「世界で一番悪い魔女」として悪名高い、クインタ。彼女はある日、天才教授・ネスターと出会い、ある秘密を抱えながら、彼にリスクのある恋をしてしまします。しかし秘密を抱えているのは彼女だけではないようで……? それぞれの目的を持ち、旅をすることになった2人の冒険の物語です。魔法と秘密に導かれ、彼らのストーリーはいったいどんな結末を迎えるのでしょうか。この記事ではラストまでの見所をご紹介します。 スマホの漫画アプリで無料で読めるので、気になる方は下のボタンからダウンロードしてみてはいかがでしょうか?
300歳を超えていると噂される、悪名高い大魔女・クインタ。彼女はいくつか秘密を抱えていました。実は年齢は16歳で、しかも1日3回までしか魔法が使えないのです。そんな彼女の目的は、世界一悪い魔女でいること。
ある日、とある研究の成果をめぐり、魔法使いたちから追われていた若き天才教授・ネスターと出会います。そして、さらに彼女の悪名を広められるということで、彼のボディーガードを引き受けることに。
ネスターの目的は、3つの推薦状をゲットして、研究成果を「賢者の図書館」に登録・一般公開することです。けれど、噂と違うクインタの実態が、天井知らずの好奇心を持つ彼の興味を引いてしまい……⁉
隠したいクインタと暴きたいネスター。果たしてクインタは、秘密を暴かれずに彼を守り、世界で一番悪い魔女でい続けられるのでしょうか。
- 著者
- 草川為
- 出版日
- 2015-08-05
本作は、恋愛漫画として楽しめる部分もありますが、最大の魅力は世独特の界観を持つファンタジー漫画としての面白さです。特にクインタの秘密にどんどん引き込まれることでしょう。
また、テンポよくくり広げられる会話も魅力。クセのある登場人物たちがそれぞれの考えでさまざまな行動をとることで、ストーリーが進んでいきます。シリアスな展開もありますが、重すぎることはありません。
草川為(くさかわなり)は、愛知県出身の少女漫画家です。2001年に『ガートルードのレシピ』で、白泉社アテナ新人大賞デビュー優秀者賞を受賞。
2019年11月現在は、WEBコミック誌「花ゆめAi」で、『年年百暗殺恋歌』を連載中です。代表作は、『ガートルードのレシピ』『十二秘色のパレット』など。
- 著者
- 草川 為
- 出版日
- 2011-01-14
独自性の高い世界観、設定にのセンスが感じられる作者。そのなかで描かれる主人公の恋愛や成長は、普遍性があるもので、奇抜ななかにも共感できるポイントがあるストーリーを多く手掛けています。
たとえば初の単行本でもある『ガートルードのレシピ』は、シェイクスピアの『ハムレット』の台詞を転用したと思われる形式の呪文や、悪魔の造形の独特さが魅力です。ほかにも服装や小物、色彩のセンスがスタイリッシュで、センスを感じさせます。
そんな世界観で、悪魔という生い立ちゆえの孤独感や、それがヒロインによって癒されていく様子が描かれます。ジャンルとしては恋愛漫画ですが、恋というよりは、愛に重きを置いた、深みのある内容です。
『世界で一番悪い魔女』でも、独特の世界観と、共感できる「人の気持ち」の部分に、引き込まれていきます。
本作に登場する、魅力的な主要キャラクターたちを紹介します。
不特定多数の敵に追われる教授、ネスターと、悪名高い魔女、クインタ。お互いに自分の能力ゆえの孤独を感じていたこともあり、少しずつ心の距離が近付いていくのですが……。周囲には、個性的なキャラクターが盛りだくさんで、恋も一筋縄ではいきません。
秘密がバレてしまえば、ネスターとの契約は終わると思っているため、なかなか心を許すことができないクインタ。逆に彼女が自分以外には、比較的ガードが緩いことにモヤモヤを抱くネスター。
嘘によって生じた葛藤と嫉妬が、2人の距離を近くて遠いものにしてしまいます。さらにそれだけでなく、それぞれにライバル(?)が登場し、恋模様は複雑化していきます。
秘密ゆえに恋はできないと思っているヒロインと、恋の自覚がないヒーロー。2人のちょっともどかしい恋愛から目が離せません。
本作は登場人物たちが抱える秘密も見所のひとつです。
クインタは過去の偽り、ネスターは罪ともいえる研究心を抱え、それゆえに人生が複雑になってしまいます。さらに2人だけでなく、本作はもうひとりの人物が抱える裏切りもストーリーの鍵となっていきます。
それらが渾然一体(こんぜんいったい)となって同時並行で進んでいく本作。危うい雰囲気にどんどん引き込まれていきます。
クインタはなぜ偽るのか?ネスターの研究への執着と罪深さとは?そして、ある人物の裏切りの理由と葛藤とは……⁉
少しずつ明らかになっていく三者三様の秘密により、どんどんストーリーに引き込まれるでしょう。
また、ぜひ本作で推しておきたいのが、独自の生物・ホラントラー!見た目のインパクト(巨大な動物の骨!)以外にも魅力がたくさんあります。
ホラントラーは作者の造語で、HORN(牛などの角) +ANTLER(鹿の角) =HORANTLER(ホラントラー)。オオツノジカの骨格標本に、インスピレーションを受けて誕生したそうです。
角を持つ動物が1度死に、その骨に魔力が蓄積した結果、組織が変成。別物として蘇った存在……それがホラントラーなのです。その大きさは魔法使いの強さに関係しており、大きな個体を従える魔法使いほど強いとされています。
クインタのホラントラー・フィーヨは観測史上最大級とされており、彼女の魔力の大きさを表しているといえるのです。
ネスターの未発表の研究は、このホラントラーにまつわるもの。「魔法使いの勢力図をひっくり返す」可能性がある研究の成果とは、いったいどんなものなのでしょうか。
ちなみにこのホラントラー、個体によって大きさ、角、鳴き声、性格もさまざま。謎多きこの生物に注目しながら、作品を楽しむのもおすすめです。
長い旅を経て、ついに目的地である「賢者の図書館」にたどり着いたクインタたち。
しかし、図書館は先回りしたパメラと組んだ「ある人物」に占拠されていました。研究成果の登録のため、クインタはネスターたちと協力して、大魔女・パメラに挑みます。
彼女への想いが恋だと自覚したネスターと、大魔女として生きていくために、ネスターへの恋心は封じなければと悩むクインタ。
戦いのなかで、2人の恋の行方もついに決着を迎えます。それぞれの想いがぶつかり合い、願いが交錯する最終巻です。
- 著者
- 草川為
- 出版日
- 2019-06-05
クインタ、ネスター、パメラ、ジュード……それぞれの戦いに決着が訪れます。
1度壊れた関係性は、何事もなかったかのようにもとには戻りません。けれど、それを乗り越えて、もう1度違う形で新しい関係、絆を育むことはできるはず。そんな希望を持ちたくなる展開が描かれます。
クインタとネスターは、それぞれに失ったからこそ得たものを知り、その気づきが2人に新しい力をくれました。2人が望む未来、ひとりきりで周りを拒絶していては得られない絆が、物語をラストまで押し進めます。
結末は、読み終えた後に温かい感情を抱くもの。足元にある他愛無い幸せに気づかせてくれるような、優しく、前向きな気持ちになれる内容です。ぜひ実際に手に取って、その最後を見届けてください。