あるところに、耳が聞こえず口もきけない王子・ボッジがいました。国民の誰もが彼を馬鹿にしていましたが、ボッジは心に秘めた熱い想いを持ち続けていました。そして、彼は自分の不運な状況にもくじけず、たくましく成長していくのです。 みんなが選ぶTSUTAYAコミック大賞2019は6位。累計発行部数は100万部を突破している、WEB漫画から出発した大人気作品『王様ランキング』。あらすじと絵の素朴なタッチから、まるでおとぎ話のような世界観だと思うことでしょう。しかし、本作の一番の魅力は含蓄のある深い内容です。この記事では、2021年10月にアニメ化も決定した『王様ランキング』のあらすじと魅力を紹介していきます。
本作は元々、漫画投稿サイト『マンガハック』に作者の十日草輔(とおかそうすけ。当時はgoriemon)が投稿していた作品です。絵本や童話のような絵柄に、感動的な物語で少しずつ人気を博していきました。
- 著者
- 十日 草輔
- 出版日
- 2019-02-12
何のとりえもないように見える主人公が、生来の純真さと優しさで周囲を巻き込み、どんどん成長していく様子を描いた『王様ランキング』。こう聞くと、ありふれた物語に聞こえるかもしれません。
しかし、受賞こそ逃したものの「次にくるマンガ大賞 2019」にノミネートされ、みんなが選ぶTSUTAYAコミック大賞2019は6位。
累計発行部数は100万部を突破し、さらに2021年10月にはアニメ化も発表されているほど人気を博しています。詳しくはアニメ「王様ランキング」公式サイトへ。
本作は、「よくある漫画」に終わらない骨太さがあるのです。
この絵柄からは想像しにくいかもしれませんが、その内容は奥深いもの。国民的な少年漫画などとひけを取らないアツい展開と、昔話や童話を彷彿とさせるような学びのある作品なのです。
この記事でそんな『王様ランキング』のあらすじと魅力をご紹介します。
今、ここではない、魔法がある世界のお話。国家間の力関係は、国の発展度合いや国王の臣下の多さ、そして国王自身の強さから導き出された「王様ランキング」の順位によって表れていました。
物語の舞台となるボッス王国は、ボッス王が建国して1代でランキング7位にまでなった豊かな国でした。当然、そのお世継ぎにも期待がかかっていましたが、第1王子のボッジは、剣も振れないほど力が弱く、さらに耳が聞こえず言葉を話せませんでした。
誰からも馬鹿にされるボッジでしたが、彼は誰よりも心が優しく、よりよい国王になることを目指していました。
ある時、ボッジは「カゲ」と名乗る、文字通り影のような生物と出会います。カゲは絶滅した「影の一族」の生き残りで、誰にも相手にされなかったボッジの唯一の理解者となりました。
初めての友達を得たボッジは、まだまだ未熟ながらも、徐々に父王ボッスを越えるような活躍を見せていきます。
本作は非常に魅力的な登場人物ばかりが出てきます。こういうとありきたりかもしれませんが、まるで童話のように、一度目にすると不思議と心に残る骨太な魅力のある人物ばかりなのです。
言葉も話せず、耳も聞こえない主人公で、人から馬鹿にされても気づかず、ぼんやりしていると思われています。実は読唇術で言葉を理解しており、馬鹿にされても我慢し、そのうえで人を思いやることができる優しい心の持ち主です。
しかし戦いの非力さはどうすることもできません。実はボッス王が魔神と交わした契約による呪いなので、どれだけ鍛えても強くなれないのです。それでも努力し続ける姿は感動的で、やがて報われることになるのも涙を誘います。
ボッジを支える初めての友人にして相棒。その名の通り影のような姿をしています。その生態から暗殺や盗みを得意としていますが、性根のまっすぐなボッジに感動し、味方になることを決意しました。
口開けば憎まれ口ばかりですが、本当は心の底からボッジを心配しています。影から見守る際には、思わず本音が出てしまうのが微笑ましいキャラです。
ボッジとボッス王国の跡目を争っている第2王子。巨人と人間の子として生まれたため、兄とは違い文武両道でなんでもこなせますが、その分厳しく育てられてきました。
甘やかされてきた弱い兄を、羨ましいと感じていることも。
ボッス王国の初代国王で、王様ランキングでは7位。巨人族の戦士として魔物に襲われていた村を救って王国を築き上げた猛者。
若い頃、「生まれてくる子どもの力」と「寿命」を引き換えにして魔神と「強さだけなら1位」になれる契約をしました。ボッジが非力なのはこのためなのです。
ボッス王国の後妻で、ダイダの実親。そしてボッジにとっては継母という存在です。
実子の第2王子ダイダばかりを可愛がり、ボッジを邪険に扱います。しかしそれには理由があって……。
ボッス王国四天王が1人「ソードマスター」。騎士団の剣術を指南しており、ボッジの教育係にも任命されましたが、その非力さゆえ手がつけられず半ば放任状態に。
ボッス王国四天王が1人「蛇使い」。蛇を操って諜報活動を行っており、ダイダの教育係でもあります。
ボッス王国四天王が1人「王の槍」。王の護衛を勤めています。
ボッス王国四天王が1人「王妃の盾」。その実力を認められ、王妃の護衛についている。
ボッス王国の騎士団兵士。昔ボッジに助けられたことがあり、数少ない味方の1人です。
ある事情で国を出ることになったボッジが、強さを身につけるために師事することになる武芸の師匠。
ボッジの才能を引き出し、認め、育てていくところは本作の見所の1つにもなっています。
ある事情により肉体を失っている謎の女。ボッスからダイダに贈られたその鏡は、言葉巧みに彼を操るようになります。
以下では、キャラクター紹介PVも公開されています!
