「柴田錬三郎賞」歴代受賞作おすすめ5選!名作エンタメ小説がずらり!

更新:2019.10.11 作成:2019.10.11

多くの読者の心をつかむであろうと期待される作品に贈られる「柴田錬三郎賞」。エンターテインメント性が高く、受賞作の多くが映画化やドラマ化もされています。この記事では、歴代受賞作のなかから特におすすめの小説を厳選してご紹介していきます。

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「柴田錬三郎賞」とは。特徴や対象作品などを紹介

 

集英社と一ツ橋綜合財団が共同で主催している「柴田錬三郎賞」。『水滸伝』『徳川太平記』「眠狂四郎」シリーズなどで人気の作家、柴田錬三郎の功績を称えて1988年に創設されました。

対象作品は小説。ジャンルは問いません。前年の7月1日から選考年の6月30日までを区切りとし、1年の間に刊行された小説から受賞作が選ばれます。1年に1度、1作品のみが選ばれる狭き門で、発表は雑誌「小説すばる」上にて。正賞として記念品、副賞として300万円が贈られます。

他の文学賞は、主催している出版社から刊行された作品に受賞が集中したり、受賞作の傾向がはっきりしたりすることが多いですが、「柴田錬三郎賞」は集英社が主催しているものの受賞作は同社の作品に限られているわけではありません。

また恋愛・歴史・ミステリー・ファンタジーとジャンルが多種多様で、毎年新たな発見や面白さがあります。幅広い層の読者が面白いと感じる作品が選ばれているといえるでしょう。

「柴田錬三郎賞」を受賞したエベレストとカメラをめぐる物語

 

登山家として限界を感じ始めてきた主人公の深町。カメラマンとして参加したエベレスト遠征が失敗に終わり、ネパールの首都カトマンズの街を放浪していました。

そこで、いわく付きの古いカメラを手に入れます。そのカメラには、かつてエベレストにアタックし遭難していたジョージ・マロリーが、登頂に成功したか否かの鍵となる写真が残っているはずでした。しかし手に入れたはいいものの、すぐに盗まれてしまうのです。

深町は、このカメラをめぐる騒動のなかで、ある事件をきっかけに姿を消していた伝説の日本人登山家、羽生丈二と出会います。そして羽生がエベレストの最難関ルートを冬季単独アタックすることを目論んでいると察し、彼の行く末とカメラの謎を追うことを決めるのです。

著者
夢枕 獏
出版日
2000-08-18

 

1998年に「柴田錬三郎賞」を受賞した夢枕獏の作品です。

ジョージ・マロリーは、1924年にエベレストにチャレンジし、遭難した実在する人物。日本では「そこに山があるから」という言葉で知られています。実在する謎とカメラを絡めたミステリー展開と、なぜ山に登るのかという本質的な問いを読者に投げかけてくる一冊です。

立ちはだかる岩肌や、辺り一面マイナスの氷の世界など、情景描写が秀逸。そこに体ひとつで向き合っていく登場人物たちの情熱に何よりも心を動かされるでしょう。

武士の生きざまを描いた「柴田錬三郎賞」受賞作

 

貧しさゆえに盛岡藩を脱藩し、新撰組の一員となった武士の吉村貫一郎。剣の腕前を活かして人を斬り続け、故郷に残してきた家族に仕送りをしています。

しかし世は動乱の時代。新撰組は「鳥羽伏見の戦い」に参戦し、敗走。貫一郎は切腹を迫られることになるのです。

一方で貫一郎の家族は、貧しいながらも仕送りのおかげで何とか生きながらえることができていました。しかしその金はいわば「汚い」金。後に武士となる貫一郎の息子は、父親の行為を許すことができず、藩に忠誠を誓います。しかしまた彼も、戦に身を投げることになり……。

著者
浅田 次郎
出版日

 

2000年に「柴田錬三郎賞」を受賞した浅田次郎の作品。19世紀後半に生きた貫一郎について、彼を知る人々から大正時代の新聞記者が聞き取りをする形で物語が進んでいきます。

