『立花登青春手控え3』が放映されています。

2020年1月に、BS新春時代劇にて『立花登青春手控えスペシャル』が放送。最終シリーズから2年後の世界が舞台で、主演は溝端淳平、ちえ役は平祐奈。登の新たな青春が描かれる予定となっています。

34年前に従妹・ちえ役を演じた宮崎美子が、2016年のリメイク版からちえの母・松江役を演じているほか、前作で同心・平塚源太朗役を演じた篠田三郎が語りを務めるなど、前作ドラマファンの方には懐かしく感じる演出も。

囚人との関わりから起こる「事件の謎」というミステリ要素や、柔術経験者の緊迫のアクション、そして主人公をめぐる恋愛模様など、多くの要素がちりばめれている本作。時代小説に馴染みのない方にも読みやすく、気軽に楽しめる作品です。

作者:藤沢周平とは?

江戸時代を舞台とした、多くの時代小説を残した作者・藤沢周平(ふじさわしゅうへい)。

本名は小菅留治(こすげとめじ)、1927年生まれの小説家です。没年は1997年(享年69歳)、1995年には、紫綬褒章を受賞しています。

故郷(鶴岡市)を舞台にした作品も多く、市内には鶴岡市立藤沢周平記念館があり、没後に山形県県民栄誉賞と、鶴岡市特別顕彰が贈られました。

著者
藤沢 周平
出版日
2009-12-04

もう少し詳しい経歴を見てみましょう。

藤沢は、山形師範学校卒業後、山形県内の中学校で国語・社会を担当する教員として勤めます。しかし当時「不治の病」とされていた、肺結核との診断を受けて休職。手術後は新聞記者として活動するかたわら、小説を書き始めます。

そして1971年、『溟い海』でオール讀物新人賞を受賞し、翌々年1973年には『暗殺の年輪』で直木賞を受賞。その後、新聞社を退社して作家活動を本格的に始めます。

代表作は、『たそがれ清兵衛』『蝉しぐれ』など。妻の死をきっかけに、小説を書き始めたという経緯から、初期作品は重い読後感の作品もみられ、必ずしもハッピーエンドではない独特の深みがあります。

ユーモア、心情描写の巧みさ、美しい文章……。2019年現在でも読み継がれて映像化される魅力は、一筋縄ではいかない物語の奥深さにあるのかもしれません。

小説『獄医立花登手控え』の面白さをネタバレ解説!:個性的な登場人物をご紹介!

主人公・登のほかにも、個性的なキャラクターが多く登場する本作。ここでは、見所の一つでもある登場人物たちをご紹介します。

 

  • 立花登(たちばなのぼる)

    本作の主人公で青年医師。叔父・玄庵に憧れて医師になったはいいものの、憧れの存在は理想とは少し違うものでした。

    理想と現実のギャップに悩みながらも、優れた観察眼と確かな医術の心得をもって、自分なりに医術の道に向き合おうとしている人物です。起倒流(きとうりゅう)の柔術の使い手で、腕前はかなりのもの。

    登は牢にいる囚人たちとの交流のなかで、彼らの犯した罪に隠された真実を紐解いていくことになります。

    理不尽とやるせなさ、善意と無情、そして真心……。一言では言い表せない彼らの感情らに触れて揺らぐ姿は、悩みや葛藤を抱えたごく普通の青年。頭の良さや身体能力の高さはあるものの、読み手が共感しやすい主人公です。
  • 小牧玄庵(こまきげんあん)

    登の叔父。酒好きの怠け者で、妻・松江の尻に敷かれており、家の雑用や問題からこっそり逃げることが特技です。はやらない医者ですが、内心はどうあれ身分関係なく、長年の経験をもとに医術を振るう姿は、時に登の心にかつての憧れを呼び起こさせます。

    ふだんのダメ親父っぷりもあり、美点も欠点も持ち合わせた人間味あふれる人物です。
  • 松江(まつえ)

    玄庵の妻・松江。高飛車な物言いで、居候の登を使用人同然に扱い、こき使っています。愚痴が多くて口やかましく、けち……。

    時にうんざりもさせられ人物ですが、わかりやすい手のひら返し、現金な切り替えの早さ、基本的には人を信じやすい性格と、彼女もどこか憎みきれないおかしさがある、味のある人物です。
  • ちえ(おちえ)

    登の従姉妹。母に似て美人ですが、悪い仲間とつるんで夜遊びにハマっており、叔父夫婦や登を困らせています。飲酒に非行の不良少女……。

    そんな彼女は、とある事件をきっかけに、めざましい変化を見せてくれます。登を呼び捨てにし、アゴで使うような小娘が、一体どんな可愛らしさ、鮮やかな成長を見せてくれるのか……?彼との関係の変化は、ぜひ注目してほしいポイントです。

小説『獄医立花登手控え』の面白さをネタバレ解説!:ミステリ要素も満載!獄医のひらめきが事件を紐解く!

