人間と魔族が争っていた時代、魔王にさらわれた姫。悲しみに暮れるかと思いきや暇をもてあまし、安眠を求め魔王城を大冒険?彼女が、今日も元気に魔王城のみんなを引っ掻き回す様子が描かれた『魔王城でおやすみ』。 単行本が10巻以上発売されている大人気シリーズで、アニメ化も発表されました。この記事では『魔王城でおやすみ』の魅力やおすすめエピソードを紹介します。
人間と魔族が存在する世界。魔王は世界を支配するために人の国の姫をさらい、魔王城に幽閉してしまいます。
国民たちは悲しみ怒り、勇者が姫を救うため立ち上がります……!一方、魔王にさらわれた姫・スヤリスは、ある悩みを抱えていました。
「…寝る以外…することがない」
(『魔王城でおやすみ』1巻より引用)
暇をもてあました彼女は、安眠を求めて魔王城を好き勝手に大冒険!そしてそんな姫に振り回される魔族たち。悲劇のヒロインが逆に周囲を困らせるという構図がユニークな作品です。
姫は魔王城で安眠を得ることができるのか?快眠ファンタジー『魔王城でおやすみ』が始まります。
このあとはまず、本作の魅力をご紹介いたします。
『魔王城でおやすみ』の魅力といえばやはり、個性豊かな登場キャラクターたち。主人公で囚われの姫・スヤリスと魔族たちの漫才のような軽快なやりとりが、面白く、笑いが止まりません。
ここではそんな彼らを主要な者のみ、ご紹介します。
キャラたちの魅力は、ぜひ作品本編でごらんくださいね。
ちなみに本作はアニメ化でも人気が上がっている作品です。そして原作は巻数を10巻以上のばしていますが、基本1話完結型。アニメではどのエピソードが起用されたかも見所ですね。そしてやはり原作でしか見れないエピソードもあるはず……。
そこでこれ以降は、原作からおすすめのエピソードをランキング形式で紹介していきます。アニメ作品では楽しめない(かもしれない)、魅力をお伝えします。
- 著者
- 熊之股 鍵次
- 出版日
- 2017-01-18
まずは第5位。単行本5巻に収録されている、虫歯になった姫のお話です。
魔王城で自由気ままに過ごしていた姫。しかし、彼女にもついにあの病魔が襲い掛かってきました。
それが「虫歯」。魔族の世界で虫歯は、小さな妖精が口の中に入り込んで虫歯になるというのです。
魔族たちに心配され、さっそく魔王城の歯医者へと向かうのですが、なぜか姫は口を開くのを頑なに拒否します。どうやら中を見られるのが恥ずかしい様子。
しかし治療のためには、口の中を見ないと始まりません。魔族たちから説得され姫が出した妥協案は、でびあくまにだけ見せるということで……?
ワガママ放題の姫ですが、その愛される理由が分かるようなエピソードです。
その後、8時間にも及ぶ治療の結果、無事虫歯は完治。安堵した姫はそのまま眠ってしまいます。
姫はどうしてあんなに口を見られるのを拒否していたのかということで、魔族たちは眠っている隙に、口の中をチェックしてみることに。
その理由は、ベロが人よりちょっとだけ短い、というものでした。
普段は無表情で感情をほとんど表に出さない姫が、頬を赤らめ目を潤ませて恥じらう表情はかなりキュンキュンしてしまいます。「小悪魔的」な姫ですが、ちゃんと女の子だったんだなぁと感慨深くなる内容です。
- 著者
- 熊之股 鍵次
- 出版日
- 2017-10-18
第4位は作中で最も姫に翻弄されている、あくましゅうどうしのエピソードです。
魔王城で姫の狩り被害に遭い、死亡した魔族たちを蘇生する日々に追われています。年長者ということもあって頼れる魔族の一人ですが、姫と生活をするようになって少しずつ性格が変化しているのです。
その裏の顔が露骨に出ているのが、6巻のあるシーン。
パジャマパーティーの練習(?)のため、魔王タソガレの部屋を訪れた姫。定番の恋愛話を始めますが、まったく盛り上がりません。
焦った魔王は姫に、「魔王城に来てから誰か気になるやつはいないのか」と聞きます。すると姫は、こう答えたのです。
「『人間』と『魔物』って、恋愛とかしても良いの…?」
(『魔王城でおやすみ』6巻より引用)
そのとき、魔王に用事があって来たあくましゅうどうしが部屋を訪れ、2人の会話を聞いてしまいます。
ベッドの上で男女が2人きり。しかも恋愛の話をしていた……。頭に血が上った彼は、魔王へと襲い掛かります。
のちに誤解は解けるのですが、あのときのあくましゅうどうしのすわった目、魔王を蔑むような表情はかなり恐ろしかったです。
そしてここから彼の姫に対する恐ろしい行動が、加速していきます……。
その後、本番となるパジャマパーティーが開催!女性しかいないその場には、なぜかあくましゅうどうしの姿があるのです。
彼の参加を周囲は不審に思いつつ、パーティーは始まります。始まってすぐ、先日の魔王の部屋での出来事を注意する彼。そんな彼に姫は、こう言います。
「でも私は…みんな好きだから行くんだよ?」
(『魔王城でおやすみ』6巻より引用)
その言葉を聞いて固まる、あくましゅうどうし。「みんな好き?ということは自分のことも好きなのか?」と感情が爆発し、理性が抑えられなくなってしまいます。
何とか別の参加者から声をかけられて我に返った彼は、その場を取り繕おうとしますが、効果ナシ。こうして周囲からの評価が下がってしまうのでした……。
