毎年本屋さんが一番読んで欲しい本を選ぶ本屋大賞。本屋さんが選んでいることもあって、歴代の評判はどれも高く、幅広い世代に愛されている本ばかりです!今回はその中でも特に人気の高い作品をご紹介します。
博士はルートに出会う度に、毎回愛おしいものを見つけたという喜びを身体中から表現し、初対面であるルートを抱きしめて愛します。ルートとの何度も交わした会話は、博士にとって大事なものであり、ルートも子どもながらに何度同じことを聞かれても決して博士を嫌がらない聡明さを持っています。
- 著者
- 小川 洋子
- 出版日
- 2005-11-26
この物語は、そういった暗闇×集団の魔法とも言える、この暗い中に皆でいるのなら何をやっても楽しいしうまくいく気がする、という根拠はないけれど誰もが感じたことのあるような想いを、何気ない文章で書き上げています。それは読者にとってはするりと飲み込むことができますが、決してたやすく生み出せるものではないでしょう。
- 著者
- 恩田 陸
- 出版日
- 2006-09-07
『夜のピクニック』がタイトル通り夜の青春だとしたら、こちらは正にきらきらとした太陽を思わせるような昼の青春です。必死に練習する新二の姿や、ライバルたちとの対決風景等、どこまでも真っ直ぐで純朴な物語です。陸上行為の走る行為に比例するように、疾走感のある文体が心地よく、自らもそこに立って共に部活を励んでいるように、染みこんできます。
- 著者
- 佐藤 多佳子
- 出版日
- 2009-07-15
誰が自分を裏切り、誰が信用に足るのか?
- 著者
- 伊坂 幸太郎
- 出版日
- 2010-11-26
物語は異なる語り部によって第一人称ですすめられていきます。一方的な語りは、言葉を交し合うキャッチボールではなく、ただただ投げかけられている一方的な印象を感じます。その一方的な言葉とは、登場人物たちの建前ではなく「本音」をあらわしたもの。彼らの生々しい素顔です。
- 著者
- 湊 かなえ
- 出版日
- 2010-04-08
あなたは辞書を作るとはどういうことか、考えたことがあるでしょうか?この言葉の意味ってなんだっけ、辞書を引けばいいか……あれ、載っていない、なんてことがあってはなりません。また、過去の辞書に載っている意味はそのまま全て受け継がれるということもありません。時代が変化するにつれて、言葉も変化するのです。
- 著者
- 三浦 しをん
- 出版日
- 2015-03-12
一方、謎の病に立ち向かうために腰を上げた医術師ホッサル。調べていくうちのヴァンの逃走痕跡を見つけ、病のヒントを掴むため、ヴァンを追うことに……。そんな二人をダブル主人公に、壮大で大容量な世界が上・下巻に目一杯に広がります。
- 著者
- 上橋 菜穂子
- 出版日
- 2014-09-24
物語の舞台は日本で開催される芳ヶ江国際ピアノコンクール。このコンクールで活躍した演奏家が後に大きく世界に羽ばたいたことから高い評価を得ており、多くの才能がこのコンクールには集まります。
天才と呼ばれながらもステージに上がることをやめていった栄伝亜夜。養蜂家の家庭に生まれ、その他のコンテスタント(コンクールの出場者)とは全く異なる音楽の道を生きてきた風間塵。そのルックスや演奏から王子様の異名を持つ優勝候補の呼び声高いマサル・カルロス・レヴィ・アナトール。楽器店で働きながら出場年齢制限ぎりぎりで出場を果たす高石明石。
その他多くの音楽的才能を期待される若手演奏家が刺激し合い、時には共感しながら、自らの音楽と向き合い、昇華していきます。才能が才能を目の前にしたとき、お互いの才能がやすりのようにお互いの才能を磨き上げ、輝いていくさまが書かれています。
そうした経験を経て風間塵たちコンテスタントにとってコンクールは順位を競うだけのものではなく、他のコンテスタントの演奏を聴くことで刺激を受け自らの音楽性を高めることのできる場所となり、さらにうまくなりたいという欲を引き出す場ともなるのです。彼らはライバルであり、戦友であり理解者となっていきます。
- 著者
- 恩田 陸
- 出版日
- 2016-09-23
この作品は青春小説であると同時にピアノコンクールを舞台にしている音楽小説でもあります。音楽を扱った作品にとって最も重要な要素は、音楽をどのように表現するのかということです。そして音楽の表現こそこの作品の読みどころでしょう。演奏している人がどんな気持ちでどんな解釈で曲を演奏しているのか、聴いている側がどんな情景を思い浮かべているのかをこの作品では目に浮かべられるのです。
この明確にイメージを頭の中で浮かび上がらせることができる音の表現はとても細やかかつ緻密でとても密度が高く、それでいてほどよいテンポで読めるように書かれています。読むことと聴くことが同時に成立していて、まさに音を読んでいるという感覚です。
多彩な語彙とそれらの言葉を紡いでいく表現力の高さは恩田陸だからこそのものだといえます。彼らのコンテスタントたちが音楽を通してより心理的に壁を乗り越えてゆく様子が輝いてみえるのです。
またクラシックになじみがない人にとっては、作品に登場する曲を読む前に聴き、自らが抱いた曲の印象と比較しながら読み進めていくという一味違った小説の楽しみ方をしてみるのもよいかもしれません。
いかがだったでしょうか?本屋大賞を受賞した小説は、特定のジャンルに絞られるものではなく、ただ「この本を読んでほしい」「この本が売りたい」という本屋さんの想いによって決まっています。そのため、似たような作品というのもなく、賞をきっかけに毎年連続で読んでも楽しめるでしょう。また、多くがクロスメディア化されており、映画やアニメになったものもあります。でもまずは是非原作を読んでから!筆者にしか出せない味を楽しんでみましょう。