直木賞作家・熊谷達也おすすめ文庫ランキング!マタギ三部作など代表作5冊

更新:2016.12.7

小説家、熊谷達也は直木賞と山本周五郎賞をダブル受賞した「邂逅の森』を含むマタギ三部作で有名な作家です。東北地方や北海道など、主に北方の過酷な自然と人間の相剋を描く風土や文化に根ざした作風で知られます。ここではそんな彼の文庫化された代表作5作品を見ていきましょう。

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北の風土の苛酷さと人間の心の強かさを描く作家・熊谷達也

小説家、熊谷達也は現代人が見過ごしがちな問題を、独自の切り口で切り取り小説のテーマとして扱う作家です。そこに描かれるのは、厳しい自然を相手に立ち向かっていく人々です。これは自然の脅威がいつでも身近にあるという覚悟として作品の中に多く出てきます。

そして熊谷達也は一般に「マタギ三部作」と呼ばれるシリーズで有名です。森を舞台に過酷で孤独なマタギという職業を通して人間の哀切や人生の苛酷さを描く独自の作風で多くのファンを得ました。この作品は、それぞれに違った時代、環境、登場人物がマタギという職業に関する物語として描かれる彼の人気シリーズです。

2004年、マタギシリーズの第二作目『邂逅の森』で直木賞、山本周五郎賞をダブル受賞し、作家としての地位を確立したと言えます。東北出身であることから主に東北地方や北海道などの過酷な自然に立ち向かうといったテーマが彼の取り上げる最も主要なものです。

5位:直木賞作家・熊谷達也が描く震災文学

これは仙台在住の著者が作家の視点から3.11東北大震災を物語へと昇華した、いわゆる「震災文学」です。もともとこの作品は震災前から執筆しており、収録作「若き喜びの歌」の後に震災がおこりました。そのことによってラスト2話で物語は大きく転調します。

なかなかに創作者、主にフィクション作家にとっては手を出しづらいデリケートな題材であるといえますが、著者自身の作家としての使命に駆られ描き上げられた一冊になっています。

著者
熊谷 達也
出版日
2015-12-04

共感覚というものがあります。これは五感のひとつで感じた感覚を他の器官で捉えるといった稀ではあるが実際に存在する感覚なんだそうです。この本の主人公、鳴瀬玲司は交通事故で怪我を負い同時に妻をなくすという出来事に巻き込まれます。その後ピアノの音が「香り」として感じるという特殊な能力が身につきました。

それをきっかけとして彼はピアノの調律師の職を生業とします。彼には調律するピアノを通して、持ち主の様々な思い出や問題が香りとして届きます。そんな一風変わった感覚を持つ主人公を通して見えてくる人間ドラマです。そんな彼はある日ピアノの調律のため仙台に向かいます。その日は2011年3月11日でした……。

これは彼が出会った様々なピアノとそれを取り巻く人間模様、そして東北大震災を連作短編という形で描いた物語です。主人公の亡き妻の思い出や東北大震災に被災するといった出来事からの喪失や葛藤、そこからの再生を描いたことが伝わってきます。

4位:マタギシリーズの原点。北の大地での人間と自然との相剋

れは熊谷達也が主だったテーマとして取り上げる過酷な自然と人間の相剋を描いた短編集です。東北の厳しく荒ぶった自然の中で人間の強かさ、また反対に弱さを見事に描いた短編、9編が載せられています。

著者
熊谷 達也
出版日

伝説的な潜水夫であるが、過去に息子を海難事故で無くした事への重い気持ちと孤独な心内を描いた作品「潜りさま」をはじめ、社会のニーズ、また時代の変化に自分なりの生き方を貫くタラ漁師を描く「川崎船―ジャッペ」など殊玉の作品が詰まった一冊になっています。

戦後の昭和という時代にあって山背が吹き付ける過酷な大地を舞台に、強く生きた男たちの姿を描いた傑作短編集です。代表作であるマタギ三部作に通じる、命のやりとりをする熱い男たちの姿があります。

「生きる」という深淵で力強いテーマを考えられるこの本。様々なことが楽に、便利になった今の時代に読むべき本なのではないでしょうか?

3位:熊谷達也には珍しいラフなテーマ。オヤジたちの青春

この物語は少し他の熊谷作品とは毛色の違ったコミカルでユーモア溢れる小説です。学生時代に熱くのめり込んだエレキギターを中年サラリーマン巧也は再び手にします。ごく個人的な趣味のような事柄であったものが、ひょんなことから会社の同僚に知られてしまうのです。

著者
熊谷 達也
出版日
2012-12-05

そこからなし崩し的にバンドを結成し、果てはアマチュアバンドのコンテストにまで出ることになってしまいます。そこで彼は、思わぬ人と再開するのですが……。

ギターを再開したことから、あれよあれよと展開していく巧也の人生の物語が描かれます。コミカルなテイストで描かれつつも人生の哀愁も感じることが出来るそんな作品に仕上がっています。過酷で荒れ狂う自然を多く描く熊谷達也ですが、そんな息抜きともなるこの作品は著者の新たな一面を垣間見れる貴重な作品と言っていいでしょう。

2位:マタギシリーズ3作目。現代を生きる狩人の姿

マタギシリーズ三作目にあたる作品です。直木賞、山本周五郎賞のダブル受賞で有名になった『邂逅の森』の次編にあたる作品です。『邂逅の森』では時代背景を大正時代に設定されていましたが、今作では現代社会が描かれます。編集者である美佐子は現代のマタギに出会います。

著者
熊谷 達也
出版日

「山は半分殺してちょうどいい」

そんな謎めいた、しかしはっとさせられるマタギの言葉に美佐子はショックを受けます。他の生き物を殺さなくては生きていけない人間の性や自然との共生はありうるのか?などの深く、普段見過ごされがちなテーマがつきつけられます。

時代を現代に持って来たことでそれらの問題がより浮き彫りにされ今を生きる読者に迫ってきます。マタギという職業から、すべての生きる者に共通する解決すべき問題が見えてくる、そんな作品になっています。

1位:直木賞・山本賞ダブル受賞!マタギシリーズ2作目の代表作

この作品は史上初の直木賞、山本周五郎賞ダブル受賞という快挙を成し遂げた作品として有名です。またこの作品によって熊谷作品にはじめて触れたと言う読者も多く彼の代表作と言えるでしょう。

著者
熊谷 達也
出版日

時代は大正、マタギを生業とする青年、松橋富治の壮絶な人生を描いたマタギシリーズ二作目にあたる小説です。彼は秋田の貧しい農家で生まれ、やがてマタギとなります。持って生まれた彼の特質なのか、次第に獣を狩るという喜びを知っていきます。

しかしそんな彼は村の有力者である地主の娘と恋に落ち、やがて村を追われてしまいます。彼は村を離れ鉱山で働くようになるのですが、マタギの狩る喜びを忘れられず、もう一度マタギとしての人生を選ぶのですが……。

雄大な自然と、時に対立し時にその懐に抱かれる、そんな偉大なる自然への畏敬の念を感じさせる作品です。人の人生と絶えずそこにある大自然、そんな二重写しのような世界観が見事に描かれた名実ともに優れた傑作と言っていいでしょう。

現代に生きる我々は、はたしてそんな覚悟を持って生きているのでしょうか?いつ何時訪れるかもしれない自然の脅威に対して熊谷作品は目を開かしてくれるものと言っていいでしょう。そんな作品群は今の時代にあってこそ読むべき内容となっています。