5分でわかる思いやり予算!金額の内訳、メリットや問題点などわかりやすく解説

更新:2019.12.27

「日米安全保障条約」にもとづいて、日本にはアメリカ軍が駐留しています。この在日米軍の駐留経費の一部を負担している「思いやり予算」。ニュースなどでもたびたび耳にする言葉ですが、具体的にどのようなものかご存知でしょうか。この記事では、金額や内訳、メリットと問題点、アメリカの増額要求などをわかりやすく解説していきます。

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思いやり予算とは。概要を簡単に解説

 

正式名称を「在日米軍駐留経費負担」という「思いやり予算」。在日米軍の駐留にかかる経費のうち、日本人職員の人件費などにあてられていて、防衛省の予算の一部として計上されています。

在日米軍の取り扱いを規定している「日米地位協定」の第24条1項には

日本国に合衆国軍隊を維持することに伴うすべての経費は、2に規定するところにより日本国が負担すべきものを除くほか、この協定の存続期間中日本国に負担をかけないで合衆国が負担することが合意される

と記されています。そして2項には

日本国は、第二条及び第三条に定めるすべての施設及び区域並びに路線権(飛行場及び港における施設及び区域のように共同に使用される施設及び区域を含む。)をこの協定の存続期間中合衆国に負担をかけないで提供し、かつ、相当の場合には、施設及び区域並びに路線権の所有者及び提供者に補償を行なうことが合意される

とあります。

もともと在日米軍の駐留経費は、基地用地の利用・借り上げに関わる費用以外はアメリカが負担することになっていました。

しかし1978年、当時の防衛庁長官だった金丸信が、日米関係をより緊密にするために、日本人職員の給与の一部を負担することを決定。その額は約62億円。これを日本共産党が「思いやり予算」と呼んだことから、一般でも使われるようになりました。

1987年に「在日米軍駐留経費負担特別協定」が結ばれてからは、5年ごとに締結される特別協定にて「思いやり予算」の細目が決められています。

その後「思いやり予算」の対象は拡大を続けていて、当初の日本人職員の給与以外にも、米軍基地の整備費や光熱費、訓練の移転費などが予算のなかから支払われています。

 

思いやり予算の金額。総額と内訳

 

では、「思いやり予算」の金額と内訳を紹介していきます。

防衛相のホームページに掲載されている「在日米軍関係経費(平成31年度予算)」によると、在日米軍のための経費は全体で5823億円です。

そのうち、「思いやり予算」にあたる「在日米軍駐留経費負担」は、1974億円でした。

内訳は、

  • 提供施設整備(FIP) 207億円
  • 労務費(福利費等) 270億円
  • 労務費(基本給等) 1269億円
  • 光熱水料等 219億円
  • 訓練移転費(NLP) 9億円

です。

このなかで特別協定による負担は、労務費(基本給等)、光熱水料等、 訓練移転費(NLP)で、合計すると1497億円。ちなみに特別協定では「思いやり予算」とは別に、訓練移転費として12億円、訓練移転のための事業費として94億円が支払われています。

 

思いやり予算のメリットと問題点

 

日本が「思いやり予算」を負担するメリットは、米軍との関係を緊密にすることで、日本の防衛にかかるコストを低減できることが挙げられます。

近年の東アジア情勢の影響から、自衛隊に関わる防衛費は増額の傾向にあります。それでも2020年度の日本の防衛費は約5兆3000億円で、これはGDP比で考えると1%程度に過ぎません。この比率は、主要先進国のなかではかなり低い水準です。

日本の防衛費が比較的低い水準でとどまっているのは、自衛隊の戦略が在日米軍の存在を前提としているから。そのため「思いやり予算」を肯定的に捉える立場の人は、在日米軍と緊密な関係を築くメリットを考えると、「思いやり予算」で負担する費用は、けっして高いものではないと主張しています。

その一方で「思いやり予算」を否定的に捉える立場からは、他国と比較して日本が負担している金額の割合が高いことや、日米関係が従属的であることが問題視されています。

2004年にアメリカの国防総省が発表した米軍駐留各国の経費負担割合によると、日本が負担しているのは74.5%で、これは世界でもっとも高くなっているのです。

さらに「日米地位協定」で定められていない費用まで負担することを、従属的であると批判する論者もいます。以前から「思いやり予算」を批判してきた日本共産党は、米国の要求のままに、人(自衛隊)も、金も、基地も差し出すというのは主権放棄そのものと主張しています。

 

アメリカはなぜ思いやり予算の増額を求めた?韓国との関係は

 

アメリカと結んでいる「在日米軍駐留経費負担に係る特別協定」の有効期限は、2021年3月末です。そのため2020年中に、新たな特別協定のための日米交渉がおこなわれる予定です。

そんななか2019年11月、同年7月にアメリカのボルトン大統領補佐官が日本を訪れた際、「思いやり予算」を現行の約4倍、およそ80億ドルに増額するよう求めたという報道がされました。これに対して菅義偉官房長官は、「そのような事実はない」と否定する会見を開いています。

真偽のほどは明らかになっていませんが、トランプ大統領はしばしば、米軍が駐留している国に対して「相応の費用負担をしていない」という旨の不満を述べていました。そのため日本に対して増額を求めるのではないかという懸念は根強く残っている状態です。

実際にトランプ大統領は、日本と同じように特別協定を結んでいる韓国に対し、防衛費の負担増を要求しています。

韓国は、1991年に「在韓米軍駐留経費負担に関する特別協定」を結んだ後、日本のように駐留経費の一部を負担するようになりました。2018年の時点で韓国の年間負担額は約9500億ウォン。これに対しトランプ大統領は、負担費の増額を要求したのです。

韓国は、1兆ウォンを超える負担は国民世論が許さないと反発し、交渉は難航しましたが、2019年2月10日、新たな駐留経費負担を定めた特別協定が仮署名されました。有効期間は1年間、韓国の負担額は約8%増加して1兆389億ウォンとなっています。

またトランプ大統領は、2018年7月11日に「NATO(北大西洋条約機構)」の加盟国に対し、防衛費支出をGDP比4%に引き上げるように要求しました。

新たな日米特別協定をめぐる交渉はどのように進展するのか、今後も予断を許さない状況が続きそうです。

 

初心者におすすめ!安全保障をわかりやすく解説した本

著者
烏賀陽 弘道
出版日
2019-10-11

 

日本で安全保障というと、在日米軍を基軸とした軍事的なものが想像されがちです。もちろん軍事力は大きな要素ではありますが、実際の安全保障は軍事力だけでなく、さまざまな要因から成立しています。

本作は、作者がアメリカで報道記者として活動した経験をもとに、安全保障に関わる理論やテーマを具体例を織り交ぜつつ解説したもの。「初心者にもわかりやすく説明する」ことを掲げているので、安全保障に関する事前の知識がなくても大丈夫です。

国際社会の動向や、時事問題に関心のある方にもおすすめの一冊です。

 

思いやり予算など、日米地位協定から日米関係を考える

著者
山本 章子
出版日
2019-05-21

 

「日米地位協定」を中心に、戦後の日本とアメリカの関係を解説した作品です。「思いやり予算」についても、日本が負担することになった経緯や内容が解説されています。

史料を駆使しながら「日米地位協定」の運用の実態がまとめられているので、安全保障についてどのような見解をもっているにせよ、おさえておくべき内容だといえるでしょう。