家族のために危険を顧みず人を斬り、友人とあつい友情を交わしていた貫一郎。武士として、そしてひとりの男として全力で生き、散っていったその生きざまは、読者の背中を押してくれるでしょう。

歴史小説というとハードルが高いと感じる人もいるかもしれませんが、本作で描かれているのは、夫婦や親子、そして友との物語です。「平成の泣かせ屋」といわれる浅田次郎が紡ぐ人間模様をお楽しみください。

家族のかたちを描いた短編集

 

ネットオークションに入れ込み、夫の私物を勝手に売却してしまう主婦、会社が倒産して突然専業主夫になってしまったサラリーマン、ロハスにはまった妻を皮肉った小説を書いてしまった小説家の夫……。

本書は、家族と、家庭内の出来事を面白おかしく描いた短編集です。

著者
奥田 英朗
出版日
2010-05-20

 

2007年に「柴田錬三郎賞」を受賞した奥田英朗の作品。家族という身近なテーマを扱っています。

描かれているのは、当たり前の日常ばかり。しかし本書を読むと、それぞれの家族にそれぞれの物語があることを理解できるでしょう。

くすりと笑える作品が多く、読後感は心地いいもの。肩ひじ張らず、気軽に楽しめる一冊です。

「柴田錬三郎賞」を受賞した角田光代の代表作

 

結婚後に一時は専業主婦になったものの、銀行で働きはじめ、顧客からも信頼されている梅澤梨花。大学4年生の光太と出会い、好意を見せられた帰り道に、高額の化粧品を手にします。そして手持ちのお金がなかったため、つい営業で預かった会社の金を使って買い物をしてしまうのです。

その日から、徐々に金銭感覚を狂わせていく梨花。洋服や化粧品、アクセサリーを見境なく購入し、光太へは部屋を買い与えます。横領した会社の金は、1億円にのぼりました……。

著者
角田 光代
出版日
2014-09-13

 

2012年に「柴田錬三郎賞」を受賞した角田光代の作品です。

本書の魅力は、痛いほど鮮明に描かれる登場人物の心情です。夫から嫌味を言われ続けて知らぬ間にフラストレーションを溜める様子や、誰かの愛情を求める気持ち、驕り、たかぶり……横領という行為自体は日常で体験できるものではありませんが、彼女の心は容易に想像することができるでしょう。

小さなきっかけが次々と重なり、あっという間に道を踏み外していく梨花。ついには海外に逃亡するのですが、もう後戻りができないところまで来てしまいました。疾走感のあるスリリングな展開は、最後の最後まで続きます。彼女は最後に何を語るのでしょうか。

「柴田錬三郎賞」を受賞した幻の花をめぐる物語

 

花好きだった老人、秋山周治が何者かに殺される事件が発生。孫娘の梨乃は、祖父の庭から消えていた「黄色いアサガオ」に秘密があると考え、この花を通じて知り合った蒼太と事件の真相を追います。

一方で早瀬という刑事も、まったく別の事情から、絶対にこの事件を解決すると意気込んでいました。

著者
東野 圭吾
出版日

 

2013年に「柴田錬三郎賞」を受賞した東野圭吾の作品です。

物語のキーになっている「黄色いアサガオ」は、江戸時代に姿を消した幻の花といわれているもの。幻覚作用があり、50年前に錯乱した男が8人を死傷させる事件を起こしているようでした。このひとつの花をめぐるストーリーと、梨乃と蒼太それぞれの家族にまつわる過去が絡みあい、殺人事件に隠されたドラマが解き明かされていきます。

張り巡らされた数々の伏線が、ラストにかけて一気に回収される手法は東野圭吾の真骨頂。最後は切ないながらも爽快感すら感じられる、おすすめの作品です。

ジャンルに偏りなく、さまざまな題材を扱った「柴田錬三郎賞」の受賞作。興味のあるものからお手にとってみてください。