ボッジはまったく喋れないという設定で、劇中でも「あう」のような言葉しか発声できません。他人から馬鹿にされ、邪険にされ、それでもめげずに成長していく姿が本作の見所にもなっています。
ストーリーの冒頭で、ボッジは童話『裸の王様』のようにパンツ1丁で登場します。これは知り合ったばかりのカゲに言われるがままに服をすべて渡してしまったからでした。
自分は貧乏だからということにして、カゲがボッジに任意の追いはぎをしていたのですが、ボッジは人の役に立てたのだ、ととても嬉しそうです。王家に生まれたことを鼻にかけることもなく、やさしい心を持ったボッジ。
しかしボッジが町でも城内でもバカにされ、それでも人前では涙を見せずに笑顔でいる様子を見たカゲは、何があっても彼の味方でいようと改心するのでした。カゲと同様、読者の心も動かす、ボッジの魅力を知ることができる序盤の名シーンです。
また、もともとそんな魅力のあるボッジですが、彼もまたカゲとの出会いを経て変わっていきます。ただ優しいだけではなく、戦いにおける強さも身につけていきます。それは、非力さを非力なまま克服するというもの。ボッジ独自の強さを獲得する様子にご注目ください。
本作は「王様ランキング」という設定を除けば、剣も魔法もあるオーソドックスなファンタジーです。一見すると、昔話のようなシンプルな設定に見えますが、話が進むにつれ登場人物たちの多面性が描かれ、その奥深さに気づかされます。
まずはボッジとカゲの対比です。カゲの種族はその名のとおり影のような生態を持つ存在。暗殺を請け負う一族として重宝される一方、普通の人からは不気味がられていました。
誰からも認められず、孤立していたというところがカゲとボッジの共通点です。まっすぐ素直に生きてきたボッジと、やさぐれてしまったカゲ。カゲがひたむきなボッジの味方になったのは、自分が忘れてしまった心に触れたからなのではないでしょうか。
そしてボッジとヒリングの関係。時にヒステリックな言動でボッジを遠ざける継母・ヒリングは、実は密かに彼を思いやる人物です。血のつながりはなくとも我が子として愛しているがゆえに、非力な彼が国王の激務と国民の期待に応えられないだろうと考え、あえて厳しい態度を取っているのです。
このように、それぞれの関係性は一見トラブルがありそうに見えても、実は心温まる優しいもの。それがボッジだけでなく、それぞれの登場人物にあり、優しい世界観を築いているのです。
素晴らしい物語には素晴らしい名言が付きものです。それは『王様ランキング』でも例外ではありません。作中ではボッジの将来を左右する分岐点などで、泣けるセリフが多数登場します。
いくつかある名言の中から、特に印象的なものをピックアップしてご紹介します。
「大丈夫よ
あなたは強い子
たくさんの 嫌なことを 乗り越えていける」
(『王様ランキング』1巻より引用)
これは故人の前王妃シーナの言葉です。幼い頃からいじめられていたボッジにとっては、彼女のこのセリフが何よりも励みになったことでしょう。シーナの言葉通り、ボッジは誰よりも優しく、強い少年に育っていきます。
「あなたが気にしていることは、もしかしたらあなたの長所なのかも知れない
(中略)
それは苦しいけれど きっと自分の道を切り開く力になるでしょう
できれば自分の全てを愛しなさい」
(『王様ランキング』4巻より引用)
ボッジの師匠デスパーが、旅立つボッジに贈ったセリフです。これまで書いてきたとおり、ボッジには生まれつきのハンデがあります。しかし、デスパーはそのハンデまで含めてすべてが長所であり、人と違うことが、やがて強さに繋がると説きました。
ボッジだけでなく、すべての悩みやコンプレックスを持つ人を勇気付ける名言です。
「オレはこれから どんなことがあっても
お前の味方になりたいんだ」
(『王様ランキング』1巻より引用)
ボッジとカゲの友情の始まりを象徴する名言です。ダイダとの一騎打ちに敗れて人知れず泣いていたボッジに対して、カゲは健闘を称えてこう言いました。当初一方的に搾取するつりでいたカゲが、ボッジに感化されて初めての理解者となった感動的なシーンです。
