西村京太郎の推理小説といえば、2時間ドラマでもおなじみの「十津川警部」シリーズ。警視庁刑事部捜査一課の十津川が、パートナーの亀井刑事とともに事件を解決していきます。今回は、なんと160作以上あるシリーズのなかから、おさえておきたいおすすめを厳選して紹介していきます。
時は昭和50年代の初頭。週刊誌の記者をしている青木は、人気沸騰中の寝台特急「はやぶさ」の魅力を取材するため、東京発西鹿児島行きの列車に乗り込みました。
ところが夜中に目を覚ますと、隣の個室にいたはずの薄茶のコートを着た女がいなくなっていて、いつの間にか自分が「はやぶさ」ではなく、その1本あとに出発した「富士」に乗っていることに気付くのです。
- 著者
- 西村 京太郎
- 出版日
- 2009-09-08
1978年に刊行された「十津川警部」シリーズ。西村京太郎の初めてのトラベル・ミステリーで、累計発行部数120万部を超える大ヒットとなり、本作以降、西村のもとにはトラベル・ミステリーの執筆依頼が殺到するようになりました。
西鹿児島に向かう寝台特急に乗っていた、薄茶のコートを着た女は、なぜか東京の多摩川で溺死体となって発見されます。そしていよいよ十津川警部が登場。ある程度予想がつく犯人の、鉄壁のアリバイをいかに崩していくかが見どころです。
練られたプロットの面白さとテンポのよい文章で、トラベル・ミステリーのエポックメイキングとなった作品。「十津川警部」シリーズのなかでも絶対に読んでおきたい一冊です。
上野駅構内のトイレで、通産省官僚の安田が、他殺死体で発見されました。
彼は上野発の寝台特急「ゆうづる7号」に乗車予定。高校を卒業してから7年が経ち、旧友6人とともに、故郷の青森へ向かうはずだったのです。
- 著者
- 西村 京太郎
- 出版日
- 2009-10-08
1980年に刊行された「十津川警部」シリーズ。「日本推理作家協会賞」を受賞しています。
安田が不在のまま、同窓生6人を乗せた「ゆうづる」が上野駅を発車しました。しかし、道中で6人のうちのひとりの行方がわからなくなり、後に鬼怒川で発見されるのです。残った5人は青森に到着後、警察からホテルに留まるよう指示をされるのですが、そこでひとりが遺書を残して死亡。捜査本部が解散した後青森駅でひとりが死亡。上野駅でもひとりが死亡……。
最終的に残ったのは2人です。しかし十津川警部は、一連の事件はひとりで実行するのは不可能と判断。果たして犯人と、その動機は何なのでしょうか。
殺人事件が5つも起きるテンポのよさや、時刻表トリック、密室トリックなどを堪能できるのはもちろん、地方から東京に出てきた者たちの心の動きなど、犯行動機にまつわるストーリーも読みごたえがある一冊です。
十津川警部は久しぶりの休暇を利用して、妻の直子と北海道旅行を楽しみました。帰りは直子の希望で、大人気の「トワイライト・エクスプレス」に乗ることにします。
そんななか十津川は、札幌駅のホームでかつて自分が逮捕した男の姿を発見。胸騒ぎを覚えます。
- 著者
- 西村 京太郎
- 出版日
- 1995-01-30
1992年に刊行された「十津川警部」シリーズ。本作の舞台は、豪華な寝台特急です。
悪い予感は的中し、十津川の携帯には殺害予告のメッセージが届き、そのとおりに乗客が殺されてしまいました。さらには妻の直子まで拉致されてしまうのです。
寝台特急という密室で、次々と怪しい人物が登場。途中駅で、シリーズでおなじみの亀井刑事が合流してホッとしたのもつかの間、さらなる事件が起こって、最後の最後まで目を離すことができません。
十津川と直子の夫婦愛もあいまって、旅情を覚える作品です。
深夜に疾走するポルシェで事故を起こしたのは、ヨットで11ヶ月の単独無寄港世界一周に成功したばかりの若き英雄、内田洋一です。
遺体から毒物反応が出たため、警察は殺人事件として捜査を始めました。しかし、内田の妻やヨットレースのスポンサーなど、容疑者として名前があがっていた人物が次々と殺されていき……。
- 著者
- 西村 京太郎
- 出版日
- 2013-03-12
1973年に刊行された「十津川警部」シリーズの1作目。当時の十津川はまだ30歳の若き警部補です。ハードボイルド調で荒々しく、若さあふれる活躍を存分に楽しめるでしょう。
最終的にひとりに絞りこまれた容疑者。しかし彼は事件当時、タヒチでヨットレースに参加中という鉄壁のアリバイがあるのです。太平洋という広大な舞台で実行されるアリバイ工作が秀逸。松本清張の『火と汐』にインスパイアを受けているそうで、正統派の推理小説になっています。
深夜の帰宅途中に何者かに襲われ、どこか知らない無人島に拉致されてしまった十津川警部。
そこには、十津川と同様にむりやり連れてこられた7人の老若男女がいました。彼らはとある事件の目撃者だそうで、無人島には事件の舞台になった町の一部がそっくりそのまま再現されていたのです。
- 著者
- 西村 京太郎
- 出版日
- 1983-12-08
1977年に刊行された「十津川警部」シリーズ。西村京太郎の初期作品のなかでも、傑作と呼び声の高い一冊です。
十津川らを拉致したのは、殺人事件を犯した容疑者の父親。無実を叫び続けながら獄中死した息子の冤罪と無念を晴らすため、事件にまつわる証言を再現しようとしていました。十津川はジャッジをするための第三者として選ばれたようです。
小さな矛盾をついて、次々と事実がひっくり返されていくのが魅力的。さらに、証言の検証と同時に新たな殺人事件も進行し、法廷ものとクローズドサークルのどちらも楽しめる作品になっています。
久しぶりの休日を、家族と銀座で過ごしていた亀井刑事。モンシロチョウの大群がいっせいに舞いあがる異様な光景を目撃します。
不審に思って近寄ってみると、そこには微笑したまま冷たくなっている青年の死体があったのです。
- 著者
- 西村 京太郎
- 出版日
- 1983-01-27
1980年に刊行された「十津川警部」シリーズ。亀井刑事とコンビを組んで、十津川がカルト宗教の狂気に挑みます。作者の西村京太郎は、社会派小説を多く執筆していた時期もあり、その力量を存分に感じられるでしょう。
銀座での事件の後、団地ではたくさんの風船が舞いあがり、若い女性の死体が見つかります。どうやら宗教団体による「連続予告自殺」のよう。十津川は自殺を止めようとするのですが、自殺自体は犯罪ではないため、罰することはできません。
信者を自殺に追い込むカルト教団の恐ろしさ、十津川とカリスマ教祖の対立、そしてラストに待ち受けている衝撃の展開に、胸を締めつけられるでしょう。