きんきんに冷えた手、一面に積もった雪、もこもこのセーターや手袋……絵本で季節を感じるのはいかがでしょうか。この記事では、寒い冬にあたたかい気持ちになれる、おすすめの絵本を紹介していきます。
森で1番大きなクマさんと、森で1番小さなヤマネくんは、大の仲良し。ある日「ふゆじたくのおみせ」からダイレクトメールが届き、2匹は冬にぴったりのアイテムを買うことにしました。ところがお金の代わりとなるどんぐりが、なかなか集まりません。
秋も深まった頃、やっと店に行けた2匹を待っていたのは、リボンがついた2つの包み。2匹が買いたかったものが、森の仲間たちの心配りで取り置かれていたのです。お互いを気遣い、プレゼント交換をして友情を深めた時、森に冬が訪れます。
- 著者
- ふくざわ ゆみこ
- 出版日
- 2003-09-25
「おおきなクマさんとちいさなヤマネくん」シリーズの2作目。2003年に刊行されました。作者のふくざわゆみこは、柔らかなタッチの絵と文で、子どもだけではなく大人にも人気があります。
自分よりも、友人が冬をあたたかく過ごすためのプレゼントを考える2匹と、それに協力する森の仲間や店主の姿が美しく描かれていきます。
どの登場人物も相手を思いやる優しさをもっていて、友情のすばらしさを感じられるのが魅力的。寒い冬でも、心がじんわりとあたたかくなる作品です。
町で素敵なセーターを見つけたトカゲのちょろりん。でもお父さんもお母さんも買ってくれず、自分のおこづかいも足りません。おじいさんに相談し、ランプのガラス磨きを一晩手伝って、費用を工面することにしました。
寒さと眠気に襲われながらも頑張って働いたちょろりん。町の洋品店に急ぎます。ところがそこで、欲しかったセーターはヘビ用のもので、自分では着られないことに気付くのです。がっかりするちょろりんに、店主があたたかい手を差し伸べてくれました。
- 著者
- 降矢 なな
- 出版日
- 1993-03-01
『ともだちや』や「まゆとおに」シリーズなどで知られる降矢ななの絵本。1993年に刊行されました。本作は、降矢が絵と文の両方を担当した数少ない作品のうちのひとつです。
見どころは、細部にまで描き込まれたちょろりんの心情でしょう。過酷な環境で働く覚悟や店主とのやりとりのドキドキ感が、表情だけでなく全身から伝わってきます。
店主のキャラクターにもご注目。普段は気難しいのに、ちょろりんの一途な姿に心を動かされ、言葉少なに接しながらも見事な職人技で「ちょろりんのすてきなセーター」を完成させてくれるのです。
物を買うにはお金が必要なこと、お手伝いをしておこづかいを稼ぐこと、買い物に行くことなども学べるでしょう。
ある寒い日の朝、犬のバムとカエルのケロは、スケート靴と釣りの道具を持って池に出かけました。
そこにいたのは、夜遅くまで天体観測をしていて、そのまま凍りついてしまったアヒルのかいちゃん。バムとケロはかいちゃんを助け出し、家に連れて帰ります。
ケロはかいちゃんがとても気に入ったのですが、うたた寝をしているあいだにかいちゃんは帰ってしまいました。翌朝、バムとがっかりしているケロが池に行ってみると……。
- 著者
- 島田 ゆか
- 出版日
- 1996-12-01
島田ゆかが手掛ける「バムとケロ」シリーズの3作目。1996年に刊行されました。犬のバムとカエルのケロの日常を描いたこのシリーズは、個性豊かなキャラクターたちや、前後の作品とリンクするさまざまな仕掛け、そして2匹のおしゃれな生活が大人にも人気です。
本作の見どころは、ケロの奔放っぷり。かいちゃんを気に入ってはしゃぐケロは、しだいに大胆な行動をとっていきます。トイレについて行ったり、ミイラごっこをしたり……かわいらしくて目が離せません。