他者に疎まれ続けてきたボッジが、カゲに認められた瞬間の涙がとても美しい場面でした。
巨人の両親を持つボッス王国の第1王子・ボッジ。
強さでは誰にも負けない父、怪力のボッスの血をひいているはずのボッジは、身体は小さく、短剣すらも握ることのできないほど非力な少年です。さらに耳も聞こえず、言葉も話せない彼は、周囲の人間から次期王の器ではないと言われバカにされてきました。
- 著者
- 十日 草輔
- 出版日
- 2019-02-12
言い返すこともできないボッジはいつも1人で耐えていましたが、そこに心の通じる「カゲ」という友達が現れ、嬉しさに心躍らせていたそんな矢先、病に倒れていたボッジの父で国王のボッスが亡くなってしまいます。
跡継ぎとして指名されたのは、なんとボッジの異母弟で文武両道な第2王子・ダイダでした。
弟が王となったことと、蛇使いのベビンによって唯一の友達であるカゲが捕らえられてしまったことで、城に居場所がなくなってしまったボッジは、旅に出る決意をします。
母のヒリングは渋々ながらも「護衛をつけるなら」と、旅を了承してくれました。しかし、護衛としてついてきたドーマスは実は裏切り者で、もう1人の護衛であるホクロがいない隙を狙って、業火が燃える魔物の穴へとボッジを突き落としたのです。
ボッジが命を落としかけたそのとき、捕らえられていたはずのカゲがボッジを助け、再会を果たしました。
- 著者
- 十日 草輔
- 出版日
一方、王国ではダイダの我侭な王政が続き、次々と家臣が死んでいったことで、一時は7位だったはずの王様ランキングも90位まで落ちるほどの下降の一途をたどっていました。
ダイダからボッジ殺害という密命を受けていたドーマスでしたが、実は「これでよかったのか」と後悔の念を抱きます。
帰ってきたホクロにばれて剣を向けられても、反撃せず一心に攻撃を受け、その結果片腕を失ってしまったあとも「仕方ない」とすませるほど。
場面はうつり、ボッジとカゲは穴の下で「どんな平凡な人でも最強にしてくれる」という男・デスパーのもとへ弟子入りを果たします。「もしかしたらボッジも戦えるようになれるかもしれない」と言われたことで、自分なりの戦い方を見つけるために修行へと打ち込んでいきます。
- 著者
- 十日 草輔
- 出版日
一方、今は亡き父の力を受け継ごうと、魔法の鏡による特殊な儀式を受けていたダイダは、しかし儀式の途中で不吉な予感を抱いたのか、途中で儀式を中断してしまいました。
それでも、ダイダを利用して何かを企んでいる「魔法の鏡の中にいる”何か”」は、ダイダに儀式を受けさせることを諦めていない様子で…。
王国の中でもボッジの味方であったアピスは、彼を王にしようと、ダイダの首を狙います。
そこへ仲裁に入ったのは、あの鏡でした。アピスは驚きます。なぜなら、鏡の中にいたのは、かつての自分の師匠・ミランジョだったからです。
ミランジョの声を聞いたアピスは、彼女の言う通りにダイダを気絶させ、ある薬を飲ませます。彼女の目的は、かつて王様であったボッスを、ダイダを依代として蘇らせることだったのです。見事復活したボッス王と、その器として利用されてしまったダイダ…。
- 著者
- 十日 草輔
- 出版日
- 2019-06-12
一方、デスパーとの修行を終えたボッジ。
彼が自分の武器として選んだのは、フェンシングでも用いられることが多いような、細長くて軽い剣でした。心配そうなカゲを尻目に、ボッジは喧嘩を売ってきた相手の急所を一突き。
彼がこの修行で身につけたのは、自分の力を最大限活かした「技術」だったのです。
王妃であるヒリングに、自分が復活したことを告げたボッス王。
しかし彼女は不安な顔で「ダイダは?」と聞きます。それにただただ「わからない。」と返された彼女は、衝撃のあまり倒れてしまいます。
その後、ミランジョによる暗殺の刺客もなんとか護衛のドルーシによって追い払われ、ヒリングは、ボッス王からダイダを取り戻すことを決意します。ボッス王に正面から対峙した彼女は、ダイダの悲痛な叫びを聞いて錯乱状態に陥り、気絶させられます。