頼れる年長者で、いつも姫の被害者を救っていたあくましゅうどうし。姫に影響されるはずがないと思われていた変貌ぶりが、衝撃的なエピソードです。
しかし悪魔なのに人間らしく、憎めない性格です。
- 著者
- 熊之股 鍵次
- 出版日
- 2018-01-18
続いて第3位のエピソードは、第4位のあくましゅうどうしのつづきです。彼の裏の顔が発見された6巻でしたが、それは7巻でも続いています。
本人も気付かないうちにいつの間にか姫の虜になっていた彼。自分でも止められない行動を抑えるため、姫との接触を避けるようになりました。
しかしその日に限って姫はいつも以上に死んで、何度も彼の前へと姿を見せるのです。そんな姫の行動を理解できない彼は、思わずキツく当たってしまいます。
すると姫はこう指摘してくるのです。
「だってきみ…私を避けてるでしょ」
(『魔王城でおやすみ』7巻より引用)
誤魔化そうとするあくましゅうどうしですが、すぐにバレてしまいます。
結局、姫を避けることを諦めたあくましゅうどうし。本当に避けようとしていたわけではないと分かった姫は、
「なら、いいよ」
(『魔王城でおやすみ』7巻より引用)
と安心した様子で微笑みました。
その瞬間、彼のハートは撃ち抜かれ、その場に崩れ落ちます。
おそらく姫は、特にあくましゅうどうしに対して恋愛感情は抱いていないでしょう。もしあったとしても、気づいていない可能性が高いです。
だってあの姫ですから。でも、ちょっとだけ2人の恋の進展に期待が膨らむ内容ですよね。今後2人がどのような関係性を築いていくのか、楽しみなエピソードです。
- 著者
- 熊之股 鍵次
- 出版日
- 2018-04-12
第2位のエピソードは12巻に収録されている、魔王タソガレと彼の側近レッドシベリアン・改と、あくましゅうどうしの3人のお話です。
魔王の幼少期から付き合いのある2人でしたが、彼らも知らなかったことがありました。それは魔王のツノが生えかわっているということ。
ずっと一緒に過ごしていたのに2人は知らなかった……その事実に魔王はショックを受けます。しかも姫はその変化に気づいてしまうという展開で、余計に2人が魔王に注意を払っていなかったように見えてしまうのでした。
なんとか機嫌を取り戻そうと2人は、魔王の大好きなホットミルクとお菓子を用意します。一緒にいた姫にも振る舞われるのですが、そこで彼女はあることに気づくのです。
2人が用意したホットミルクとお菓子は、明らかに魔王仕様のもの。彼の好みに合わせた甘めのミルクと酸っぱいお菓子だったのです。
魔王本人は当たり前のことで気づいていませんが、たまたまツノのことを知らなかっただけで、2人はちゃんと彼のことを大切に思って観察していたのです。
その事実に気づいた姫は、3人を見てニヤニヤ。嬉しそうに自分の部屋へと帰っていきました。その日飲んだホットミルクは、至上最高に心も体も温まるものになったのです。
あえてそれを魔王に教えてあげない姫も可愛いですし、気づかない3人もそれはそれでいいのかなと感じるエピソード。きっと3人はそんなことを言わなくても、目には見えない強い絆で繋がっているはずです。
- 著者
- 熊之股 鍵次
- 出版日
- 2019-09-18
そして栄えある第1位のエピソードは、1巻に収録されている姫の初狩りのエピソード。やはり姫の魅力を伝える上で絶対に外せないのは、彼女のちょっとバイオレンスな部分です。
突如、魔王にさらわれ魔王城に幽閉されてしまった彼女ですが、当の本人はあまり深刻に考えていない様子。むしろやることがなくて、いかにここで楽しく快適に過ごすかを生きがいにしています。
そんな彼女が魔王城に幽閉されて一番最初に取り組んだのが、安眠するための枕づくり。
安眠できないのは枕に問題があるからだ!と気づいた彼女は、さっそく最高の枕に適した素材を探し始めます。そこで登場したのがでびあくまたち。
ふわふわで肌触りの良い毛質の彼らを見つけた姫は、ブラシを使ってその毛をゲットします。でびあくまの毛で作った枕は、とても質の良い枕へと生まれ変わりました。
そして次に取りかかったのが、ベッドのシーツです。魔王城のシーツは質が悪く、寝相の悪い姫には最悪の組み合わせでした。
そこで姫は魔王城を探索し、シーツの材料を探しにいきます。彼女がシーツの素材として狙ったのが、おばけふろしき。魔王所の中でも、最高の生地です。そして姫は手に入れたハサミで、おばけふろしきの顔から下を容赦なく裁断してしまうのです。
そして彼女は手に入れたシーツを持ち帰り、ぐっすりと安眠。この出来事をきっかけに、様々な場所で狩りを始めていくことになるのでした。
囚われの姫なのに魔族たちをうまく利用して、毎日刺激的で楽しい日々を送っている姫。姫なのに姫らしくなくて、本人にも自覚がまったくないようです。
でもそれが『魔王城でおやすみ』の魅力。THE定番のお姫様ではなく、欲望のままにやらかしまくる彼女だからこそ、この作品が面白くなるのです。
- 著者
- 熊之股 鍵次
- 出版日
- 2016-09-16
おすすめエピソードを第5位から紹介させていただきました。
ただひたすらに貪欲に安眠を求めて魔王城を動き回る姫と、それに振り回され翻弄されていく魔族たち。彼らの日常がどんな風になっていくのか、今後の展開が楽しみですね。