細部まで書き込まれた背景にも注目。シリーズで絡みあうサブストーリーがあり、何度読み返しても新しい発見があるでしょう。隅々まで堪能できる一冊です。
雪の降る森の中、おじいさんが落とした片方の手袋に、ネズミが住み始めました。
すると今度はカエルがやって来て、「わたしも、いれて」と中に入ります。うさぎ、キツネ、おおかみ、イノシシ……次々と動物たちが集まり手袋はパンパンに。
そこへとうとうクマが現れて、いれてくれと頼むのです。
- 著者
- 出版日
- 1965-11-01
ロシアの絵本作家、エウゲーニー・ラチョフの作品。『てぶくろ』のストーリーは、ウクライナの民話だそうです。日本でも長く愛され、累計発行部数が300万部をこえるロングセラーになっています。
どんどん大きな動物がやって来て、手袋はぎゅうぎゅうに。窓や屋根、梯子、煙突など、手袋がまるで家のように改装されていく様子も見ていて楽しいでしょう。「わたしも、いれて」「どうぞ」という言葉のくり返しも、耳に心地よいです。
肩を寄せ合う動物たちの表情を見ていると、布団にもぐりこんだ時のような温もりを感じることができるでしょう。繊細なタッチながらも迫力のあるイラストも見どころです。寒い冬に体を寄せ合う動物たちを見て、あたたかい気持ちになれる作品です。
初めての雪を体験した子ぎつね。外に出て遊ぶと、手が冷えて牡丹色になってしまいます。母ぎつねは手袋を買ってあげようと思いますが、昔の経験から街に行くことができません。
そこで母ぎつねは、子ぎつねの片方の手を人間の手に変え、お店ではこっちの手を出すんだよと言い聞かせて、ひとりで送り出すのです。
街の帽子店にやって来た子ぎつね。しかし戸から漏れた明かりに驚いて、きつねの方の手を出してしまいました。
- 著者
- 新美 南吉
- 出版日
児童文学作家の新美南吉が20歳の時に書いた作品です。彼の死後、童話集に収録されて刊行。その後2011年まで、60年以上小学校の国語の教科書に掲載されました。
子を想いながらも人間を恐れる母ぎつね、初めてひとりで街に行く子ぎつね、きつねだと気付きながらも手袋を与える帽子店の店主……登場人物の立ち位置はさまざまです。それぞれの立場から他者とわかりあおうとする姿が丁寧に描かれているのが魅力でしょう。
無事に家に帰って来た子ぎつねから話を聞いた母ぎつね。「ほんとうににんげんは、いいものかしら」とつぶやいて、物語は終わります。大人が読めば、種の異なるものが共存することの尊さを感じることができるでしょう。
新美南吉の日本語は美しく、声に出して読むのもおすすめです。
ある冬の日の朝、ピーターが目を覚ますと、窓の外には一面の雪景色が広がっていました。
朝ごはんを食べてコートを着て、さっそく外に飛び出します。雪に足跡をつけてみたり、寝転がってみたり、棒で揺すって木に積もった雪を落としてみたり……思う存分遊ぶのです。
夜になり、ピーターは雪がとけてしまうしまう夢を見ますが、翌朝目覚めるとまだ残っていました。そしてまた、友人と雪のなかに遊びに行くのです。
- 著者
- エズラ=ジャック=キーツ
- 出版日
アメリカの作家エズラ・ジャック・キーツの作品。1963年に「コールデコット賞」を受賞しています。キーツは貼り絵やコラージュを得意としていて、本作でもその魅力が存分に発揮されています。
子ども部屋の壁紙、ピンクや水色が混ざった雪、そして真っ赤なコート。シンプルで抽象的ながらも、雪にワクワクするピーターの心情がダイレクトに伝わってくるのが不思議です。新鮮な喜びや好奇心を、子どもの目線で感じることができるでしょう。
寒い冬に、雪が降る特別な日が待ち遠しくなる一冊です。