ボッス王はドルーシに、暗殺されないようしばらく国から離れろと助言しました。
- 著者
- 十日 草輔
- 出版日
一方、アピスに破れてしまったベビンは、アピスの家来である三つ又首の蛇・ミツマタに救われ一命を取り留めていました。
ボッス王国に向かっているボッジとカゲの前に、冥府の王であるデスハー(デスパーの兄)の部下と名乗る者達が現れます。彼らは、何者かの手引きにより、冥府から罪人6名がこちらへ脱出したこと、そしてそれを捕まえるために来たことを明かしました。
罪人は、
・殺し屋、黒髪のブラック
・殺し屋、赤髪のレッド
・強靭な肉体に包まれた怪力男、ギガン
・山賊の頭、ゾック
・没落した王家の最強、キングホ
・冥府の剣王、オウケン
と、それぞれこのまま野放しにはできないほど恐ろしいパワーを秘めた者たちばかりです。そしてこれを企てたのは、ミランジョ。
王宮をあっという間に占領してしまった罪人たちを前に、彼女は「(王宮を)好きにしていい。」と言います。ミランジョは、この混乱に乗じて、ボッス王国を滅ぼそうとしていたのです。
- 著者
- 十日 草輔
- 出版日
- 2019-12-12
一方、ダイダが心配でたまらないヒリングは、騎士たちと共に城内へ。
初めは、ミランジョが連れてきた魔物を前に形勢がよかったドルーシたちも、罪人が加わればたまりません。攻撃を受けながら、なんとかヒリングだけでも逃がそうとしますが、そこへ罪人たちの最強格である、不死身の力をもった剣王オウケンが立ちふさがります。
ヒリングを守るため、ドルーシが決死の状態で魔物や罪人たちと戦っているものの、かなりの怪我を負ってしまい絶体絶命のピンチ。そこに駆けつけ剣を握ったのは、あのボッジでした。
彼がデスパーから教わった必殺技は、一突きでダイヤをも砕くとされています。圧倒的な力をつけてきたボッジですが、根の優しさは変わりません。敵であったギガン・テスも敗北を受け入れ、自ら彼の家来に志願しました。
- 著者
- 十日 草輔
- 出版日
一方、冥府からボッス城地下に繋がる入り口を発見したデスハー。ボッス王の指示でそれを破壊しに来たドーマスとの戦いが勃発します。
ついに、ボッス王国へと乗り込んできた「冥府の王」デスハーの攻撃を受けながらも負けじと剣を構えるドーマス。
そこへボッジたちがやってきて、デスハーの真の目的「罪人を連れて帰ることと、ミランジョを始末すること」さえできれば、国も他の者の命もいらないのだと聞かされました。それを聞いたボッジが思い出すのは、母であるシーナのことです。そう、自分の母親を殺害したのは、ミランジョという名前であったことをボッジは思い出しました。
- 著者
- 十日 草輔
- 出版日
一方、冥府騎士団と戦っていたオウケンは、デスハーの雷により気を失ってしまいます。デスパーが捕らえましたが、優しかった彼の面影は完全になくなっていました。
不老不死となったことで心を無くし、自我すらない殺人鬼となってしまったというのです。
その後、意識を取り戻したオウケンは、デスパーたちを欺き、鏡によって王宮へ導かれていきました。鏡はオウケンを操って、鏡を奪ったゾックを倒そうとしていたのです。
ボッジとオウケンはそこでが顔を合わせてしまい、ついに戦いが巻き起こります。なんとか技を繰り出すボッジでしたが、どの技もオウケンには無意味。攻撃を防ぐことしかできないボッジは、だんだん体力を削られ疲弊してしまいます。
そこへ隊長とデスパーが駆けつけ、ボッジを逃がすことができました。
- 著者
- 十日 草輔
- 出版日
一方、ボッス王の口からミランジョの過去が語られます。かつて、ホウマ国で暮らし、戦争をしていた彼女は、隣国のギャクザという国に裏切られてしまい、壊滅に追い込まれました。
その上、ギャクザの人に残酷な仕打ちを受けていたところを、ボッス王が助け出したのです。
自分を逃がしてくれたデスパーたちは、とうとうオウケンの前に倒れてしまいます。それを見て怒りに燃えたボッジとカゲは、オウケンへ果敢に挑んでいきますが、圧倒的な力の差の前に、成すすべなく重症を負ってしまうのでした。
