年末年始や冬休みに読みたい!一気読みがおすすめの「上下巻」小説6選!

更新:2021.11.20

年末年始や冬休みは、久しぶりにまとまった時間がとれるという方も多いのではないでしょうか。あたたかい飲み物と一緒に、ゆっくりと本を読んでみるのもよいでしょう。この記事では、長期休みを使って一気読みしたい、上下巻に分かれたおすすめの長編小説を紹介します。

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年末年始や冬休みは、前向きになれる小説もおすすめ『新史太閤記』

 

貧しい家に生まれた少年。周囲からいじめを受け、自分の居場所を見つけることができません。知人のすすめで今川家に奉公に出るも、うまく立ち回れず、馬鹿にされる日々に耐えていました。

その後、織田家の足軽に欠員が出たことから、藤吉郎という名前を引き継いで織田信長に仕えはじめます。持ち前の芯の強さと頭の良さを駆使して、着実に位を挙げていく彼の姿は、いつしか信長の目にとまるようになりました。

常軌を逸した戦法を行使して、城攻めを次々と成功させる藤吉郎。主君の天下は目前という時、信長の訃報を知らされます。ここから、藤吉郎こと豊臣秀吉の、天下取りに向けた戦いがはじまるのです。

 

著者
司馬 遼太郎
出版日
1973-05-29

 

1968年に刊行された、司馬遼太郎版の作品。文庫版は上下巻の2冊です。

「太閤記」とは豊臣秀吉の伝記の総称で、事実に則った歴史小説であっても作者ごとの描写や立ち位置の違いによって、驚くほど印象が変わります。司馬遼太郎は、豊臣秀吉が政治的な計略をめぐらすことに優れていた、という面を強調して執筆。戦いの結果を知っていても面白いと感じられるのは、戦略や戦法を丁寧に記しているからでしょう。

複雑に交錯する人間関係や、巧みに計算された駆け引きなどは、現代のビジネスに通じる面もあります。歴史に詳しくない人でも、気負わずに読み進めることができるはずです。

豊臣秀吉は、どのようにして日本史上1番といわれる大出世を成し遂げたのでしょうか。類まれな才能と血のにじむ努力を目の当たりにすると、年明けから頑張ろうと鼓舞されるはずです。

 

年末年始や冬休みは名作にチャレンジするのもあり!『ノルウェイの森』

 

主人公のワタナベは37歳。ドイツに向かう飛行機内で、ビートルズの「ノルウェイの森」を聞き、学生時代のことを思いだしていました。

友人だったキズキと、その彼女の直子と3人で過ごしていた高校時代。しかし3年生の5月、キズキが突然の自殺。それ以来、ワタナベと直子は疎遠になり、大学入学後に偶然再会したのです。

大切な人を失った者同士、互いに支えあうことを望んだワタナベですが、そううまくはいきません。直子は精神を病み、治療施設に入ることになりました。

ワタナベは、直子をはじめ、大学の後輩である緑などさまざまなバックグラウンドをもつ人々と関わることで、人生とは何かを考えていきます。

 

著者
村上 春樹
出版日
2004-09-15

 

1987年に刊行された村上春樹の代表作。読んだことはなくとも、多くの人がタイトルは聞いたことがあるのではないでしょうか。文庫版は上下巻の2冊です。

登場人物ひとりひとりの発言や生き方にハッとさせられるものがあり、人にはそれぞれの価値観があって人生に正解はないのだと、教えられるでしょう。強いメッセージ性があるので、解釈が難しいといわれる村上作品のなかでは、比較的読みやすいはずです。

淡々としているようで卓越した美しい文章は、物語の世界に没頭させてくれます。叙述的なようで、多くの伏線が張られており、読了後の考察も含めて楽しめる一冊です。

 

年末年始や冬休みは、ほっこりできる時代小説もおすすめ『ぼんくら』

 

物語の舞台は、江戸時代の深川にある鉄瓶長屋です。主人公の井筒平四郎は、面倒なことが大嫌いでずぼらな性格の下級役人。美人の妻と、頭の切れる甥っ子と暮らしています。

ある日、鉄瓶長屋で殺人事件が起こりました。その日以降、差配人など店子たちが次々と長屋を去っていきます。平四郎は、何か特別な事情があるのではと、事件の解決に乗り出すのです。

集めた情報をもとに推理をすすめていく平四郎。すると、想像もしていなかった事実が浮かびあがってきて……。

 

著者
宮部 みゆき
出版日
2004-04-15

 

2000年に刊行された宮部みゆきの作品です。前半は一見連作短編集のように感じるのですが、上下巻の長編時代ミステリー小説になっています。

謎かけがあり、殺人があり、少しずつ繋がりが明らかになって最後は驚きの展開に。張り巡らされたすべての伏線に気付くことはできるでしょうか。

また殺人事件は起こるものの、登場人物たちの強烈な個性や、人情味あるれる江戸の様子はどこかあたたかみがあり、ほっこりした雰囲気を楽しめるはずです。『日暮らし』『おまえさん』と続編も刊行されているので、年末年始や冬休みの一気読みにいかがでしょうか。