本作最大の見所をは、何といってもミステリー要素。

たとえば1巻最終話の「牢破り」は手に汗にぎる展開です。ワガママ娘・おちえが誘拐され、彼女の命が惜しければ「牢破りの手伝いをしろ」と脅される登。牢内に内通者がいる事が仄めかされ、要求に逆らえばおちえの命が……。

獄医としての信頼、おちえの命、登は全てを守りきることができるのでしょうか。ハラハラドキドキの展開が楽しめます。

2巻収録「老賊」はどこか不気味な雰囲気。瀕死の囚人・捨蔵から「娘と孫を探してほしい」と頼まれ、逃げるように転居を繰り返す2人を探す事になった登。彼女らの行方を追っている男の影がちらつくなか、自分も尾行されていることに気づき……。

逃げる娘、不気味な尾行者……。彼女を追うのは何者なのか、そして瀕死の囚人の願いの裏には一体何が隠されているのでしょうか。ラストの急展開に、驚きを隠せません。

今紹介しました2話のようにスリリングな展開がくり広げられることもあれば、じわりと這い寄るような不気味さが付きまとう事件もあります。登は、少しでも違和感があると、そのままにしておけない性格の持ち主です。こういった人柄がそうさせるのか、囚人たちは善きにつけ悪しきにつけ、彼に秘密を語り、時に協力を頼み込みます。

それにこたえ、観察眼とひらめきにより、真相や冤罪をつまびらかにしていく活躍をみると、ミステリ小説を読むときの面白さも感じられるでしょう。

また、冤罪の囚人を助けたり、善意を見いだしたりすることも。時に裏切られることもありますが、酸いも甘いも経験しながら研鑽を積んで事件を解いていくさまは、見ごたえあり。ついつい続きが気になって、一気読みしてしまいます。

小説『獄医立花登手控え』の面白さをネタバレ解説!:モテ期到来の主人公!

医師としての確かな腕、武芸者としての実力、囚人たちに関わるごとに磨かれていく観察眼……。主人公・登は、さまざまな能力を磨き、成長していきます。それが功を奏してか、じつは本人の知らないところでモテ期が到来……⁉

本作の見所は、登をめぐる恋の行方にもあります。

従姉妹・おちえとその女友達らが、こっそりと「登に恋心を抱いている」という事実がほのめかされていくなかで、登自身の気持ちも変化していきます。予期せぬモテ期到来に気づいた彼が、最終的に結ばれるのは誰なのでしょうか?

恋心がほのめかされる展開は、じれったくも先を読みたくなってしまう内容。ワクワクしながら見守りたくなるその様子は、時代小説にあまり馴染みのない方でも、楽しめるポイントです。

小説『獄医立花登手控え』の結末をネタバレ解説!別れゆく季節の決断とは

本作は、1話読みきり形式で進んでいく連作集です。最終話のタイトルは「別れゆく季節」。ここからは本作の結末の見所について解説していきます。ネタバレがありますので、未読の方はご注意ください。

著者
藤沢 周平
出版日
2017-04-07

叔父のもとに居候して、はや数年が経ち、登の生活に大きな変化が訪れます。叔父の伝を頼りに、大阪へ「2年間の医術修行」を決めた彼に、獄医としての最後の春が始まるのです。

そんな状況のなか、登に恨みを抱き、「牢を出たら命を狙う」と宣言する囚人が現れて……⁉果たして登は、底知れない悪意とどう対峙するのでしょうか。

そして、登とおちえにも、「終わり」と「始まり」が訪れて……。

少しの寂しさと、優しい温もりを感じさせてくれるその結末。明るく、将来への希望を感じさせる最後です。気になった方は、ぜひとも本作で彼らの物語の結末を見届けてみてください。

時代小説がはじめての方にもおすすめの作品です!

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