しかしそこへ、回復したアピスとドルーシ、そしてドーマス、ホクロやベビンも駆けつけ、ボッス王国四天王は剣を握ります。
- 著者
- 十日 草輔
- 出版日
一方、瀕死のふちを彷徨っているボッジとデスパーは、ミランジョがボッジの母親シーナと、ミランジョの母親と対峙している思念世界のようなところへ迷い込みました。
シーナは、自分が殺されたときにミランジョが負った、本来であれば死ぬほどの怪我を、魔人との契約で何とか生きながらえることができたが、そのせいでこっち側、つまり死後の世界へ行くことができないことを哀れみ、もうお前を恨んでいないと言い放ちました。
それを知ったボッジにデスパーは問います。「彼女を殺せますか?救えますか?」デスパーが見たミランジョの過去を見せてもらい、涙ながら両方の問いに首を振るボッジ。
果たして、彼はどう戦っていくのか?物語の佳境に差し掛かります。
ボッス王は自分とミランジョが体験した記憶を、ダイダに見せていきます。
ミランジョの身に起きた凄惨な過去。ボッス王の存在で立ち直ったミランジョは、神に挑んで敗北した彼を復活させるべく、自ら禁じていた魔神の力を借りてしまいます。
その結果、ボッス王は子供の力――すなわちボッジを代償に、神をも倒す力を手にしたのでした。
- 著者
- 十日 草輔
- 出版日
最初は誰も悪意など抱いていなかったのです。ボッス王はただミランジョを支え、ミランジョは献身に応えてボッス王を愛しただけでした。しかし、それが結果として多くの悲劇を生み、ダイダやボッジの人生を狂わせたのです。
11巻では夢の世界を通してダイダと繋がったミランジョは、人間的な心を取り戻します。あらゆる出来事の責任を感じ、涙を流す彼女を誰が非難できるでしょうか。
すべての因縁が明かされた今、ボッス王との最後の戦いが始まります。
ボッジを王の器と認めたボッス王国四天王は、ボッジとともにボッス王に対峙します。ところが、それを制して1人で戦いを挑むボッジ。ボッス王の圧倒的な攻撃を前にして……。
- 著者
- 十日 草輔
- 出版日
ボッス王の強大な一振りに比べて、あまりにも頼りない矮小な細腕と1本の細剣。しかしボッジは攻撃をことごとくかわし、あまつさえ巨大な棍棒を砕いてしまいました。ボッジの太刀筋は、まさしく王の剣と呼ぶべきものでした。
ボッジの活人剣は致命傷こそ与えないものの、確実にボッス王にダメージを負わせ、ついには……。
決戦のあと、物語は大団円を迎えます。愛ゆえに起きた悲劇が、どのような形で結ばれるのか。ボッス王から解放されたダイダの意外な行動が胸を打ちます。
ボッス王国で王位に就いたボッジですが、カゲが姿をくらましたこともあって、気落ちした日々を過ごしていました。見かねたヒリングの計らいでボッジは旅立ちを決意し、カゲともすぐ再会できました。2人の新たな冒険が始まるのですが……。
- 著者
- 十日 草輔
- 出版日
オウケンを元の人間に戻すべく、暗躍していたデスハー。当初ミランジョに取り憑いていた魔神に願うつもりでしたが、叶わなかったことを知った彼は、神の宝物庫へと向かいます。デスハーはあるものと引き換えに、オウケンを蘇らせるつもりでした。
奇跡的にオウケンは復活するものの、それ以来デスハーは行方不明になってしまいます。
一方、ボッジとカゲは王様ランキング下位のクヒャ国に入国していました。2人は早々に杖を突いた男と出会います。いさかいを仲裁する見事な手際を見せる杖の男。正義を感じさせる振る舞いとは裏腹に、2人はなぜか不吉な予感に見舞われました。
そんな中、クヒャ国はどんどん荒れていき、ボッジは内戦に巻き込まれることに……。
いかがでしたか? 主人公の頑張る姿はもちろん、主人公以外のキャラの動向や多面性が非常に面白い作品です。今後の行方を原作で見守りつつ、アニメの続報を待ちましょう。
ホンシェルジュ認定ライターの偏愛
長年ホンシェルジュを支える本好きライターたちが、「これについて書きたい!」と作品選定から企画・執筆した記事を集めました!