 

年末年始や冬休みに続編も一緒に読みたい!日本人らしさを問う経済小説『ハゲタカ』

 

バブル経済が崩壊した後の日本。多くの不良債権を抱えて処理に追われている三葉銀行の前に立ちはだかったのは、ハゲタカと蔑まれる外資系投資ファンドでした。

日本の伝統や古くからの付きあいを守りたい三葉銀行と、金に物をいわせて次々と企業を買収するハゲタカ。芝野、鷲津という両者の取引担当者が対峙します。

多くの企業や観光産業が衰退してしまった原因は、バブルの崩壊ではなく、別のところにあると見切った鷲津。彼は日本の再生を目指していました。

 

著者
真山 仁
出版日
2013-09-13

 

2004年に刊行された真山仁の作品。映像化されて人気を博しましたが、原作はさらに壮大なスケールで描かれています。上下巻の2冊に加え、『ハゲタカII』や『ハゲタカ4.5 スパイラル』など続編やスピンオフも発表されています。

ハゲタカと忌み嫌われる外資系ファンドが、次々と日本企業を買収していく過程には、若干の狡猾さが含まれていることは否めません。しかし日本企業の衰退を招いたのは、バブル景気に踊らされてずさんな経営を続けた自分たちにあったのだ、と目を覚まされていく鷲津の姿は爽快で、悪者を倒していくヒーローのようにも見えるでしょう。

各部の冒頭で、新渡戸稲造の『武士道』を引用しているのもポイント。外資系企業は日本経済の敵なのか、日本に欠けているものは何なのか、悪とは何なのか……。物語自体はフィクションですが、モデルとなった企業や経済的出来事が多く存在します。背景を調べながら読むとよりリアリティが増し、一段と味わい深くなるのではないでしょうか。

 

一気読み必至!サイコパス教師を描いた小説『悪の経典』

 

生徒から慕われ、他の教員たちからも一目置かれている高校教師の蓮実聖司。見た目も爽やかな好青年で、校内で起きた問題を率先して解決したり、生徒からの相談に真摯に対応したりと忙しい日々を送っていました。

しかし、そんな蓮実には裏の顔があります。自分の理想の王国を築くために、邪魔者を次々と手にかける殺人鬼だったのです。

特異な思考をもつサイコパスで、自分に嫌疑がかからないように巧みな計画を実行。それなのに、ある時ちょっとした手違いで、証拠を隠滅するのが難しい事態に陥ってしまうのです。自分の身を守るために彼が起こしたこととは……。

 

著者
貴志 祐介
出版日
2012-08-03

 

2010年に刊行された貴志祐介の作品。独創的な作品に贈られる「山田風太郎賞」を受賞、「このミステリーがすごい!」でも1位を獲得しています。

主人公の蓮実は、生徒たちから「ハスミン」と慕われ、保護者からの信頼もあつい教師です。容姿端麗、頭脳明晰、運動神経も抜群……しかし他人を魅了して弱みを握り、精神を支配する姿は、同一人物とは思えないほどの凶悪っぷりです。

証拠を残さずに殺人を実行する思考プロレスが丹念に描写されているのが特徴。凄惨な場面も多いですが、それでも彼の行きつく先が気になってしまい、読むのをやめることはできません。上下巻ともに一気読みができる、長期の休みに読むのがよいでしょう。

担当クラスの生徒全員を銃殺しようとする蓮実と、なんとか逃げ切ろうとする生徒たちの死闘は圧巻のひと言。命がけの頭脳戦を制するのは誰なのでしょうか。

 

年末年始や冬休みにおすすめ!人生とは何か考えさせられる『神の子』

 

親から虐待を受けて、戸籍をもたずに育った町田。振り込め詐欺集団でシナリオライターをしていました。しかし組織の策略にはまり、殺人の容疑をかけられてしまいます。未成年だったため少年院に入所し、そこで自分のIQが160以上あることを知るのです。

そんな町田のことを、執拗に付け狙う男がいました。同じく高いIQを持つ室井です。大学へ進学し、同級生とともに起業までした町田ですが、彼の周りから闇社会の影はなかなか消えません……。

 

著者
薬丸 岳
出版日
2016-12-08

 

2014年に刊行された薬丸岳の作品です。

町田の心情が直接語られることはほとんどないのですが、さまざまな人と出会い、たくさんの経験を経て、守りたいものができたことで彼の心が少しずつ柔らかくなっていっていることを感じられます。もうひとりの天才である室井との関係も気になるところ。

戸籍がないため学校に通うこともできず、闇社会で生きていた少年時代、平穏には済まなかった少年院時代、そして身元引受人の助けを受けて始まった大学生活と起業……テンポよく進むストーリーが魅力です。闇社会の暗い部分と、未来に期待できる明るい部分が交錯し、なかなか先を予測することができず、ぐいぐいと読み進めてしまうでしょう。

 

年末年始や冬休みは、長編小説や、いつもは読まないジャンルの小説に挑戦するチャンスです。まだ何を読むか決めていない人は、ぜひ紹介した作品を読んでみてください。

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