仲良し大人女子3人組が、身の回りにいる地雷な人々についてセキララらに語る、『ブラックガールズトーク』。恋愛脳の身勝手女や自己中浮気男、マウンティング女……。彼らに困らせられながらも内輪で痛快にこき下ろす、ちょっとダーティで爽快なガールズトークが楽しめます。 本作はスマホの漫画アプリ「マンガワン」でも無料で読めるので、気になった方はそちらからどうぞ!
高橋奈緒(たかはしなお)はごくごく平凡なOLです。人より秀でたところがない代わりに、欠点らしい欠点もない、顔もスタイルも収入も平均レベルな生活を送っていました。
それをつまらないと思っているものの、さらに勤務先の人間関係も平穏そのもの。あまりにも変化に乏しい日常が、言いようもないほど退屈でした。
そんな彼女の数少ない楽しみは、親しい女友達だけでおこなうお泊まり女子会。そこには奈緒の知らない、刺激に満ちた「他人事」がありました。人の不幸で楽しむのはいけないと知りつつも、迷惑な他人が自業自得な結末になる話、彼らに困らせられる話が面白おかしく語られます。
日頃溜まりに溜まった鬱憤を吐き出して、共感してもらい、浄化される。本作はブラックなガールズトークがくり広げられる、1話完結型のデトックス短編漫画集なのです。
本作は毎回異なる主人公が登場するオムニバス型の短編漫画となっています。ただし主要人物といえる大人女子3人組が必ず登場し、3人のうち1人以上が物語に関わって語り手(時には当事者=主人公)となります。
3人組の1人、高橋奈緒はもっともフラットで常識的な価値観を持ったキャラクターです。嫌味がなく、ストレートに感情を出すことからも、男女問わず共感を抱けるでしょう。
2人目が、主に女子会の場を提供するのは三浦あやです。奈緒とは高校からの友人同士で仕事は保育士をしています。子持ちでこそありませんが、仕事柄、子供関係や父母関係など気苦労が多いので、既婚者の読者には「あるある」に思えることが多いでしょう。
太田佳央梨(おおたかおり)は商社勤務のキャリアウーマン。あやの従姉妹ということで、女子会に参加する仲になったようです。しっかりした姉御肌なので、話し手としても聞き手としても安心感があります。特別突出しているわけではないものの、気がつけば話の中心にいるような人物。
本作に登場するのは3人組やゲストキャラクターも含めて、私達の身近にいるような等身大のキャラクターばかりです。キャラクターに特別感がないからこそ、この後ご紹介していくような非日常の出来事が際立つ作りになっています。
「他人の不幸は蜜の味」とはよく言いますが、自分に実害のないトラブルは、ドキドキハラハラする身近な娯楽です。人が他人の不幸を喜ぶのは特別な感情ではなく、心理学的には「シャーデンフロイデ」と呼ぶ精神状態で、近年は科学的にも医学的にも証明されています。
- 著者
- マキノマキ
- 出版日
- 2019-10-18
本作における「不幸」は2種類あります。1つはイライラする人物によって困らされるという「不幸」。主に男女関係です。もう1つは、そのイライラ話のオチで、イライラの元になる人物が陥る自業自得の「不幸」です。
ドロドロした展開も見受けられる不幸な話も見受けられますが、最後に必ず逆転してスカッとさせてくれるのが本作の魅力。重くなりすぎることはありません。
また、基本的に女性しか登場せず、それゆえに遠慮のない本音トークも特徴といえます。
女子トークならではの闇や本音の恐ろしさを感じさせつつ、後に尾を引かないサバサバした読後感にハマってしまうことでしょう。
性別に関係なく誰とでも分け隔てなく接し、明るく振る舞って悩みを感じさせない、さっぱりした性格の人(多くは女性)を「サバサバしている」と言います。ところがそれを勘違いして、自分をイケてるサバサバ女だと思い込んでいる「自称サバサバ女」という性格の人物もいるのです。
太田佳央梨の遭遇した、第1話の赤川皐月(あかがわさつき)はまさにそんなヤバい人物でした。
赤川は自称サバサバ系の割に女性に偏見があり、はっきりした性格というより無神経というべき面倒くささがあります。物忘れと勘違いが多く、それでいて自分の非を認めない彼女。しかも大人の恋と称して社内不倫をしており、やりたい放題です。
本編では佳央梨がこんな赤川のドロドロした話をたっぷり語ってくれます。
彼女ほど酷くないとしても、妙に自分をいいキャラに格上げして鬱陶しいと思わされる人は世の中にたくさんいます。読者の方もそんな人物をうとましく思ったこともあるでしょう。
だからこそ赤川が転落していく流れは必見。普通に読んでも痛快ですが、身近な「自称サバサバ女」を重ね合わせながら読むと、より一層スッキリすることでしょう。
職場にいて最も大変なタイプのひとつが、自分の非を認めず、成長できない人ではないでしょうか。第4話に登場する角松亜紀(かどまつあき)は、まさにそういうタイプです。
語り手はここでも佳央梨で、舞台となるのは彼女が務める商社。角松は補充採用された派遣社員として、佳央梨の部署にやって来ました。
当初、角松は非常に優秀な派遣という触れ込みでした。ところが1週間経つ頃にはメッキが剥がれます。何度もミスがあっても言い訳し、頑なに指示を聞き入れないから、成長しない。どうしようもなく、派遣の更新期間を待つしかないのでした……。
社会に出て仕事をしていると、契約社員という立場を免罪符に業務の責任が逃れる、というけしからん人間を見聞きしたことのある人も少なくないでしょう。角松もそういう人間の1人ですが、あまりにもひどい。見ているこちらまでイライラしてしまいます。
見所は、角松に翻弄された末に堪忍袋の緒が切れた佳央梨達の爆発っぷり。「よくぞ言ってくれた(やってくれた)!」と拍手喝采したくなります。
しかし、最終的な角松の言動は作中でも随一で怖いものかもしれません。とんでもない置き土産をしていくので、その恐ろしさはぜひ作品で……。
日本社会がセクハラを意識し始めて久しいですが、近年はまた別のハラスメント(嫌がらせ)が問題となっています。それがモラルハラスメント、通称モラハラです。倫理的道徳的に反した嫌がらせをおこなうことで、優位な立場を利用したパワハラとは似ているようで違います。
第6話は三浦あやが語り手となって、彼女の実姉・山城さやかが夫の樹(たつき)から受けているモラハラが主軸となります。
山崎家は一言で言えば亭主関白。しかもその度が過ぎていて、夫婦の決定権はすべて夫にあり、食費すら必要最低限しか渡さないという凄い家庭です。
樹は「頭使って考えろ」が口癖で、家のことはさやかに任せきりのくせに頻繁にダメ出しをします。偉そうな口ぶりだけならまだしも、不倫疑惑までたちあがり、始末に負えません。
さすがに樹ほどひどい夫はそうそういないと思いますが、夫に遠慮するあまりに何も言えないさやかのような奥さんは結構いるのではないでしょうか。身近に心当たりのある人は共感しながら読めますし、そうでない人は反面教師として学べるかもしれません。
物語ではさやかの現状を知った女子会3人組が、さやかを救うべく一致団結。いつになくアクティブに攻める展開は見物です。
- 著者
- マキノマキ
- 出版日
- 2019-10-18
いかがでしたか? 本作は身近で起こって欲しくはないけれど、見聞きするのは楽しいと思わせられるブラックな面白さがあります。1巻で完結のはずでしたが、好評につきシーズン2が決定したようなので、さらにブラックで爽快なガールズトークに期待しましょう。